【投資戦略ウィークリー 2026年3月30日号(2026年3月27日作成)】”景気循環の波と日本株の調整局面~オープンクローに要注目”

 

景気循環の波と日本株の調整局面~オープンクローに要注目

  • イラン情勢は、日本時間3/27現在、トランプ米大統領がイランのエネルギー施設の攻撃停止期限を再延長し、現地時間4/6午後8時(日本時間4/7午前9時)までとした。4/5の日曜日はキリスト教で非常に重要なイースター(復活祭)の日であり、その1週間前の日曜日(「パームサンデー(聖枝祭)」)から、聖木曜日(洗足日、最後の晩餐の日)、聖金曜日(受難日)を経てイースターに至る特別な1週間を避ける意図が窺われる。一方で、トランプ氏が中東へ最大1万人の地上部隊増派を検討しているとの報道もあり、イースター明けの米軍による大規模攻撃の可能性はむしろ高まっている。
  • 日経平均株価は2/26高値(5万9332円)から3/9安値(5万1407円)までの7925円の下落幅に対し、3/11高値(5万5745円)まで半値戻しを達成した後、再度売られて3/23安値(5万688円)まで下落した。2/26高値から約6%の下落率となった。今回の相場下落は、中東情勢がきっかけに過ぎず、景気サイクルからの循環的な調整局面という見方も軽視できない。4つの景気循環の波のうち、在庫循環に伴う短期変動の「キチンの波」は3~5年で平均約40ヵ月周期とされる。さらに米国大統領選の4年サイクルのうち2年目の中間選挙年は、米国株のパフォーマンスが相対的によくないことが知られているほか、最近は暗号資産のビットコインにおける報酬半減期の4年サイクル(半減期の1年半後まで上昇後にピークから反転・下落するアノマリー)の影響も高まっている。干支の相場格言でも「卯(う)跳ねる、辰巳(たつみ)天井」の縁起のよい3年間の次は「午(うま)尻下がり」とされる。
  • 過去の日経平均株価の調整局面(新型コロナショックを除く)における下落率を振り返ると、2021年9月高値(3万795円)から2022年3月安値(2万4686円)まで約20%、2018年10月高値(2万4448円)から同年12月安値(1万8948円)まで約22%、2015年8月高値(2万946円)から2016年2月安値(1万4865円)まで約29%と、おおむね4年程度の周期で2~3割の下落を経験していた。
  • グローバル株式市場の動向を見ると、3月はブラジルやマレーシアなどエネルギー価格高騰の恩恵を受けやすい資源国の株価指数のパフォーマンスが、日本を含めてエネルギー輸入に依存する国の株価指数を上回っている。エネルギー価格の高騰が落ち着くまでは海外投資家の売り越し基調が続く可能性がある。海外投資家の日本株売買動向は、現物と先物の合計で2月に月間で約4兆5600億円の買い越しに対し、3月の3週間で約1兆5000億円の売り越しである。
  •  テクノロジー分野では、自律的にタスクをこなすAIエージェントの「オープンクロー」が話題となっている。対話型生成AI(人工知能)の「ChatGPT」登場以来のイノベーションという見方もあり、株式市場の調整一巡後にAI半導体ブームが再燃する余地があるだろう。(笹木)

本日号は、ニチレイ(2871)、酉島製作所(6363)、トーヨーカネツ(6369) 、カナデビア(7004) 、ユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)を取り上げた。

■主な企業決算の予定   

  • 330日(月): しまむら、象印マホービン
  • 331日(火): スター・マイカ・ホールディングス、(米)ナイキ
  • 42日(木): クスリのアオキホールディングス、西松屋チェーン、ナガイレーベン、平和堂、霞ヶ関キャピタル
  • 43日(金): あみやき亭、瑞光、マルマエ、カネコ種苗、あさひ、ワールド

主要イベントの予定

  • 330日(月)

・08:50 金融政策決定会合における主な意見(3月18・19日分)

・米ニューヨーク連銀総裁が講演

・ユーロ圏景況感指数(3月)、ユーロ圏消費者信頼感指数(3月)、独CPI(3月)、国内自動車各社が2月の世界生産・販売実績を公表

 

  • 331日(火)

・財務省2年利付国債入札、マクロン仏大統領が来日(4月2日まで)、08:30 失業率・有効求人倍率(2月)、08:50 小売売上高・百貨店スーパー売上高(2月)、08:50鉱工業生産(2月)、12:30 デンソー中期経営計画説明会、14:00 住宅着工件数・戸数(2月)、17:00日銀4ー6月の国債買い入れ予定

・米シカゴ連銀総裁が開会のあいさつ

・米主要20都市住宅価格指数(1月)、米FHFA住宅価格指数(1月)、米求人件数(2月)、米消費者信頼感指数(3月)、ユーロ圏CPI(3月)、独失業率(3月)、英GDP(4Q)、中国製造業・非製造業PMI(3月)

 

  • 41日(水)

・08:50 日銀短観(1Q)、09:30 S&Pグローバル日本製造業 PMI (3月)

・米セントルイス連銀総裁が講演

・米自動車販売(3月)、米ADP雇用統計(3月)、米小売売上高(2月)、米企業在庫(1月)、米S&Pグローバル製造業PMI(3月)、米ISM製造業景況指数(3月)、ユーロ圏S&Pグローバル製造業PMI(3月)、ユーロ圏失業率(2月)、中国RatingDog製造業PMI(3月)

 

  • 42日(木)

・財務省10年利付国債入札、ビタブリッドジャパンが東証グロースに新規上場、08:50 マネタリーベース(3月)、08:50 対外・対内証券投資 (3月22-28日)

・トランプ米政権「相互関税」発表から1年、ECB経済報告、マクロン仏大統領が韓国訪問(3日まで)

・米新規失業保険申請件数(3月28日終了週)、米貿易収支(2月)

 

  • 43日(金)

・09:30 S&Pグローバル日本複合・サービス業PMI(3月)

・グッドフライデー(聖金曜日)の祝日で米・欧州・香港などの株式市場休場(米債券市場は短縮取引)、ニューヨーク国際オートショー開幕(12日まで)

・米非農業部門雇用者数変化(3月)、米失業率(3月)、米S&Pグローバル・サービス業・総合PMI(3月)、中国RatingDogサービス業・総合PMI(3月)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

米マグニフィセント・セブンの動向

米国株市場を牽引する巨大ハイテク企業7社の「マグニフィセント・セブン」の年初来株価は軟調に推移している。データセンターなどAI(人工知能)向けインフラ投資への支出拡大とその収益化が遅れることへの懸念のほか、AIエージェントの進化がソフトウェア業界の収益減を侵食するとの懸念がその背景にある。

そのような中、アップルAAPLの株価は昨年末水準を下回るものの、1月安値を下回ることなく横ばい圏で推移している。AIが人の代わりにパソコンを動かせるようになるオープンソースのAIエージェント・ソフトウェア技術「オープンクロー」の普及で、アップルの小型コンピューター「Mac-mini」がAI専用パソコンとして人気が出始めた。同社はMac-miniの一部を米国で生産する方針を打ち出している。

【米マグニフィセント・セブンの動向~相対的に下値が堅いアップルに注目】

■バックワーデーションとコンタンゴ

WTI原油先物およびCOMEX金先物の限月間スプレッドから構成される限月カーブを見ると、WTI原油先物は期近が高くて期先が安い「バックワーデーション」であるのに対し、COMEX金先物は期近が安くて期先が高い「コンタンゴ」となっている。現物受渡し決済を伴うコモディティ先物は在庫保管コストが掛かることから、通常はコンタンゴになりやすい。

WTI原油先物は直近の中東情勢をめぐる混乱からバックワーデーションの傾きが急になった。足元の価格高騰も期先の安さが目立つ。一方で、COMEX金先物は、原油価格高騰によるインフレ懸念の高まりを受けた米長期金利上昇・米ドル高といった要因から価格下落傾向にある。それでも限月カーブの形状は変わっておらず、先高観が維持されている。

【バックワーデーションとコンタンゴ~原油先物と金先物の限月カーブ形状】

■2月末以降の世界主要株価指数

2/28の米国とイスラエルによるイランへの攻撃以降、世界の主要株価指数のうち、中東の原油や天然ガスへの依存度が高い国の株価指数が下落傾向で推移している。それに対し、マレーシアやブラジルといったエネルギー生産・輸出国の株価指数は相対的に優位となっている。マレーシアは石油製品とLNG(液化天然ガス)をエネルギー輸出の主力としており、LNGは世界有数の輸出量を誇る。ブラジルは南米最大の産油国である。

日本経済にとっては、原油価格の高騰は交易条件の悪化に伴う実質購買力の低下をもたらすことで景気の下押し圧力となる。一方、米国を含めてエネルギー輸出国にとっては交易条件の改善が景気にとってプラスとなる面もある。今後、「二極化」が進む可能性がある。

2月末以降の世界主要株価指数~マレーシアとブラジルが相対的に優位】

■銘柄ピックアップ

ニチレイ(2871)              

1977   円(3/27終値)  

・1942年に水産統制令に基づき設立。主として加工食品事業、水産事業、畜産事業、低温物流事業、不動産事業を営む。冷蔵倉庫と冷凍食品で首位のほか、欧州を中心に低温物流を拡大中。

・2/3発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比0.5%増の5376億円、営業利益が同3.9%減の305億円。主な事業別の営業利益は、加工食品(売上比率47%)が19%減の131億円、低温物流が77%増の153億円。3Q(10-12月)単独ベースは、全体の営業利益が1%増の122億円。

・通期会社計画は、売上高が前期比0.3%減の7000億円、営業利益が同3.1%増の395億円、年間配当(株式分割の影響考慮後)が同1円増配の47円。24時間冷却装置を動かし続ける冷凍倉庫は電気代の負担が大きい中、冷凍食品の利用増を受けて冷凍倉庫の需給がひっ迫。電気代や人件費の高騰で倉庫会社が料金転嫁を進めているため、冷凍冷蔵倉庫の保管料は上昇基調で推移。

酉島製作所(6363     

3125  3/27終値

  

・1919年に大阪市此花区酉島町にポンプ専門製作工場を創設。ポンプ事業(ポンプ、ポンププラント、メカニカルシールほか)が主力。エネルギー用高効率ポンプで国内首位。海外進出を強化中。

・2/12発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比8.7%増の648億円、営業利益が同39.6%減の17億円。受注高は1.8%増の765億円。受注先別受注高は、官公需が一部案件の工事延長により20%減の164億円。その一方、外需が6%増の493億円、国内民需が29%増の107億円。

・通期会社計画は、売上高が前期比2.9%増の890億円、営業利益が同6.4%増の58億円、年間配当が同2円増配の62円。同社は2/10、蒸気タービンやポンプに関する世界屈指の機械メーカーである新日本造機の株式を住友重機械工業6302から取得し子会社化すると発表。また、海外に強みを持つことから中東における海水淡水化プラントの復興需要が中期的な追い風になると見込まれる。

トーヨーカネツ(6369)     

2807 円(3/27終値) 

・1941年に工業窯炉の設計・製作・施工を目的として東洋火熱工業を設立。空港・配送センターの物流システムを主力とするほか、タンク工事業界で最大手。LNG(液化天然ガス)タンクに強みを持つ。

・2/13発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比0.5%減の425億円、営業利益が同22.1%増の30億円。主な事業別の営業利益は、物流ソリューション事業(売上比率57%)が17%増の28億円、プラント事業(同21%)が57%増の6億円、みらい創生事業(同21%)が28%減の4億円。

・通期会社計画は、売上高が前期比2.5%増の620億円、営業利益が同10.5%減の37億円、年間配当(株式分割の影響考慮後)は同18円減配の100円。配当性向は62%と前期(約50%)を上回る。さらに株主資本配当率(DOE)4.0%以上の配当方針を打ち出している。中東情勢の混乱を受けたエネルギー供給不安の高まりから、国策として備蓄用の石油やLNGの貯蔵タンク需要増が見込まれる。

カナデビア(7004         

1035   3/27終値)

・1881年に前身の大阪鉄工所を創立。造船業からの撤退と日立グループとの資本解消を受けて2024年に日立造船から商号変更。ゴミ焼却発電設備を柱に船舶用機器、シールド掘進機等を扱う。

・2/5発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比2.7%増の4247億円、営業利益が海外環境子会社における技術トラブルの影響で前年同期の97億円から▲46億円へ赤字転落。受注高は3%増の4609億円と堅調。年度末に完成する工事割合が大きいため、業績の季節的変動が大きい。

・通期会社計画は、営業利益を前期比49.9%減の135億円(従来計画180億円)へ下方修正。売上高は同1.6%増の6200億円、年間配当は同横ばいの25円と従来計画を据え置いた。同社は日本製鉄5401子会社の日鉄エンジニアリングと来年4月の経営統合に向けた検討を開始。橋梁事業からの撤退や船舶用エンジン子会社一部売却による持分法適用会社とするなど事業再編を加速中だ。

ユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB) 

市場:シンガポール        36.68 SGD 3/26終値)

・1935年創業。シンガポール三大地場銀行の一角。ウィーCEOは創業者一族。中国やタイ、インドネシアなど19カ国・地域に500超の拠点を持つ。上場不動産企業のUOLグループもウィー一族の経営。

・2/24発表の2025/12期4Q(10-12月)は、総収益が前年同期比5.0%減の32.8億SGD、純利益が同7.4%減の14.1億SGD。12月末貸出残高が4%増、純手数料収益が10%増となったものの、純金利マージン縮小に加え、テクノロジーへ支出や規制対応コスト増に伴う経費率の悪化が利益に響いた。

・2025年に統合が完了した米金融大手シティグループのアセアン4カ国(マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム)の個人向け金融事業は顧客が240万人に上る。UOB本体との合計約800万人の顧客基盤をクレジットカード事業で活かす成長戦略を描く。また、同系列に大手不動産企業を擁する強みを活かし、傘下の資産運用・管理会社を通じたREIT(不動産投資信託)ビジネスも注目される。

■アセアン株式ウィークリーストラテジー

(3/30号:シンガポールの車両購入権(COE))

シンガポールには、政府が国内の交通渋滞緩和を目的に車両台数を制限するため、公道を走行する車両に必要な「車両購入権(COE)」と呼ばれる制度がある。これは10年間の使用権をオークションで落札するもので、月に2回、公開入札が行われる。10年で失効し、更新しない場合は車を廃車にするか輸出する必要がある。車の排気量や馬力によって「カテゴリー」が分かれる。3/18時点では一般的家庭向け車種で11万1890SGD(約1400万円)に達し、この10年で2倍強に上昇した。

COEが車体価格や各種税金に上乗せされ、同国の車は世界一高いといわれる。地下鉄やバス路線の拡充により公共交通機関へのシフトが進むほか、自動運転配送サービスの導入が進む中、自家用車需要は底堅く、シンガポールが世界で最も生活費が高い都市と言われる一因とされている。

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

アセアン・米国株、個別銘柄のリサーチレポート承ります
世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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