現役のファンドマネージャーとして運用をしていた頃、いかにマーケット(市場)の売買シグナルを考えればよいのか、四六時中考えていました。
というのも、筆者はブラックマンデーやバブル崩壊といった大きな下落に遭遇し、そのたびにファンドの立て直しに苦労したからなのです。
ファンドは分散投資を基本としているため、そのほとんどが市場の動きに連動します。つまり、ファンドの株価指数に対するβ値は1に近いのです。故に、マーケットの変化をいかに早く掴むか、これが重要な課題でした。
当時は、PCがようやく家庭にも入り始めた頃で、家にパソコンを持っている割合というのは低かったです。
そんな中で、ファンドマネージャー2年目の時に、思い切ってパソコンを購入。「ロータス123」という表計算ソフトとの戦いが始まったのです。
今でこそ、RSI,ストキャスティクスやMACDなどと言ったテクニカル分析は当たり前のように使われていますが、当時はまだアメリカから輸入されたばかりで、市場の多くの関係者は知らなかったのです。
筆者は、ロータス123を使って、自ら計算式を組み入れてRSIなどを作って表示していました。
そうした中、常に頭の中にあるのは、有効なトレンドの転換をどのように見つけるか、ということでした。
移動平均線のGCやDC、MACDとシグナルのクロスなど教科書に載っていることから、オリジナルを含めて工夫の連続です。
通勤途中では歩きながらでも、頭の中にはチャートがぐるぐる回っていました。
そんな中、『流れが変わる』ということは、天井を通過してから下落、底値を通過してから上昇という状態をいうのですから、移動平均線で考えると、なだらかに流れが変わっていく形状を指します。
そうであれば、高校生の時に習った「微分」を使って、移動平均線の接線の角度を調べるによってトレンドの変化を掴めるのではないか、と考え、本屋さんに行って『よくわかる微分』といった入門書を買ってきたこともありました。
しかし、もう少し、簡単に天底を通過しトレンドが変わったことを知ることは出来ないだろうか、と考えた時に思いついたのが、現在値を過去の値段を比較することなのです。
つまり。「現在値―過去の値」を計算し、『+(プラス)』になるということは、現在値が過去の値よりも高く、上昇が続いていることを表しています。逆に、『―(マイナス)』になっているというのは下落が続いていることを示します。
ということは、『プラス』から『マイナス』に移行する際に『0』、つまり、現在値から過去の値を引いた時にから0となるというのは、上昇から天井を通過し下落に転じたことを意味するのです。
そして、現在値と過去の価格の価格の差を算出して、上昇・下落を考えるのが「モメンタム」なのです。
モメンタムを使うにあたって、問題が2つ存在します。
一つは、何日前と比較をすればいいのか、ということです。
1日前だと、単に前日比となるだけで、トレンドの転換を掴むことは出来ません。
3日前、5日前、10日前・・・いろいろ考えることが出来ます。
上図は1日前の価格と比較しています。これだと赤い矢印で示した上昇トレンドも、下段のモメンタムを見るとはっきりしません。
上図は比較を5日前の価格に設定しました。ですが。トレンドの変化を掴むのは難しいのではないでしょうか。
上図は、思い切って20日前と比較しています。これまでの例とちがって、トレンドの流れの変化を多少掴めるような気がします。
ただ、それでも屈折点が多過ぎて実際に使うとなると難しい面があると思います。
そこで2番目の問題点。どの数値でモメンタムを使うのか、というがあるのです。
結論から言うと、筆者は移動平均線などのように、なだらかになった線でモメンタムを使う方が良いと考えています。
例えば、下図を見てください。
矢印で示した移動平均でモメンタムを使った方が、トレンドの転換点を見つけやすいのではないかと考えています。
しかも、移動平均線のようになだらかな曲線を描いているのであれば、モメンタムのパラメーターも3日前や5日前といった具合に短めのパラメーターでも役に立つことが考えられます。
モメンタムは大変便利な考え方だと思っています。故に、それぞれが工夫することでトレンドの転換を見つけやすくなると考えています。
是非、試してみてください。
川口 一晃(オフィスKAZ代表取締役)
1986 年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問や国内投信会社で11年間ファンドマネージャーを務める。
2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。