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【投資戦略ウィークリー 2019年7月22日号(2019年7月19日作成)】“5G通信向け素材、太陽の活動極小期”

 

■5G通信向け素材、太陽の活動極小期

  •  7/16以降の日本株相場は、好調な米国株相場とは対照的に日経平均が7/17に21,500円を割り込み、7/18には安値21,000円割れの大幅下落となった。米国利下げ期待の強まりが円高に繋がって日本株の上値を重くしたこと、安川電機6506の3-5月期決算発表で純利益が前年同月比70%減に落ち込んだこと、およびキャノン7751が7/24発表予定の1-6月期決算で営業利益が前年同期比4割減の下方修正する見通しと報道されたことが重なり、これから本格化する4-6月期決算で業績悪化見通しが相次ぐのではないかと懸念されたように見える。
  •  翌7/19には、高水準の空売り比率から買戻しが入り易かった需給要因のほか、海外市場で台湾積体電路製造(TSMC)が決算発表で前向きな見通しを示し、オランダのASMLが市場予想を上回るEPSを発表したことから、半導体関連株を中心に買い戻しの動きが活発となり、大幅高となった。TSMCやASMLの決算発表では、高級スマホの新機種投入、5G対応の加速、ロジック半導体などが先行き強気の原動力となっているようだ。「半導体関連」の中でも主に5G通信への対応との関連性などの観点から見ていく必要があるだろう。現在のところ5G用通信半導体供給メーカーはファーウェイ以外では米クアルコムQCOMに限られており、クアルコムの動向が鍵を握りそうだ。
  •  半導体以外では、5Gは従来よりも高い周波数の電波を活用するため電波を通しやすい素材を本体に使用する必要があり、ガラスが有望視されている。米コーニングGLWの「ゴリラガラス」が注目されているが、AGC5201も5G向けガラス一体型アンテナを開発し、帝人3401も電波を通しやすい「アラミド繊維」を使った強化プラスチック製スマホ背面パネルを開発した。5G関連の「素材」では日本企業にも勝機がありそうだ。
  •  今年の夏は梅雨寒が予想外に長引いているが、米海洋大気庁(NOAA)が4/5に「2019年後半から2020年初めにかけて太陽活動が活動極小期を迎える」という予測を発表している。これは太陽黒点の数が一定の周期で増減することに着目したもので、その周期が平均で約11年と言われている。経済活動の周期との関係も興味深いが、身体の健康面などへの影響も無視できないかも知れない。体調管理には気を付けたい。(笹木)
  • 7/22号では、日本たばこ産業(2914)、串カツ田中ホールディングス(3547)、テラスカイ(3915)、電通国際情報サービス(4812)、ウェザーニュース(4825)、NISSHA(7915)を取り上げた。

 

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

■主な企業決算 の予定

  • 7月22日(月):オービックビジネスコンサルタント、エー・ディー・ワークス、オービック、ナガワ、コーエーテクモホールディングス
  • 7月23日(火):キヤノンマーケティングジャパン、信越ポリマー、東京製鐵、タツタ電線、総合メディカルホールディング、ビオフェルミン製薬、KOA、バイオジェン、コカ・コーラ、テキサス・インスツルメンツ、ユナイテッド・テクノロジーズ、ロッキード・マーチン、ビザ
  • 7月24日(水):ジャフコ、小野測器、キヤノン、未来工業、日立ハイテクノロジーズ、日本車輌製造、太平洋工業、キヤノン電子、カワチ薬品、栄研化学、信越化学工業サイバーエージェント、正興電機製作所、日本航空電子工業、日本高純度化学、日新電機、アドバンテスト日本電産、富士通ゼネラル、三菱自動車工業、蝶理、LINEペイパル・ホールディングス、ネクステラ・エナジー、AT&T、ゼネラル・ダイナミクス、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPSボーイング、キャタピラー、フォード・モーター、フェイスブック
  • 7月25日(木):リコーリース、日立建機、エムスリー、日清製粉グループ本社、養命酒製造、東洋機械金属、ジェコス、富士電機、オムロン、メタウォーター、メルコホールディングス、新光電気工業、イーブックイニシアティブジャパン、神奈川中央交通、野村総合研究所、ゴールドクレスト、空港施設、ネットワンシステムズ、日本精線、三菱鉛筆、アサヒホールディングス、岡部、SPK、エイトレッド、日立化成富士通中外製薬、ディスコ、千趣会、日産自動車、小糸製作所、ソフトバンク・テクノロジー、レッグス、JCRファーマ、日産車体、システナ、キムラユニティー、アイカ工業、ブリストル・マイヤーズスクイブ、インテル、コムキャスト、アマゾン・ドット・コム、3Mレイセオン、Dow Inc、アルファベット、スターバックス
  • 7月26日(金):マネックスグループ、杉本商事、日本エスリード、サカイ引越センター、芙蓉総合リース、アツギ、エックスネット、木曽路、日立金属、北國銀行、ビジネス・ブレークスルー、エレマテック、前田工繊、ランドビジネス、SHOEI、幸楽苑ホールディングス、PALTAC、システムリサーチ、静岡銀行、青森銀行、日本テレビホールディングス、NTTドコモ、蔵王産業、イントラスト、ショーワ、エノモト、ビーピー・カストロール、ステップ、大同特殊鋼、東邦チタニウム、アサックス、関西電力、ピー・シー・エー、MonotaRO、コロナ、アイチコーポレーション、アマノ、マックス、山洋電気、沖電気工業、京阪神ビルディング、東京エレクトロン、椿本興業、三谷産業、三菱総合研究所、プレステージ・インターナショナル、キーエンス、日東電工、東洋シヤッター、中広、ミスミグループ本社、ホクシン、インソース、バリューコマース、佐藤商事、岩井コスモホールディングス、マクドナルド、コルゲート・パルモリーブ、チャーター・コミュニケーションズ、アッヴィ

主要イベントの予定

  • 7月22日(月)

安倍自民党総裁が記者会見(都内の党本部で)

・コンビニエンスストア売上高(6月)

中国版ナスダック「科創板」取引開始

 

  • 7月23日(火)

・月例経済報告等に関する関係閣僚会議、月例経済報告(7月)

・スーパーマーケット売上高(6月)、全国・東京百貨店売上高(6月)、工作機械受注(6月確報)

英与党保守党が党首選の結果公表、ユーロ圏消費者信頼感指数(7月)

・米FHFA住宅価格指数(5月)、米中古住宅販売件数(6月)

IMF世界経済見通し

 

  • 7月24日(水)

・ビーアンドピー、東証マザーズに新規上場

・特別検察官としてロシア捜査を率いたモラー氏、米下院委員会で証言

・米新築住宅販売件数(6月)

・ユーロ圏マネーサプライ(6月)、ユーロ圏総合・製造業・サービス業PMI(7月)

 

  • 7月25日(木)

・企業向けサービス価格指数(6月)、対外・対内証券投資(7月14-20日)

ECB政策金利発表記者会見、独IFO企業景況感指数(7月)

・米卸売在庫(6月)、米耐久財受注 (6月)、米新規失業保険申請件数(20日終了週)

 

  • 7月26日(金)

・消費者物価指数(東京都区部、7月)

GDP2Q、速報値)

 

  • 7月27日(土)

・中国工業利益(6月)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

■「GDP Now」と「Earnings Insight」

米国市場を見ていく上では、単に重要な経済指標を追いかけるだけでなく、重要な経済指標の現時点での推計値に着目することが肝要である。この点では、FRBによる政策金利の誘導目標変更の可能性(確率)を表すCMEの「Fedウォッチ」に加えて、米国GDP成長率の現時点での推計値を表すアトランタ連銀の「GDP Now」、およびS&P500株価指数採用企業の現時点での利益予想を表すファクトセットの「Earning Insight」が、個人投資家にとってはデータの入手が容易であり利便性が高い。

7/16時点での2019年2Q(4-6月)「GDP Now」は1.6%であり、7/12時点での同2Q「Earning Insight」は前年同期比3.0%減と厳しい予測だが、上方修正があれば米国株上昇も望めよう。(笹木)

【「GDP Now」と「Earnings Insight」~米国市場の”今”を押さえる!】

■日本株の需給動向が焦点

日本株の需給については、裁定買い残(先物・オプションとの裁定取引に係る現物買い残高)および東証信用倍率の仮需動向を見ると、現在の水準が3年前(2016年夏頃)に匹敵する低水準であり、日経平均が直近の安値を付けた2018/12を下回っていることが分かる。日経平均を見れば3年前の15,000-16,000円近辺から上昇しているが、仮需動向から見れば当時と同程度の「売り枯れ」が期待できる水準と言えよう。

2018/1以降の投資主体別売買動向を見ると、海外投資家が売りの主体となっているのに対して、事業法人が安定した買いの主体となり、金額も増加傾向となっていることが分かる。自社株買いの増加傾向から今後も買いの主体となることが期待される。(笹木)

【日本株の需給動向が焦点~裁定買い残・信用倍率、投資主体別売買動向】

 

■夏なのにインフルエンザが流行か

今年は梅雨入りが遅れ、感染しやすくなる乾燥した期間が平年より長かったことや「梅雨寒」が長引いていることなどを要因として、福岡県などの小中学校でインフルエンザによる学級閉鎖が相次いでいる。抗インフルエンザウイルス薬は、2018/3に発売された塩野義製薬4507の「ゾフルーザ」が1回の経口服用で治療が完結することで話題となり、2018年度の売上が急拡大した。タミフルも沢井製薬6140が国内初の後発薬を投入し、シェア拡大が期待される。

しかし、2018/2019シーズンの後半にゾフルーザに耐性ウイルスが検出されたことから処方に慎重になる動きも見られた。今後のシェア変動の可能性に注意したい。「麦わら帽子は冬に買え」の相場格言も思い起こしたい。(笹木)

【夏なのにインフルエンザが流行の兆し~ゾフルーザは薬剤耐性との戦いへ】

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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