【投資戦略ウィークリー 2026年6月29日号(2026年6月26日作成)】”株式市場乱高下の背景、日本政府の成長戦略に再注目”

 

株式市場乱高下の背景、日本政府の成長戦略に再注目

  •   日経平均株価は6/22に7万2831円まで上昇後、翌日から一転して乱高下に見舞われている。24日に6万8461円まで下落後、25日に7万2594円まで急騰。さらに26日には6万8636円まで下落するなど「高値波乱」の様相を示している。米国とイランが6/17に戦闘終結とホルムズ海峡の開放に向けた覚書に署名し、6/21-22に高官級協議がスイスで開催されて最終合意に向けて60日間の工程表が策定されたことが「材料出尽くし」とみなされた可能性がある。
  • 今年4月の月初から株式市場のけん引役となっていたAI(人工知能)関連相場も、6/16-17に開催された米FOMC(連邦公開市場委員会)で緩和バイアスの文言が削除され、FOMCメンバーによる政策金利水準の分布図(ドットチャート)の中央値が年内追加利上げを示唆する内容となったことを受けて、さすがに買いの勢いが鈍化してきている。IPOを通じて史上最大の750億USDの巨額調達に成功したばかりのスペースXSPCXが6/22に社債発行を発表。他にも社債発行の話が相次ぐ中、利上げ局面となった場合に金融市場は巨額の資金調達に耐えられるのかという疑念が広がり始めている。半導体メモリ大手企業や半導体製造装置メーカーの株価が堅調に推移する一方、米国ではアマゾン・ドット・コムAMZNマイクロソフトMSFT、グーグルを傘下に持つアルファベットGOOGLといった「ハイパースケーラー」の株価が軟調となっている。データセンターへの設備投資の加速で恩恵を受ける側と、負担が増す側で明暗が分かれている。
  • 日本でも2/18から150日間の会期として進行している「特別国会」の会期終了が近づくにつれ、高市政権が成長戦略を強く打ち出してきている。政府は6/24、AI・半導体などの戦略17分野を巡り、2040年度までに官民で総額370兆円超を投資する計画をまとめた。また、高市首相は6/25、危機管理・成長投資などに関する「新たな投資枠」をつくり、27年度予算の概算要求で各省に要求上限を求めない方針を改めて表明。国と地方の基礎的財政収支について単年度で黒字を目指す指標から複数年度での管理に位置付けを変え、債務残高の国内総生産(GDP)比の安定的低下を財政目標の中核に位置付けるよう、予算編成の抜本的見直しを掲げ、政府が7月にもまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に反映する見通しだ。
  • 日銀の一部の委員から中立金利である2%程度を目指し、継続的な利上げが必要であるとの意見が示されている。インフレ加速を抑えたい日銀と日本経済成長へのエンジンをかけようとする政府の考え方の相違が出てきている。ドル円為替相場は1ドル161円台後半を中心にこう着状態が続いているものの、政府の財政拡大志向が目立つようになると円売り・日本国債売りに大きく傾く可能性がある。(笹木)

本日号は、日本酸素ホールディングス(4091)、ADEKA(4401)、ソシオネクスト(6526)、シャープ(6753)、ゲンティン・マレーシア(GENM)を取り上げた。

■主な企業決算の予定   

  • 629日(月):しまむら、ナガイレーベン、象印マホービン
  • 630日(火):アンドエスティHD、ピックルスホールディングス、高島屋、三陽商会、スター・マイカ・ホールディングス、J.フロントリテイリング、(米)ナイキ
  • 72日(木): ダイセキ、クスリのアオキホールディングス
  • 73日(金): マルマエ、アスクル、ハイデイ日高、アークス、霞ヶ関キャピタル、キユーソー流通システム、ワールド

 

主要イベントの予定

  • 629日(月)

・月例経済報告(6月)、08:50 百貨店・スーパー売上高・小売売上高(5月)、16:00 財務省による国債投資家懇談会

・ECBフォーラム(ポルトガル・シントラ、7月1日まで)・ラガルドECB総裁が開会の辞

・ユーロ圏マネーサプライ (5月)、 ユーロ圏景況感指数 (6月)、ユーロ圏消費者信頼感指数(6月)

 

  • 630日(火)

・財務省2年利付国債入札、ネイスが東証グロースに新規上場、14:00 損保協会長会見、19:00 外国為替平衡操作の実施状況(月次ベース、5月28日~6月26日)、08:30 失業率・ 有効求人倍率 (5月)、08:50 鉱工業生産(5月)、14:00 住宅着工件数・戸数(5月)

・米FHFA住宅価格指数(4月)、米主要20都市住宅価格指数(4月)、米求人件数(5月)、米消費者信頼感指数(6月)、独失業率(6月)、独CPI(6月)、英GDP (1Q、確報値)、中国製造業・非製造業PMI(6月)

 

  • 71日(水)

・08:50 日銀短観、09:30 S&Pグローバル日本製造業 PMI (6月)、14:00 消費者態度指数 (6月)

・ウォーシュFRB議長とラガルドECB総裁とベイリー英中銀総裁とマックレム加中銀総裁がECBフォーラムのパネル討論会に参加( ラガルドECB総裁がECBフォーラムで閉会の辞)、アイルランドが26年下期のEU議長国に就任、 「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」更新判断の期限

・米自動車販売(6月)、米ADP雇用統計 (6月)、米S&Pグローバル製造業PMI (6月、確報値)、米建設支出 (5月)、米ISM製造業景況指数(6月)、ユーロ圏S&Pグローバル製造業PMI(6月)、ユーロ圏CPI (6月)、中国RatingDog製造業PMI (6月)、ロシアGDP(1Q)

 

  • 72日(木)

・財務省10年利付国債入札、08:50 対外・対内証券投資(6月21-27日)、08:50 マネタリーベース月末残高(6月)

・米債券市場が短縮取引

・米新規失業保険申請件数(6月27日終了週)、米雇用統計(6月)、米耐久財受注 (5月)、米製造業受注 (5月)、ユーロ圏失業率(5月)

 

  • 73日(金)

・連合が2026年春闘第7回(最終)回答を集計、GPIFが2025年度の資産運用実績を公表、09:30 S&Pグローバル日本複合 PMI (6月)、14:00 日銀による需給ギャップ・潜在成長率および労働需給関連指標

・フランス国際経済会議(エクサンプロバンス、4日まで)・ラガルドECB総裁が講演、米株式・債券市場休場(独立記念日の振り替え)

・ユーロ圏サービス業・総合PMI (6月、確報値)、中国RatingDogサービス業・総合PMI(6月)

 

  • 74日(土)

・米建国250周年

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

マイクロン・テクノロジーは好決算

米メモリ大手マイクロン・テクノロジーMUが6/24、2026年3-5月決算を発表。AI(人工知能)関連の受注が伸び、売上高が前年同期比4倍超の414億USD、純利益が同15倍の282億USDへ拡大。米ビッグテックが巨額投資するAI向けデータセンターは高帯域メモリ(HBM)が無ければ計算能力を発揮できないため、メモリが単なるコモディティー部品から戦略物資と位置付けられつつある。

メロートラCEOは、短期記憶用のDRAMと長期記憶用のNAND型フラッシュメモリのそれぞれについて「27年以降も供給逼迫の状況が続くと予想する」と述べた。一方で、メモリ市況の動向は、DRAMが今年1月以降、NAND型フラッシュメモリが今年3月以降、それまでの急激な高騰から横ばいへとシフトしている。

【マイクロン・テクノロジーは好決算~半導体メモリ市況には上昇一服感あり】

■2026年の投資主体別売買動向

日本株の2026年における投資主体別売買動向を見ると、事業法人が自社株買いの安定的な買い手として最も継続的な買い越し主体となっていること、および信託銀行が年金基金の運用を反映して株価上昇局面でポートフォリオ・リバランス目的から継続的な売り越し主体となっていることに変化はみられない。

海外投資家は先物・現物の合計ベースで、5月第4週から6月第2週まで3週連続売り越しの後、6月第3週に買い越しに転じた。株価上昇局面での買い越し、下落・調整局面での売り越しといったモーメンタム重視の傾向がみられるほか、半導体・AI(人工知能)関連などを中心に流入していると推察される。逆張り傾向が強いとされる個人投資家も株価調整時の6月第2週に売り越しとなっていた。

2026年の主体別売買動向~海外投資家と個人投資家にやや変化あり】

■日経半導体株指数の構成銘柄

日経半導体株指数は東証上場の主要な半導体関連銘柄の値動きを表す株価指数。東証上場の半導体関連株から時価総額上位30銘柄を選定する。算出方法は時価総額加重平均方式(浮動株調整あり)であり、5/29終値ベースのウェート上位5銘柄は、キオクシアHD285Aが33.11%、東京エレクトロン8035が11.85%、アドバンテスト6857が8.74%、ルネサスエレクトロニクス6723が7.84%、ディスコ6146が6.58%である。米フィラデルフィア半導体株指数と比べた場合の特徴として、半導体製造装置や材料分野といった日本企業の強みを捉えやすい点が挙げられる。

NEXT FUNDS日経半導体指数連動型ETF(200A)上場インデックスファンド日経半導体株(213A)で採用されている。

【日経半導体株指数の構成銘柄~同指数連動ETF、低PBR構成銘柄に注目】

■銘柄ピックアップ

日本酸素ホールディングス(4091)    

5938  円(6/26終値)  

・1910年創立。2004年に太陽東洋酸素と合併し大陽日酸に商号変更後、2020年に持株会社体制へ移行。三菱ケミカルグループ4188が50%超の株式を保有。日本最大手の産業ガスメーカー。

・5/11発表の2026/3通期は、売上収益が前期比3.9%増の1兆3596億円、コア営業利益が同7.4%増の2030億円。地域別コア営業利益は、日本(売上比率30%)が15%増の541億円、米国(同27%)が12%減の529億円、欧州(同26%)が13%増の704億円、アジア・豪州(同15%)が31%増の197億円。

・2027/3通期会社計画は、売上収益が前期比1.5%増の1兆3800億円、コア営業利益が同2.4%増の2080億円、年間配当が同4円増配の66円。同社は6/19、半導体製造の複数の重要工程で不可欠なヘリウムガスの関連製品の出荷価格について現行と比べて平均30%以上の値上げを実施すると発表。中東での生産停止の影響とともに世界的な供給制約もあり、7月出荷分より価格を改定する。

ADEKA4401                                  

4287  6/26終値) 

 

・1917年に電解ソーダ製造を目的として旭電化工業を創立。化学品事業(樹脂添加製品、半導体材料製品、環境材料製品)、食品事業(マーガリン、ホイップクリーム)、ライフサイエンス事業を展開。

・5/14発表の2026/3通期は、売上高が前期比2.3%増の4165億円、営業利益が同1.5%増の416億円。主な事業別営業利益は化学品事業(売上比率52%)が6%減の263億円、食品(同20%)が1%減の43億円、ライフサイエンス(同27%)が26%増の98億円。化学品のうち環境材料製品が増益。

・2027/3通期会社計画は、売上高が前期比8.7%増の4530億円、営業利益が同12.5%増の468億円、年間配当が同8円増配の120円。化学品事業のうち半導体材料の前期は、売上高が6%増の360億円、営業利益が18%減の74億円。先行投資による固定費負担増が響き通期減益の中、最新世代のDRAM生産開始に対応した新製品出荷により高誘電材料が下半期から拡大基調に転じた。

ソシオネクスト(6526)    

2519.5  円(6/26終値)   

富士通6702パナソニックHD6752のSoC(システム・オン・チップ)事業を統合して2015年に事業を開始。最先端SoCの設計・開発・販売に特化したグローバルなファブレス半導体メーカー。

・4/28発表の2026/3通期は、売上高が前期比6.5%増の2008億円、営業利益が同50.6%減の123億円。製品売上が10%増の1618億円、NRE売上(量産前段階で顧客から一度限り受け取る売上)が6.6%減の383億円。4Q(1-3月期)は、売上高が前年同期比36%増、営業利益が19%増と拡大した。

・2027/3通期会社計画は、売上高が前期比7.1%増の2150億円、営業利益が同13.3%増の140億円、年間配当が同横ばいの50円。半導体のHBM(高帯域幅メモリ)の需要拡大に対し、同社は既製品ブロックを積み込んだ従来のチップレットとは異なり、設計段階からカスタマイズできる優位性を活かして、HBMとSoCを連携・融合させて顧客企業によるHBMの活用効率化に向けた需要を開拓。

シャープ(6753      

606.2 円(6/26終値)

・1912年に早川徳次が創業。2016年に台湾の鴻海精密工業の傘下入り。コンシューマー向けの「スマートライフ」、法人向けの「スマートワークプレイス」、「ディスプレイデバイス」の3事業を展開する。

・5/12発表の2026/3通期は、売上高が前期比12.4%減の1兆8928億円、営業利益が同77.6%増の485億円。主な事業別営業利益は、スマートライフ(売上比率31%)が30%増の284億円、スマートワークプレイス(同44%)が4%減の575億円、ディスプレイデバイスが▲182億円へ赤字幅縮小だった。

・2027/3通期会社計画は、売上高が前期比6.5%減の1兆7700億円、営業利益が同0.9%増の490億円、年間配当は未定(前期は無配)。スマートライフのコスト削減およびディスプレイデバイスの構造改革が進む。同社は6/24、鴻海精密工業とAIインフラやロボティクスなど成長産業で戦略的協業に合意。参入を表明しているAIサーバー事業で鴻海の製造・調達力は強い武器になると見込まれる。

ゲンティン・マレーシア(GENM) 

市場:マレーシア   1.87  MYR6/25終値)

・1980年設立。有力財閥のゲンティングループ傘下企業。マレーシア唯一の公認カジノを併設した統合リゾート(IR)を展開するほか、米ニューヨーク市、バハマ、イギリス、エジプトなどでIRを展開。

・5/21発表の2026/12期1Q(4-6月)は、売上高が前年同期比10.5%増の28.6億MYR、一時的要因の影響を除いた調整後EBITDAが同12.5%減の6.44億MYR。マレーシアにおける買収が増収に寄与した一方、米ニューヨークでライセンスを取得したカジノの開業準備費用が嵩んだことが響いて減益。

・マレーシア政府は「Visit Malaysia 2026」と称し、2026年をターゲット年として大規模国家キャンペーンを実施する。米ニューヨークのJFK国際空港近くで運営するスロットマシン特化施設「リゾーツ・ワールド」を拡張する提案が承認され、ライセンスを取得。今年4月、ニューヨーク市内で初めてテーブルゲームを導入したカジノとしてオープン。さらに、約55億ドルを投じて施設全体を拡張する計画だ。

 

■アセアン株式ウィークリーストラテジー

(6/29号:「スーパーエルニーニョ」発生のおそれ)

南米ペルー沖で海面水温が高い状態が続く「エルニーニョ現象」を巡り、非常に強い「スーパーエルニーニョ」が発生する確率が高まっている。エルニーニョ現象はペルー沖の太平洋の赤道域で、海面水温が平年より高い状態が続く自然現象である。米海洋大気局(NOAA)によれば、この海域の海水温が数ヵ月連続して平年より0.5度高くなった場合に、エルニーニョ現象が発生したと判断する。一般的に海面水温が平年より2度以上上回る場合をスーパーエルニーニョと呼ぶ。

タイやベトナム、インドではコメの減収が懸念される。インドは世界のコメ輸出の約4割を占めるため自国内の供給優先で輸出を制限した場合、国際相場に影響する可能性がある。インドネシアとマレーシアが世界生産の8割を占め、菓子や洗剤などに使われるパーム油への影響も指摘されている。

 

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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