【投資戦略ウィークリー 2026年6月15日号(2026年6月12日作成)】”日銀金融政策決定会合、米FOMC、スペースX”
■日銀金融政策決定会合、米FOMC、スペースX
- 6/16に日銀金融政策決定会合の結果公表と内田副総裁の記者会見が行われる。植田総裁が入院のため欠席となる異例の展開となるが、その分、事前に報道されている通り、政策金利の75%から1.0%への引き上げ、および日銀による国債の買い入れ減額を2027年4月以降に停止する方針がそのまま決定される可能性が高いとみられる。国債買い入れ減額停止は金利急騰リスクに配慮する趣旨と考えられる。当面は過去に日銀が購入した国債の償還額が新規購入額を上回る状態が続くことから、金融正常化の方向性に変化はないものの、短期的に銀行株に逆風となる一方、不動産株やJ-REIT(上場不動産投資信託)に追い風になると考えられる。分配金利回りに着目したJ-REITへの投資は、投資口価格の水準からも好機と見る余地がある。
- 日本時間6/18の早朝には米FOMC(連邦公開市場委員会)の声明発表とウォーシュ新FRB(連邦準備理事会)議長の記者会見が行われる。今回は政策変更なしと予想されるが、金融規制緩和を強化する方針が示されるかどうかが注目点だ。トランプ米大統領の方針に従い、大手銀行に対する自己資本比率規制の緩和、中小・地域金融機関の負担軽減、および暗号資産やステーブルコインに対する前向きな制度整備などを掲げる可能性がある。これらにより、ウォーシュ氏のスタンスは銀行株やフィンテック関連銘柄への追い風になると考えられる。また、「ハト派かタカ派か」という観点からはFRBのバランスシート縮小に対してどのような方針を示すのかも注目される。
- 6/12に米ナスダック市場へ新規上場するスペースX(SPCX)は、IPO向け提出書類「S-1」によると2025年12月期の通期業績は、売上高が前年比33%増の186億ドル、営業損失が9億ドル、コア事業の業績を示す調整後EBITDAが65.8億ドルの黒字、設備投資が前年比約2倍の207億ドル。衛星インターネット「Starlink」を成長の原動力とする一方、AI(人工知能)関連投資や、再使用型ロケット・宇宙船の総称である「Starship」などへの巨額支出が損失を押し上げている。公開価格135ドルに基づく上場時価総額は約1兆7700億ドルに達し、6/11終値ベース時価総額ではエヌビディア(NVDA)、アップル(AAPL)、マイクロソフト(MSFT)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、アルファベット(GOOGL)に続き、ブロードコム(AVGO)に匹敵する水準だ。巨額赤字企業の時価総額が巨額黒字の大型ハイテク企業と同水準で評価されてよいのかという疑念は拭えない。さらに、既存株主の株式売却制限「ロックアップ」の解除手法について四半期決算時や70-135日後に段階的な売却を認める異例の条件が採用されていることに伴う売り圧力もある。米主要株価指数への早期採用による機関投資家の買いが他の銘柄の売却につながりやすい点も要注意だろう。(笹木)
本日号は、日本電気硝子(5214)、住友金属鉱山(5713)、小糸製作所(7276)、トライアルホールディングス(141A)、マキシス(MAXIS)を取り上げた。


■主な企業決算の予定
- 6月15日(月): プロレド・パートナーズ、スターツプロシード投資法人、アセンテック、パーク24、ギフトホールディングス、TOKYO BASE、星野リゾート・リート投資法人、積水ハウス・リート投資法人、Hamee
- 6月16日(火):
- 6月17日(水): いちごオフィスリート投資法人、投資法人みらい、NTT都市開発リート投資法人、KDX不動産投資法人、いちごオフィスリート投資法人、トーセイ・リート投資法人、(米)ジェイビル
- 6月18日(木): (米)クローガー、アクセンチュア
- 6月19日(金): コーセル
■主要イベントの予定
- 6月15日(月):
・日銀金融政策決定会合初日、13:30 第3次産業活動指数(4月)
・ラガルドECB総裁が講演(フランクフルト)、G7首脳会議(仏エビアン、17日まで)、EU外相理事会(ルクセンブルク)
・米ニューヨーク連銀製造業景況指数(6月)、米鉱工業生産(5月)、米NAHB住宅市場指数(6月)、ユーロ圏鉱工業生産(4月)、中国経済全体のファイナンス規模・新規融資・マネーサプライ(5月)
- 6月16日(火):
・日銀金融政策決定会合・終了後に結果を公表(15:30 内田真一副総裁会見)、GOが東証グロースに新規上場
・米FOMC(17日まで)
・豪中銀が政策金利発表
・米輸入物価指数(5月)、米住宅着工件数(5月)、独ZEW期待指数(6月)、中国小売売上高・工業生産・都市部固定資産投資(5月)
- 6月17日(水):
・JNTOが5月の訪日外客数発表、08:50 貿易収支・輸出・輸入(5月)、08:50コア機械受注(4月)、10:00 トヨタと日本郵船が定時株主総会、13:00日産の新型車発表会、14:00 全国地方銀行協会の会長会見
・米FOMC最終日・声明発表とウォーシュFRB議長記者会見、スウェーデン中銀とブラジル中銀が政策金利発表
・米小売売上高(5月)、米中古住宅販売成約指数(5月)、米企業在庫(4月)、ユーロ圏CPI(5月)、英CPI(5月)、露GDP(1Q)
- 6月18日(木)
・日銀が国債買い入れオペ、08:50 対外・対内証券投資 (6月7-13日)、10:00 ニデックとデンソーと三菱自動車が定時株主総会、14:00 首都圏新築分譲マンション(5月)、15:15 全国銀行協会の会長会見、15:30 コスモエネルギーホールディングスが中期経営計画発表
・英中銀とスイス中銀とノルウェー中銀が政策金利発表、EU首脳会議(ブリュッセル、19日まで)
・米新規失業保険申請件数(6月13日終了週)、米景気先行指標総合指数(5月)、対米証券投資(4月)、英ILO失業率 (2-4月)、ニュージーランドGDP(1Q)
- 6月19日(金):
・08:30 全国CPI(5月)、08:50日銀金融政策決定会合議事要旨(4月27・28日分)、10:00 川崎汽船が定時株主総会、15:30 日本取引所グループの山道CEO定例会見
・米株式・債券市場休場(奴隷解放記念日「ジューンティーンス」)、中国・香港休場(端午節、21日まで)、ロシア中銀が政策金利発表
- 6月21日(日):
・コロンビア大統領選(第2回投票)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■フェイスブック新規上場後の株価
スペースX(SPCX)のIPO(新規株式公開)への市場の期待が高まっている。2012年5月にフェイスブック(現在のメタ・プラットフォームズ)が新規上場した時も、成長株への強い投資意欲を背景として市場の期待が極めて高く、機関投資家からの需要が5倍超に達したほか、全体としても大幅に超過申込みとなっていた。これによりIPO株数および公開価格レンジも当初計画から引き上げられた。
新規上場日に取引所のシステム障害が発生したほか、IPOで大量の株式が発行されたこと、および公開後数カ月で早期投資家や社員などのロックアップ期間が解除されたこともあり、株式売却が増加した。2012年8月にはIPO価格の半値以下まで下落した。その後IPO価格水準を回復したのは2013年8月だった。
【フェイスブック新規上場後の株価~高めの募集価格、早期ロックアップ解除】

■日銀国債保有残高とドル円相場
日銀は6/15-16の金融政策決定会合で、2027年4月以降の国債買い入れの減額停止を議論する見通しだ。日銀は2013年春に始めた異次元緩和で長期国債の大量購入を進め、2023年11月のピーク時にその残高が597兆円に達した。2023年4月に就任した植田総裁は緩和路線の転換に動き、2024年8月から国債買い入れの減額を始め、当初は減額幅を四半期ごとに4000億円ずつとしていたが、2026年4月からは四半期ごとの減額幅を半分の2000億円としていた。
日銀が国債買い入れの減額を始めるまでドル円相場は円安・ドル高で推移。さらに、減額幅の縮小を決めた2025年6月以降、円安・ドル高で推移している。国債買い入れが停止されれば、利上げによる円高・ドル安効果は限定的だろう。
【日銀国債保有残高とドル円相場~残高増減とドル円相場の相関に変化】

■低PER・高ウェート銘柄と指数
日本経済新聞によれば、採用銘柄のウェートを考慮した加重平均の日経平均株価(終値)の予想PER(株価収益率)は、5/14にそれまでの20倍台から19倍台へ低下し、さらに5/18に17倍台へ低下。その後も17倍台の水準を中心に推移している。日経平均株価(終値)は5/14-20まで2854円下落後、6/3まで8602円上昇した。一般的には株価上昇時に予想PERが上昇し、下落時に予想PERが下落する中、5/21-6/3の間、日経平均株価の予想PERは18.25までの上昇にとどまった。
日経平均採用銘柄の中で、ソフトバンクグループ(9984)が5/13、キオクシアホールディングス(285A)が5/15にそれぞれ大引け後に決算発表を行い、市場予想EPS(1株当たり利益)が大幅上方修正されたことが主な要因として挙げられる。
【低PER・高ウェート銘柄と指数~決算発表後、日経平均株価予想PERが低下】

■銘柄ピックアップ
日本電気硝子(5214)
6066 円(6/12終値)
・1949年に日本電気(6701)から独立して創立。主に「電子・情報」(薄型パネルディスプレイ用ガラスなど)、「機能材料」(特殊ガラス製品およびガラス製造機械類の製造・販売)の2製品部門を展開。
・4/30発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比0.3%増の751億円、営業利益が同17.9%減の64.8億円。製品部門別売上高は、電子・情報が6%増の430億円、機能材料が6%減の320億円。電子・情報部門のディスプレイ事業は需要堅調の一方、費用増が全体の利益に響いた。
・通期会社計画は、売上高が前期比2.8%増の3200億円、営業利益が同3.3%減の330億円、年間配当が同10円増配の160円。同社は、次世代半導体の大型化・高密度化に対応する半導体パッケージ用無機コア基板や半導体用サポートガラスを展開。また、米アップル(AAPL)が年内に折り畳みスマホを発売するとの観測が広がる中、同社は従来の10分の1の薄さの曲がるガラスを開発に成功。
住友金属鉱山(5713)
8638 円(6/12終値)
・1590年に住友財閥業祖である蘇我理右衛門が創業した非鉄金属企業。資源開発などの「資源」、金属精錬・加工の「製錬」、電池材料や機能性材料などを含む「材料」の3事業セグメントを営む。
・5/11発表の2026/3通期は、売上高が前期比9.3%増の1兆7415億円、税引前利益が同8.1倍の2556億円。セグメント利益は、資源(売上比率16%)が65%増の1678億円、製錬(同70%)が前期の▲71億円から915億円へ黒字転換、材料(同14%)が前期の▲542億円から152億円へ黒字転換。
・2027/3通期会社計画は、売上高が前期比8.1%増の1兆8830億円、税引前利益が同10.4%減の2290億円、年間配当が同21円減配の207円。同社は米国アリゾナ州モレンシー銅鉱山の権益を保有。トランプ米大統領は銅地金への関税発動を示唆。同社はパナソニックHD(6752)に対しリチウムイオン電池の正極材原料を供給。データセンター向け蓄電システム需要拡大の恩恵が見込まれる。
小糸製作所(7276)
2718 円(6/12終値)

・1915年に東京・京橋で小糸源六郎商店を創業。トヨタ自動車(7203)が筆頭株主。自動車照明器、航空機部品、鉄道車両部品、各種電気機器の製造・販売および関連する物流を主な業務とする。
・5/13発表の2026/3通期は、売上高が前期比3.4%増の9476億円、営業利益が同14.6%増の514億円。LiDAR事業や中国事業における減損損失の計上により当期利益は64.2%減の165億円。米国事業(売上比率35%)がトランプ関税の影響により営業利益が33%減の一方、他地域は営業増益。
・2027/3通期会社計画は、売上高が前期比1.5%減の9330億円、営業利益が同16.6%増の600億円、年間配当が同2円増配の58円。同社は自動運転LiDAR事業に関し乗用車用車載向け開発を凍結し、ロボタク・バス・トラック・農機・鉄道等の国内インフラ向けへ経営資源を集中する方針を打ち出した。提携している自動運転開発のティアフォーが6/9、東証グロース市場に上場申請書類を提出。
トライアルホールディングス(141A)
2789 円(6/12終値)

・1974年に福岡市で家電製品販売「あさひ屋」を創業。「TRIAL」のディスカウントストアを全国展開する「流通小売事業」とセルフレジ付きショッピングカート「Skip Cart」ほかの「リテールAI事業」を展開。
・5/14発表の2026/6期9M(7-3月)は、売上高が前年同期比67.3%増の1兆36億円、EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)が同2.2倍の521億円。西友の完全子会社化が業績拡大に貢献。既存店売上高成長率が+1.5%、粗利益率が3.6ポイント上昇、3月末店舗数が前期末比263店増の615店。
・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比67.0%増の1兆3425億円(従来計画1兆3225億円)、EBITDAを同93.5%増の676億円(同663億円)とした。年間配当は横ばいの16円と従来計画を据え置いた。株価は3月の既存店売上高の伸び鈍化および会社業績予想が市場予想を下回ったことを受けて大幅に下落。既存店売上高は4月が2.8%増、5月が7.2%増と伸びが加速。見直し余地がある。
マキシス(MAXIS)
市場:マレーシア 3.24 MYR(6/11終値)

・1995年設立のマレーシアの移動通信サービス会社。経営権を握る筆頭株主はマレーシア人インド系実業家アナンダ・クリシュナン氏の傘下企業。2026年3月末の有料登録ユーザー数が1377万人。
・5/15発表の2026/12期1Q(1-3月)は、通信サービス売上高が前年同期比3.3%増の22.42億MYR、純利益が同12.4%増の4.17億MYR。登録ユーザー数が4%増と拡大したことが増収に寄与。コスト管理強化で売上高総費用率の悪化が0.2ポイントにとどまったほか、金融費用減が増益に貢献。
・通期会社計画は、通信サービス増収率が前期比1桁台前半、EBITDA伸び率が同1桁台前半と、従来計画を据え置いた。国内通信業界シェアが2位の26%と、セルコムデジの47%との差が大きい中、同社は消費者向けと企業向けの両方でモバイルと光ファイバーを統合した「コンバージド・サービス」を提供することで付加価値を高めるほか、大企業向け成長を重視する戦略を強化している。
■アセアン株式ウィークリーストラテジー
(6/15号:日本にとって重要性が高まるマレーシア)

マレーシアのアンワル首相が来日し、首相官邸で高市首相と会談した。共同声明では、マレーシアが日本に液化天然ガス(LNG)やナフサ(粗製ガソリン)といった石油・化学製品や医療用手袋などを最大限供給すると合意。日本はLNGの約15%をマレーシアから輸入しており、オーストラリアに次ぐ第2位の規模にある。共同声明では、エネルギー安全保障で協力するほか、重要鉱物のサプライチェーン(供給網)強化に向けても連携するとした。また、東京電力グループと中部電力の合弁企業であるJERAは6/10、マレーシア国営石油会社のペトロナスからLNGを年間最大200万トン輸入する契約を結んだと発表。東京瓦斯(9531)も6/8、マレーシアでの洋上LNG受け入れ基地の開発に向けて現地企業などと浮体式LNG貯蔵再ガス設備(FSRU)の共同開発契約を結んだと発表した。
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。
