【投資戦略ウィークリー 2026年8月10日号(2026年8月7日作成)】”AI・半導体相場と過剰レバレッジ、指数逆相関銘柄への注目”

 

AI・半導体相場と過剰レバレッジ、指数逆相関銘柄への注目

  • しばしば市場では「AI(人工知能)・半導体相場はバブルなのか?」ということが議論の的になる。そして、足元の実需の強さや当面は需要が衰える兆しが見られないことなどを根拠として「バブルではない」という話になりがちだ。
  • ファンダメンタルズ面での需要の強さと株式市場の話は分けて考える必要がある。なぜなら、相場の常として信用取引や先物・デリバティブ取引をはじめとした過剰なレバレッジが掛かり、実際の需要に見合った以上のポジションが積み上がるからだ。それが逆回転して追証(おいしょう)を求められて強制決済となれば、必要以上の売り圧力にさらされて異常な下落相場となりがちなことも相場の常だろう。また、過剰なレバレッジを掛けてでも儲けたいという欲望を抑えられないことも人間の性(さが)の一つであり、いつの世も変わることはないだろう。
  • AI・半導体相場については、7月の大幅下落の背景に、苦境に陥ったAI特化型のヘッジファンド「シチュエーショナル・アウェアネス」による保有ポジションの強制的な清算による売り要因があったとみられている。そして、7月末から8月第1週にかけての買い戻しは、ヘッジファンドのシタデルがシチュエーショナルの保有するAI・半導体関連株の大半を買い取ったことが主な要因となった。市場関係者の間では、シチュエーショナルのようなファンドが他にも存在するのではないかとの懸念が広がっている。1998年の米LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)の破綻、あるいは2008年に米大手銀行のJPモルガン・チェースが米投資銀行のベア・スターンズを買収した際との類似を指摘する声も一部上がっている。個別株の値動きに複数倍で連動するレバレッジ型ETF(上場投資信託)が大手半導体メモリ株を中心に普及してきていることは、上記のリスクの広がりを助長する可能性がある。
  • 日経平均株価との連動性が高いAI・半導体関連銘柄の値動きが一部の高レバレッジのヘッジファンドの影響下を受けているとするならば、今年の4~6月に日経平均株価の上昇と連動しなかった銘柄群を中心としたポートフォリオにシフトすることが有力な選択肢として挙げられる。日本製鉄5401NTT9432任天堂7974など、4~6月の株価パフォーマンスが相対的に冴えなかった銘柄が、2026年4~6月期の決算発表を好感して反転上昇局面へ移行する兆しを示している。また、日米両政府が7/31に1998年6月以来の円買い介入を行ったことは、市場の円売り圧力に徹底的に対抗する強い意思の表れと見る余地があり、外国為替の円安ドル高の進行が業績への逆風となっていた企業の株価も反転上昇の好機をうかがっているとみるべきだろう。ただ、事業の構造改革や株主還元強化といった経営の内面の変化を伴っているような企業への投資が望ましいだろう。(笹木)

本日号は、住友重機械工業(6302)、東芝テック(6588)、オムロン(6645)、ニトリホールディングス(9843)、インドフードCBPスクセス・マクムール(ICBP)を取り上げた。

■主な企業決算の予定   

  • 810日(月):名古屋鉄道、住友金属鉱山、近鉄グループホールディングス、楽天グループ、横浜ゴム、ワコールホールディングス、ラウンドワン、マツキヨココカラ&カンパニー、ブルーゾーンホールディングス、ニプロ、ダスキン、ソニーフィナンシャルグループ、スクウェア・エニックス・ホールディングス、ショーボンドホールディングス、サンリオ、サワイグループホールディング、DIC、(米)ロケット・ラボ
  • 811日(火):(米)ルメンタム・ホールディングス、コアウィーブ
  • 812日(水):センコーグループホールディングス、クレディセゾン、コロワイド、ペプチドリーム、TOPPAN ホールディングス、東京海上ホールディングス、H.U.グループホールディングス、リゾートトラスト、(米)ネビウス・グループ、シスコ・システムズ
  • 813日(木):光通信、カドカワ、カネカ、トレンドマイクロ、サンケン電気、ネクソン、三越伊勢丹ホールディングス、すかいらーくホールディングス、(米)アプライド・マテリアルズ
  • 814日(金):日本電子、電通グループ、朝日インテック、荏原製作所、ラクス、トリドールホールディングス、サンドラッグ、アルバック、アシックス、アサヒグループホールディングス、SOMPOホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、GMOペイメントゲートウェイ、GMO インターネットグループ

主要イベントの予定

  • 810日(月)

・08:50 金融政策決定会合における主な意見(7月30・31日分)、08:50 国際収支:経常収支・貿易収支(6月)、08:50 銀行貸出動向(7月)、14:00 景気ウォッチャー調査現状判断・先行き判断(7月)

・米3年債入札、 米サウスカロライナ州で共和党上院議員の予備選、豪中銀が政策金利発表

・米中古住宅販売件数(7月)

 

  • 811日(火)

・米3年債入札、米サウスカロライナ州で共和党上院議員の予備選、豪中銀が政策金利発表

・米中古住宅販売件数(7月)

 

  • 812日(水)

・08:50 マネーストックM2・M3(7月)、15:00 工作機械受注(7月)

・米10年債入札、OPEC月報

・米CPI (7月)、米財政収支(7月)、独CPI(7月)、ロシアGDP(2Q)

 

  • 813日(木)

・日銀の国債買い入れオペ、残存25年超、08:50 国内企業物価指数(7月)

・米30年債入札、米リッチモンド連銀総裁が講演、ノルウェー中銀とペルー中銀が政策金利発表

・米新規失業保険申請件数 (8月8日終了週)、米PPI (7月)、ユーロ圏鉱工業生産(6月)、英GDP (2Q、速報値)、英鉱工業生産 (6月)

 

  • 814日(金)

・08:50 対外・対内証券投資(8月2-8日)

・米小売売上高(7月)、米企業在庫(6月)、米ミシガン大学消費者マインド指数(8月)、ユーロ圏GDP(2Q)

 

  • 815日(土)

・全国戦没者追悼式

・ 韓国の光復節

・中国経済全体のファイナンス規模、新規融資、マネーサプライ(7月、9-15日に発表)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

■CMEで米個別株先物取引始まる

デリバティブ取引所大手の米CMEグループCMEは7/27、米主要企業55銘柄を対象とする個別株先物取引を開始した。週末を除いて1日23時間取引ができる。通常の契約単位は株価の100倍で、そのうち22銘柄は株価の10倍を単位とする小口の「マイクロ先物」も導入された。各限月の取引最終日は受渡月の第3金曜日であり、最終決済に伴うポジション調整など、需給面で株価を動かす材料になると見込まれる。

最近は個別株の値動きに複数倍で連動するレバレッジ型ETF(上場投資信託)が人気化していることもあり、運用会社がレバレッジ型ETFを組成・運用する上で、個別株先物取引を活用して純資産と先物ポジションの乖離を調整するためのリバランス売買が増えることも想定される。

CMEで米個別株先物取引始まる~レバレッジ型ETFの広がり助長の可能性】

■指数の異常な高騰とその崩壊

7月に続いたAI(人工知能)関連株の執拗な売り圧力の背景に、ヘッジファンドのシチュエーショナル・アウェアネスの保有ポジションの強制的な清算があったことが明らかになってきている。別のヘッジファンドのシタデルがシチュエーショナルの保有するAI関連株の大半を買い取ったことを受け、7/30~8/5にかけて世界のAI関連株が買い戻された。米半導体株指数(SOX)の終値が3/30~6/22で約2倍に急騰した中、AI関連銘柄への過度なレバレッジ投資に伴う損失と強制決済が相場の下落を加速させたとみられる。

過去のドットコム・バブル、リーマンショック前の新興国BRICsブームなどに伴う短期的な相場急騰も、過度なレバレッジ投資に伴う損失を通じて想定を超える相場下落拡大をもたらしたと見る余地がある。

【指数の異常な高騰とその崩壊~仮需を伴う過剰ポジション損失で下落加速】

■円買い協調介入を行った1998年

日米両政府は7/31の外国為替市場で円買いの協調介入を実施したと8/3に発表。ベッセント米財務長官は円売りのアジア全域への波及を懸念したことを主な理由とし、1990年代のアジア通貨危機も大幅な円安が引き金となったと述べた。

円買いを伴う日米協調介入は1997年7月のタイバーツ急落から始まったアジア通貨危機が続いていた1998年6月以来である。当時は、介入によりドル円相場が1ドル144円台から136円台へと一気に約8円急落したものの、円安トレンドの転換には至らず約2ヵ月後に再び介入前の水準を超えて円安が再燃した。円安トレンドの転換は、ロシア金融危機を受けた同年9月の大手ヘッジファンドの破綻や同年10月と12月の国内大手銀行の破綻・一時国有化などを経て本格化した。

【円買い協調介入を行った1998年~国内外で金融危機が相次いだ時期】

■銘柄ピックアップ

住友重機械工業(6302)        

 5884 円(8/7終値)   

・住友機械工業と浦賀船渠が1969年に合併。メカトロニクス、インダストリアルマシナリー、ロジスティックス&コンストラクション、エネルギー&ライフラインの4事業を展開。変減速機、射出成形機に強み。

・8/4発表の2026/12期1H(1-6月)は、売上高が前年同期比12.0%増の5541億円、営業利益が同72.9%増の374億円。受注高が13%増の6071億円。事業別営業利益では、メカトロニクスが58%増、インダストリアルマシナリーが黒字転換、ロジスティックス&コンストラクションが57%増となった。

・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比5.0%増の1兆1200億円(従来計画1兆900億円)、営業利益を同32.1%増の680億円(同600億円)とした。年間配当は同20円増配の145円。減・変速機や極低温冷凍機を手がけるメカトロニクスと、油圧ショベルや建設用クレーンを製品群に持つロジスティックス&コンストラクションの両部門で受注環境が改善していることが業績修正に反映された。

東芝テック(6588               

3260  8/7終値)  

・1950年に東芝から分離独立。「TEC」ブランドで知られる流通系POSシステム機器を取り扱うリテールソリューション事業、および複合機等を取り扱うワークプレイスソリューション事業を主な事業とする。

・8/7発表の2027/3期1Q(4-6月)は、売上高が前年同期比22.7%増の1488億円、営業利益が前年同期の▲21億円から43億円へ黒字転換。事業別営業利益は、リテールソリューション(売上比率62%)が前年同期の▲22億円から黒字転換、ワークプレイスソリューション(同38%)が3%増の39億円。

・2027/3通期会社計画を上方修正。売上高を前期比7.2%増の6100億円(従来計画5900億円)とした。営業利益は同39.5%増の200億円、年間配当は同20円増配の24円と従来計画を据え置いた。政府は8/5、食料品消費税率を2027年4月から2年間に限って1%に引き下げる方針を示した。レジ・システム改修またはクラウド型POSシステム「スマートレジ」への乗り換えに伴う追い風が見込まれる。

オムロン(6645)           

6632  円(8/7終値)  

 

・1933年に立石電機製作所として創業。産業用制御機器コンポーネントの全分野およびシステム機器、生活・公共関連機器・システムからヘルスケアまで広範囲の機械器具の製造・販売を営む。

・8/5発表の2027/3期1Q(4-6月)は、売上収益が前年同期比26.1%増の2098億円、営業利益が同3.3倍の188億円。営業利益内訳は制御機器(売上比率63%)が101%増の213億円、ヘルスケア(同17%)が102%増の24億円、社会システム(同12%)が1億円、データソリューション(同6%)が3億円。

・通期会社計画を上方修正。売上収益を前期比14.6%増の8800億円(従来計画8200億円)、営業利益を同41.7%増の800億円(同620億円)とした。年間配当は同6円増配の110円と従来計画を据え置いた。制御機器事業がAI(人工知能)需要の追い風を受けている。2025年9月までの構造改革プログラムに基づき、祖業の電子部品事業を7/1付で分社化。10/1付で米カーライルへ譲渡予定。

ニトリホールディングス(9843      

2825  円(8/7終値)   

・1972年設立。家具・インテリア用品の企画・販売などを行う。商品企画や原材料調達から製造・販売にとどまらず物流機能に至るまで全体としてプロデュースする「製造物流IT小売業」を標榜する。

・8/7発表の2027/3期1Q(4-6月)は、売上収益が前年同期比2.3%減の2262億円、営業利益が同1.1%減の365億円。ニトリと島忠の2026年6月末合計店舗数が同年3月末比15店純増の1084店舗。円安進行による輸入コスト増に対し、物流内製化や経費抑制により営業利益率は0.2ポイント改善。

・2027/3通期会社計画は、売上収益が前期比4.9%増の9570億円、営業利益が同3.8%増の1303億円、株式分割考慮後の年間配当が同1.2円増配の32円。日米両政府は7/31の外国為替市場で円買いの協調介入を実施。ベッセント米財務長官は7/30、「円相場は極めて割安」と異例のコメントを発した。さらに盛夏対策をテーマとしたマーケティング施策が奏功し、既存店売上高が改善傾向にある。

インドフードCBPスクセス・マクムール(ICBP) 

市場:インドネシア 7450 IDR8/6終値)

・2009年に親会社のインドフード・スクセス・マクムールINDFから分離・独立。親会社はインドネシア財閥のサリムグループ企業。即席麺「インドミー」はインドネシアの国民食として親しまれている。

・7/31発表の2025/12期1H(1-6月)は、売上高が前年同期比11.3%増の41.8兆IDR、営業利益が同8.0%増の12.7兆IDR、コア純利益が同0.6%増の5.4兆IDR。粗利益率と販管費率がそれぞれ悪化したことが利益面で響いたものの、通貨安に伴う海外営業活動への追い風が営業増益要因となった。

・中東情勢不安に伴う原油高、世界有数の小麦輸出国であるロシアとウクライナの衝突激化、天候要因(エルニーニョ現象)などを受けて小麦の国際相場は7月に約2年2ヵ月ぶりの高値を付けた。また、インドネシア・ルピア相場は中央銀行の独立性に対する懸念や信用格付けの悪化を受けて下落が加速。一方、インドネシアの1人当たりGDPの成長が中長期的に業績を下支えすると見込まれる。

 

【留意事項】
  1. 上場有価証券等のお取引の手数料は、国内株式の場合は約定代金に対して上限1.265%(消費税込)(ただし、最低手数料2,200円(消費税込))、外国株式の場合は円換算後の現地約定代金(円換算後の現地約定代金とは、現地における約定代金を当社が定める適用為替レートにより円に換算した金額をいいます。)の最大1.650%(消費税込)(ただし、対面または電話でのお取引の場合、3,300円に満たない場合は3,300円)となります。
  2. 上場有価証券等は、株式市況、金利水準等の変動による市場リスク、発行者等の業務や財産の状況等に変化が生じた場合の信用リスク、外国証券である場合には為替変動リスク等により損失が生じるおそれがあります。また新株予約権等が付された金融商品については、これらの権利を行使できる期間の制限等があります。
  3. 国内の取引所金融商品市場もしくは店頭売買有価証券市場への上場が行われず、また国内において公募、売出しが行われていない外国株式等については、我が国の金融商品取引法に基づいた発行者による企業内容の開示は行われていません。
  4. 金融商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、お取引に際しては、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書又はお客様向け資料をよくお読みください。

 

【免責事項】
  1. この資料は、フィリップ証券株式会社(以下、「フィリップ証券」といいます。)が作成したものです。
  2. 実際の投資にあたっては、お客様ご自身の責任と判断において行うようお願いいたします。
  3. この資料に記載する情報は、フィリップ証券の内部で作成したか、フィリップ証券が正確且つ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性又は完全性を保証したものではありません。当該情報は作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況によって予告なく変更することがあります。この資料に記載する内容は将来の運用成果等を保証もしくは示唆するものではありません。
  4. この資料を入手された方は、フィリップ証券の事前の同意なく、全体または一部を複製したり、他に配布したりしないようお願いいたします。

 

アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

アセアン・米国株、個別銘柄のリサーチレポート承ります
世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

レポート・コメント提供の他、メディア出演依頼等はこちらから。お気軽にご連絡下さい。