マーケットが大きく上昇ないしは下落をすると投資家の間からは『そろそろだよね』『買われ過ぎたよね』『ここまで下げればそろそろ・・・』という声がよく聞こえてきます。ところが、相場の格言にもあるように『もうはまだなり、まだはもうなり』、なかなか自分たちが考えているようには動いてくれません。そうなのです、 私たちが経験則として持っている『そろそろ』という感覚ほどあやふやなものはないのです。
そこで、このそろそろ感を客観的に数字で示すことが出来ないだろうか、数字で示すことが出来ればトレードが楽になる、すなわち、売買シグナルを出すことが出来るのではなかろうか、と先人たちは考えたのです。それが、オシレーター系のテクニカル分析です。オシレーター系のテクニカル分析は『買われ過ぎ、売られ過ぎ』を数字で表してくれます。その多くは100分率で示されます。つまり、0から100までの数字で買われ過ぎ、売られ過ぎを表してくれるのです。
今回はオシレーター系のテクニカル分析の代表ともいわれる「RSI」を紹介したいと思います。
次の図を見てください。
下落局面と上昇局面を認めることが出来ます。そして、それぞれの局面の中では吹き出しに書いたような『売られ過ぎ』『買われ過ぎ』といった感覚を多くの投資家は感じているのではないでしょうか。ただ、ローソク足だけで観察している限り、買われ過ぎや売られ過ぎというのは各個人の主観的な感覚となってしまいます。
そこで、客観的にこれらの感覚を数字で表したいと思います。
以下の例で考えてみます。
まず、2日目から6日目までの5日間を取り上げ、動いた値幅に注目します。
次に、5日間のうち上昇した値幅を合計します。2+3+1+2=8円 となります。
下落した値幅は5日目の2円です(ここでは値幅を求めているので、絶対値をとります)。
ということは、5日間で合計10円(=8円+2円)の値動きがあり、そのうち上昇が8円を占めていると考えることが出来ます。
つまり、10円値動きのうち8円が上昇しているのですから、8÷10×100=80
80%という数字が求められ、買われ過ぎと判断されるのです。
このように、値動きに占める上昇の割合で買われ過ぎ、売られ過ぎを把握するのがRSIなのです。
RSIは「Relative Strength Index」の略です。RSIの公式は以下のように紹介されています。
上述した例に当てはめて計算すると、Aは8÷5=1.6、Bは2÷5=0.4 となります。
RSIは1.4÷(1.6+0.4)×100=80 80%と算出されるのです。
でも、「Aは任意の期間の1日値上がり幅平均」で云々と書かれてしまうと、RSIはちょっと難しい計算をしているのではないかと思う人もいるかもしれません。ですが、そんなことはありません。
例えば、先ほどの5日間を例にとると以下のような式になります
次に、中学生の時に数学で習いました。それぞれの分母に同じ数字があるのであれば、消すことが出来ます。つまり、『5』を取ることが出来ます。すると、公式は・・・
最初に説明したように、一定期間の値幅の合計のうち、値上がり幅の合計が占める割合を100分率で示す、わかりやすい式へと変わるのです。
つまり、私たちが抱く買われ過ぎ、売られ過ぎという感覚を、一定期間おける値幅のうち上昇した値幅が占める割合で示してくれることになるのです。
ちなみに、教科書ではRSIの算出期間は14日間が紹介され、そこで算出される数値が70%以上になると『買われ過ぎ』、30%以下になると『売られ過ぎ』とされています。
そして、売買シグナルは『70%を超えて後にRSIの数値が下落に転じた時』、買いシグナルは『30%を割り込んだ後にRSIの数値が上昇に転じた時』とされています。
このように、私たちの『そろそろ』という感覚、つまり、『買われ過ぎ』や『売られ過ぎ』といった状態をこのように数値で表すことが出来ると、トレードする際に曖昧な感覚に振り回されることなく客観的に判断することができるようになるのです。
川口 一晃(オフィスKAZ代表取締役)
1986 年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問や国内投信会社で11年間ファンドマネージャーを務める。
2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。