【投資戦略ウィークリー 2026年4月13日号(2026年4月10日作成)】”不安心理の正常化局面、原油価格高騰で見直されるビジネス”
■不安心理の正常化局面、原油価格高騰で見直されるビジネス
- トランプ米大統領は日本時間4/8の朝、自らが設定したイランとの交渉期限が約1時間半後に迫る中、米国・イスラエルとイランの2週間の攻撃停止で合意した。期限ギリギリまで拳を振り上げて相手を心理的に追い込み、強い口調で威嚇するのは、ありえない発言や狂気のふりを繰り返すことで、相手に譲歩・妥協案を用意させる「マッドマン・セオリー」の実践だったと思われる。元々はニクソン元大統領がソ連との外交交渉で使っていた交渉術だ。そして、「TACO」(トランプはいつも尻込みして退く)と揶揄されながらも、実際に交渉するときは現実的な話をするのもトランプ氏なりの交渉術なのだろう。
- 日経平均株価は4/8、戻りの節目と見られていた5万4000円を突破し、4/10に一時5万7000円に達した。米国がイランを攻撃した2/28の前営業日の終値(2/27)が5万8850円、週明け初日(3/2)で、まだ楽観論が市場の大勢だった日の終値が5万8057円、2日目(3/3)になってようやく不安心理が台頭してきた日の終値が5万6279円だった。実際にはホルムズ海峡の事実上の封鎖が続き、停戦合意の内容が履行されていない。それでも、交渉が続く間は中東の地政学リスクを相場材料の脇役とみなし、日本経済の動向に伴う金利や為替の見通し、および2026年3月決算発表を控えた企業業績の見通しを中心に投資ができる環境に移行しつつあるように見受けられる。
- イラン問題に関する不安心理が株式市場において縮小しつつあるとしても、実際にホルムズ海峡の事実上の封鎖が続く限り、原油価格は高止まりし、エネルギーやナフサ(粗製ガソリン)、天然ガスから作られる尿素などの供給不足が続くだろう。化学製品や肥料価格の上昇によるコストの増加によって、企業業績が影響を受けるだろう。東レ(3402)のように、繊維事業で原料コストの変動を迅速に製品価格に反映する「サーチャージ制」を導入する動きも広がる気配だ。
- 一方で、ガソリン価格の高騰によって、ランニングコストを抑えられる電気自動車(EV)への関心が高まる動きも広がり始めている。EV向けのリチウムイオン電池の需要減の影響を受けていた企業の中には、既に生成AI(人工知能)の普及に伴うデータセンターの電源向けの需要増を取り込む動きも見られていたが、EV需要の復活が追い風となる可能性がある。
- また、エネルギー価格の高騰は再生可能エネルギーに関連した事業の採算性を高める効果があると考えられる。2022年12月の法改正により、蓄電池単独で電力会社の送配電網(系統)に直接接続することが可能となったことを受けて、大規模な蓄電設備である「系統用電池」に関する事業も見直される余地がある。(笹木)
本日号は、グンゼ(3002)、星野リゾート・リート投資法人(3287)、古野電気(6814) 、テクセンドフォトマスク(429A) 、インドフード・サクセス・マクムール(INDF)を取り上げた。


■主な企業決算の予定
- 4月13日(月): 久光製薬、リテールパートナーズ、ライク、メディアドゥ、ブックオフグループHD、セントラル警備保障、コスモス薬品、コーナン商事、カーブスHD、アステナHD、アークス、U-NEXT HD、PR Times、IDOM、GLP投資法人、E・JHD、(米)ファスナル、ゴールドマン・サックス・グループ
- 4月14日(火):北の達人コーポレーション、乃村工藝社、日本国土開発、東宝、大庄、松竹、松屋、三陽商会、高島屋、ラクト・ジャパン、ユニシアHD、モリト、マネーフォワード、マニー、ボードルア、ベクトル、ベイカレント、フィル・カンパニー、ヒト・コミュニケーションズ・、ピックルスHD、バロックジャパンリミテッド、パソナグループ、トランザクション、ドトール・日レスHD、テラスカイ、ディップ、セラク、スタジオアリス、サーバーワークス、クリエイト・レストランツHD、オープングループ、エスプール、エコス、エーアイテイー、いちご、イズミ、イートアンドHD、アークランズ、SHIFT、SFPHD、S FOODS、Oneリート投資法人、J.フロントリテイリング、Gunosy、FPパートナー、DCMHD、(米)シティグループ、ウェルズ・ファーゴ、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ブラックロック
- 4月15日(水):福岡リート投資法人、ヨシムラ・フードHD、日置電機、(米)モルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカ、ASMLホールディング
- 4月16日(木): 大和ハウスリート投資法人、三井不動産アコモデーションファンド投資法人、三菱地所物流リート投資法人、ヒューリックリート投資法人、(米)ネットフリックス、USバンコープ、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン、チャールズ・シュワブ、ペプシコ、アボットラボラトリーズ
- 4月17日(金):野村不動産マスターファンド投資法人、セントラル・リート投資法人
■主要イベントの予定
- 4月13日(月):
・08:50 マネーストックM2・M3(3月)、15:15日銀の植田総裁が信託大会であいさつ
・国際通貨基金(IMF)・世界銀行、春季会合(ワシントン、18日まで)、OPEC月報
・米中古住宅販売件数 (3月)、中国経済全体のファイナンス規模、新規融資、マネーサプライ(2月、9-14日に発表)
- 4月14日(火):
・財務省20年利付国債入札、10:00日産が長期ビジョン発表会、13:30鉱工業生産・設備稼働率(2月)
・米シカゴ連銀総裁が「Semafor World Economy 2026」で講演、英中銀総裁が講演
・米PPI(3月)、中国貿易収支(3月)
- 4月15日(水):
・日銀の国債買い入れオペ、08:50 コア機械受注 (2月)、14:30日証協会長会見16:15訪日外客数(3月)
・米地区連銀経済報告(ベージュブック)公表、米ボウマンFRB副議長(銀行監督担当)と英中銀総裁がIIFフォーラムで講演、 英中銀総裁がIMFパネルで講演
・米輸入物価指数(3月)、 米ニューヨーク連銀製造業景況指数(4月)、米NAHB住宅市場指数(4月)、対米証券投資(2月)、ユーロ圏鉱工業生産(2月)
- 4月16日(木)
・08:50対外対内証券投資 (4月5-11日)、10:00ブルームバーグ日本経済調査(4月)
・米ニューヨーク連銀総裁が基調講演
・米新規失業保険申請件数 (4月11日終了週)、米鉱工業生産 (3月)、ユーロ圏CPI (3月)、英鉱工業生産(2月)、中国GDP (1Q)、中国工業生産・小売売上高・都市部固定資産投資 (3月)
- 4月18日(土):
・FRB高官のブラックアウト期間開始(30日まで)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■ガソリン価格と期待インフレ率
米国ではイラン攻撃後、ガソリン価格が急騰している。ニューヨーク(NYMEX)ガソリン先物価格は1カ月で7割近く上昇した。車社会の米国ではガソリン高は有権者の不満に直結する。11月に中間選挙を控えるトランプ米大統領は、インフレ加速によって議会で与党・共和党が多数派を失うことは避けたいところだ。
4/10には3月の米CPI(消費者物価指数)に加え、ミシガン大学による4月の消費者期待インフレ率・速報値(1年先、5年先)が発表される。1年先期待インフレ率は、2月まで減速していたが、3月に前月比0.4ポイント上昇の3.8%となった。4月速報値の市場予想は4.5%への加速である。市場予想より上振れすれば米FRB(連邦準備理事会)の利下げ期待が後退する可能性がある。
【ガソリン価格と期待インフレ率~期待インフレ率動向は米中間選挙に影響】

■人民元国際化と元高・中国債券高
金融市場における米ドル離れと米中の金利差拡大を背景に、主に香港で発行されるオフショア人民元建て債券である「点心債」の発行額が増加。米中の金利差が2%に達し、低コストの調達手段として点心債が人気化していることに加え、中国政府が元高を容認するとの見方も追い風となっている。イランがホルムズ海峡を事実上封鎖し、円やユーロが対米ドルで弱含んで推移する一方、中国がイランから人民元建てで原油を購入している不透明感がある中でも、人民元の対米ドル相場は堅調に推移している。
中央銀行の中国人民銀行は1月から中央銀行デジタル通貨(CBDC)の「デジタル人民元」に利息を付与する制度を開始。越境決済での利用増によって非ドル決済網の拡大を狙っているとみられる。
【人民元国際化と元高・中国債券高~米ドルに頼らない越境決済での利用増】

■排出量取引市場が本格稼働へ
排出量取引制度は、政府が企業ごとに温室効果ガスの排出上限枠を定め、枠を超えて排出した企業と、削減して枠が余った企業間で取引する仕組みである。日本は2026年4月から本格稼働を予定しており、直近3年度の平均排出量が10万トン以上の事業者を対象として参加が義務化される。「キャップ&トレード」方式を採用し、企業に排出枠を割り当てて上限を「キャップ」、余剰分または不足分の売買を「トレード」と呼ぶ。
排出削減コストが低い企業は、削減した枠を売却して収益化するメリットを享受できる。鉄鋼、セメント、化学、紙・パルプなど既存の大規模排出事業者で、早期削減に取り組んで削減目標を達成した企業、再生可能エネルギー関連産業などへの恩恵が見込まれる。
【排出量取引市場が本格稼働へ~2026年4月より排出量取引を義務化】

■銘柄ピックアップ
グンゼ(3002)
3945 円(4/10終値)

・1896年設立。衣料品・繊維素材のアパレル事業のほか、機能資材の機能ソリューション事業、医療材料のメディカル事業、不動産・スポーツクラブ運営のライフクリエイト事業を主な事業とする。
・2/5発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比3.0%減の998億円、営業利益が同11.5%減の56.4億円。内部調整前の主な事業別営業利益は、アパレル(売上比率46%)が30%減の9億円、機能ソリューション(同36%)が2%増の52億円、メディカル(同10%)が16%減の14億円。
・通期会社計画を下方修正。売上高を前期比3.0%減の1330億円(1400億円)、営業利益を同19.2%減の64億円(85億円)とした。特別配当を含む年間配当(株式分割の影響考慮後)は同21円増配の216円。同社はDOE(株主資本配当率)4%以上を目安とし、連結ROE(株主資本利益率)が8%以上となるまで還元性向100%超となる株主還元(特別配当・自社株買い)を実施する方針だ。
星野リゾート・リート投資法人(3287)
257700 円 (4/10終値)

・2013年設立。ホテル・旅館および付帯施設に対する投資を行うホテル特化型のREIT。星野リゾートグループの「星のや」、「星野リゾート 界」、「星野リゾート リゾナーレ」の3ブランドに主に投資する。
・12/16発表の2025/10期(5-10月)は、営業収益が前期(2025/4期)比13.9%増の86.9億円、営業利益が同25.8%増の43.2億円。1口当たり分配金(利益超過分配金を含まない)が同1462円増配の6077円。大阪・関西万博関連の需要拡大を背景に関西エリアのホテル業績が大きく伸長した。
・2026/4期(11-4月)会社計画は、営業収益が前期(2025/10期)比5.4%増の91.6億円、営業利益が同8.0%増の46.7億円、1口当たり分配金が同423円増配の6500円。4/9終値で、2026/10期(5-10月)を含む会社予想年分配金利回りが5.09%、NAV(純資産)倍率が0.85倍。2026/10期の会社予想1口当たり分配金が6660円と、分配金の成長を原動力とした予想分配金利回りの上昇が見込まれる。
古野電気(6814)
7720 円(4/10終値)
・1938年に古野清孝が長崎県南高来郡に古野電気商会を創業し、船舶電気工事業を開始。超音波・電磁波を中心としたセンサー技術を基に舶用電子機器と産業用電子機器の製造販売を行う。
・4/9発表の2026/2通期は、売上高が前期比10.8%増の1406億円、営業利益が同23.3%増の162億円。売上比率86%を占める舶用事業は、売上高が12%増、営業利益が26%増の167億円。商船向け市場の代替燃料船需要による造船会社の高い手持工事量を背景に新造船向けが堅調に推移。
・2027/2通期会社計画は、売上高が前期比5.6%増の1485億円、営業利益が同4.6%増の170億円、年間配当は同横ばいの160円(前期分を従来計画から10円増配)。温室効果ガス排出量削減を受けた代替燃料船需要に伴う新造船市場の堅調な推移に加え、保守サービスについてもデジタル技術を活用したリモート管理による高品質なサービスに向けた機器の換装需要増も見込まれる。
テクセンドフォトマスク(429A)
3250 円 (4/10終値)

・2021年12月にTOPPANホールディングス(7911)の半導体フォトマスク事業およびそれに付随・関連する事業の承継会社として設立。2022年4月に投資ファンドのインテグラルが株式の49.9%を取得。
・2/12発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上収益が前年同期比7.7%増の962億円、営業利益が同9.2%減の199億円。先端品・基幹品ともに需要が堅調に推移する中、先端微細加工技術とグローバル生産ネットワークの強みが増収に貢献。利益面では、減価償却費増や上場費用等が響いた。
・通期会社計画は、売上収益が前期比6.2%増の1252億円、営業利益が同9.6%減の255億円、年間配当が54.39円(前期は無配)。同社は半導体製造の露光工程に使用されるガラス基板のフォトマスクを製造・販売し、外販フォトマスク市場で世界シェア首位。フォトマスク市場の外販比率は拡大傾向にあり、世界8拠点のグローバル生産ネットワークの強みを活かす余地が大きいと見込まれる。
インドフード・サクセス・マクムール(INDF)
市場:インドネシア 6600 IDR (4/9終値)

・インドネシア財閥サリムグループ企業で、1990年創業。主力の包括的な消費者向けブランド商品を扱うCBPのほか、小麦粉を生産・販売するBogasari、アグリビジネス、物流の4つの戦略的事業を行う。
・3/30発表の2025/12通期は、売上高が前期比6.7%増の123.4兆IDR、営業利益が同6.4%増の24.05兆IDR、外貨建て資金調達関連の未実現損失など非経常的要因を除く調整後コア純利益が同1.0%増の11.4兆IDR。小麦製品の利益率改善とアグリビジネス拡大、販管費率の低下が寄与した。
・ホルムズ海峡の混乱を受けて原油や肥料価格が高騰し、小麦の輸送や生産コストが膨らむとの思惑が広がっていることから、即席麺「インドミー」やBogasari事業の小麦製品に対して利益率悪化につながる懸念がある。一方で、トランプ米政権によるバイオ燃料の推進策を受けて大豆価格が高騰していることは、粗パーム油への代替需要からアグリビジネス拡大への追い風になると見込まれる。
■アセアン株式ウィークリーストラテジー
(4/13号:インドネシアのコンビニエンスストア市場)

インドネシアのコンビニエンスストア市場では、スンブル・アルファリア・トリジャヤ社が「アルファマート」を中心に、日本の「ローソン」、および生鮮食品を扱う「アルファミディ」といった複数のコンビニを展開して成長を加速している。インドネシア全土で展開する総店舗数は約2万4000に上り、コンビニ首位「セブンイレブン」の日本国内の店舗数(2万2000弱)を上回る。成長をけん引するのは、実店舗を活用したオンライン販売であり、全国の店舗網を活用した「1時間宅配」およびアプリで購入できる商品の種類の豊富さが人気となっている。同社は、「インドマレット」を展開するインドマルコ・プリスマタマとインドネシアのコンビニ首位を争ってきた中、会社全体売上高および1店舗当たりの売上高ともにここ数年で逆転した。また、ローソンを傘下に擁する三菱商事と2011年に資本業務提携している。
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。
