【投資戦略ウィークリー 2026年1月19日号(2026年1月16日作成)】”「サプライズ解散」と株価、決算シーズン、投資促進税制”
■「サプライズ解散」と株価、決算シーズン、投資促進税制
- 高市首相が1/23召集の通常国会の冒頭に衆院を解散する見通しとなった。1/9の午後11時に読売新聞が「衆院解散を検討」と報じた直後、その「サプライズ」を受けて夜間の日経平均先物(3月限)は5万2000円近辺から一挙に5万3500~5万3900円台まで急騰。週明け1/13以降の日経平均株価は1/14に5万4487円まで上昇した。市場は、各種の情勢調査にみられるように衆院過半数233議席に対し、自民党単独で250議席超を獲得する大勝を織り込んだ可能性がある。
- 野党の立憲民主党と公明党が1/16、衆院選に向けて新党「中道改革連合」を結成すると報じられた「逆サプライズ」を受けて日経平均株価の上昇の勢いが鈍化したとみられる。日経平均株価の5万3500円台半ばの水準は、自民党の単独過半数超えシナリオと密接に関係してくる可能性があり、注視すべき水準だろう。
- 政策面では、野党も減税を中心とした財政支出拡大路線になると考えられ、高市政権の「責任ある財政」と軌を一にしている。日銀の金融政策に対しては物価高対策を重視する観点から、野党の方がタカ派的スタンスになりやすい面はあるものの、選挙動向によって株価の方向性が大きく変わるとは考えにくいところだ。
- 市場関係者の多数が通常国会終了後の解散総選挙を想定していた中、その日程が大幅に前倒しとなることは、今年の日経平均株価が年内高値を付ける時期も前倒しとなる可能性がある点に要注意だろう。今回と同様に、当時の安倍首相によるサプライズ解散となった2017年の衆院選挙では、日経平均株価が10/22の投開票後も上昇して翌2018年1月に2万4129円まで上昇したものの、その後の下落から年内高値を更新するまで8カ月以上を要した。
- 日本株が幅広い業種にまたがって買われる中、昨年7-8月に付けた昨年来高値から下落基調で推移する銘柄群もある。任天堂(7974)は半導体メモリー市況高騰によりゲーム機の製造コストが嵩むことが懸念されて昨年8月に付けた上場来高値から下落基調にある。高値からの制度信用取引期日到来を控え、押し目買いの時期を探る余地がある。決算発表シーズンを控え、一般的に株価大幅上昇は業績への期待も高まることを意味する。一見すると好決算でも「材料出尽くし」で大きく売られる銘柄が出やすくなっていることに要注意だろう。
- 高市政権は「強い経済」に向けて、令和8年度税制改正では国内への投資を促すため、原則として全業種を対象とし、機械装置やソフトウェアだけでなく「建物・構築物」もその対象に含める大胆な投資促進税制を定めた。設備投資の恩恵を受けやすい工作機械などの業種は、産業用ロボット関連の「フィジカルAI(人工知能)」も含めて投資の好機が到来している可能性がある。(笹木)
本日号は、ヘルスケア&メディカル投資法人(3455)、ゴールドウイン(8111)、エイチ・ツー・オー・リテイリング(8242)、コナミ・グループ(9766)、IHHヘルスケア(IHH) を取り上げた。


■主な企業決算の予定
- 1月19日(月): 平和不動産リート投資法人
- 1月20日(火): ユナイテッド・アーバン投資法人、ブロンコビリー、(米)ネットフリックス
ファスナル、USバンコープ、3M
- 1月21日(水):日本ホテル&レジデンシャル投資法人、日本プロロジスリート投資法人、SOSiLA物流リート投資法人、ディスコ、(米)チャールズ・シュワブ、ジョンソン・エンド・ジョンソン
- 1月22日(木):大和証券オフィス投資法人、(米)インテュイティブサージカル、CSX、インテル、キャピタル・ワン・ファイナンシャル、ゼネラル・エレクトリック、プロクター・アンド・ギャンブル、アボットラボラトリーズ
- 1月23日(金): 阪急阪神リート投資法人、ブルドックソース、東京製鐵、日置電機
■主要イベントの予定
- 1月19日(月):
・08:50 コア機械受注(11月)、13:30 鉱工業生産・設備稼働率(11月)、13:30 第3次産業活動指数(11月)
・米株式・債券市場休場(キング牧師生誕記念日の祝日)、世界経済フォーラム(WEF)年次総会(スイス・ダボス、23日まで)、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ、ブリュッセル)、国際通貨基金(IMF)世界経済見通し
・ユーロ圏CPI(12月)、中国新築住宅価格・中古住宅価格(12月)、中国GDP(4Q)、中国小売売上高・工業生産・都市部固定資産投資(12月)
- 1月20日(火):
・財務省20年利付国債入札
・中国1年・5年物ローンプライムレート(LPR)、EU財務相理事会(ブリュッセル)
・米ADP民間雇用者数(週次)、独ZEW期待指数(1月)、英ILO失業率(9-11月)
- 1月21日(水):
・自動車技術展「オートモーティブワールド」開幕(東京ビッグサイト、23日まで)、ロボットの展示会「ロボデックス」開幕(東京ビッグサイト、23日まで)、12月の訪日外客数、インバウンド消費動向調査(10-12月分) 、日銀の国債買い入れオペ、14:30日証協会長会見
・ラガルドECB総裁がパネル討論会に参加(ダボス)、インドネシア中銀が政策金利発表
・米中古住宅販売成約指数(12月)、米景気先行指標総合指数(12月)、米建設支出(9、10月)、英CPI (12月)
- 1月22日(木)
・08:50 貿易収支・輸出・輸入(12月)、08:50 対内・対外証券投資(1月16日)
・ECB議事要旨(12月開催分)、ノルウェー中銀とトルコ中銀とマレーシア中銀が政策金利発表、米アカデミー賞ノミネート発表
・米新規失業保険申請件数(1月17日終了週)、米個人所得・支出(10、11月)、米個人消費支出(PCE)価格指数(10、11月)、米GDP(3Q)、ユーロ圏消費者信頼感指数(1月)、韓国GDP(4Q)、豪雇用統計(12月)
- 1月23日(金):
・通常国会召集、日銀金融政策決定会合・終了後に結果と展望リポートを公表(15:30 植田総裁会見)、08:30 全国CPI(12月)、09:30 S&Pグローバル日本複合・製造業・サービス業PMI(1月)、14:30 全国百貨店・東京地区百貨店売上高(12月)
・ラガルドECB総裁とゲオルギエワIMF専務理事、パネル討論会に参加(ダボス)
・米ミシガン大学消費者マインド指数(1月)、米S&Pグローバル製造業・サービス業・総合PMI (1月、速報値)、ユーロ圏製造業・サービス業・総合PMI(1月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■米国株の「1月効果」と月ごと推移
米国株市場では、年末の節税売り後の買い戻しや新年の資金流入を背景に、1月の株価リターンが他の月より高くなりやすい「1月効果」のアノマリー(経験則)が指摘される。特に中小型株でその傾向がみられるとされている。1975年~2025年まで51年間のS&P500株価指数の月間騰落率を見ると、月別平均値は1月が1.27%と、11月、4月に次いで3番目に高く、1月効果の存在が裏付けられている。ただ、データの対象期間を1998年以降に変えると、1月の平均値が0.11%に低下し9番目に下がってしまうことから、アノマリーの効力が低下している可能性がある。
過去51年間の月別平均値で2月は0.09%と、9月の次にパフォーマンスが低い。1998年からの過去28年間でもマイナス0.325%となっている。
【米国株の「1月効果」と月ごと推移~過去51年間の平均で3番目の上昇率】

■アセアン主要6カ国の株価・通貨
アセアン主要6カ国の2025年における株式市場を見ると、トランプ関税の緩和から輸出が伸びたベトナム、金融当局(MAS)の市場活性化政策が功を奏したシンガポール、金や銅など貴金属・非鉄金属の堅調な市況を追い風としたインドネシアの株式市場が目立った。そのうち、シンガポールは通貨も堅調に推移した一方、ベトナムとインドネシアは成長重視による政策金利の低位据え置きから通貨は軟調に推移した。
タイとマレーシアの2025年は株式市場が軟調だった一方、トランプ政権による貿易政策の不確実性や9月以降の米FRB(連邦準備理事会)による利下げ開始を受けて通貨は堅調に推移。両国ともに経常収支が黒字基調で安定している点が通貨高のベースにあるとみられる。
【アセアン主要6カ国の株価・通貨~株高・通貨安の国、株安・通貨高の国】

■2017年衆院解散総選挙の再来か
高市首相は1/23召集の通常国会の冒頭で衆議院を解散する見通しとなった。開票日は2/8または2/15の案が出ている。台湾有事に関する首相発言で日中関係が悪化した対外情勢に加え、旧統一教会との関係に関する疑惑といった国内情勢の「内憂外患」を高い支持率を背景に乗り切ろうという意図も窺われる。
今回の「サプライズ解散」は2017年の衆院解散総選挙と状況が類似している。当時は北朝鮮のミサイル発射といった「外患」に加え、森友・加計学園問題の追及といった「内憂」を背景に安倍政権への信任が問われたが、野党の分裂・混乱もあり与党が大勝し、さらなる長期政権化の礎を築いた。「憶測」の朝刊一斉報道から選挙を経て2カ月弱で、日経平均株価は約15%上昇した。
【2017年衆院解散総選挙の再来か~当時は北朝鮮情勢と「モリ・カケ」問題】

■銘柄ピックアップ
ヘルスケア&メディカル投資法人(3455)
124700 円(1/16終値)
・介護医療事業を営むシップヘルスケアHD(3360)に加え、三井住友銀行、NECキャピタルソリューションを主要スポンサーとするヘルスケア特化型J-REIT。2017年にJ-REITで初となる病院資産を取得。
・9/12発表の2025/7期(2-7月)は、営業収益が前期(2025/1期)比1.0%増の25.4億円、営業利益が同1.0%増の12.8億円、1口当たり分配金が同0.6%減の3164円(利益超過分配金335円含む)。7月末保有物件が横ばいの54件、稼働率100%。利益超過分配金は減価償却費の20%方針である。
・2026/1期(8-1月)会社計画は、営業収益が前期(2025/7期)比0.2%減の25.3億円、営業利益が同0.3%増の12.8億円、1口当たり分配金が同2.7%増の3250円。2026/7期まで含めた会社予想分配金利回り(1/15終値)が5.16%、株式のPBRに相当するNAV(純資産)倍率が0.89倍、JCR(日本格付研究所)による長期発行体格付はA+。国内金利上昇の逆風下でも高稼働率を背景に業績は安定。
ゴールドウイン(8111)
2643.5 円 (1/16終値)
・1951年に富山県西砺波郡津沢町で津沢メリヤス製造所を設立。スポーツ用品関連として、アウトドア関連ブランド、アスレチック関連ブランド、ウインター関連ブランドのそれぞれの商品を主に扱う。
・11/6発表の2026/3期1H(4-9月)は、売上高が前年同期比4.2%増の555億円、営業利益が同35.5%増の69億円。直営店を中心に主力ブランド「THE NORTH FACE」の実需回復が進んだ他、インバウンド需要が高水準で推移。原価設計適正化や価格改定を受けて粗利益率が1.5ポイント改善。
・通期会社計画は、売上高が前期比6.2%増の1405億円、営業利益が同18.2%増の259億円、株式分割の影響を考慮後の年間普通配当が同0.33円増配の54.66円。同社は日本国内で商標権を持つ「THE NORTH FACE」に加え、海外で中国を中心に「ゴールドウイン」ブランドを展開。26年はニューヨーク、ロンドン等で出店予定。2月開催の「ミラノ・コルティナ冬季五輪」も追い風になると見込まれる。
エイチ・ツー・オー・リテイリング(8242)
2138 円(1/16終値)
・2007年10月に阪急百貨店と阪神百貨店の経営統合により持株会社として設立。百貨店事業(阪急阪神百貨店)、食品事業(イズミヤ、関西スーパーマーケット他)、商業施設事業を主として展開。
・10/31発表の2026/3期1H(4-9月)は、売上高が前年同期比0.5%増の3330億円、営業利益が同21.0%減の118億円。主なセグメント利益は、百貨店事業(売上比率26%)が前年の好調なインバウンドの反動減と改装による売場閉鎖から35%減の82億円、食品事業(同63%)が14%増の42億円。
・通期会社計画は、売上高を前期比1.1%増の6890億円(従来計画6900億円)へ下方修正の一方、営業利益は同13.9%減の300億円、年間配当は同2円増配の44円と従来計画を据え置いた。阪急百貨店は外商部隊を強化し、沿線に住む富裕層の邸宅に御用聞きに出向いて顧客ニーズを捉える戦略に定評。日中関係悪化に伴うインバウンド減少の影響を相対的に受けにくい面があるだろう。
コナミ・グループ(9766)
21630 円 (1/16終値)
・1969年創業。家庭・携帯用ゲーム「デジタルエンタテインメント」、施設向けビデオゲーム「アミューズメント」、カジノ施設向け「ゲーミング&システム」、スポーツクラブ運営「スポーツ」の4事業を営む。
・10/30発表の2026/3期1H(4-9月)は、売上高が前年同期比22.1%増の2248億円、売上高から売上原価と販管費を控除した事業利益が同29.6%増の650億円。デジタルエンタテインメント事業(売上比率75%)は主力コンテンツが好調により28%増収(1687億円)、事業利益が32%増の613億円。
・通期会社計画は、売上高が前期比2.0%増の4300億円、事業利益が同4.5%増の1140億円、年間配当が同1円増配の166円。2026年は、2月の「ミラノ・コルティナ冬季五輪」にはじまり、3月に「2026ワールドベースボールクラシック(WBC)」、6月から7月にかけて「サッカー・ワールドカップ(W杯)北中米大会」が開催されるなど、スポーツのビッグイベントが目白押し。同社への追い風が見込まれる。
IHHヘルスケア(IHH)
市場:マレーシア 8.43 MYR (1/15終値)

・時価総額でアジア最大の民間病院の持株会社。三井物産(8031)が約33%を保有する筆頭株主。マレーシア、シンガポール、トルコ、インド、中国ほか11ヵ国1万5000超の病床を80の病院で運営。
・11/26発表の2025/12期3Q(7-9月)は、マレーシア会計基準適用によるインフレ調整後の営業収益が前年同期比16.4%増の65.70億MYR、EBITDAが同16.4%増の15.13億MYR。シンガポールと香港を除く主要地域セグメントで入院患者数が増加。さらに、全地域で1患者当たり平均収入が増加した。
・同社は2028年までの病床数を2023年末比33%増(4000床の増加)とすることを目標としている。2024年には1000床を増加させた。シンガポールでは大規模リノベーションによって一時的に入院患者数が減少していたマウント・エリザベス・オーチャード病院の患者数回復が見込まれるほか、マレーシアにおける国策の医療ツーリズムに基づく外国人患者数の増加が業績拡大に寄与している。
■アセアン株式ウィークリーストラテジー
(1/19号:留学先として人気が高まるマレーシア)

大学生の新たな留学先としてマレーシアの人気が高まっている。マレーシア教育省によれば、マレーシアへの留学申請件数は2022年の5万1677件から、2025年は11月時点で8万7206件に達した。マレーシアは2004年にインターナショナルスクールへの入学規則を緩和して以来、シンガポールやオーストラリアに代わる低予算の留学先として考えられてきた。それに加え、ここ数年は、伝統的な留学先である米国や英国で移民規制が強化されたことや、経済成長、公用語である英語を話す機会が多い環境、多様な学習内容、中国系コミュニティにとっての文化的価値観の近さといった面から積極的にマレーシアで子供の教育を進めるケースが増えている。また、イスラム教徒の学生が暮らしやすく、多民族国家で文化的な多様性があり、安全性・社会的信頼性が高いことも大きな魅力だ。
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。
