【投資戦略ウィークリー 2026年7月13日号(2026年7月10日作成)】”骨太の方針と円安・債券安、半導体メモリ銘柄の需給要因”
■骨太の方針と円安・債券安、半導体メモリ銘柄の需給要因
- 「骨太の方針2026(経済財政運営と改革の基本方針)」は7月中旬の閣議決定が目指されている。6/30に政府が経済財政諮問会議で原案を提示し、現在、自民党内や関係省庁と調整を進めている。骨太の方針は、政権が注力する成長戦略の全体を示し、方針に盛り込まれた項目が年末の国家予算編成に最優先で反映される。
- 骨太原案を巡っては、当初の「適切な金融政策運営」が「非常に重要」だとする書きぶりについて、市場で日銀の利上げをけん制する意向と受け止められたことから、足元で日銀の金融政策が後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」が懸念されて1ドル162円台へと円安・ドル高が進行した。この懸念に対して、政府は7/7、骨太方針の原案の修正案を示し、「安定的な物価上昇の実現」という文言を追加したほか、7/9に日銀の独立性に言及する方向で調整に入った。さらに、片山財務相が7/10、「金融政策の具体的な手法は日銀に委ねられるべき」と発言したことを受け、長期金利低下と円買い・ドル売りが進んだ。片山財務相は、「年金基金が日本の金融資産にさらなる投資をする方向で後押しする方策を追求したい」とも発言した。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の債券投資を連想させる面もあったようだ。
- 高市政権は成長戦略で2040年度までに官民で累計370兆円超を投資する構想を明らかにして2027年度以降の追加財政支出を実質ベースで年10兆円と想定した。その一方、2025年まで記載していた「財政健全化」の文言を載せなかったことから国債が売られ、10年国債利回りは7/9に一時90%と1996年9月以来の高水準を更新した。
- 主要な格付け機関から最上位のトリプルA格の信用格付けを得ているドイツ国債は、10年物利回りが7/9終値で06%であり、日本国債に接近しつつある。7/9終値では、30年国債は日本が4.015%でドイツ国債が3.623%と既に逆転している。政策金利見通しに敏感な2年国債は日本が1.445%、ドイツが2.663%である。インフレ下では政策金利が低いほど利回り曲線の長短金利差が拡大し、長期債・超長期国債が売られて利回りが上昇しやすい。それが政府の利払い負担の増加を通じてさらなる財政悪化を招き、財政支出による成長戦略の持続可能性が損なわれるリスクが懸念される状況だ。
- 韓国で4月から解禁された単一銘柄レバレッジETFが純資産と先物ポジションの調整のための「リバランス」需要から相場変動を大きくし、サムスン電子やSKハイニックスなど半導体メモリ大手銘柄を通じて日経平均株価の変動を大きくする要因となった。指数オプションの最終決済に関するSQ値算出は日本も韓国も月の第2金曜日に行われる。SQ明けの週はデリバティブの需給要因の解消からAI(人工知能)・半導体関連銘柄が戻りやすい地合いと言えるだろう。(笹木)
本日号は、メルカリ(4385)、名村造船(7014)、ナカニシ(7716)、ヨネックス(7906)、タイ・ユニオン・グループ(TU)を取り上げた。


■主な企業決算の予定
- 7月13日(月):Sansan、U-NEXT HOLDINGS、アステナHD、インターアクション、カーブスHD、カネコ種苗、クリエイトSDHD、コジマ、コスモス薬品、サカタのタネ、スタジオアリス、ドトール・日レスHD、ビーウィズ、ブックオフグループHD、マネーフォワード、ライク、(米)ファスナル
- 7月14日(火):E・JHD、IDOM、PR Times、S FOODS、TSIHD、アークランズ、イートアンドHD、イズミ、ウイングアーク1st、エコス、エスプール、クリエイト・レストランツ・HD、サイゼリヤ、タマホーム、ビックカメラ、フィル・カンパニー、メディアドゥ、モリト、ラクト・ジャパン、三光合成、松屋、松竹、不二越、明光ネットワークジャパン、(米)シティグループ、ウェルズ・ファーゴ、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー、ゴールドマン・サックス・グループ
- 7月15日(水): FPパートナー、Gunosy、SHIFT、いちご、エーアイテイー、オープングループ、グロービング、コメダHD、サーバーワークス、セラク、テラスカイ、トランザクション、パソナグループ、バロックジャパンリミテッド、ヒト・コミュニケーションズ・、ベイカレント、ベクトル、ボードルア、マニー、ユナイテッド・アーバン投資法人、ユニシアHD、ヨシムラ・フード・HD、リテールパートナーズ、大庄、東宝、日置電機、日本国土開発、日本毛織、北の達人コーポレーション、(米)モルガン・スタンレー、ジョンソン・エンド・ジョンソン、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン、シンタス、ブラックロック
ASMLホールディング
- 7月16日(木): アクティビア・プロパティーズ投資法人、阪急阪神リート投資法人、日本プロロジスリート投資法人、平和不動産リート投資法人、(米)インテュイティブサージカル、ネットフリックス、ゼネラル・エレクトリック、ユナイテッドヘルス・グループ、アボットラボラトリーズ、USバンコープ
- 7月17日(金): 大和証券オフィス投資法人、SOSiLA物流リート投資法人、アルインコ、東京製鐵
■主要イベントの予定
- 7月13日(月):
・10:00 ブルームバーグ日本経済調査(7月)
・EU外相理事会(ブリュッセル)、OPEC月報、米財政収支(6月)
- 7月14日(火):
・財務省20年利付国債入札、13:30 鉱工業生産(5月)
・米ウォーシュFRB議長が下院金融委員会で証言、米シカゴ連銀総裁が討論会に参加
・米CPI(6月)、米ADP民間雇用者数(週次)、対米証券投資(5月)、中国貿易収支(6月)
- 7月15日(水):
・日銀の国債買い入れオペ、14:00 石油連盟会長会見、チャットプラスが東証グロースに新規上場、08:50 日銀金融政策決定会合の議事録(2016年1月-6月分)、8:50コア機械受注(5月)、13:30 第3次産業活動指数(5月)
・米地区連銀経済報告(ベージュブック)公表、米ウォーシュFRB議長が上院銀行委公聴会で証言、米ニューヨーク連銀総裁が基調講演、米セントルイス連銀総裁が開会のあいさつ
・米PPI (6月)、米ニューヨーク連銀製造業景況指数(7月)、ユーロ圏鉱工業生産 (5月)、中国GDP (2Q)、中国経済全体のファイナンス規模・新規融資・マネーサプライ(6月)、中国小売売上高・工業生産・都市部固定資産投資(6月)
- 7月16日(木)
・08:50 対外・対内証券投資 (7月5-11日、)11:40 石油化学工業協会定例記者会見、13:30 日銀「生活意識に関するアンケート調査」、16:30 全銀協会長会見
・米ダラス連銀総裁が講演、韓国中銀が政策金利発表
・米新規失業保険申請件数 (7月11日終了週)、米小売売上高 (6月)、米フィラデルフィア連銀製造業景況指数(7月)、米企業在庫(5月)、米中古住宅販売成約指数 (6月)、米NAHB住宅市場指数(7月)、英鉱工業生産 (5月)
- 7月17日(金):
・16:00 生保協会長会見
・米輸入物価指数(6月)、米住宅着工件数(6月)、米鉱工業生産(6月)、米ミシガン大学消費者マインド指数・速報値(7月)、ユーロ圏CPI (6月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■米S&P500の11業種別騰落率
2026年4-6月期のS&P500は、AI(人工知能)関連需要の継続や企業業績の堅調さを背景に全体として14.9%上昇。半導体関連株の顕著なパフォーマンスを反映して情報技術が30%超の上昇となったほか、資本財・サービスや金融など循環株・景気敏感株も1桁台後半と堅調に推移した。一方で、中東情勢の正常化を受けてエネルギーが弱かった。AI・半導体関連の影響が強い中、循環株・景気敏感株へ分散化する兆しも出始めた。
機関投資家の運用は通常、12月末決算に対して1年毎にベンチマークを上回ったかどうかの成果を問われる。年後半を迎えるにあたり、AI関連銘柄のような高ボラティリティ銘柄からヘルスケアのような低ボラティリティ銘柄へ入れ替えるなど、攻めから守りへの転換も想定される。
【米S&P500の11業種別騰落率~2026年下半期に向けて出遅れ業種に注目】

■日韓株価指数と半導体メモリ大手
韓国を代表する株価指数であるKOSPIは、日本のTOPIXや米国のS&P500と同様に時価総額加重平均型の指数である。時価総額の上位2社であるサムスン電子とSKハイニックスの2社の指数に占めるウエイトは50%を超える。最近はこの2銘柄の株価に連動する単一銘柄レバレッジETFが活発に取引され、6月下旬には、レバレッジETFを含めた両銘柄関連の合計売買代金が韓国市場全体の80%超を占めた。特にKOSPI200を対象とするオプションは高い流動性を誇り、日経平均株価のオプションと同様に月の第2木曜日が取引最終日、第2金曜日がSQ値(特別清算値)の算出日である。
このような韓国市場の特性が7月第2週の日本株市場の値動きにも大きな影響を及ぼしたと考えられる。
【日韓株価指数と半導体メモリ大手~指数寄与度の高い銘柄とデリバティブ】

■TOPIX算出ルール見直しが近づく
TOPIX(東証株価指数)の見直しに伴う銘柄入れ替えは、2026年8月末基準日を経て10月末から定期入れ替えが実施される。プライム市場に限らず、スタンダード・グロースの両市場の銘柄にも対象が広がり、銘柄数が段階的に約1200に絞り込まれる。初回入れ替えで除外される既存銘柄は四半期ごとに8段階でウエイトが引き下げられる。東証スタンダード・グロースの両市場に上場している銘柄のうち、浮動株時価総額の大きい銘柄はTOPIXへの組み入れに伴う機関投資家やETFの買い需要が見込まれる。日本取引所グループが2026年3月末時点の浮動株比率一覧を公表している。両市場に上場する浮動株時価総額1000億円以上(7/9前場終値)の銘柄は秋以降に向けた投資対象候補として注目される。
【TOPIX算出ルール見直しが近づく~東証スタンダード・グロース銘柄に注目】

■銘柄ピックアップ
メルカリ(4385)
4785 円(7/10終値)

・2013年設立。スマホ特化の個人間取引マーケットプレイス「メルカリ」を運営。越境取引含む日本の「MarketPlace」、米国の「メルカリUS」、スマホ決済サービス(メルペイ)の「Fintech」の3部門を展開。
・5/11発表の2026/6期9M(7-3月)は、売上収益が前年同期比16.1%増の1672億円、コア営業利益が同74.5%増の348億円。MarketPlaceの流通総額が11%増、Fintechの債権残高が45%増、メルカリUSの流通総額が10%増。メルカリUSは売上収益が9%増の303億円、コア営業利益が黒字転換。
・通期会社計画を上方修正。売上収益を前期比14.2%増の2200億円(従来計画2100-2200億円)、コア営業利益を同45.1%増の400億円(同320-360億円)とした。年間配当は無配。同社は6/17、米国で世界共通アプリ「メルカリグローバルアプリ」の提供を開始。米国ユーザーが日本の「メルカリ」と「メルカリShops」の商品を閲覧・購入できる。海外の日本IP需要や円安による追い風が見込まれる。
名村造船(7014)
3800 円(7/10終値)
・1911年に名村源之助が大阪市大正区にて創業。2008年に函館どつくを、2014年に佐世保重工を連結子会社化。船舶、機械および鉄鋼構造物の製造販売ならびに船舶の修繕を主な事業とする。
・5/14発表の2026/3通期は、売上高が前期比0.1%減の1590億円、営業利益が同4.7%減の280億円。修繕船事業の減収減益が響いた。3月末受注残は新造船事業(売上比率79%)が7%増の4220億円、修繕船事業(同13%)が92%増の102億円、鉄鋼・機械事業(同4%)が48%増の80億円。
・2027/3通期会社計画は、売上高が前期比6.9%増の1700億円、営業利益が同3.3%増の290億円、年間配当が同10円増配の60円。日本政府が6/24に開いた日本成長戦略会議で打ち出した官民投資の対象に「国産LNG(液化天然ガス)船」が盛り込まれた。建造に取り組む具体的な企業や拠点は明かされなかったが、同社に加え、今治造船と川崎重工業(7012)の3社が主体となる見通し。
ナカニシ(7716)
3030 円(7/10終値)
・1930年に歯科治療用ハンドピース製造のため東京都で創業後、1945年に栃木県鹿沼市に移転。歯科事業(歯科医療用機器)、DCI事業(米DCI社)、外科事業(骨切削機器)、機工事業を展開。
・5/14発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比21.3%増の224億円、EBITDAが同23.6%増の58億円。主なセグメント別EBITDAは、歯科(売上比率59%)が13%増の49億円、DCI(同26%)が35%増の5億円、外科(同7%)が39%増の8億円、機工(同8%)が285%増の5億円。
・通期会社計画は、売上高が前期比11.1%増の901億円、EBITDAが同9.8%増の218億円、年間配当が同6円増配の60円。1Qは治療用ドリルと小さい骨を削る高速回転ドリルが堅調に推移。同社株は浮動株比率が高くTOPIX算出ルール見直しに伴う構成銘柄への新規採用の有力候補との見方が強い。医療機器関連はディフェンシブ銘柄としてAI・半導体関連銘柄から資金シフトの余地がある。
ヨネックス(7906)
2445 円(7/10終値)

・1958年にバドミントンラケット製造・販売の米山製作所を設立。主にバドミントン、テニス、ゴルフのスポーツ用品の製造・仕入・販売のほか、関連スポーツ施設運営を展開。バドミントンは世界首位。
・5/12発表の2026/3通期は、売上高が前期比18.3%増の1636億円、営業利益が同16.7%増の165億円。主な地域別営業利益は、日本(売上比率39%)が7%増の39億円、アジア(同52%)が22%増の118億円。主な種目別増収率は、バドミントン(売上比率62%)が20%、テニス(同13%)が17%。
・2027/3通期会社計画は、売上高が前期比8.8%増の1780億円、営業利益が同7.6%増の178億円、年間配当が同3円増配の28円。同社ブランドはバドミントンの世界市場で高い支持を基盤にテニスでも契約選手の国際大会での活躍を通じた認知度向上を図っている。前期(通期)の種目別業績でウエア、アクセサリーなどの「その他」(売上比率23%)が中国の販売好調を受けて18%増収。
タイ・ユニオン・グループ(TU)
市場:タイ 11.80 THB(7/9終値)

・1977年設立のツナ缶世界最大手。三菱商事(8058)が約6.2%保有の第4位株主。主に「魚介類・水産加工品」、「冷凍シーフード関連製品」、「ペットケア」、「高付加価値その他」の4事業を展開。
・5/5発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比7.6%増の320億THB、純利益が同9.2%増の11.1億THB。トランプ米政権の関税の影響で粗利益率が0.5ポイント低下したものの、持分法投資利益増や金融費用減が増益に寄与。ペットケア部門が23%増収、粗利益率も0.5ポイント上昇。
・通期会社計画は、売上高が前期比3-4%増、粗利益率が19-20%、設備投資支出額が55-60億THBと従来計画を据え置いた。三菱商事が保有比率を引き上げるために昨年9月に実施したTOB(株式公開買付)は不成立だったものの、ペットケア関連需要における高級・健康志向やウエルビーイング(幸福実感)への関心の高まりを追い風に、販売増・単価向上・利益率拡大の好循環が起きている。
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。
