3回にわたって『DMI』というテクニカル分析を紹介しています。過去2回は、DMやTRそしてDI等を解説してきました。今回の3回目ではADXについて解説します。
結論から言いますと、ADXは「トレンドが出ているのか否か」を示してくれるのですが、ADXを求める前に『DX』という数値を求めないとなりません。これまでも紹介したように、DMIには多くの記号が登場します。
DXは+DIから-DIを引いた数値の絶対値を+DIと-DIの合計値で割って求めます。
+DIというのは上昇トレンドエネルギー、-DIは下落トレンドエネルギーを示しました。また、エネルギーを示しているので、「下落」と言っても-DIは正の数値です。
(+DI)―(-DI)は上昇エネルギーから下落エネルギーを引いています。通常であれば、その数値がマイナスにならない限り、つまり正の数値であれば上昇トレンドが強いことを示します。
しかし、その計算式に |(+DI)―(-DI)| と絶対値が付くと上昇エネルギー、下落エネルギーを問わず、数値が0よりも大きければ大きいほど、トレンドが出ていることを示します。
その数値を、+DIと-DIの合計、すなわち上昇、下落の両トレンドエネルギーの合計で割ります。
つまり、総エネルギーのうち、現在のトレンドのエネルギーがどれくらいの割合を示しているのかを示すことになるのです。
ですので、このDXも常に正の数となるのと同時に、数値が上昇することでトレンドが発生していることを示してくれるのです。
このように、日々求めたDXを平均したものが『ADX』となるのです。
図に示すと以下のようになります。
下段に示したのがADXです。①で示した上昇トレンドをADXで確認すると、トレンドが強いことを示しているのがわかります。
②の下落トレンドの時はADXも大きく上昇しています。これは下落トレンドが強いことを示しています。
その後、③で上昇トレンドが出現すると上昇しています。
なお、「a」で示したADXの下落箇所というのは、下落エネルギーが縮小し、上昇エネルギーが上昇してきている状態を示しています。
ところで、ここでのADXはDXの14日間の平均値を取っています。以前にも紹介したように、DMIを開発したワイルダー氏は14日という数値を好んで使っています。
しかし、筆者のファンドマネージャーとしての経験から言うと、14日間というのは長過ぎるという印象があります。故に、10日間以下の短めの期間を採用した方が良い、というのが結論です。
下図では、8日間のADXを表示しています。点線で示した箇所などを見るとトレンドの出現等がより鮮明になっていると同時にトレンドの転換も早く示しています。
ここまで、いろいろな記号を説明してきましたが、これでDMIを終わります。フィリップ証券のMT5では「Average Directional Movement Index」という名前で登録されています。
下段のうち、赤線が+DI、青線が-DI、そして緑線がADXを表しています。また、黄丸印で示した部分は+DIと-DIのクロスで売買シグナルが出現している箇所です。
ただし、赤矢印で示した時間帯というのは、トレンドが明確に認められず、DMIも鮮明にトレンドを示すことが出来ない、状態となっています。
故に、DMIは明確にトレンドが出ている時などに、そのトレンドの終焉などを探す時に便利といえるでしょう。
川口 一晃(オフィスKAZ代表取締役)
1986 年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問や国内投信会社で11年間ファンドマネージャーを務める。
2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。