テクニカル分析はいくつかの種類に分類することが出来ます。例えば、トレンドの分析を得意とするトレンド系、買われ過ぎや売られ過ぎを得意とするオシレーター系などの分類があります。ただし、これらの分析のデータは「価格」です。価格というデータを取り込み計算します。でも、マーケットのデータは価格だけではありません。時間や出来高などもデータとなります。
そこで、今回は出来高を考慮したテクニカル分析を紹介したいと思います。
株式相場の世界では「出来高は価格に先行する」ということが言われます。価格は動いていないのに、出来高が増えてくる。そのうち、価格が大きく上昇ないしは下落をすることがあるのです。早耳と呼ばれる投資家がいるのでしょうか。大きく動く前にエネルギーが注入されているようなイメージです(もちろん、インサイダーはダメですよ)。
ですので、通常の出来高に比べて出来高が急増した銘柄を検索する機能などが搭載されている情報ツールもあったりします。
でも、これは株式の世界の話しです。というのも、株式の場合は出来高が正確にカウントされますので、出来高を基にしたテクニカルが成り立ちます。それに対して、為替は世界中で取引をされており、出来高を正確に把握することは難しいのです。故に、為替を分析するテクニカル分析では、出来高系のテクニカル分析は使うことが出来ない、と言われています。
ところが、下図を見てください。
これはドル円の日足ですが、矢印で示した下段に出来高が表示されています。では、どのようにドル円の出来高をカウントしているのでしょうか。実は、これは正式な出来高とは違います。ティック(Tick)の数をカウントしたものなのです。
DXは+DIから-DIを引いた数値の絶対値を+DIと-DIの合計値で割って求めます。
ティックというのは、FXで配信され表示されているレートのことです。
例えば、150円00銭、150円01銭そして150円02銭と表示されていく一つ一つのレートのことをいうのです。
株式でいうのであれば、1000円、1001円、1002円という表示される価格という感じです。
前述したように、24時間世界中で取引されている為替の出来高はカウントするのは難しいのですが、表示されるレートが変わっていく数はカウントできるでしょう。
つまり、正式な出来高はカウントできませんが、150円00銭と表示されたレートが150円01銭と変化していくということは150円で売買が成立し、次に01銭で成立する。つまり、そのレートで取引が行われた。そして、価格が大きく上昇、大きく下落していくのであれば、表示されるティックの数も大きくなることから、表示されるティックの数を出来高に類似したものとして考えることは出来るのではないでしょうか。
ということで、出来高を考慮したテクニカル分析を紹介します。
今回紹介するのは、OBV(オン・バランス・ボリューム)というテクニカル分析です。上述したように、「出来高は価格に先行する」という言葉にあるように、出来高の変化が価格の変化に影響するのであれば、その出来高と価格の関係をグラフに示そうとするものです。
OBVの作成方法は(日足をベースにすると)まず、その日の終値が前日の終値に対して上昇したのか、下落したのかに着目します。
前の日に比べて価格が上昇したのであれば、その日の出来高を加算します。
逆に下落をしたのであれば、その日の出来高を減算します。
FXの場合、確率的には低いのですが、前日比と当時の価格が変わりない、同値の場合は前日の終値が前々日に比べて、上昇していたのであれば加算、下落していたのであれば減算をします。
この計算に基づいて作成したのがOBVです。
ドル円の価格の動きと下段に表示をしたOBVの動きを見ると相関関係が高いことが理解できると思います。
次回は、FXにおけるOBVの利用上のポイントを解説したいと思います。
川口 一晃(オフィスKAZ代表取締役)
1986 年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問や国内投信会社で11年間ファンドマネージャーを務める。
2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。