English

MT5で極めるテクニカル分析

 

<MT5で極めるテクニカル分析~MACD③>

<オシレーターとしてのMACD>

前回のコラムではMACDの考え方および使い方を説明しました。MACDはトレンドを分析するのに長けていて、MT5で表示する棒グラフのMACDと折れ線グラフのシグナル(MACDの9日平均)のクロスが売買シグナルとなります(黄色丸印)。

 

 

また、MACDの表示については、棒グラフの部分のMACDを線として表示をする方法もあります。つまり、2本の線(MACDとシグナル)で表示をするのです。例えば、Yahooファイナンスなどで日経平均株価のMACDを見ると、2本の線で表示されています。
そこでは、同じように上昇トレンドや下落トレンドといった具合にトレンドの分析ができるのです。

ところが、テクニカル分析の教科書でMACDを調べるとそのほとんどで『オシレーター』系のテクニカル分析として分類されています。
トレンドが転換し、すなわち下落トレンドから上昇トレンドないしは上昇トレンドから下落トレンドに変わったのを受けて、買いシグナルないしは売りシグナルを発しているMACDはトレンドを分析しているにも拘わらず、『買われ過ぎ・売られ過ぎ』を分析するオシレーター系のテクニカル分析として分類されているのです。
筆者はこの点について疑問も抱きながらMACDを使って分析をしていました。
しかし、MACDのヒストグラムの存在を知って合点がいきました。

 

 

ヒストグラムというのは下段に表示をした棒グラフです。MT5では「Moving Average of Oscillator」として登録されています(ここでは、ヒストグラムという名称で説明します)。

では、このヒストグラムは何を表しているのでしょうか。実は、MACDとシグナルの乖離幅を表しているのです。

 

ヒストグラム= MACD ― シグナル
ということなのです。

 

ですので、棒グラフが「0」になる箇所というのは、中段のMACDの図でMACDとシグナルがクロスをした箇所を示しています。
そうなのです、ヒストグラムが「0」になった個所、つまり、MACDとシグナルがクロスした個所というのは売買シグナルということになるのです。
ただ、これだとヒストグラムはトレンドを分析するグラフということになってしまいます。

そこで、ヒストグラムの山の頂き、つまり、ヒストグラムの数値が±どちらでも最大値を取っている箇所に注目をしてください。

 

 

上図で丸印をつけた部分が『頂き』の部分です。では、この頂きの付近はどのような状態なのでしょうか。それはMACDとシグナルの乖離が最大となっているのが頂きの位置ということになります。シグナルはMACDの平均値(通常は9日平均)ですので、MACDが大きく上昇している、つまり、短期の指数平滑移動平均(EMA)と長期のEMAの乖離幅が最大になった個所、すなわち頂きというのは、上昇トレンドの場合は大きく上昇している状態、下落トレンドの場合には大きく下落している状態となります。
次に、ヒストグラムの頂きが最大から縮小するというのはどのような状態のことをいうのでしょうか。それはMACDの動きが鈍ることによって生じます。つまり、短期のEMAの動きが鈍ることを意味しているのです。
換言すれば、上昇トレンドないしは下落トレンドの動きが鈍ることと同じです。
上昇トレンドないし下落トレンドの勢いが鈍るというのは、買われ過ぎた状態ないしは売られ過ぎた状態ということが言えるのではないでしょうか。
そうなのです。ヒストグラムの数値がプラスにしても、マイナスにしても数値が拡大しているのは『買われ過ぎ・売られ過ぎ』の状態が拡大していることを示してくれているのです。

故に、ヒストグラムの頂きが反転する箇所、上図で言えば丸印をつけた箇所が、買われ過ぎなので売りシグナル、売られ過ぎなので買いシグナルとすることが出来るのです。

つまり、MACDはトレンドを分析できるテクニカル分析であるとともに、ヒストグラムを表示することでオシレーター系のテクニカル分析の機能も持つテクニカル分析ということが出来るのです。

ただし、ヒストグラムを表示しないのであれば、トレンドを分析するのに長けているテクニカル分析としてMACDを使う方が良いと考えています。

執筆者紹介

川口 一晃(オフィスKAZ代表取締役)

1986 年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問や国内投信会社で11年間ファンドマネージャーを務める。
2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。