【投資戦略ウィークリー 2026年2月16日号(2026年2月13日作成)】”自民大勝後に進む円高・債券高、AIに取って代わられないHALO株”
■自民大勝後に進む円高・債券高、AIに取って代わられないHALO株
- 衆院選における自民党の大勝後、円高と債券高(長期金利低下)が進んでいる。高市首相が積極的な財政政策と金融緩和で意図的に経済を過熱させる「高圧経済」を志向しているとの見方から、株高の副産物としてインフレ懸念による円安と債券安(長期金利上昇)が進むのではないかという見方は外れたのだろうか?
- 円高が進んでいる背景には、長期・安定政権への期待の高まりも一部あるとみられるものの、主な要因は日銀の追加利上げへの思惑だろう。食料品の消費税減税(ゼロ税率)に関する選挙公約が2年間の時限的なものとはいえ、財政政策が拡張的であることには変わりなく、財政拡張は、基調的なインフレ率を重視する日銀にとって利上げをサポートする方向に働きやすいとみられる。
- 一方、債券高が進んでいる要因は、食料品の消費税減税を巡り、高市首相が「特例公債(赤字国債)」に依存しないと改めて説明し、財政懸念がやや後退したことが大きい。高市政権は食料品の消費税減税について、超党派の国民会議を設置して議論を進める方針で、「夏前、6月には中間報告」を目指している。片山財務相は2/13、同時並行的に給付付き税額控除についても検討を進めると述べている。消費税率の維持と社会保険料の引き下げを訴えた「チームみらい」が若年層の支持を得て衆院選で躍進したこともあり、債券市場の見通しの観点からも今後の議論の方向が注目されるところだ。選挙公約は軽いものではないとの見方に立てば、株式では食品スーパー関連銘柄は円高メリットも享受できることから、好機だろう。
- サービス業務がAI(人工知能)に取って代わられ、収益を揺るがす「SaaSの死」への懸念が高まり、ソフトウェア関連株が売られる一方で、AIの影響を受けにくい銘柄探しも進んでいる。最近話題を集めているのが「HALO株」だ。これは「Heavy Asset Low Obsolescence」の略称で、価値の高い資産を持ち、事業の陳腐化リスクが低い会社を指す。その上で、「AIが製品・サービスを複製できるか否か」がHALO株の基準とされる。米国株の主要銘柄の中では、飛行機という「重い資産」を持つデルタ航空、製品の物理性とブランド流通への強みからマクドナルドやコカ・コーラ、ペプシコなどが該当するとみられている。一般的に大型の生活必需・産業系に資金が向かいやすいということだろう。日本株でいえば、銘柄名に「重」の文字が入っている産業系メーカーに対して資金が向かいやすい面があるのかもしれない。
- 2026年はコーポレートガバナンス・コードの改訂が予定されている。ガバナンス不全が問題視されていたフジ・メディア・ホールディングス(4676)が、ROEを高めるため、アクティビストからの要求に応える形で不動産事業に外部資本を導入することの検討を開始したのは、そのような時代を象徴する出来事といえるだろう。(笹木)
本日号は、東レ(3402)、フジ・メディア・ホールディングス(4676)、LINEヤフー(4689)、ナブテスコ(6268) 、シンガポール取引所(SGX) を取り上げた。


■主な企業決算の予定
- 2月16日(月): 日本プライムリアルティ投資法人、日本ビルファンド投資法人、東洋炭素、ロイヤルホールディングス、ペプチドリーム、フロンティア不動産投資法人、ブリヂストン、スカラ、サニックスホールディングス、キーコーヒー、あいホールディングス、DIC
- 2月17日(火): CREロジスティクスファンド、(米)パロアルト・ネットワークス、ケイデンス・デザイン・システムズ、コカ・コーラ・ユーロパシフィック・パートナーズ
- 2月18日(水): 日本リート投資法人、トレンドマイクロ、(米)ドアダッシュ、ブッキング・ホールディングス、アナログ・デバイセズ、ベリスク・アナリティクス
- 2月19日(木):マリモ地方創生リート投資法人、横浜ゴム、(米)コパート、ウォルマート、インスメッド
- 2月20日(金): ジャパンエクセレント投資法人
■主要イベントの予定
- 2月16日(月):
・08:50 GDP(10-12月期速報) (4Q)、13:30鉱工業生産・設備稼働率(12月)
・米プレジデンツデーの祝日のため株式・債券市場休場、中国本土市場が春節(旧正月)連休で休場 (23日まで、24日に取引再開)、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ、ブリュッセル)
・ユーロ圏鉱工業生産 (12月)
- 2月17日(火):
・財務省5年利付国債入札、片山財務相が「Digital Space Conference 2026」であいさつ、13:30第3次産業活動指数(12月)
・米サンフランシスコ連銀総裁が講演、ルーマニア中銀が政策金利発表
・米ニューヨーク連銀製造業景気指数(2月)、米NAHB住宅市場指数 (2月)、独CPI(1月)、独ZEW期待指数(2月)、英ILO失業率 (10-12月)
- 2月18日(水):
・08:50貿易収支・輸出・輸入(1月)、15:00 JERA社長の定例記者会見、16:15訪日外客数(1月)
・米FOMC議事要旨 (1月27、28日開催分)、国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会(パリ、19日まで)、ニュージーランド中銀が政策金利発表
・米耐久財受注(12月)、米住宅着工件数(12月)、米景気先行指数(1月)、米対米証券投資(12月)、英CPI(1月)
- 2月19日(木)
・財務省20年利付国債入札、08:50 対外・対内証券投資 (2月8-14日)、08:50コア機械受注(12月)、14:00首都圏新築分譲マンション(1月)、16:30全銀協会長会見
・米シカゴ連銀総裁が開会のあいさつ、ECB経済報告、韓国前大統領の内乱首謀罪判決
・米新規失業保険申請件数 (2月14日終了週)、米卸売在庫(12月)、米貿易収支(12月)、米中古住宅販売成約指数(1月)
- 2月20日(金):
・08:30全国CPI(1月)、09:30 S&Pグローバル日本製造業・サービス業PMI (2月)
・米ダラス連銀総裁が講演
・米個人所得・支出 (12月)、米個人消費支出(PCE)価格指数 (12月)、米GDP (4Q、速報値)、米S&Pグローバル製造業・サービス業・総合PMI (速報値)、米ミシガン大学消費者マインド指数 (2月、確報値)、米新築住宅販売件数(12月)、ユーロ圏製造業・サービス業・総合PMI (2月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■データセンターは宇宙へ
「宇宙関連」は今年の米国株投資のテーマの中心になる可能性を秘めている。テスラ(TSLA)CEOのイーロン・マスク氏は、1/22にダボス会議で講演し、AI(人工知能)のインフラ整備に向け、3年以内に宇宙空間でデータセンターを作る構想を表明した。マスク氏が率いる宇宙開発企業のスペースXは2026年内のIPOを計画している。米航空宇宙局(NASA)が主導し、日本も参加する有人月探査「アルテミス計画」では3月に、4人の宇宙飛行士を乗せたオリオン宇宙船が月を周回して帰還する「アルテミスⅡ」が実施される予定だ。トランプ米大統領は昨年12月、アルテミス計画を大幅に前進させる宇宙政策の大統領令に署名。ロケット打上げ・探査システム、月面探査・着陸機関、衛星・宇宙データセンターなどの関連企業が注目される。
【データセンターは宇宙へ~NASAアルテミス計画とスペースX上場準備】

■米ソフトウェアと半導体の関連株
2/11の米国株市場は、「アンソロピック・ショック」に伴う混乱に見舞われたソフトウェア株が先週の急落から持ち直していたものの、4営業日ぶりに下落し、S&Pソフトウェア指数が2.6%下落した。資産運用の新興企業アルトゥルイストがAI(人工知能)を用いた税務戦略機能を導入したことを受けて証券株が売られた。
一方で、AI需要の拡大の恩恵を受けるとみられるAI半導体関連銘柄は株価が上昇し、フィラデルフィア半導体指数が2.3%高と逆相関の関係を示した。2025年12月頃から、SOXとS&Pソフトウェア指数が逆相関の動きを示し始めたが、ソフトウェア企業の多くはAIプラットフォームを開発・運営し、AI半導体需要を支える一翼を担っている。株価の逆相関がいつまでも続くわけではないと考えられる。
【米ソフトウェアと半導体の関連株~昨年末以降の逆相関関係は行き過ぎか】

■日本株の上値余地を探る鍵
株価を予想EPS(1株当たり利益)で割ることで算出される予想PER(株価収益率)は、TOPIXの2/6終値で約19.3倍まで上昇してきた。先日の衆院総選挙と同様に自民党が圧勝した「小泉郵政解散」後には2006年2月に約23.7倍まで上昇したことから、成長期待が高まるなら、さらなる上値を追う余地は残る。今年3月に米国で日米首脳会談が予定される中、日米の経済的連携が強調されれば米国株の予想PERも意識される可能性がある。
一方で、日銀の買い入れの影響を受けやすい10年国債と比べて海外投資家が主導する市場である30年国債利回りと、PERの逆数である益利回りとのスプレッドは縮小傾向にある。債券よりも株式のほうが高リスクであることから、益利回りのほうが国債利回りを上回るとされる。
【日本株の上値余地を探る株~米国株予想PERと日本国債利回りとの比較】

■銘柄ピックアップ
東レ(3402)
1232 円(2/13終値)

・1926年設立の基礎素材メーカー。繊維、機能化成品、炭素繊維複合材料、環境・エンジニアリング、ライフサイエンスなどの事業を展開。航空機向け炭素繊維とポリエステルフィルムは世界首位。
・2/10発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上収益が前年同期比0.2%減の1兆9194億円、事業利益が同3.4%減の1050億円。事業利益の主な内訳は、繊維(売上比率42%)が10%増の548億円、環境・エンジニアリング(同9%)が4%増の176億円。機能化成品と炭素繊維複合材料が減益だった。
・通期会社計画は、売上収益を前期比1.4%増の2兆6000億円(従来計画2兆6300億円)へ下方修正の一方、事業利益は同5.1%増の1500億円、年間配当は同2円増配の20円と従来計画を据え置いた。同社は2025年10月に、韓国現代自動車と提携し、EV(電気自動車)・ヒト型ロボット向け先進素材を共同開発。炭素繊維の軽量化技術がロボットの耐久性向上に寄与することが注目されている。
フジ・メディア・ホールディングス(4676)
3507 円 (2/13終値)

・1957年にニッポン放送と文化放送に映画3社(東宝、松竹、大映)が加わり「富士テレビジョン」のテレビ免許申請。2008年に認定放送持株会社体制へ移行。2012年にサンケイビルを連結子会社化。
・2/3発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比5.1%減の3924億円、営業利益が271億円から▲48億円へ赤字転落。政策保有株の売却により最終増益。セグメント利益はメディア・コンテンツ事業が▲253億円(10-12月期は+73億円)に対し、都市開発・観光事業が73%増の227億円。
・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比0.4%増の5527億円(従来計画5443億円)、営業利益を▲72億円(同▲105億円)、年間配当を同75円増配の125円(同50円)とした。同社は従来の方針を転換し、都市開発・観光事業に外部資本を導入する検討を開始した。2/5に実施した約2350億円の自社株買いにより旧村上ファンド系のファンドの持株比率が17.95%から4.34%へ低下した。
LINEヤフー(4689)
387.5 円(2/13終値)
・1996年に現ソフトバンクグループ(9984)の子会社として設立。戦略、メディア、コマースの各事業を展開。祖業のヤフー、2021年に経営統合したLINEのほかZOZO、アスクル、PayPayを傘下とする。
・2/4発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上収益が前年同期比4.7%増の1兆4953億円、一時的要因を除く調整後EBITDAが同3.8%増の3773億円。調整後EBITDAの内訳は、メディア(売上比率36%)が5%減の2065億円、コマース(同42%)が15%減の1010億円、戦略(同22%)が81%増の701億円。
・通期会社計画は、売上収益を前期比4.3%増の2兆円(従来計画2兆1000億円)へ下方修正の一方、調整後EBITDAが同6-8%増の5000-5100億円、年間配当が同0.3円増配の7.3円と従来計画を据え置いた。スマホ決済大手で、同社と親会社のソフトバンク(9434)が合計66%を所有するPayPayが今年3月に米NASDAQ市場に上場。PayPayは2/12、米クレジットカード大手ビザとの提携を発表した。
ナブテスコ(6268)
4460 円 (2/13終値)

・2003年に旧帝人製機とナブコが統合。世界シェア6割の産業ロボット精密減速機他の「コンポーネント」、鉄道用ブレーキ他の「トランスポート」、自動ドア他の「アクセシビリティ」等の事業を展開する。
・2/12発表の2025/12通期は、売上高が前年同期比9.8%増の3079億円、営業利益が同60.3%増の207億円。受注高は11%増。営業利益の内訳は、コンポーネント(売上比率26%)が103%増の54億円、トランスポート(同33%)が9%増の135億円、アクセシビリティ(同36%)が1%増の90億円。
・2026/12通期会社計画は、売上高が前期比6.2%増の3270億円、営業利益が同33.6%増の277億円、年間配当が同2円増配の82円。同社は米ボーイングに対し、航空機の飛行姿勢(上昇・下降・旋回)を油圧制御する「フライト・コントロール・アクチュエーション」を提供。ボーイングは米NASAの月探査(アルテミス)計画に関与。また、精密減速機(アクチュエーター)はヒト型ロボット製造でも重要。
シンガポール取引所(SGX)
市場:シンガポール 18.56 SGD (2/12終値)

・1999年設立の証券取引所および清算機関。中国、日本、インドほか株価指数デリバティブ取引に係る流動性の高いオフショア市場の提供に加え、コモディティや通貨のデリバティブ取引も取り扱う。
・2/5発表の2026/6期1H(7-12月)は、財務収益を除く純営業収益が前年同期比10.1%増の6.36億SGD、一時的要因の影響を除く調整後EBITDAが同9.2%増の4.66億SGD。コモディティ、通貨、株価指数などのデリバティブ取引や店頭FX取引が拡大。総費用の対営業収益比率が1.8ポイント改善。
・通期会社計画は、財務収益を除く純営業収益が前期比6-8%増、総費用増加率が4-6%増、資本的支出が同33-41%増と従来計画を据え置いた。インド関連でNSE(ナショナル取引所)とのクロスボーダー取引を背景に、国際金融都市「GIFT City」で取引されてインド市場の時間外もカバーするGIFT Nifty指数の先物のほか、インド個別株先物、米ドルインドルピー先物の取引拡大が見込まれる。
■アセアン株式ウィークリーストラテジー
(2/16号:シンガポール取引所とGIFT Nifty指数)

「GIFT Nifty」とはインドの主要株価指数であるNifty50指数を原資産とする先物で、インド・グジャラート国際金融都市であるGIFT City内のNSE IX(NSE・インターナショナル・エクスチェンジ)で取引される米ドル建ての金融商品である。世界中の投資家がインド市場の動きに、インド時間の午前6時15分から翌朝の午前2時15分まで、ほぼ21時間程度アクセスできる。
もともとはシンガポール取引所(SGX)でSGX Niftyとしてスタートしたが、2023年7月に終了し、GIFT Niftyとしてインド国内に契約が移管された。SGXはGIFT Niftyに対して直接的な売買プラットフォームとしては関与していないものの、NSEとのクロスボーダー接続を通じてクリアリング・決済の面で協力している。「取引はインド、クリアリングはシンガポール」という革新的なハイブリッドモデルとなった。
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。
