【投資戦略ウィークリー 2026年2月日号(2026年2月20日作成)】”海外投資家の買い越し加速、日米合意に関する了解覚書”
■海外投資家の買い越し加速、日米合意に関する了解覚書
- 海外投資家の日本株買いが加速している。日本取引所グループが2/19に発表した投資主体別売買動向によると、海外投資家は2月第2週に日本株を1兆7383億円買い越した。これは日銀が量的・質的金融緩和の拡充に踏み切った2014年11月第1週以来の規模である。衆院選での自民党大勝を受けて、高市政権の基盤強化に伴う政策推進期待が膨らんだとみられる。
- 政権運営の安定性や強さへの期待は主に債券相場に表れている。市場関係者の多くは、高市政権が「責任ある積極財政」を掲げて財政支出拡大を積極化すれば長期金利が上昇して債券は売られるのではないかと見ていたようだ。ところが、政権の基盤が安定すれば人気取りのために過度な財政の「ばら撒き」は必要ないこと、およびベッセント米財務長官のように日本国債の売りが米国債の売りに連鎖することを危惧するトランプ米政権の意向から「責任ある財政」の重視にシフトするという見方に市場が傾きつつある。日本公認会計士協会も生命保険会社の「責任準備金対応債券」について、一定の条件を満たした場合は減損処理の適用対象としない方針を打ち出したこともあり、特に超長期国債への買いが活発化している。
- 投資主体別売買動向では、海外投資家の買い越しと対照的に、2月以降、個人投資家の売り越しが目立つ。また、主に年金とみられる信託銀行勘定が年初から売り越しが続く一方で、自社株買い活発化を受けて事業法人は一貫して買い越し基調である。2028年夏の参院選まで大きな政局がなく、衆参両院でそれぞれ3分の2以上の賛成が必要な憲法改正発議に向けて落ち着いた政権運営が見込まれること、および中間選挙に向けて支持率が上がらないトランプ米政権や「エプスタイン問題」に揺れる英スターマー政権と比べると政治の安定性で日本が相対的に有利であること等から、成長戦略の株高期待が崩れない限り海外資金を呼び込みやすい状況が整っていそうだ。
- 日米関税合意に基づく5500億ドルの対米投融資は、第1弾のガス火力発電、原油輸出施設整備、人工ダイヤモンド製造設備の3件(合計360億ドル)に続き、第2弾案件として次世代型原発の建設が有力視されている。日米両政府が昨年9月に署名した「日米合意に関する了解覚書」には「日本は2029年1月19日までに、半導体、医薬品、金属、重要鉱物、造船、パイプラインを含むエネルギー、AI(人工知能)・量子コンピューティングなどの分野で5500億ドルを米国に投資する」とある。医薬品では開発製造受託(CDMO)を展開する企業が有望だろう。造船では2/17に第1回日米造船作業部会が米首都ワシントンで開催され、両国の建造能力拡大などについて意見交換が行われた。あらかじめターゲットを決めた先回りも要検討だろう。(笹木)
本日号は、セントラル・リート投資法人(3488)、ニッポン高度紙工業(3891) 、大塚ホールディングス(4578)、ブリヂストン(5108) 、タイ石油開発公社(PTTEP) を取り上げた。


■主な企業決算の予定
- 2月23日(月):(米) ダイヤモンドバック・エナジー
- 2月24日(火): (米)メルカドリブレ、ワークデイ、アクソン・エンタープライズ、コスター・グループ、キューリグ・ドクターペッパー、ホーム・デポ、コンステレーション・エナジー
- 2月25日(水): ジャパン・ホテル・リート投資法人、(米)エヌビディア、フェロビアル、シノプシス、セールスフォース、ロウズ
- 2月26日(木): インヴィンシブル投資法人、(米)インテュイット、ゼットスケーラー、オートデスク、ワーナーブラザース・ディスカバリー
- 2月27日(金): ラクーンホールディングス、パーク24
■主要イベントの予定
- 2月23日(月):
・中国本土市場・春節(旧正月)連休で休場 (23日まで、24日に取引再開)、米ウォラーFRB理事、全米企業エコノミスト協会(NABE)の会議で基調講演、ラガルドECB総裁、全米企業エコノミスト協会(NABE)の会議で受賞&講演(ワシントン)、EU外相理事会(ブリュッセル)
・米製造業受注(12月)、米耐久財受注(12月)、独IFO企業景況感指数(2月)
- 2月24日(火):
・イノバセルが東証グロースに新規上場、15:30 経団連会長会見
・トランプ米大統領の一般教書演説、米シカゴ連銀総裁と米クックFRB理事が全米企業エコノミスト協会(NABE)の会議で講演、米ボストン連銀総裁・米アトランタ連銀総裁・米ウォラーFRB理事・米ボストン連銀総裁とリッチモンド連銀総裁が講演・あいさつ・パネル討論会への参加など、中国1年・5年物ローンプライムレート(LPR)、ロシアのウクライナ侵攻から4年
・米主要20都市住宅価格指数(12月)、米FHFA住宅価格指数(12月)、米卸売在庫(12月)、米消費者信頼感指数(2月)、欧州新車販売台数 (1月)
- 2月25日(水):
・アサヒビール事業方針説明会、月例経済報告(2月)、08:50 企業向けサービス価格指数 前年比 (1月)、14:00 日銀の基調的なインフレ率を捕捉するための指標、14:30 全国百貨店売上高・東京地区百貨店売上高(1月)、15:30日本取引所グループの山道CEO定例会見
・米ボストン連銀総裁が講演
・ユーロ圏CPI (1月)、独GDP (4Q)
- 2月26日(木)
・日銀の国債買い入れオペ、10:30高田日銀審議委員が京都府金融経済懇談会で講演(14:00記者会見)、14:00 景気先行CI指数 ・一致指数(12月)、15:00工作機械受注(1月)、15:00国際協力銀行総裁の定例会見
・韓国中銀が政策金利発表
・米新規失業保険申請件数(2月21日終了週)、ユーロ圏マネーサプライ(1月)、ユーロ圏景況感指数(2月)、ユーロ圏消費者信頼感指数(2月)
- 2月27日(金):
・財務省2年利付国債入札、ギークリーが東証スタンダードに新規上場、08:30 東京CPI(2月)、 08:50 鉱工業生産(1月)、08:50 小売売上高・百貨店・スーパー売上高(1月)、08:50 対外・対内証券投資 (2月15-21日)、11:00自販連会長が会見、14:00 住宅着工件数・戸数(1月)、17:00日銀が国債買い入れ日程を発表(3月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■バークシャー保有ポートフォリオ
米投資会社バークシャー・ハザウェイが米証券取引委員会(SEC)に2/17に提出した2025年末の保有銘柄リストによれば、アマゾン・ドット・コム(AMZN)の保有株式数を77%減らしたほか、アップル(AAPL)も3四半期連続で売却した。2025年7-9月期にはグーグル親会社アルファベット(GOOGL)を新規に取得しており、テクノロジー銘柄の入れ替えに着手していると見受けられる。一方で、米新聞大手ニューヨーク・タイムズ(NYT)を新規に取得。バークシャーはかつて競合する米大手紙ワシントン・ポストの主要株主だったこともあり、馴染みのある業界でデジタル化への対応が進捗していることへの手応えを掴んでいる可能性がある。2026年初に就任した新CEOのアベル氏は米食品大手クラフト・ハインツ(KHC)の売却を検討中の様相だ。
バークシャー保有ポートフォリオ~バフェットCEO時代最後の保有銘柄報告

■債券相場と為替相場の関係
国内債券相場と円ドル相場の推移を過去40年間にわたって見ると、債券高(長期金利低下)と円高、債券安(長期金利上昇)と円安が基調となる中、1995年6月~1998年8月、1999年1月~2002年3月のような信用不安や銀行不良債権処理が本格化した時期、および「アベノミクス」相場を含む2011年10月~2015年7月頃は債券高と円安の時期だった。
一方で、債券安と円高の時期は小泉政権の2003年5月~2004年4月などに限られる。経済理論上は債券安(長期金利上昇)が通貨高に結びついてもおかしくない。高市政権はトランプ米政権やスターマー英政権と比較して高支持率で相対的に政権が安定している。景気浮揚に伴う長期金利上昇が海外資金を呼び込み円高に結びつく可能性がある。

【債券相場と為替相場の関係~債券安(長期金利上昇)は円安材料なのか】
■裁定取引・純買い残の増加余地
日経平均株価が史上最高値を更新する中、同株価のバリュエーションは2/18終値の加重平均ベースで見ると、予想PER(株価収益率)が20.2倍、PBR(株価純資産倍率)が1.81倍と、2008年のリーマンショック以降で最高水準に達した。
一方、需給状況を見ると、現物と先物の価格差に着目した裁定取引(アービトラージ)の買い残(現物買い・先物売り)のうち売り残(現物売り・先物買い)を差し引いた純額ベースは、2/6時点で3兆1325億円と2012年12月以来の高水準に達した。それでも2015年5月に3兆8357億円に達したことがあることからすれば、3/13の先物・オプション最終決済に関する「メジャーSQ」算出日に向けて裁定取引の買い残を増やす余地が残っている面もあるだろう。
【裁定取引・純買い残の増加余地~3兆円突破も、2015年ピーク時に及ばず】

■銘柄ピックアップ
セントラル・リート投資法人(3488)
115800 円(2/20終値)

・オフィス、商業施設、ホテルを中核用途とする総合型REIT。上場時(2018年2月)はザイマックスの単独スポンサーだったが、2025年10月に名鉄都市開発が参画し、ダブルスポンサー体制となった。
・10/17発表の2025/8期(3-8月)は、営業収益が前期(9-2月)比6.9%減の17.1億円、営業利益が同11.3%減の9.2億円、1口当たり分配金(利益超過分配金を含まない)が同13.5%減の3225円。8月末時点は、取得価格合計額が横ばいの438億円、稼働率が0.7ポイント上昇の100%となった。
・2026/2期(9-2月)会社計画は、営業収益が前期(3-8月)比25.7%増の21.5億円、営業利益が同0.2%減の9.2億円、1口当たり分配金(利益超過分配金を含まない)が同1.7%減の3171円。2/19終値で、2026/8期まで含めた会社予想年分配金利回りが5.40%、投資口価格に対するNAV(純資産価値)倍率が0.76倍。今後は名古屋鉄道(9048)グループが保有する資産を取得していく予定。
ニッポン高度紙工業(3891)
3970 円 (2/20終値)
・1941年に高知市で設立された電気絶縁用セパレータ紙の専業大手。アルミ電解コンデンサ用および電池用のセパレータ製造・販売を主事業とする。アルミ電解コンデンサ用では世界シェア6割。
・1/29発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比14.0%増の138億円、営業利益が同24.3%増の26億円。アルミ電解コンデンサ用セパレータ(売上比率75%)はAI(人工知能)サーバー需要増を受けて14%増収、機能材(同25%)は電気二重層キャパシタ向けの寄与もあり14%増収。
・通期会社計画は、売上高が前期比12.9%増の181億円、営業利益が同26.0%増の31億円、年間配当が同20円増配の80円。AIデータセンター内に設置されるサーバー電源や電力供給設備向けでアルミ電解コンデンサの需要が大幅な伸びを示す。アルミ電解コンデンサ用セパレータにおける世界シェアの高さから、世界的なAIデータセンターの建設加速が同社へ追い風になると見込まれる。
大塚ホールディングス(4578)
10620 円(2/20終値)
・2008年に株式移転により設立。医療関連(大塚製薬、大鵬薬品)、医薬部外品・機能性食品・栄養補助食品のニュートラシューティカルズ関連(大塚製薬)、消費者関連(大塚食品)の各事業を展開。
・2/13発表の2025/12通期は、売上収益が前期比6.0%増の2兆4688億円、事業利益が同3.6%増の4461億円。事業利益内訳は、医療関連事業(売上比率71%)が3%増の4020億円、ニュートラシューティカルズ(同23%)が7%増の689億円。抗精神病薬、抗悪性腫瘍剤、持続性注射剤が貢献した。
・2026/12通期計画は、売上収益が前期比2.1%増の2兆5200億円、V2受容体拮抗剤の米国における後発医薬品の影響と成長投資の強化から事業利益が同20.4%減の3550億円、年間配当が同横ばいの140円。花粉症シーズン到来の中、同社傘下の大鵬薬品がMeiji Seika ファルマと共同販売する抗アレルギー薬「ビラノア」は即効性や食事の影響を受けにくいことから高い市場シェアを有する。
ブリヂストン(5108)
3620 円 (2/20終値)
・1931年に福岡県久留米市で設立。日本、米州、欧州他、中国アジア太平洋の4地域セグメントでタイヤ事業、データ活用の高付加価値を提供するソリューション事業を展開。タイヤは世界首位級。
・2/16発表の2025/12通期は、売上収益が前期比ほぼ横ばいの4兆4294億円、継続事業ベースの調整後営業利益が同2.2%増の4937億円。市販用プレミアムタイヤおよび鉱山用超大型タイヤの販売が堅調に推移した一方で、新車用タイヤの販売本数減や南米事業、化工品事業の減収が響いた。
・2026/12通期会社計画は、売上収益が前期比1.6%増の4兆5000億円、継続事業ベースの調整後営業利益が同4.3%増の5150億円、株式分割の影響考慮後の年間配当が同10円増配の125円。今年3月に米航空宇宙局(NASA)が主導する月探査計画「アルテミス計画」では、日本からの月面探査車「ルナクルーザー」の開発で同社が「チームジャパン」の一員としてタイヤの開発を担っている。
タイ石油開発公社(PTTEP)
市場:タイ 140 THB (2/19終値)

・1985年設立。国営のタイ石油公社(PTT)の子会社であり、タイ国内外の石油探鉱・生産のほか、海外のガスパイプライン輸送、政府エネルギー政策と戦略的に連携したプロジェクトへの投資を行う。
・2/10発表の2025/12期4Q(10-12月)は、パイプライン輸送からの売上高が前年同期比2.4%減の21.60億USD、石油価格変動に係るヘッジ取引損失など一時的要因を除く調整後純利益が同24.5%減の4.01億USD。国内外の鉱区権益の拡大により販売数量が8%増も、販売価格が7%下落した。
・2026/12通期会社計画は、1日平均販売数量が前期比10%増、ガスの平均販売単価が同2%低下、EBITDAマージンが横ばい(70%)、単位当たりコストが5%低下である。タイは国内の石油・ガス埋蔵量が限定的で原油・精製品やガスの多くを輸入に頼っている。タイ政府主導のエネルギー安全保障の強化戦略の下、同社は海外上流投資を推進し、長期的なエネルギー供給安定を図っている。
■アセアン株式ウィークリーストラテジー
(2/24号:タイ観光促進策「中国とタイは一つの家族」)

タイ政府は2/9、観光促進策「中国とタイは一つの家族」を発表。タイ国際航空や中国大手旅行代理店と提携し、運賃やホテル宿泊料などの割引を受けられる旅行商品を展開するほか、バンコクや地方都市で祝賀イベントを開く予定だ。2025年1月に中国人俳優がタイ入国後に特殊詐欺拠点に拉致された事件が起きたことやカンボジアとの国境紛争も相まって中国人の渡航控えが広がった。
タイ政府は、中国の春節(旧正月)に伴う観光誘客に向けて、今年は日中関係の冷え込みで代替旅行先にタイを選ぶ傾向が強まるとみている。ただ、5年ぶりのタイバーツ高の影響からタイ政府の期待通りに誘客が進むかは見通せない。物価の安さや中国との地理的・文化的な近さが中国人にとって魅力に映ることから、ベトナムが強力なライバルとして立ちはだかっている。
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。
