【投資戦略ウィークリー 2026年5月25日号(2026年5月22日作成)】”3月決算企業の配当金支払開始、期待インフレ率の上昇”

 

3月決算企業の配当金支払開始、期待インフレ率の上昇

  • 企業は一般的に株主総会で余剰金の配当を決議し、総会後に配当金を支払うことが多い中、近年は総会決議を待たずに配当金を支払う企業が増えている。トヨタ自動車7203は定時株主総会が6/17に開催されるのに対し、期末配当金の支払い開始日は5/26に予定されている。デンソー6902は定時株主総会が6/18に開催されるのに対し、期末配当金の支払い開始日は5/29に予定されている。
  • 報道によれば、2025年には、TOPIX(東証株価指数)構成企業が支払う3月期決算分の期末配当の総額が6月末までに10兆円を超え、ピークの6/30には1日で1兆8000億円規模が支払われたとみられている。5月下旬から6月末にかけて配当が日本株への再投資に回ることで日本株市場の需給改善が見込まれる。また、夏の賞与の支給は、国家公務員が6/30と人事院規則で定められ、民間企業では6月下旬から7月上旬に設定されることが多く、日本株市場の需給面でのプラス要因である。
  • 一方で、多くのETF(上場投資信託)は7月の10日前後に分配金支払基準日を迎えることから、分配金捻出のための売り需要が発生し、需給面で上値が重くなる要因となりやすい。5月下旬から6月末にかけて需給が改善しやすい時期を投資好機とみる余地がある。
  • 市場のインフレ期待を示す指標が日銀の物価目標である2%を大きく上回り始めたことが市場で話題となっている。新発10年国債から物価連動国債の利回りを引いて算出され、市場が見込む平均的なインフレ予想である「10年物のブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」は5/18に3%を超え、その後も高水準で推移している。これは米国債やドイツ国債の10年物BEIとほぼ同水準である。その背景には、原油高を受けて物価上昇圧力が高まる中、高市首相が補正予算編成を表明したことがある。「インフレ下の財政拡張」によって日銀がインフレ対応で後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」に陥るリスクが警戒され始めている。今後は利上げの有無だけでなく、利上げ幅も市場の焦点となる可能性がある。銀行株への追い風となりやすい一方、仮に0.25ポイントを超える大幅利上げが話題になれば日本株市場への想定外のショックとなるリスクがあり、夏場に向けて警戒を要するだろう。
  • 物価上昇圧力の主な要因となっているイラン紛争とホルムズ海峡封鎖については、悲観的に考える必要はないだろう。トランプ米大統領の支持率が米国民の物価高への不満を背景に低下基調が続いていることもあり、与党の米共和党は11月の中間選挙に向けて米独立記念日(7/4)頃までに原油・ガソリン価格の沈静化が政治的に求められるだろう。仮に中間選挙で共和党が大敗した場合、トランプ政権は議会によってイランから撤退を求められる可能性が高い。(笹木)

本日号は、UBE(4208)、トレンドマイクロ(4704)、平和不動産リート投資法人(8966)、日本航空(9201)、インドセメント・トゥンガル・プラカルサ(INTP)を取り上げた。

■主な企業決算の予定   

  • 525日(月): 芝浦機械
  • 526日(火):ダイドーグループホールディングス、タカショー、(米)ゼットスケーラー
  • 527日(水): (米)PDDホールディングス、マーベル・テクノロジー、シノプシス、セールスフォース
  • 528日(木): (米)オートデスク、コストコホールセール
  • 529日(金):トリケミカル研究所

 

主要イベントの予定

  • 525日(月)

・14:30 東京地区百貨店売上高・全国百貨店売上高(4月)

・米株式・債券市場休場(メモリアルデー)、英株式・債券市場休場(バンクホリデー)、香港株式・債券市場休場(仏誕節の振替休日)

・シンガポールGDP(1Q)

 

  • 526日(火)

・フィリピンのマルコス大統領が国賓として来日(29日まで)、アステラス次期経営計画説明会、14:00 景気先行CI指数・一致指数(3月)、15:00 工作機械受注(4月)、15:30 経団連会長会見

・米主要20都市住宅価格指数(3月)、米FHFA住宅価格指数(3月)、米消費者信頼感指数(5月)、米ADP週間統計

 

  • 527日(水)

・財務省40年利付国債入札、08:50 企業向けサービス価格指数(4月)、09:00 日銀金融研究所による2026年国際コンファランス「金融政策の新たな視野」開催(28日まで)・植田日銀総裁が開会あいさつ、14:30 日証協会長会見、15:30 三菱重工の中期経営計画の進捗状況説明会

・ニュージーランド中銀が政策金利発表

・欧州新車販売台数(4月)、中国工業利益 (4月)

 

  • 528日(木)

・日銀の国債買い入れオペ、08:50 対外・対内証券投資(5月17-23日)、17:00 日本鉄鋼連盟会長会見

・米ニューヨーク連銀総裁とセントルイス連銀総裁と英中銀総裁がレイキャビク経済会議で講演(アイスランド・レイキャビク、29日まで)、南ア中銀と韓国中銀が政策金利発表

・米新規失業保険申請件数(5月23日終了週)、米GDP (1Q)、米耐久財受注(4月)、米個人所得・支出(4月)、米個人消費支出(PCE)価格指数(4月)、米新築住宅販売件数(4月)、ユーロ圏消費者信頼感指数(5月)、ユーロ圏景況感指数 (5月)

 

  • 529日(金)

・財務省が2年利付国債入札、野村HDがインベスターデーを開催、日東電工会社説明会、08:30 東京CPI(5月)、08:30 失業率 有効求人倍率(4月)、08:50 小売売上高・百貨店・スーパー売上高(4月)、 08:50 鉱工業生産(4月)、14:00 住宅着工件数・戸数(4月)、14:00 消費者態度指数(5月)、17:00 日銀の国債買い入れ日(6月)、19:00 財務省、外国為替平衡操作の実施状況(月次、4月28日~5月27日)

・アジア安全保障会議(シンガポール、31日まで)、ボウマンFRB副議長(銀行監督担当)、カンザスシティー連銀総裁がレイキャビク経済会議で講演

・米卸売在庫(4月)、独失業率 (5月)、独CPI (5月)

 

  • 531日(日)

・コロンビア大統領選(第1回投票)、中国製造業・非製造業PMI(5月)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

バークシャー保有銘柄の変化

米投資会社バークシャー・ハサウェイが5/15に提出した規制当局への開示資料で、同社が2026年1-3月期にデルタ航空DALの6.1%(26億5000万ドル)、百貨店メ―シーズMの1.1%(5500万ドル)でそれぞれ取得したことが判明。アルファベットGOOGLの保有比率は3倍超、ニューヨーク・タイムズNYTへの出資比率は2倍超の9.4%となった。一方、アマゾン・ドット・コムAMZNユナイテッドヘルス・グループUNH、クレジットカードのビザVマスターカードMAは手放した。1-3月期合計では159億4000万ドル相当の株式を購入し、240億9000万ドル相当を売却。特にデルタ航空の買いとシェブロンCVXの売りの組み合わせはエネルギー価格の中長期的な見通しを示唆している可能性がある。

【バークシャー保有銘柄の変化~今後の投資見通しへの強いメッセージも】

■トランプ米大統領の支持率低下

全米のメディア等による世論調査結果を集計して発表しているRCP(Real Clear Politics)の調査でトランプ米大統領の支持率が40%を下回った。支持率から不支持率を引いた数値も▲17%に達した。第二次トランプ政権発足後から約1年4ヵ月、支持率の下落トレンド、不支持率の上昇トレンドが継続中だ。米国が実行する軍事作戦は、通常、米国世論が当初は賛同する傾向がある中、2/28のイランへの軍事攻撃については攻撃当初から米国民は賛同していなかった。特に与党の共和党内でも、生活費への対応に対する評価が悪化しており、ガソリン価格の高騰や物価高につながるホルムズ海峡の封鎖を放置することは米共和党の中間選挙敗北に直結しやすく、方針転換を迫られる局面と考えられる。

【トランプ大統領の支持率低下~40%を下回り、中間選挙向けの対策が必要】

■J-REIT用途別と5・11月決算銘柄

J-REITは基本的に不動産賃貸業であり、テナントの契約期間が分散しテナント入れ替えや更新時の賃料上昇が収益に寄与するまで時間を要する。そのため、足元は国内長期金利の上昇加速による支払利息増加を賃貸収益で補うことができないとみなされ、J-REIT価格は年初以降、売りが優勢となっている。

大手不動産会社が2026年3月期に過去最高益を更新し27年3月期もこの傾向が続くと予想する中、J-REITは業績よりも金利上昇の悪影響が過剰に懸念され、予想分配金利回りや純資産(NAV)倍率から見て割安な銘柄もある。首都圏オフィスは不動産売却による含み益の実現化の余地もあり、潜在的な投資好機とみる余地は大きい。東証上場J-REIT58銘柄のうち5月・11月決算期は8銘柄である。

J-REIT用途別と511月決算銘柄~J-REIT下落基調で分配金利回りが上昇へ】

■銘柄ピックアップ

UBE4208)              

2992  円(5/22終値)  

・1897年創業の採炭を発祥とし1942年に設立。ナイロン樹脂や合成ゴム等の化学、セメントや石灰石等の建設資材、成形等の機械といった事業を展開し、それらに係る製造・販売を行う。

・5/13発表の2026/3通期は、売上高が前期比5.0%減の4623億円、持分法適用会社のセメント関連を含む経常利益が同67.7%増の375億円。持分法投資利益は2.0倍の154億円。事業別営業利益では樹脂・化成品(売上比率46%)が38%減の50億円の一方、機能品(同17%)が52%増の150億円。

・2027/3通期会社計画は、売上高が前期比4.9%増の4850億円、経常利益が同横ばいの375億円、年間配当が同50円増配の160円。中期経営計画で掲げている配当方針のDOE(株主資本配当率)目標に関して従来の2.5%以上から3.5%以上へ引き上げるとともに中計の進捗を踏まえて早期に4.0%への引き上げを目指すとした。低PER、低PBR、高配当利回り銘柄として見直し余地がある。

トレンドマイクロ(4704     

6184  5/22終値)  

・1989年に基本ソフトウエア輸入販売で前身のロンローパシフィックを英国法人が設立。「ウイルスバスター」他コンピュータセキュリティ対策製品の開発・販売を日本・北米・欧州・アジア太平洋で展開。

・5/14発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比9.4%増の738億円、営業利益が同3.7%増の155億円。統合セキュリティプラットフォーム「Vision One」を背景としたエンタープライズ(法人)向けが10%増収に加え、コンシューマー(個人)向けも全地域で伸長し5%増収と堅調に推移。

・通期会社計画は、売上高が前期比9.2%増の3015億円、営業利益が戦略的な先行投資の影響により同2.4%減の564億円、年間配当は未定。同社は4/16、法人向けブランド「TrendAI」で米アンソロピックのClaudeモデルを活用してAI(人工知能)システムの脆弱性の発見を進めるとした。エバ・チェンCEOはアンソロピックとの協働をテコに事業の変革を進めAI進化への対応強化を目指している。

平和不動産リート投資法人(8966) 

139100 円(5/22終値)

  

平和不動産8803をスポンサーとする総合型REIT。東京都区部の住宅とオフィスを主要投資対象とし、用途別では住宅が約50%、オフィスが約47%(2026年1月末)。継続的な物件入替えに特徴。

・1/17発表の2025/11期(6-11月)は、営業収益が前期(12-5月)比5.4%増の107億円、営業利益が同7.7%増の59億円、1口当たり分配金(利益超過分配金を含まない)が同2.6%増の3950円。期中平均稼働率が前期末比0.7ポイント上昇の97.8%、運用資産合計が同2件増の133物件となった。

・2026/5期(12-5月)会社計画は、営業収益が前期(6-11月)比16.4%減の89億円、営業利益が同31.3%減の41億円、1口当たり分配金(利益超過分配金を含まない)が同1.0%増の3990円。5/20終値で、2026/11期まで含めた会社予想分配金利回りが5.73%、投資口価格に対するNAV(純資産価値)倍率が0.93倍。平和不動産の開発力を背景に、安定的な資産入れ替えを行える点が強みだ。

日本航空(9201        

2580  円(5/22終値)

・1951年設立。公的資金投入と経営再建により2011年に会社更生手続を終結。フルサービスキャリア事業、LCC(ローコストキャリア)事業、マイル/金融・コマース事業、およびその他事業を展開する。

・4/30発表の2026/3通期は、売上収益が前期比9.1%増の2兆125億円、財務・法人所得税前利益(EBITに相当)が同26.4%増の2180億円。事業別売上収益は、フルサービスキャリア事業が9%増の1兆5874億円、LCC事業が10%増の1149億円、マイル/金融・コマース事業が11%増の2222億円。

・2027/3通期会社計画は、売上収益が前期比4.1%増の2兆950億円、財務・法人所得税前利益が中東情勢緊迫化に伴う燃油費増加見通しから同17.4%減の1800億円、年間配当が同横ばいの96円。航空燃油費の対売上収益比率(2026/3通期)は19.6%を占める。11月の米中間選挙を控えてトランプ政権がイランとの戦闘終結とホルムズ海峡の開放に向けた交渉を本格化させると見込まれる。

インドセメント・トゥンガル・プラカルサ(INTP) 

市場:インドネシア   4810  IDR5/21終値)

・1975年創業。ドイツの大手セメントメーカーのハイデルベルクセメント傘下企業。セメント、生コンクリート、骨材供給の3事業を展開。主力のセメント事業はインドネシアの個人顧客と住宅を対象とする。

・5/5発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比3.3%減の3.8兆IDR、純利益が同2.1%増の0.2兆IDR。セメント販売量(重量)が1.8%増加したものの、単位当たり販売価格の下落が響き減収。粗利益率が0.4ポイント上昇したことに加え、持分法投資利益増の寄与により、最終増益を確保。

・同社は2026年度の国内セメント市場の販売量を前年比1%増加と予想。新首都ヌサンタラ移転プロジェクトは中長期的に追い風になるとみられるが、プラボウォ政権の最優先課題は食料安全保障と国防の強化であり、首都移転への予算配分を見直す動きが懸念される。代替燃料の比率上昇とCO2排出量削減などサステナビリティ向上への取組みが利益率の改善に貢献している。

■アセアン株式ウィークリーストラテジー

(5/25号:インドネシアの保護主義政策)

インドネシア政府は5/20、パーム油や石炭などの資源輸出業務を国営企業に集約すると表明し、9月から新制度に本格的に移行するとした。新制度では、政府系ファンドの「ダナンタラ」が新設する会社などに輸出業務を一本化し、インドネシアが世界最大のシェアを持つパーム油、および主要な輸出国となっている石炭を対象とする計画だ。価格や輸出量などを最適化して国家が獲得する外貨を増やす狙いがあるが、新制度については、プラボウォ大統領が「1500億ドルの国家収入を生み出す可能性がある」と強調したものの、輸出の自由を制限される企業や業界団体から批判が強まっている。プラボウォ政権では保護主義的な政策が目立ち、資源分野などで政府が経済への介入を強めている。政府の統制に伴い市場の不確実性が高まれば、通貨安圧力につながる可能性がある。

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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