【投資戦略ウィークリー 2026年7月21日号(2026年7月17日作成)】”AI・半導体関連銘柄の売却とリスクの調整、標準偏差の考慮”
■AI・半導体関連銘柄の売却とリスクの調整、標準偏差の考慮
- 日経平均株価は、AI(人工知能)・半導体関連銘柄の下落とともに下げ幅を拡大した。7/17に前日終値比で一時6%超の下落幅となる場面があった。当ウィークリー7/6号でも示した通り、日経平均株価の月間騰落率の過去30年平均をみると、7月は▲63%と8月の▲1.36%に次いでパフォーマンスが悪い月である。9月の▲0.29%とあわせて7~9月期のパフォーマンスは過去の経験則上よくない。8月のお盆休みを8/11の山の日と連続させることがあることに加え、9月のシルバーウィークなども年によっては連休が長期化しやすい。経済活動が低下することのほか、機関投資家の運用担当者が休暇を取る前にポジションを縮小してリスク量を調整する動きも出やすいだろう。
- 韓国サムスン電子、オランダASMLホールディング、台湾積体電路製造(TSMC)とAI関連企業の好決算が相次いでいるにもかかわらず、株価が売りで反応するのは何故だろうか? その背景として機関投資家のポジションにおける株式エクスポージャー(特定のリスクに対してさらされている度合い、金額)を増やす余地が限定的である点が挙げられる。米国の株式エクスポージャーの動向を表すNAAIM指数は「過度の楽観」とされる水準にあるほか、米銀バンク・オブ・アメリカが7/14に発表した機関投資家調査でも、運用資産に占める現金比率が平均6%と前月比0.5ポイント低下して「極端に低い」水準となっている。追加的なリスクテイクが難しい中、イラン情勢の緊張が再び高まってきたことなどを踏まえて株式保有額を減らしてリスク量を調整せざるを得なくなるのは自然な成り行きという面もあるだろう。
- 「高リスク」とは、日常生活では悪いことが発生する可能性が高いことを意味するが、投資の世界では、単にマイナスの危険性だけでなく、どの程度の利益が生じるか損が生じるか分からない状態としてのリターン(収益率)の振れ幅の不確実性を意味する。プラスのリターンであっても短期間で市場平均を大きく上回るパフォーマンスを上げた銘柄は、「高リスク銘柄」と分類され、売却候補とされる余地がある。
- 投資のリスクはリターンの平均値からのぶれである「標準偏差」として示される。標準偏差はシグマ(σ)の倍数であり、リターンが±1σの範囲に収まる確率が約68%、±2σの範囲に収まる確率が約95%とされる。σを活用するテクニカル指標の「ボリンジャーバンド」では、たとえば、株価が+1σから+2σのバンドへ上昇することを狙うモーメンタム投資は、理論上は実現確率が悪化する方向に賭けている。一方で、たとえば株価が▲2σのバンドまで下落し、▲1σへ上昇するようなリバウンドを狙う投資は、実現確率が高まる方向への賭けとみることもできる。優良銘柄の短期的な大幅下落後のリバウンドを狙うことは理にかなっている面もあるだろう。(笹木)
本日号は、ウエザーニューズ(4825)、沖電気工業(6703)、コーナン商事(7516)、鴻池運輸(9025)、オーバーシー・チャイニーズ銀行(OCBC)を取り上げた。


■主な企業決算の予定
- 7月21日(火):インソース、ピー・シー・エー、(米)キャピタル・ワン・ファイナンシャル、ゼネラル・モーターズ、チャールズ・シュワブ、ダナハー、3M
- 7月22日(水):日本ホテル&レジデンシャル投資法人、オービックビジネスコンサルタント、オービック、ブロンコビリー、IBM、CSX、サービスナウ、テスラ、アルファベット、テキサス・インスツルメンツ、フィリップ・モリス・インターナショナル、AT&T、GEベルノバ
- 7月23日(木):KOA、ディスコ、信越ポリマー、未来工業、(米)インテル、ユニオン・パシフィック、コムキャスト、TモバイルUS、RTX、ハネウェル・インターナショナル、サーモフィッシャーサイエンティフィック、ローパー・テクノロジーズ、ロッキード・マーチン
- 7月24日(金):日本精線、中外製薬、信越化学工業、キヤノンマーケティングジャパン、ブルドックソース、中外炉工業、日本高純度化学、ジャフコグループ、(米)ネクステラ・エナジー、アメリカン・エキスプレス、ベライゾン・コミュニケーションズ
■主要イベントの予定
- 7月20日(月):
・中国1年・5年物ローンプライムレート(LPR)、英ファーンボロー国際航空ショー開幕(24日まで)
・米景気先行指標総合指数(6月)
- 7月21日(火):
・14:00 首都圏新築分譲マンション(6月)
・独ZEW(7月)、英ILO失業率(3-5月)
- 7月22日(水):
・財務省40年利付国債入札、ティアフォーが東証グロースに新規上場、08:50貿易収支・輸出・輸入(6月)
・米20年債入札、ECB政策委員会(フランクフルト、23日まで)
・英CPI (6月)
- 7月23日(木)
・日銀国債買い入れオペ、11:00 東京カンテイが6月の中古マンション価格を発表
・ECB、政策金利発表&ラガルド総裁記者会見(フランクフルト)、トルコ中銀と南ア中銀が政策金利発表
・米新規失業保険申請件数(7月18日終了週)、欧州新車販売台数(6月)、ユーロ圏消費者信頼感指数(7月)、韓国GDP (2Q)
- 7月24日(金):
・08:30全国CPI(6月)、08:50 対外・対内証券投資 (7月12-18日)、09:30 S&Pグローバル日本製造業・サービス業・複合PMI(7月)
・ECBによるユーロ圏CPI予想(6月)、ロシア中銀が政策金利発表
・米S&Pグローバル製造業・サービス業・総合PMI (7月、速報値)、米新築住宅販売件数 (6月)、ユーロ圏S&Pグローバル製造業・サービス業・総合PMI (7月、速報値)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■市場変調も米機関投資家は強気
NAAIMエクスポージャー指数は、全米アクティブ投資マネージャーズ協会(NAAIM)会員が毎週水曜日に協会へ報告する株式エクスポージャーを集計したもの。中長期的にはその値が80%を超えると「過度の楽観」、20%を下回ると「過度の悲観」と捉えられる傾向がある。
3/18に60.24%まで下落後に反発し、4/22以降は概ね「過度の楽観」に相当する80%以上の高水準にある。バンク・オブ・アメリカによる7月の機関投資家調査でも世界経済が減速しない「ノーランディング」の予想が調査開始以来最高水準に上っている。足元の相場環境は6月以降、ソフトウエア関連銘柄に続いて半導体関連銘柄が軟調に転じる一方、金融関連銘柄が堅調に推移しており、セクターローテーションが機能している。
【市場変調も米機関投資家は強気~半導体・ソフトウエア軟調も金融が堅調】

■中東以外からの原油輸入比率
経済産業省の石油統計(速報)によると、今年5月に日本に輸入された原油は前年同月比38%減の729万キロリットルだったが、減少幅は4月の65%から縮小。輸入先別にみると中東からの輸入が約50%の大幅減となった一方、北米からの輸入が約75%の大幅増となるなど代替調達が拡大した。政府は代替調達により、足元で中東情勢が悪化する前の昨年とほぼ同じ量を確保できる見込みだとしている。また、経済産業省は7/15、代替調達の一環としてメキシコ産原油が7/17にも日本に着くと明らかにした。
もっとも、北米の主力である米国は原油の生産拡大ペースが緩やかであることに加え、原油在庫の減少傾向が続いていることから、代替調達ルートとして過度に米国に期待することには疑問が残る。
【中東以外からの原油輸入比率~北米輸入比率上昇も持続性に疑問あり】

■半導体メモリ株の低PER化と要因
世界の株式相場をけん引してきた半導体メモリ株が調整局面にさしかかっている。AI(人工知能)向け投資による価格高騰を受けて異例の好業績が続くという株高シナリオの一方、投資家は特需の反動として思いのほか早く需給が緩むリスクを意識し始めているように見受けられる。不安材料として挙げられるのは、①メモリ各社が一斉に増産姿勢を打ち出すこと、②中国メモリ企業2社の台頭、③メモリを使う側の技術革新の3点である。
NAND型フラッシュメモリ世界大手のキオクシアHD(285A)の予想PER(株価収益率)は、昨年10月に15倍台、今年1月に14倍台まで上昇した中、7/15終値は7倍台前後まで売られている。ただ、中期的な供給過剰リスクを考慮すれば予想PER上昇に限界があるとみるべきだろう。
【半導体メモリ株の低PER化と要因~供給過剰リスクの前倒し顕在化を懸念】

■銘柄ピックアップ
ウエザーニューズ(4825)
1946 円(7/17終値)

・1986年設立。気象を含む自然現象データを顧客と共に収集・加工し、コンテンツとして提供。BtoB(法人向け)の気象予測に基づく業務支援、およびBtoS(社会向け)の情報コンテンツ提供を行う。
・7/9発表の2026/5通期は、売上高が前期比4.1%増の244億円、営業利益が同16.1%増の52億円。事業領域別ストック売上高は、Seaが3%増の63億円、Skyが16%増の15億円、Landが5%増の71億円、Internetが4%増の86億円。AI(人工知能)活用が奏功し、販管費率が1.1ポイント低下の25.9%。
・2027/5通期会社計画は、売上高が前期比5.4%増の258億円、営業利益が同3.0%増の54億円、年間配当が同5円増配(株式分割の影響考慮後)の50円。改正金融商品取引法が7/15の参院本会議で可決・成立。気候変動などサステナビリティ情報の開示をめぐり、一定の東証プライム上場企業に国際基準に整合する開示と第三者による保証が義務付けられた。同社へ追い風が見込まれる。
沖電気工業(6703)
3060 円(7/17終値)

・1881年に沖牙太郎が前身の明工舎を東京・京橋で創業。日本最初の通信機器メーカー。パブリックソリューション、エンタープライズソリューション、コンポーネントプロダクツ、EMSの4事業を展開。
・5/13発表の2026/3通期は、売上高が前期比6.8%減の4216億円、営業利益が同1.2%増の188億円。主な事業別の営業利益は、パブリックソリューション(売上比率33%)が29%増だった一方、エンタープライズソリューション(同36%)の21%減、コンポーネントプロダクツ(同16%)の33%減だった。
・2027/3通期会社計画は、売上高が前期比4.4%増の4400億円、営業利益が同16.7%増の220億円、年間配当が同横ばいの65円。同社は潜水艦に搭載し探知に使うパッシブソナーなどを提供。無人水中航走体(UUV)や自律型無人潜水機(AUV)への搭載可能性など防衛関連として関心を集める。2023-27年度防衛力整備計画では2019-23年度比で無人アセットの予算規模が約10倍に拡大。
コーナン商事(7516)
4175 円(7/17終値)
・1978年に大阪府堺市で創業した大阪地盤のホームセンター大手。主に小売、建築資材等の販売事業を展開。関東に進出するほか同業他社の買収に積極的。大型店舗展開に注力している。
・7/10発表の2027/2期1Q(3-5月)は、売上高が前年同期比11.8%増の1462億円、営業利益が同42.8%増の101億円。5月末のグループ店舗数が674店舗と前期末(2月末)比5店舗増となったことに加え、中東情勢悪化を背景とした石油由来製品や法令改正を見据えたエアコン等の販売が伸長。
・通期会社計画は、売上高が前期比4.6%増の5435億円、営業利益が同2.7%増の230億円、年間配当が同10円増配の140円。建築職人や工務店などプロ需要に特化した「PRO業態」は、専門性の高いアイテムを豊富に取り揃え、早朝からの営業やプロ向け会員サービスで高支持を得ている。同社は成長の柱としてPRO業態の出店を強化し、一般向けとのハイブリッド店舗の展開にも積極的だ。
鴻池運輸(9025)
2833 円(7/17終値)

・1880年に鴻池忠治郎が大阪で創業した総合物流会社。様々な業種・業態で業務請負を行う「複合ソリューション」、定温・一般物流の「国内物流」、国内外の海上・航空貨物の「国際物流」を営む。
・5/13発表の2026/3通期は、売上高が前期比3.1%増の3555億円、営業利益が同6.5%増の227億円。事業別セグメント利益は、複合ソリューション(売上比率65%)が適正単価収受への取り組みで15%増の238億円。国内物流(同16%)が5%減の34億円、国際物流(同19%)が16%減の39億円。
・2027/3通期会社計画は、売上高が前期比1.5%増の3610億円、営業利益が同7.8%減の210億円、年間配当が同横ばいの110円。高市首相が7/1-3にインドを訪問し、日印首脳会談を開催。会談では日本からインドへ2兆円の民間投資のほか次世代燃料分野でも協力を図ることが発表された。同社は2025年にインド国営の鉄鋼スラグ処理会社を完全子会社化するなどインド展開を強化中だ。
オーバーシー・チャイニーズ銀行(OCBC)
市場:シンガポール 28.78 SGD(7/16終値)

・世界恐慌期の1932年に華僑系3銀行が合併して設立。シンガポール地場3大銀行の一角。シンガポールとマレーシアで最大手の保険会社Great Eastern HDや香港のWing Hang銀行などを擁する。
・5/8発表の2026/12期1Q(1-3月)は、総収益が前年同期比4.7%増の38.2億SGD、純利益が同4.8%増の19.7億SGD。純金利マージン(NIM)の縮小に伴い純金利収益が5%減少した一方、非金利収益は手数料・コミッションやトレーディング、保険事業などが堅調な推移を受けて23%増となった。
・通期会社計画は、純金利収益が前期比やや減少、期末貸出残高伸び率が1桁台半ば、経費率が40%台前半〜半ばと従来計画を据え置いた。同行は傘下にシンガポールとマレーシアで生命保険首位のグレート・イースタンHDを持つ。シンガポールの生命保険は返戻金の払込保険料総額に対する比率(返戻率)が相対的に高く、世界の富裕層を中心に投資・運用目的で注目を集めている。
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。
