【投資戦略ウィークリー 2026年6月1日号(2026年5月29日作成)】”半導体・データセンター関連の代表的な出遅れ銘柄”
■半導体・データセンター関連の代表的な出遅れ銘柄
- 世界半導体市場統計(WSTS)によれば、2026年1-3月期の半導体売上高は前年同期比2%増と、前年同期比の伸び率が2025年10-12月期(38.4%)に比べて急伸した。そのけん引役となっているメモリ半導体では、AI(人工知能)向けに当初はデータを高速処理するため一時的な記憶を担うDRAMを複数組み合わせた高帯域メモリ(HBM)が注目されていた。そのような中、AI活用の重点が「学習」から「推論」に移るに伴い、膨大なデータを保存するための長期記憶を担うNAND型フラッシュメモリを用いた記憶装置であるSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)の需要が拡大。SSDはDRAMと比べてデータの読み取り速度が遅い欠点があったが、キオクシアホールディングス(285A)が開発したNAND型フラッシュメモリの新製品は従来製品と比べてデータの読み取り速度が飛躍的に高速化した。そのため、膨大なデータから最適なものを読み出す速度を武器に高い競争優位性を持っている。
- また、AIサーバーの特需は電力供給を支える電子部品にも波及し始め、一時的に電気をためる機能を持ち、電流を制御するのに欠かせないコンデンサの中でも小型で高性能の「積層セラミックコンデンサ(MLCC)」の需給がひっ迫している。この動きはMLCCにおける誘電体層の主原料となるチタン酸バリウムを手がける化学メーカーにも恩恵が及んでいる。さらに、日本半導体製造装置協会(SEAJ)によると、1-3月期の日本製の半導体製造装置の売上高は前年同期比1%増となっている。その要因としては、半導体メモリ向けのほか、AIが自律的にタスクをこなす「AIエージェント」へ進化するに伴い、電子機器の頭脳の役割を担うロジック半導体向けの需要の活発化がある。
- 国内上場企業の時価総額ランキングを見ると1年前と様変わりしている。日経平均株価の上昇とともに、ランキング上位企業も大半は時価総額が増加している。そのような中、ソニーグループ(6758)やNTT(9432)といった日本を代表するような企業の時価総額が伸び悩んでいる。2026年3月期決算を見ると、ソニーグループの事業セグメントのうち半導体素子のCMOS画像センサーを取り扱う「イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)」事業の営業利益が前期比37%増となったほか、NTTにおいて海外のデータセンター事業を担うグローバル・ソリューション事業の営業利益も51%増と拡大している。これらの事業は半導体やデータセンターの市場拡大の追い風を受けているものの、株価に十分織り込まれていないように見受けられる。
- 一方で、電気代の高騰や冷却水の多用で水不足を招くおそれがあるとして、米国でAIに使うデータセンター建設に反対する動きが広がっている。今年11月の米中間選挙に向けて選挙争点化し、AI半導体・データセンター相場のアキレス腱となる可能性がある。(笹木)
本日号は、テルモ(4543)、ソニーグループ(6758)、インヴィンシブル投資法人(8963)、NTT(9432)、バンコク・ドゥシット・メディカル・サービシズ(BDMS)を取り上げた。


■主な企業決算の予定
- 6月1日(月): 伊藤園
- 6月2日(火):(米)パロアルト・ネットワークス
- 6月3日(水): 内田洋行、(米)ブロードコム、クラウドストライク・ホールディングス、メドトロニック
- 6月4日(木):積水ハウス、泉州電業
- 6月5日(金):カナモト、エターナルホスピタリティグループ、日本駐車場開発、エイチームホールディングス
■主要イベントの予定
- 6月1日(月):
・08:50設備投資・企業売上高・企業利益(1Q)、09:30S&Pグローバル日本製造業PMI(5月)
・ECBによるユーロ圏CPI予想 (4月)、エチオピア総選挙
・米S&Pグローバル製造業PMI (5月、確報値)、米ISM製造業景況指数(5月)、米建設支出(4月)、ユーロ圏S&Pグローバル製造業PMI(5月)、ユーロ圏マネーサプライ(4月)、ユーロ圏失業率(4月)
- 6月2日(火):
・財務省10年利付国債入札、16:00 キオクシアHDのインベスターデー、08:50マネタリーベース(5月)
・米ミネアポリス連銀総裁がパネルに参加、米クリーブランド連銀総裁が講演、英中銀総裁が上院委員会で証言、ポーランド中銀が政策金利発表、台北国際コンピューター見本市(COMPUTEX台北)開幕(5日まで)
・米自動車販売(5月)、米求人件数 (4月)、ユーロ圏CPI(5月)
- 6月3日(水):
・09:30 S&Pグローバル日本サービス業・複合PMI (5月)、14:00経団連定時総会、17:30 植田日銀総裁が共同通信社きさらぎ会で講演
・米地区連銀経済報告(ベージュブック)公表、サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(6日まで)、韓国統一地方選挙
・米ADP雇用統計(5月)、米S&Pグローバルサービス業・総合PMI (5月、確報値)、米ISM非製造業総合景況指数 (5月)、米製造業受注 (4月)、米耐久財受注(4月)、ユーロ圏サービス業・総合PMI (5月、確報値)、ユーロ圏PPI(4月)、中国RatingDogサービス業・総合PMI (5月)、豪GDP(1Q)
- 6月4日(木)
・08:50 対内証券投資(5月29日)
・米サンフランシスコ連銀総裁がブルームバーグ・テクノロジー・サミットで討論会に参加、英中銀総裁が講演
・米新規失業保険申請件数 (5月30日終了週)、ユーロ圏小売売上高 (4月)
- 6月5日(金):
・08:30毎月勤労統計-現金給与総額・実質賃金総額(4月)、08:30 家計支出(4月)、14:00景気一致指数・先行CI指数(4月)
・英中銀総裁、討論会に参加(スコットランド)
・インド中銀が政策金利発表
・米雇用統計(5月)、米消費者信用残高(4月)、ユーロ圏GDP(1Q)、インドGDP(1Q)
- 6月6日(土):
・国際航空運送協会(IATA)年次総会(ブラジル・リオデジャネイロ、8日まで)
- 6月7日(日):
・石油輸出国機構(OPEC)プラス閣僚級会合、アルメニア議会選、ペルー大統領選(2回投票制)国際航空運送協会(IATA)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■スペースX上場と米宇宙関連企業
宇宙開発・衛星通信・AI(人工知能)開発を手がける米スペースXが6/12にナスダック市場へ新規上場の予定だ。想定時価総額は1.75~2兆ドル規模に達すると見込まれている。同社を率いるイーロン・マスク氏は今年1月のダボス会議で講演し、AIのインフラ整備に向け、3年以内に宇宙空間でデータセンターを作る構想を発表。米航空宇宙局(NASA)が主導し、日本も参加する有人月探査「アルテミス計画」において今年2月に米国とカナダの宇宙飛行士4人を乗せた米宇宙船「オリオン」が月の上空を周回することに成功し、4月に無事地球に帰還した。トランプ米大統領は昨年12月、アルテミス計画を大幅に前進させる宇宙政策の大統領令に署名していた。宇宙関連銘柄は足元で堅調に推移している。
【スペースX上場と米宇宙関連企業~宇宙空間でデータセンターを作る構想】

■国債利回りとJ-REIT分配金利回り
J-REIT(上場不動産投資信託)は利回りを重視する投資商品であり、国内外の長期金利動向の影響を受けやすい。国債の利回りが上昇すれば、国債利回りとJ-REITの予想分配金利回りの乖離幅(イールドスプレッド)が縮小し、J-REIT投資のメリットが少なくなると考えられる。過去1年間の東証リート指数の平均予想分配金利回りと日本国債30年物利回りの推移を見ると、1年前は高水準のイールドスプレッドがJ-REITへの資金流入の要因になっていたと考えられる。それでも、東証リート指数の平均予想分配金利回りが5%の水準に達する状況では、利回り水準そのものに投資魅力がある。利回りに加えてインフレヘッジとしての不動産の特徴からもJ-REITの投資好機が到来しているとみる余地がある。
【国債利回りとJ-REIT分配金利回り~指数で分配金利回りが5%水準へ上昇】

■東証時価総額上位ランキング
AI(人工知能)・データセンターの歴史的な需要拡大を追い風に、英半導体設計のアームホールディングスを傘下に持つソフトバンクグループ(9984)の時価総額が国内2位となったほか、NAND型フラッシュメモリ専業メーカーのキオクシアホールディングス(285A)も国内4位となっている。その一方、次世代光通信技術「IOWN」を世界戦略の中心に据え、データセンター事業の世界シェアで3位を占めるNTT(9432)の株価は伸び悩んでいる。昨年5/14の時価総額は、当時子会社だったNTTデータGとの合計額で19.5兆円だった。一方、昨年9月末にNTTデータGを完全子会社化した後の今年5/27時点では13.6兆円にとどまっている。データセンターへの注目度が高まれば見直しの余地が大きいと考えられる。
【東証時価総額上位ランキング~NTTの相対的な株価出遅れに見直し余地】

■銘柄ピックアップ
テルモ(4543)
2401 円(5/29終値)

・第一次世界大戦の影響で輸入が途絶えた体温計の国産化を目的に1921年創業。心臓血管(カテーテルや人工心肺)の他、メディカルケアソリューションズ、血液・細胞テクノロジーの各事業を展開。
・5/15発表の2026/3通期は、売上収益が前期比9.2%増の1兆1318億円、営業利益が同11.8%増の1763億円。事業別売上収益は、心臓血管が8%増の6764億円、メディカルケアソリューションズが2%増の2112億円、血液・細胞テクノロジーが15%増の2165億円。海外比率は80.3%へ上昇した。
・2027/3通期会社計画は、売上収益が前期比9.5%増の1兆2390億円、買収の影響を除く調整後営業利益が同19.2%増の2165億円、年間配当が同6円増配の36円。原材料上昇のマイナス影響を価格改定や事業再編に伴うコスト減で吸収する見通し。中東情勢悪化に伴う石油化学製品の供給懸念が浮上する中、日本政府は医療関連物資の供給不足に対する懸念払拭を重要視する方針だ。
ソニーグループ(6758)
3444 円(5/29終値)
・1946年に東京通信工業として設立。ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)、音楽、映画、エンタテイメント・テクノロジー&サービス(ET&S)、イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)、その他のセグメントから構成される。
・5/8発表の2026/3通期は、売上高が前期比3.7%増の12兆4796億円、営業利益が同13.4%増の1兆4475億円。主な営業利益内訳は、G&NS(売上比率38%)が12%増の4633億円、音楽(同17%)が15%増の4470億円、I&SS(同17%)が37%増の3573億円、ET&S(同18%)が17%減の1586億円。
・2027/3通期会社計画は、売上高が前期比1.4%減の12兆3000億円、営業利益が同10.5%増の1兆6000億円、年間配当が同10円増配の35円。同社は5/8、半導体ファウンドリ最大手の台湾積体電路製造(TSMC)と次世代画像センサーの開発・生産で提携すると発表。画像センサーはスマホだけでなくセキュリティカメラ、車載カメラ、産業用ロボット、フィジカルAI分野へと応用範囲が広がっている。
インヴィンシブル投資法人(8963)
61300 円(5/29終値)

・運用会社フォートレス・インベストメントグループをスポンサーとするJ-REIT。2004年に東京グロースリート投資法人として上場。ホテル(9割)と住宅が中核の総合型。25年12月末資産規模は6873億円。
・2/26発表の2025/12通期(7-12月)は、営業収益が前期(2025/6期)比13.9%増の285億円、営業利益が同14.0%増の193億円、1口当たり分配金(利益超過分配金を含まない)が同15.4%増の2186円。ホテルポートフォリオのは2月末で、物件数が10件増の114件、取得価額が12%増の6873億円。
・2026/6期(1-6月)会社計画は、営業収益が前期(2025/12期)比7.0%減の265億円、営業利益が同10.9%減の172億円、1口当たり分配金が同13.3%減の1895円。2026/12期を含む会社予想年分配金は4081円、5/27終値で予想年分配金利回りが6.58%、NAV倍率が0.90倍。利用回数制限のない投資主優待制度として、亀の井ホテルほか対象となるホテルの宿泊が投資主優待価格で可能だ。
NTT(9432)
149.5 円(5/29終値)

・1952年に政府全額出資で日本電信電話公社が発足し1985年に民営化。2020年末のNTTドコモに続き、25年9月末にNTTデータGを完全子会社化。NTT法により政府が発行済株式3分の1以上保有。
・5/8発表の2026/3通期は、営業収益が前期比5.1%増の14兆4091億円、営業利益が同3.4%増の1兆7062億円。事業別営業利益はNTTドコモを含む総合ICT(売上比率44%)が8%減の9421億円、グローバル・ソリューション(同34%)が51%増の4882億円、地域通信(同22%)が4%増の3074億円。
・2027/3通期会社計画は、営業収益が前期比4.5%増の15兆600億円、営業利益が同0.2%増の1兆7100億円、年間配当が同0.10円増配の5.40円。NTTデータグループを含むグローバル・ソリューション事業における海外大型案件の獲得を背景に、グループ全体のデータセンター事業の総受電容量が3月末時点で約2000MWと中国を除く世界3位の規模。国内はデジタル化需要を取り込んでいる。
バンコク・ドゥシット・メディカル・サービシズ(BDMS)
市場:タイ 18.10 THB(5/28終値)

・1969年に設立。タイ最大の民間病院運営会社であり、同業では時価総額で世界トップ5に入る。留学経験のある質の高い医師や看護師を揃え、国内外の患者に最先端の医療サービスを提供。
・5/13発表の2026/12期1Q(1-3月)は、総営業収益が前年同期比0.4%増の285億THB、EBITDAが同3.0%減の70.1億THB。イラン情勢悪化に伴う中東からの患者数減少に加え、生活費高騰を受けて国内患者数も減少。医者人件費・医薬品コストの増のほか病院数増加による減価償却費増が響いた。
・タイとカンボジアの国境紛争に伴うカンボジアからの患者数減少は懸念材料だが、カンボジア患者からの収益構成比は紛争前も全体の3%にとどまることから影響は限定的だろう。一方で、中東からの患者による営業収益は、1Qが前年同期比横ばいだったが、イラン紛争に伴う緊張激化を受けて4月は前年同月比36%減だったものの前月比では増収。中東からの患者数回復が鍵を握りそうだ。
■アセアン株式ウィークリーストラテジー
(6/1号:タイにおける上場子会社に対する家族支配)

タイのセブンイレブンを運営するCPオールは、非上場親会社の財閥チャロン・ポカパン(CP)グループが進める金融事業構想に異議を唱えている。対立の争点となったのはCPグループが開始を目指す仮想銀行だ。タイ中央銀行はCPグループの参入申請を承認したが、利益相反を防止するためグループ内の金融事業を集約し、非金融事業との切り分けを求める条件を課した。この方針に対し、CPオールの独立取締役はセブンイレブンの経営を支える上で重要な事業であるとして4/17に反対を決議。対立は収束せず、再編案の是非は5/29に開催のCPオールの臨時株主総会に委ねられることとなった。問題の背景には財閥の創業家が上場子会社などを実質支配する企業構造がある。タイでは家族が支配権を握る上場企業が少なくない。国際機関は家族支配に警鐘を鳴らしている。
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。
