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【投資戦略ウィークリー 2020年8月11日号(2020年8月7日)】”テレワークへのシフトと完全子会社化の流れ”

 

■”テレワークへのシフトと完全子会社化の流れ”

  •  新型コロナウイルス感染再拡大の勢いが止まらない。安倍首相がお盆の帰省自粛を求めなかった一方、小池東京都知事は8/6に「今年の夏は特別な夏」と述べ、「旅行や帰省、夜間の外食、遠くへの外出を控えましょう」と訴えた。当ウィークリー8月3日号(2ページ目)で既述のとおり、コロナ禍への対応としてのテレワークの普及が郊外の戸建て住宅の受注増への追い風となっている。仕事場としての書斎を確保しやすいことや、居間と別フロアとすることで家族に気兼ねなく仕事ができるほか、都心の職住近接マンション暮らしよりも生活コストを抑えられることも大きな要因だろう。
  •  しかし、テレワークで重要なのは仕事の生産性向上であり、性能の良いパソコンや周辺機器の最新規格WiFiルーター、データ通信量の増加に耐えられる光回線、およびビデオ会議を効率的に進めるため高性能なマイクやWebカメラなどAV機器も必要とされよう。今は、前回の緊急事態宣言下のテレワークでそれらの重要性に気づいた人たちが次回のテレワークに備えて家電量販店やEコマースサイトで手頃な製品を物色し始めている頃なのだろうか。
  •   感染予防のためには自宅の換気が必要であり、特に夏は虫刺されに要注意だろう。ストレスを減らして健康を保ち、快適にテレワーク生活を過ごすには、入浴タイムの充実も十分に検討されるべきだろう。また、テレワーク下では気晴らしにスマホを通じて動画配信やゲームアプリに費やす時間も増えざるを得ないだろう。
  •  コロナ禍による業績への影響が不透明であることから、企業グループ内に利益やキャッシュを留めておきたい親会社の要望が高まってきている。そのため、親子上場の上場子会社を完全子会社化する動きが加速することが予想される。7/30に富士通6702富士通フロンテック6945に対しTOBの実施により完全子会社化を目指すと発表。親子上場となる上場子会社への投資に際してはTOBによる上場廃止リスクを踏まえ、割安な水準での買付が必要だろう。また、7/31に住友ベークライト4203が持分法適用会社で人工透析製品など医療機器を手掛ける川澄化学工業7703にTOBを実施すると発表。子会社でなくても筆頭株主がTOBによる完全子会社化を目指す例が出てきている点も要注意だろう。
  •  日経平均株価はコロナショックの年初来安値を付けた3/19から現在まで2番底を回避しているように見られる。経済的な緊急事態への対応としての各種給付金に係る高水準の財政出動を継続できるかどうかが2番底回避のために必要な条件と考えられよう。
  • 8/11号では、東映アニメーション(4816)、アース製薬(4985)、エレコム(6750)、ヤマダ電機(9831)、シンガポール・テクノロジーズ・エンジニアリング(STE)を取り上げた。

 

■主な企業決算の予定

  • 810日(月):オキシデンタル・ペトロリアム、インターナショナル・フレーバー&フレグランス、サイモン・プロパティー・グループ、デューク・エナジー、マリオット・インターナショナル、PPL、ロイヤル・カリビアン・クルーズ、メルカドリブレ
  • 811日(火):DIC、GMOペイメントゲートウェイ、IHI、アルバック、ソフトバンクグループ、マツモトキヨシホールディングス、ロート製薬、荏原製作所、楽天、住友不動産、森永製菓、日産化学、日本新薬、日本製鋼所、日本電信電話、堀場製作所、シスコ、ブロードリッジ・フィナンシャル・ソリューションズ
  • 812日(水):ENEOSホールディングス、カネカ、クラレ、コカ・コーラボトラーズジャパン、サンドラッグ、ジェイエフイーホールディングス、セコム、トレンドマイクロ、パーソルホールディングス、パン・パシフィック・インターナショナル、横河電機、九州フィナンシャルグループ、阪急阪神ホールディングス、住友林業、昭和電工、森永乳業、雪印メグミルク、太平洋セメント、第一生命ホールディングス、東急、日揮ホールディングス、明治ホールディングス、ADEKA、シスコシステムズ
  • 813日(木):コロワイド、富士フイルムホールディングス、すかいらーくホールディングス、電通グループ三菱商事、三井化学、マブチモーター、光通信、アプライド・マテリアルズ、タペストリー、百度[バイドゥ]、網易
  • 814日(金):住友林業、コスモエネルギーホールディングス、スルガ銀行、日本ペイントホールディングス、オープンハウス、朝日インテック、シチズン時計、朝日インテック

 

主要イベントの予定

  • 8月11日(火)

・経常収支・貿易収支(6月)、銀行貸出動向(7月)、倒産件数(7)、景気ウォッチャー調査現状判断・先行き判断(7)

・米サンフランシスコ連銀総裁がオンライン討論会に参加

・米PPI (7月)

・独ZEW期待指数(8月)、英失業率(4-6月)、露GDP(2Q)

シンガポール GDP2Q

 

  • 8月12日(水)

・マネーストックM2・M3(7月)、工作機械受注(7月)

・米ボストン連銀総裁が講演(オンライン)、ダラス連銀総裁が質疑応答に参加、サンフランシスコ連銀総裁がオンライン討論会に参加

・NZ中銀が政策金利発表

・米CPI (7月)、財政収支(7月)

・ユーロ圏鉱工業生産(6月)、英鉱工業生産 (6月)、英GDP (2Q)

 

  • 8月13日(木)

・国内企業物価指数(7月)

・豪雇用統計(7月)、国際エネルギー機関(IEA)月報

米新規失業保険申請件数(88日終了週)、輸入物価指数(7月)

・独CPI(7月)

 

  • 8月14日(金)

・対外・対内証券投資(8月2-8日)

・第3次産業活動指数 (6月)

米小売売上高 (7)、鉱工業生産(7月)、企業在庫(6月)、ミシガン大学消費者マインド指数(8)

・ユーロ圏GDP (2Q)

中国工業生産、小売売上高、都市部固定資産投資(7月)、中国新築住宅価格(7月)

マレーシアGDP2Q香港GDP2Q

 

  • 8月15日(土)

・全国戦没者追悼式(日本武道館)、韓国の光復節、北朝鮮の祖国解放記念日

・台湾の高雄市長補欠選挙

 

  • 8月16日(日)

・台湾GDP(2Q)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

■GAFA株価に過熱感はあるのか?

7/30にアルファベットGOOG傘下のグーグル、アップルAAPLフェイスブックFBアマゾン・ドット・コムAMZNの4社(GAFA)の4-6月決算が発表され、企業向けネット広告の減少が響いて初の前年同期比で減収となったアルファベットを除けば、各社とも新型コロナウイルス感染拡大が業績拡大への追い風となる好調な内容だった。特にアップルの株価は8月末に株式分割を行うことを発表したことを受けて上昇が加速。8/5の時価総額が1.88兆ドルに達した。

短期的な買われ過ぎが懸念されるなか、アップルアマゾン・ドット・コム株価の200日移動平均からの乖離率が40%超となっている点は要注意だろう。また、この2銘柄は200日移動平均が下支えとして強く機能している点も注目されよう。

GAFA株価に過熱感はあるのか?~移動平均からの乖離率に注意

 

■ユーロ高ドル安相場

7/21に欧州連合(EU)首脳がコロナ復興基金の創設で合意したことが投資家に好感され、ユーロの対ドルレートが上昇基調にある。シカゴIMMのユーロドル通貨先物に係る投機筋ポジションのネット買い越し枚数も先月最終週に2018年4月以来の15万枚超えの水準に達した。

7月のマークイットユーロ圏製造業PMIおよびサービス業PMI(購買担当者景気指数)がコロナ禍に伴う都市封鎖導入前の2月の水準を回復した。新規失業保険申請件数やADP雇用統計に見られるように労働市場の回復にブレーキが掛かり始めた米国経済と比較して堅調であることもユーロ高ドル安の要因と言えよう。ドル安要因が米国景気の弱さによるのか、実質金利低下によるのかによって投資環境の見方が変わってくる面もあろう。

【ユーロ高ドル安相場~投機筋ネット買い残増とユーロ圏の景気回復基調】

 

■コロナショック後の日経平均株価

日経平均株価終値はコロナ禍の影響(①)を受けて3/19に16,552円まで下落し、その52営業日後の6/8に23,178円まで上昇。一方で、2008年10月のリーマンショック(②)の際には、10/27から数えて88営業日後に「2番底」と見られる水準まで下落後に反発した。コロナショックから89営業日後の7/31に日経平均終値が前日比629円安(21,710円)となったが、②と比較すると2番底とは呼べないだろう。

2番底の可能性を探る上で「NEXT FUNDS日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信(1357)」における過去4年間の信用倍率の推移を見ると、信用倍率が上昇から低下に転じた後、数ヵ月経過して日経平均が下落に転じる場合が見られた。直近の信用倍率の低下は要注意と言えるかも知れない。

【コロナショック後の日経平均~リーマンショック後の2番底迄の期間を経過】

 

■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー8/11号「決算発表の途中経過」

①インドネシア株では、加工食品大手のインドフード・サクセス・マクムール(INDF)の1-6月決算は、売上高が前年同期比2%増、営業利益が同17%増。新型コロナウイルス流行による巣篭もり消費の恩恵に加え、国民に占める中間層や富裕層の割合が上昇し始めたインドネシアの個人消費の恩恵を受けていると見られる。②マレーシア株では、通信事業大手のデジ・ドット・コム(DIGI)の4-6月決算は、売上高が同6.3%減、純利益が同26.5%減。テレワークによるデータ通信需要増があるものの店舗閉鎖や国際ローミング収入の減少が響き減収となった。③シンガポール株では、コングロマリットのケッペル・コーポレーション(KEP)の1-6月決算は、売上高が同4.0%減、純利益が赤字転落。原油安に伴う石油堀削装置の市況悪化により子会社資産に係る減損損失を計上した。

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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