【投資戦略ウィークリー 2026年3月2日号(2026年2月27日作成)】”半導体とソフトウェア、日銀金融政策を巡る動き、親子上場解消”
■半導体とソフトウェア、日銀金融政策を巡る動き、親子上場解消
- 半導体関連銘柄とソフトウェア関連銘柄が対照的な動きとなっている。AI(人工知能)の普及・進化に伴ってAI半導体・インフラ需要増が加速する一方、ソフトウェア企業は収益源が揺さぶられる「SaaSの死」が話題となり、年初以降に「半導体買い、ソフトウェア・IT売り」が鮮明となった。米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の週次終値が2/20まで10週連続で前週比上昇を続ける中、米エヌビディア(NVDA)は好決算を発表したにもかかわらず、発表翌日の株価が下落。それに呼応するかのように、ソフトウェア・ITソリューション関連銘柄は売られ過ぎからのリバウンド局面に移行しつつある。エヌビディアと同じタイミングで決算を発表した米セールスフォース(CRM)は、慎重な会社見通しにもかかわらず、発表翌日の株価は堅調に推移した。半導体関連とソフトウェア関連の逆相関には当面注意が必要だろう。
- 日銀の金融政策に関し、高市首相が植田日銀総裁との会談後に利上げに難色を示したほか、次期日銀審議員の人事案で財政支出拡大と金融緩和に積極的とされる「リフレ派」を国会に提示したことから、日銀の利上げが遅れるとの見通しを受け、日経平均株価が上昇を加速する場面があった。これに対し、植田総裁は3月と4月の金融政策決定会合に際して「そこまでに得られる情報を丹念に点検した上で意思決定をしていきたい」と述べている。3/5公表の連合による26年春闘での要求集計結果もその重要な情報となりそうだ。また、日銀審議委員がリフレ派だからといって、経済学者としてデータを重視した判断を行うことが期待されていることに変わりはない。市場の反応はやや過剰だったのではないだろうか。
- 利上げの遅れはインフレ加速を通じて将来の利上げペースの加速につながることから、中期的には銀行株にプラスとなる余地がある面を市場はあまり考慮していないように思われる。不動産株についても、利上げが借入金利の上昇に伴う収益減少の反面、賃料の引き上げでコスト増を吸収する余地があることから、インフレ局面では金利上昇が不動産株の売りにつながるわけではないと考えられる。
- 金融庁は2/26、コーポレートガバナンス・コードの改訂案を有識者会議に提出した。少数株主との利益相反から問題とされる場合の多い「親子上場」についても解消の動きが加速している。JX金属(5016)が2/25、子会社の東邦チタニウムを株式交換で完全子会社化すると発表。また、同日、伊藤忠商事(8001)が子会社の伊藤忠食品(2692)に対し、別の子会社を通じたTOB(株式公開買付)で完全子会社化すると発表した。特に最近の「ソフトウェア・IT売り」の動きを受けてグループ内の優良ITソリューション企業の株価が下落すれば、親会社が完全子会社化に向けて動く可能性もあるだろう。(笹木)
本日号は、伊藤ハム米久ホールディングス(2296)、JMホールディングス(3539) 、東芝テック(6588)、平和不動産リート投資法人(8966) 、バンク・ネガラ・インドネシア(BBNI) を取り上げた。

■主な企業決算の予定
- 3月2日(月): 伊藤園
- 3月3日(火):(米)クラウドストライク・ホールディングス、ロス・ストアーズ、ターゲット
- 3月4日(水): ダイドーグループホールディングス、内田洋行、(米)ブロードコム
- 3月5日(木): 積水ハウス、タカショー、(米)コストコホールセール、マーベル・テクノロジー
- 3月6日(金): ロック・フィールド、日本ハウスホールディングス、泉州電業、日本駐車場開発、日本スキー場開発、アイル
■主要イベントの予定
- 3月2日(月):
・トヨタ自動車グループによる豊田自動織機の株式公開買い付け期間・最終日、
09:30 S&Pグローバル日本製造業PMI (2月)、10:30 日銀の氷見野良三副総裁が和歌山県金融経済懇談会で講演(14:00 記者会見)、15:30 日本航空が「JALグループ経営ビジョン2035」を公表、16:00日銀債券市場サーベイ(2月調査)
・ECB総裁が国際女性デーのイベントで講演、国際原子力機関(IAEA)定例理事会(ウィーン、6日まで)、モバイル見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)バルセロナ」(5日まで)
・米S&Pグローバル製造業PMI(2月)、米ISM製造業景況指数(2月)、ユーロ圏製造業PMI(2月)、中国RatingDog製造業PMI(2月)、トルコGDP(4Q)
- 3月3日(火):
・財務省10年利付国債入札、FIN/SUM 2026 (6日まで、09:20 片山財務相があいさつ・ビデオメッセージ、13:00 植田日銀総裁があいさつ)、08:30 失業率・有効求人倍率(1月)、08:50 法人企業統計(25年10-12月)、08:50 マネタリーベース(2月)
・米ニューヨーク連銀総裁が基調講演、米ミネアポリス連銀総裁が「Bloomberg Invest」カンファレンスで講演
・米自動車販売 (2月)、ユーロ圏CPI(2月)、ブラジルGDP(4Q)
- 3月4日(水):
・09:30 S&Pグローバル日本複合・サービス業PMI(2月)、14:00 消費者態度指数(2月)、
・米地区連銀経済報告(ベージュブック)公表
・米ADP雇用統計 (2月)、米S&Pグローバル・サービス業・総合PMI(2月)、米ISM非製造業総合景況指数 (2月)、ユーロ圏サービス業・総合PMI(2月)、ユーロ圏PPI (1月)、ユーロ圏失業率(1月)、中国製造業・非製造業PMI(2月)、中国RatingDogサービス業・総合PMI(2月)、豪GDP (4Q)
- 3月5日(木)
・財務省30年利付国債入札、連合が26年春闘での要求集計結果、08:50 対外・対内証券投資(2月22-28日)
・ラガルドECB総裁がグローバルリスク関連のイベントで講演(ボローニャ)、中国全国人民代表大会(全人代)が開幕(北京)、20カ国・地域の野球対抗戦ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)開幕(米マイアミで17日に決勝戦)、ネパール総選挙
・米輸入物価指数(1月)、米新規失業保険申請件数 (2月28日終了週)、ユーロ圏小売売上高 (1月)
- 3月6日(金):
・カナダのカーニー首相が来日(7日まで)
・ 米クリーブランド連銀総裁がパネル討論会に参加、スイス 外貨準備高(2月)、冬季パラリンピック開幕(イタリアのミラノとコルティナ、15日まで)
・米失業率 (2月)、米非農業部門雇用者数変化 (2月)、米消費者信用残高(1月)、独製造業受注 (1月)、ユーロ圏GDP(4Q)
- 3月7日(土):
・中国外貨準備高(2月)
- 3月8日(日):
・米夏時間開始
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■エヌビディア26/1四半期決算発表
米エヌビディア(NVDA)が2/25に発表した2025/11-2026/1期決算は、売上高が前年同期比73%増の681億USD(会社予想637-663億USD)、調整後粗利益率が75.2%(同75.0%)と好調な内容だった。ファンCEOは「エージェント(自律)型AI(人工知能)は転換点を迎えた。データを処理する驚異的な需要が生まれている」と強気の発言を繰り返した。AI需要拡大で手許現金が625億USDに達し、潤沢なキャッシュが顧客企業への出資に向かっている。それが顧客企業のAI半導体購入資金を支え、エヌビディアの売上成長と利益率向上を支援する構図となっている。今後の課題は、新興AI企業のOpenAIなど、先行投資が嵩む出資先企業が利益やキャッシュフロー面でいつ黒字化を達成できるかにあると考えられる。
【エヌビディア26/1四半期決算発表~調整後粗利益率が前四半期比で上昇】

■「推し活」と金の「痛金」グッズ人気
中国を発祥として、「推し」に対する「痛々しい愛」を意味する「痛文化」を背景にキャラクターなどの知的財産(IP)を使った金の宝飾品の「痛金(トンジン)」グッズが人気となっている。金価格上昇で価値が高まる可能性があることも大きい。
ワールド・ゴールド・カウンシルによれば中国において世代別で金の宝飾品を持つ割合は、18-24歳が2025年に62%と6年前の25%から拡大。痛金の存在で若い世代が金の価値を知り、金の宝飾品に愛着を持つようになってきている。宝飾店では、サンリオ(8136)の人気キャラクターなどを使った金のアクセサリーが人気化している。産金会社の他、中国発の人気キャラクターを擁する玩具メーカーのポップマート・インターナショナル(9992香港)に追い風が見込まれる。
【「推し活」と金の「痛金」グッズ人気~推しキャラへの痛い愛情と金への需要】

■海外投資家と事業法人の買い
東証が発表する投資主体別株式売買動向によると、2月第2週(9-13日)は衆院選で与党・自民党が大勝し、高市首相の政権基盤が安定するとの見方から海外投資家(現物と先物の合計)が1兆7838億円の記録的な買い越しとなった。年初来累計の買い越し額も3兆4128億円に達し、2025年の年間買い越し額の約35%相当水準に達した。一方、個人投資家は海外投資家と逆の動きを示し、年初来累計の売り越し額も1兆5068億円に上った。また、事業法人は自社株買いを背景に継続的な買い越しとなる一方、主に年金部門に関わる信託銀行は、ポートフォリオ・リバランスの観点から相場上昇に伴い継続的な売り越しとなっている。この4主体は、2025年4月以降の傾向を今年も引き継いでいることがうかがわれる。
【海外投資家と事業法人の買い~個人投資家と信託銀行(主に年金)が売り】

■銘柄ピックアップ
伊藤ハム米久ホールディングス(2296)
6450 円(2/27終値)

・2015年に伊藤ハムと米久が株式移転により経営統合。三菱商事(8058)が40%超を保有。加工食品事業(ハム・ソーセージ、調理加工食品の製造・販売)、食肉事業(食肉等の製造・販売)を展開。
・2/5発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比8.1%増の8200億円、営業利益が同26.9%増の217億円。事業別経常利益は、加工食品事業(売上比率38%)が7%減の81億円、食肉事業(同62%)が国産鶏肉の相場上昇や国産豚肉の採算性改善の寄与もあり61%増の162億円。
・通期会社計画を上方修正。営業利益を前期比40.5%増の275億円(従来計画270億円)とした。売上高は同6.2%増の1兆500億円、年間普通配当は同横ばいの145円と従来計画を据え置いた。消費税減税などを議論する超党派の「国民会議」が2/26、初会合を開催。高市首相は「給付付き税額控除」の実施までの2年間に限定したつなぎと位置付けて食料品の消費税率ゼロを検討する方針。
JMホールディングス(3539)
1731 円 (2/27終値)
・1978年に食肉卸売を目的として現在の茨城県小美玉市で設立。茨城県を中心に食品スーパーを展開。2013年に業務用スーパー「肉のハナマサ」の花正を子会社化して以降、関東圏で成長。
・12/12発表の2026/7期1Q(8-10月)は、売上高が前年同期比8.2%増の476億円、営業利益が同18.9%増の21.9億円。消費者の節約志向を追い風に、スーパーマーケット事業、外食事業の既存店売上高が順調に推移。スーパーマーケット事業の10月末店舗数は前年同期比9店増の115店舗。
・通期会社計画は、売上高が前期比5.3%増の1960億円、営業利益が同8.5%増の109億円、株式分割の影響考慮後の年間配当が同1円増配の23円。同社は大型商業施設内店舗、単独店舗、都市型ホールセール、地域密着型食品スーパーなど多様な店舗業態と青果仲卸事業、米穀小売業などを擁し、顧客ニーズに細かく対応できる点に強みがある。M&Aによる店舗拡大にも積極的である。
東芝テック(6588)
3295 円(2/27値)
・1950年に東芝から分離独立。「TEC」ブランドで知られる流通系POSシステム機器を取り扱うリテールソリューション事業、および複合機等を取り扱うワークプレイスソリューション事業を主な事業とする。
・2/9発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比6.0%減の3998億円、営業利益が同78.4%減の25億円。米国を中心として米国関税措置に伴い生じた市況悪化および顧客の投資時期の遅れの影響に対し、製品価格の改訂や生産拠点最適化の施策効果で吸収できなかった。
・通期会社計画を上方修正。国内市場向け売上高の増加を見込んで売上高を前期比1.2%減の5700億円(従来計画5500億円)とした。営業利益は同40.7%減の120億円、年間配当は同25円減配の20円と従来計画を据え置いた。10-12月期の四半期単独では、米国関税措置の影響一巡と製品価格改定の効果もあり、売上高が前年同期比4%増、営業利益が同58%増と回復の兆しを示した。
平和不動産リート投資法人(8966)
156500 円 (2/27終値)
・平和不動産(8803)をスポンサーとする総合型REIT。東京都区部の住宅とオフィスを主要な投資対象とし、用途別で住宅が約50%、オフィスが約47%(2026年1月末)。継続的な物件入替えに特徴。
・1/17発表の2025/11期(6-11月)は、営業収益が前期(12-5月)比5.4%増の107億円、営業利益が同7.7%増の59億円、1口当たり分配金(利益超過分配金を含まない)が同2.6%増の3950円。期中平均稼働率が前期末比0.7ポイント上昇の97.8%、運用資産合計が同2件増の133物件となった。
・2026/5期(12-5月)会社計画は、営業収益が前期(6-11月)比16.4%減の89億円、営業利益が同31.3%減の41億円、1口当たり分配金(利益超過分配金を含まない)が同1.0%増の3990円。2/26終値で、2026/11期まで含めた会社予想分配金利回りが5.04%、投資口価格に対するNAV(純資産価値)倍率が1.06倍。平和不動産の開発力を背景に、安定的な資産入れ替えを行える点が強みだ。
バンク・ネガラ・インドネシア(BBNI)
市場:インドネシア 4460 IDR (2/26終値)

・1946年設立の国有商業銀行。当初は中央銀行の機能もあったが、1949年に蘭系ジャワ銀行に中銀業務を引き継がせた。設立年にちなみ、「46」をロゴマークやブランド名に取り入れている。
・2/3発表の2025/12期4Q(10-12月)は、総収益が前年同期比2.2%増の18.4兆IDR、純利益が同4.4%減の4.9兆IDR。純金利マージンは縮小したものの、貸出残高が増加し純金利収益は0.3%増の11.0兆IDR。手数料収益も5.1%増の7.3兆IDR。経費率悪化と不良債権処理費用の増加が響き減益。
・2026/12通期会社計画は、貸出残高が前期比8-10%増、純金利マージンが3.5-3.8%(前期実績3.8%)。デジタルチャネル(Eバンキング)でモバイルバンキングの取引金額が伸びる中、特にビジネス顧客向けのデジタル取引金額は2025/12通期実績が前期比27%増の11.4兆IDRに上った。インドネシアが通貨安への対応から利下げが容易ではない点は、純金利マージンの下支え要因だろう。
■アセアン株式ウィークリーストラテジー
(3/2号:トランプ関税違憲判決とアセアンへの影響」)

米連邦最高裁は2/20、トランプ米大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき発動した相互関税やフェンタニル関税について「大統領に発動権限はない」と判断し、無効とした。これを受けてトランプ米政権は相互関税の徴収を停止し、深刻な国際収支の赤字等に対応するための法律である「1974年通商法第122条」に基づき、150日間限定の措置で10%の関税を代替的に発動するとした。
トランプ政権は15%に引き上げを検討しているが、主要な東南アジア諸国は、2025年のトランプ米政権による「相互関税」措置においてベトナムが20%、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンが19%に設定されていたことから、各国経済への追い風が見込まれる。ただ、将来的には「1974年通商法第301条」に基づいた、より高い関税率が適用される可能性が残っている点は要注意だろう。
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。
