【投資戦略ウィークリー 2026年3月23日号(2026年3月20日作成)】”原油価格高騰と金融市場~2022年、および2007-2008年”
■原油価格高騰と金融市場~2022年、および2007-2008年
- イランがホルムズ海峡を事実上封鎖したことを受けて原油価格が高騰し、日本株市場も大きな影響を受けている。原油価格高騰の時期における金融市場の見通しについては、WTI原油先物価格が1バレル100ドルを超えて上昇した2つの時期が参考になるだろう。
- 第1に、4年前(2022年)の2/24に勃発したロシアによるウクライナ侵攻の時期である。原油輸出国のロシアに対する経済制裁に伴う禁輸政策によって世界的なエネルギー供給不足を招き、WTI原油先物価格が一時1バレル130ドルまで上昇した。その後、概ね6月頃まで1バレル100ドルを上回って推移した。その間、日経平均株価は3/9に年内安値2万4681円を付けた。ロシアによる侵攻直前の2/23終値が2万6243円だったことから、下落率は約6%に過ぎなかった。これは、今回の米国とイスラエルによる軍事攻撃の直前となる2/27の日経平均株価(終値)の5万8850円から、3/9に付けた年初来安値の5万1407円まで約13%下落したのとは対照的だ。
- 2022年は、前年秋に発足した岸田内閣の政策への失望感から既に日本株市場が軟調な状況にあり、2021年9月の高値3万795円からウクライナ戦争の直前の時点で約15%下落していた。2021年9月高値から2022年の3/9安値まで約20%の下落率だった。それに対し、今年は2/8に投開票が行われた衆議院総選挙で自民党が大勝したことを受けて海外投資家の大量の買いが短期的に流入していた。
- 第2に、米国の信用力が低い層や過去に返済遅延がある個人向けの住宅ローンである「サブプライム・ローン」の問題で金融システム不安が顕在化しつつあった2007年7月~2008年6月の時期である。この時期は、ブラジル、ロシア、インド、中国など「BRICs」と呼ばれる新興国市場ブームを主な要因として、WTI原油先物価格が2007年7月の1バレル70ドルから2008年6月に1バレル140ドル台まで倍増する一方で、サブプライム・ローンの損失に伴う金融危機が露呈していた。2007年8月の「パリバ・ショック」で投資ファンドが償還を凍結したほか、2008年3月には米大手投資銀行ベア・スターンズが実質破綻し、JPモルガン・チェースが救済買収を行っていた。
- ところで、今年はスポーツの年だ。ミラノ・コルティナ冬季オリンピック・パラリンピックに続き、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催された。6・7月にFIFAワールドカップ2026が米国・カナダ・メキシコで共同開催される。2028年ロサンゼルス五輪では、インドをはじめイギリス連邦諸国で絶大な人気を誇る「クリケット」が128年ぶりに正式種目として採用された。競技人口は世界で3億人以上であり、バレーやバスケットと並び、サッカーに次ぐ水準にある。日本のスポーツ用品・スポーツブランド関連企業にも恩恵が及ぶと見込まれる。(笹木)
本日号は、キャンドゥ(2698)、コーエーテクモホールディングス(3635)、セイコーエプソン(6724)、キヤノン(7751) 、マラヤン・バンキング(MBBM)を取り上げた。


■主な企業決算の予定
- 3月23日(月): コーセル
- 3月24日(火): 日本オラクル
- 3月25日(水):TAKARA & COMPANY、(米) シンタス、ペイチェックス、PDDホールディングス
- 3月26日(木): ハニーズホールディングス
- 3月27日(木): キユーソー流通システム、アスクル
■主要イベントの予定
- 3月23日(月):
・連合が26年春闘の第1回回答集計結果を発表、14:00石油連盟会長会見
・エネルギーの国際会議「CERAウイーク」(ヒューストン、27日まで)
・米建設支出(1月)、ユーロ圏消費者信頼感指数(3月)、シンガポールCPI(2月)
- 3月24日(火):
・財務省40年利付国債入札、08:30 全国CPI(2月)、09:30 S&Pグローバル日本製造業・サービス業・複合PMI(3月)、14:30 全国百貨店・東京地区百貨店売上高(2月)、16:30コスモエネルギー中期経営計画説明会
・博鰲(ボアオ)・アジア・フォーラム(中国・海南省ボアオ、27日まで)、デンマーク総選挙
・ 米S&Pグローバル製造業・サービス業・総合PMI (3月)、米非農業部門労働生産性(4Q改定値)、ユーロ圏製造業・サービス業・総合PMI (3月)、欧州新車販売台数(2月)
- 3月25日(水):
・ベーシックとジェイファーマが東証グロースに新規上場、資生堂株主総会、日銀による国債買い入れオペ、08:50日銀金融政策決定会合議事要旨(1月22・23日分)、10:00日本製鉄GX説明会、14:00日本船主協会会長会見、14:00 景気一致指数・先行CI指数(1月)、14:30東京ガス社長会見、15:00 工作機械受注(2月)
・ラガルドECB総裁が講演(フランクフルト)
・米輸入物価指数(2月)、米経常収支(4Q)、独IFO企業景況感指数(3月)、英CPI(2月)、豪CPI(2月)
- 3月26日(木)
・財務省が国債市場特別参加者会合を開催、花王株主総会、08:50 対外・対内証券投資 (3月15-21日)、08:50 企業向けサービス価格指数(2月)、14:00日銀基調的なインフレ率を補足するための指標
・米ジェファーソンFRB副議長が講演、EU外相理事会(通商、29日まで)、世界貿易機関(WTO)閣僚会議(カメルーン、29日まで)、先進7カ国(G7)外相会合(27日まで)、ノルウェー中銀と南ア中銀とメキシコ中銀が政策金利発表、フェロー諸島総選挙
・米新規失業保険申請件数 (3月21日終了週)、ユーロ圏マネーサプライ (2月)
- 3月27日(金):
・セイワホールディングスが東証グロースに新規上場、11:00日本ガス協会会長会見、15:30 日本取引所グループの山道CEO定例会見
・ECBによるユーロ圏CPI予想 (2月)、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ、ビデオ会議)
・米ミシガン大学消費者マインド指数・確報値(3月)
- 3月29日(日):
・欧州夏時間開始
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■米国株の調整と大型ハイテク株
米国株の主要株価指数のうちS&P500やナスダック100は時価総額加重平均型の指数であるため、時価総額上位の大型ハイテク株のウェート拡大を通じて指数がかさ上げされやすい。S&P500とナスダック100について、それぞれ均等加重平均型と比較した相対指数のかい離(相対指数の格差)を見た場合、2023年10月以降に拡大し、トランプ米大統領が相互関税を発表した2025年4月に一旦縮小したが、同年10月下旬にかけて再拡大。その後は緩やかな縮小傾向にある。
米国株市場の調整局面の特徴として、市場全体が売られるよりも大型ハイテク株を中心とした株価下落によって時価総額加重平均指数と均等平均指数の格差縮小を伴う場合が多い。割安銘柄へのシフトが有効となる余地がある。
【米国株の調整と大型ハイテク株~S&P500とナスダック100の均等加重平均

■サブプライム・ショックと原油価格
イランが原油貿易の要衝であるホルムズ海峡を事実上封鎖していることを背景に原油価格が高騰している。この価格高騰は、2022年におけるロシアのウクライナ侵攻後に類似している面があるほか、2007年7月から2008年6月までの上昇局面を想起させるという見方も市場で根強い。当時の原油価格高騰は「BRICs」と言われる新興国市場ブームに加え、2007年9月に米FRB(連邦準備理事会)が利下げ局面へ転換したことで投機マネーが流入したことが大きな要因となった。
プライベート・クレジット(ノンバンク融資)を巡り、投資家の解約請求が急増したことへの対応でファンド側が解約制限を設ける事例が相次いだ。これは2007年夏以降に相次いだサブプライム・ローン損失への対応と類似点が見受けられる。
【サブプライム・ショックと原油価格~2007/7~2008/6まで原油価格が上昇】

■日経平均株価のPER・PBR水準
過去15年間における日経平均株価の加重平均ベース予想PERと同PBRを見ると、予想PERは2/27に20.92倍まで上昇し、新型コロナ禍後の例外的な場合を除いて2013年4月以来の高水準を記録。PBRは2/27に最高水準の1.88倍となった。予想PERとPBRから計算される3/17の予想EPSとBPSは、それぞれ2732円と3万1221円となる。
2014年以降2024年は、予想PERが12-17倍、PBRが1.0-1.6倍のレンジ内を推移していたが、2025年以降、それぞれレンジ上限を上抜いた。それでも原油価格の高騰が実体経済と企業業績に悪影響を与える可能性が高くなれば、予想PERやPBRの水準も切り下がらざるを得ない。日経平均株価への寄与度が高い銘柄の予想PERとPBRの動向に注意すべきだろう。
【日経平均株価のPER/PBR水準~それぞれかつての上限水準をまだ上回る】

■銘柄ピックアップ
キャンドゥ(2698)
3230 円(3/19終値)

・1993年に埼玉県戸田市で、100円ショップのフランチャイズ店への卸売業および直営店の小売業を事業として設立。間接保有分を含めてイオン(8267)が51.1%を保有。商業施設への出店に特色。
・1/8発表の2026/2期9M(3-11月)は、売上高が前年同期比4.0%増の649億円、営業利益が同181.6%増の15億円。直営既存店売上高が0.6%増、加盟店含む全社売上高が3.8%増。粗利益率が0.9ポイント改善、販管費率が0.6ポイント改善した。イオングループとの協業推進が奏功した。
・通期会社計画は、売上高が前期比10.1%増の918億円、営業利益が同27.1%増の10.8億円、年間配当が同横ばいの17円。お気に入りのシールを集めて貼ったり交換したりする遊びのための「シール帳」への注目が高まり、若い人から大人まで幅広い世代を巻き込んで社会現象化している。同社で販売するシール帳も人気化していることから、来店客の増加と売上増加の加速が見込まれる。
コーエーテクモホールディングス(3635)
1796 円 (3/19終値)

・2009年に光栄とテクモの経営統合により設立。主にエンタテインメント事業、アミューズメント事業、不動産事業を展開。「信長の野望」などの歴史物および「仁王」や「無双」などのアクション物に強い。
・1/26発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比1.6%減の517億円、営業利益が同3.3%減の145億円、経常利益が同6.2%減の311億円。売上比率92%のエンタテインメント事業は営業利益が4.8%減の141億円。3Q(10-12月)では前年同期比18%増収、営業利益が同49%増。
・通期会社計画は、売上高が前期比10.6%増の920億円、営業利益が同3.5%減の310億円、年間配当が同17円減配の43円。任天堂(7974)が3/5に発売した家庭用ゲーム機「Switch2」専用ソフト「ぽこ あ ポケモン」が大ヒット。コーエーテクモは株式会社ポケモンやゲームフリークと同ソフトを共同開発。3/18終値PBR(株価純資産倍率)が2.34倍と競合他社と比べて低水準である点も注目される。
セイコーエプソン(6724)
1951.5 円(3/19終値)

・1942年に時計部品の加工等を目的として大和工業を諏訪湖の畔に設立。プリンティングソリューションズ、ビジュアルコミュニケーション、マニュファクチャリング関連・ウェアラブルの3事業を展開。
・2/3発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上収益が前年同期比2.0%増の1兆438億円、事業利益が同13.7%減の637億円。事業セグメント利益は、主力のプリンティングソリューションズとビジュアルコミュニケーションが減益の一方、マニュファクチャリング関連・ウェアラブルが82億円へ黒字転換。
・通期会社計画を上方修正。売上収益を前期比2.0%増の1兆3900億円(従来計画1兆3700億円)とした。事業利益は同16.3%減の750億円、年間配当は同横ばいの74円と従来計画を据え置いた。同社は3/13、3年間の中期経営計画を発表。プリンターなど事務機への依存から脱却し、AI(人工知能)データセンター向け水晶デバイスや製造装置向け精密部品など「産業領域」を成長の柱とした。
キヤノン(7751)
4305 円 (3/19終値)

・1933年に高級小型カメラ研究で発足。複合機・プリンターなど「プリンティング」、デジタルカメラなど「イメージング」、CT装置など「メディカル」、半導体露光装置など「インダストリアル」の4事業を展開。
・1/29発表の2025/12通期は、売上高が前期比2.5%増の4兆6247億円、営業利益が前期の一時的要因の反動から同62.8%増の4553億円。事業別営業利益はプリンティング(売上比率53%)とインダストリアル(同8%)が減益の一方、メディカル(同12%)が33%増、イメージング(同22%)が14%増。
・2026/12通期会社計画は、売上高が前期比3.0%増の4兆7650億円、営業利益が同5.2%増の4790億円、年間配当が同横ばいの160円。配当方針は累進配当かつ配当性向40%を目途としている。生成AI(人工知能)需要で半導体製造の露光装置の売上が伸びていることに加え、人工衛星などを手がける子会社のキヤノン電子をTOBにより完全子会社化。宇宙・防衛関連としても注目される。
マラヤン・バンキング(MBBM)
市場:マレーシア 11.74 MYR (3/18終値)

・1969年に設立。愛称は「メイバンク」。マレーシア、シンガポール、インドネシアを中心に一般商業銀行のほかイスラム金融業務を行う。傘下のメイバンク・イスラムはイスラム銀行として国内首位。
・2/26発表の2025/12期4Q(10-12月)は、純営業収益が前年同期比1.3%増の75.19億MYR、純利益が同5.7%増の26.75億MYR。経費率が1.0ポイント改善の48.7%、純減損引当金繰入額が39.5%減と増益に貢献。12月末貸出残高が1.7%増に加え、純金利マージンも0.03ポイント拡大した。
・2026/12通期会社見通しは、期末貸出残高が前期比4-5%増、経費率が49%(前期実績48.8%)、純金利マージンが2.05-2.10%(同2.05%)である。1月に発表した新5ヵ年計画「ROAR30」は、「金融サービスを人間らしくする」という長年のパーパス(Purpose)を再強化しつつ、スケールある事業構築という基盤強化を軸に、ROE(株主資本利益率)の13-14%(現在11.7%)の達成を目指している。
■アセアン株式ウィークリーストラテジー
(3/23号:マレーシア・リンギット高の背景)

マレーシア政府は3/9、資本市場拡大を目的とした2026~2030年の5ヵ年計画を発表。個人投資家による資本市場へのアクセス向上や、海外企業の上場支援を通じた外国資産の拡大などに取り組む方針を示した。持続可能性(サステナブル)ファイナンスへの対応や東南アジアに焦点を当てた上場投資信託(ETF)の拡充も推進するとしている。近年、マレーシアには半導体大手企業が進出するほか、同国のレアアース(希土類)埋蔵量の豊富さに着目した投資案件の増加している。隣国シンガポールと連携した経済特区も投資流入を誘うと見込まれている。経常黒字の継続、堅調な国内経済、外国からの直接投資増加、主要輸出品である資源の価格上昇などを背景に、MYR(マレーシア・リンギット)は対ドルで7年ぶりの高値をつけたほか、対円でも28年半ぶりの高値圏にある。
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。
