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【投資戦略ウィークリー 2025年11月25日号(2025年11月21日作成)】”リアリティ・チェックの「逆ご祝儀」、ビットコイン、原発再稼働”

 

リアリティ・チェックの「逆ご祝儀」、ビットコイン、原発再稼働

  • 当ウィークリー11月4日号上で10月の日本株相場の上昇について、「海外投資家による『ご祝儀相場』ということもできるだろう。」としつつ、「国会での本格的な論戦などを経て政策の実現可能性を見定めてから『リアリティ・チェック』を行えばいい、今はまだその時ではない、ということだろう。」と書いた。
  • 実際に、高市首相が11/7の衆院予算委員会で、立憲民主党の岡田元外相からの台湾有事に関する質問に対し、「存立危機事態」に当たる可能性があるとの答弁を行ったことが波紋を呼び、中国政府が日本への渡航自粛を呼びかけたほか、出荷が再開していた日本産水産物の輸入を事実上停止した。答弁の撤回を求める中国は今後、より強硬な「経済カード」を切ってくる懸念がある。リアリティ・チェックが機能し過ぎてしまったように思われる。今後日本株への売りが加速した場合、「ご祝儀相場」の起点とも言える自民党総裁選明けの10/6の寄り付き(4万6636円)近辺が意識されやすくなるだろう。
  • 日経平均株価への寄与度が高いAI(人工知能)半導体関連銘柄は、引き続き米国主要ハイテク株の影響を受ける状況が続きそうだ。電力不足によって高性能のAIインフラのリソースを効率的に稼働できなくなるのではないかということが「過剰投資問題」の背景にあると考えられる。見方を変えれば、データセンターの電力消費問題の解決に向けて最先端エネルギーの開発や、電子信号を光信号に置き換えることでエネルギー消費を抑える「光電融合」および「光半導体」の技術に取り組む企業への注目度が一段と高まるだろう。
  •   米国ハイテク株の比重が高い米ナスダック総合指数やS&P500株価指数は、コンピューター関連テクノロジーという共通基盤を持ち、暗号資産のビットコイン相場と相関性が高い。ビットコイン価格変動には、約4年ごとの「半減期」に伴う周期性があり、米国株にも大きな影響を与えている。この点の重要性はもっと認識されるべきだろう。
  • 東京電力ホールディングス9501の柏崎刈羽原発6号機の再稼働を巡り、新潟県の花角知事が容認する意向であることが報道された。原発の停止は主に火力発電用燃料の輸入増につながり、貿易赤字の主な要因となっている。柏崎刈羽原発が国内最大級とはいえ再稼働による貿易収支改善へのインパクトは小さいとみられるが、データセンターの誘致などでメリットを受ける地方自治体が増えると見込まれる。運営主体の電力会社、電気設備工事の関電工1942、原子炉メーカーである三菱重工業7011のほか、原発向けバルブ・アクチュエータの日本ギア工業6356、メカニカルシール・蒸気隔離弁を供給するイーグル工業6486、沸騰水型原子炉向けバルブの岡野バルブ製造6492、柏崎刈羽原子力企業協議会の参加企業でもある鹿島建設1812なども恩恵が見込まれる。(笹木)

本日号は、日本スキー場開発(6040)、日本ギア工業(6356)、JVCケンウッド(6632)、NOK(7240)、バンク・マンディリ(BMRI)を取り上げた。

■主な企業決算の予定   

  • 1125日(火):(米)ゼットスケーラー、ワークデイ、オートデスク、アナログ・デバイセズ
  • 1126日(水):タカショー、(米)ディア
  • 1127日(木):ダイドーグループホールディングス、
  • 1128日(金):トリケミカル研究所、ラクーンホールディングス

 

主要イベントの予定

  • 1124日(月)

・ラガルドECB総裁、AIサミットで基調講演(スロバキア・ブラチスラ

バ)、EU貿易相会合(ブリュッセル)・ラトニック米商務長官とも会談、EU・アフリカ連合(AU)首脳会議(アンゴラ・ルアンダ、25日まで)

・独IFO企業景況感指数 (11月)

 

  • 1125日(火)

・14:30 東京地区百貨店売上高・全国百貨店売上高(10月)

・米小売売上高(9月)、米生産者物価指数(9月)、米FHFA住宅価格指数(9月)、米主要20都市住宅価格指数(9月)、米企業在庫(8月)、米中古住宅販売件数(10月)、米消費者信頼感指数(11月)、欧州新車販売台数(10月)、独GDP(3Q)

 

  • 1126日(水)

・財務省40年利付国債入札、08:50企業向けサービス価格指数(10月)、14:00 景気先行CI指数・一致指数(9月)、15:00 工作機械受注(10月)

・米地区連銀経済報告(ベージュブック)公表、ECB金融安定報告、英予算案発表、ニュージーランド中銀が政策金利発表

・米新規失業保険申請件数(11月22日終了週)、米GDP (3Q、改定値)、米耐久財受注(9月)、米個人所得・支出(10月)、米個人消費支出(PCE)価格指数(10月)

 

  • 1127日(木)

・HUMAN MADEが東証グロースに新規上場、10:30 野口旭日銀審議委員が大分県金融経済懇談会で講演(14:30 記者会見)、日銀の国債買い入れオペ、財務省の国債市場特別参加者会合・国債投資家懇談会

・米株式・債券市場が感謝祭の祝日のため休場、ECB議事要旨(10月開催分)、韓国中銀が政策金利発表

・ユーロ圏マネーサプライ(10月)、ユーロ圏消費者信頼感指数(11月)、ユーロ圏景況感指数(11月)、中国工業利益(10月)

 

  • 1128日(金)

・財務省2年利付国債入札、08:30 有効求人倍率・失業率(10月)、08:30 東京CPI(11月)、08:50 鉱工業生産(10月)、08:50 小売売上高・百貨店スーパー売上高(10月)、08:50 対外・対内証券投資、10:00 日野自動車の臨時株主総会、14:00 住宅着工件数(10月)、17:00 日銀国債買い入れ日程(12月)

・米株式・債券市場が短縮取引、米ブラックフライデー(感謝祭翌日)、ECBによるユーロ圏CPI予想(10月)

・独失業率(11月)、独CPI(11月)、台湾GDP(3Q)、インドGDP(3Q)

 

  • 1130日(日)

・ホンジュラス大統領選、OPECプラス会合

・中国製造業・非製造業PMI (11月)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

米バークシャー保有銘柄の動向

著名投資家のウォーレン・バフェット氏率いる投資会社の米バークシャー・ハサウェイが11/14に2025年9月末時点の保有銘柄リストを米証券取引委員会(SEC)に提出。バークシャー保有上場株において最大の投資銘柄であるアップルAAPLは保有株式数を約15%減らした。バフェット氏はアップル製品のブランド価値を高く評価していたが、クックCEOの来年退任を巡る報道が取り沙汰され、トップ交代に備えて投資に慎重となっている可能性もある。

他方、グーグル親会社のアルファベットGOOGLのAクラス株を新たに取得した。アルファベットはAI(人工知能)半導体を内製化できるほか、傘下のディープマインド社が深層学習を主導する先駆者でもあることなど、AIに関する潜在的価値が評価されていると考えられる。

【米バークシャー保有銘柄の動向~アルファベット買い・アップル売りが鮮明】

■ビットコインの半減期アノマリー

代表的な暗号資産のビットコインには約3年10~11ヵ月ごと(1ブロック約10分に対して21万ブロックごと)に発生する「半減期」の仕組みがある。半減期とは「マイニング」によって得られる報酬の新規発行量が半分に減少するイベント。ビットコインは、あらかじめ流通量の上限が2100万ビットコインに設定されているため、需給バランスを調整し、希少性を保つために半減期が設定されている。

ビットコイン相場と2016年および2020年の半減期との関係を見ると、①16年7月半減期~17年末、②20年5月半減期~21年11月と、それぞれ約1年半の上昇後、短期間で大幅下落に見舞われた。③24年4月の半減期についても、同様に1年半後の今年10月、現時点ではピークアウトを迎えつつある状況にある。

【ビットコインの半減期アノマリー~株式市場も巻き込まれて約4年ごと調整】

■住宅投資落ち込みと財政緊縮化

内閣府が11/17に発表した2025年7-9月期の国内総生産(GDP)速報値(実質ベース)は前期比0.4%減、年率換算で1.8%減だった。米トランプ関税、およびサービス輸出に分類される訪日外国人のインバウンド消費減少もあり、輸出が1.2%減となった。住宅投資も、今年4月の建築基準法改正によって省エネルギー基準が厳しくなったことに伴い、3月に生じた駆け込み需要の反動減が出た。

2020~25年度までの政府一般会計の収支を見ると、歳出が減少傾向の一方、物価上昇の恩恵を受けて税収が増加傾向にあり、その差額である財政赤字は減少傾向だ。財政規律の観点からは望ましいが、歳出減少と消費者への「インフレ税」増加による財政緊縮の加速は、経済成長へ二重のブレーキをかけている。

【住宅投資落ち込みと財政緊縮化~歳出拡大または税収還付が必要不可欠】

■銘柄ピックアップ

日本スキー場開発(6040)                

509   円(11/21終値)   ※東証グロース

・2005年に日本駐車場開発2353により設立。スキー場事業を展開。特徴あるスキー場を取得し、地元関係者と一体となって冬以外の「グリーンシーズン」も含めてスキー場活性化・再生に取り組む。

・9/12発表の2025/7通期は、売上高が前期比26.9%増の104億円、営業利益が同44.7%増の22億円。来場者数はグリーンシーズン(昨年8月~11月中旬と今年4月下旬~7月)が520千人と連続で過去最高を更新。ウインターシーズン(昨年11月下旬~今年4月)は前年同期比11%増の1828千人。

・2026/7通期会社計画は、売上高が前期比9.7%増の114億円、営業利益が同2.4%増の23億円、年間配当が同1.5円増配の5.0円。気象庁の予報によれば今冬の前半は弱いラニーニャ現象を背景に冬らしい寒さが続く見通し。JR東日本は冬の臨時列車の運行本数を前期比3%増とし、ウインタースポーツ人気のため、白馬駅(長野県白馬村)に向かう臨時の特急列車を冬季で初めて走らせる。

日本ギア工業(6356            

851  11/21終値)  ※東証スタンダード

・1938年に晴山自動車工業として設立後、歯車製造から歯車装置の分野に進出。バルブ・アクチュエータ、ジャッキ、その他増減速機等に関連し、「歯車および歯車装置事業」、「工事事業」を展開。

・10/31発表の2026/3期1H(4‐9月)は、売上高が前年同期比0.7%減の42億円、営業利益が同11.1%減の7.9億円。受注残高が39.5%増の64億円。受注高は、歯車および歯車装置産業では火力発電所や原発向け、および工事事業では火力発電所や上下水道向けを中心に拡大した。

・通期会社計画は、売上高が前期比2.7%減の93億円、営業利益が同2.2%減の20.6億円、年間配当が同横ばいの8円。同社は原発向けバルブ・アクチュエータで国内シェア9割超を占め、競合他社を大きく凌駕する強みを持つ。東京電力柏崎刈羽原発6号機が再稼働した場合、保守需要で受注高および受注残の増加が見込まれる。火力発電所や原発以外の多様な産業分野への展開も有望。

JVCケンウッド(6632)            

1152.5 円(11/21終値) 

  

・2008年にビクターとケンウッドが株式移転により共同持株会社設立。「モビリティ&テレマーケティングサービス」、「セーフティ&セキュリティ」、「エンターテイメント・ソリューション」の3分野関連を営む。

・10/31発表の2026/3期1H(4-9月)は、売上収益が前年同期比4.1%減の1693億円、事業利益(売上収益から売上原価・販管費を控除)が同36.1%減の83億円。主にセーフティ&セキュリティ分野の無線システム事業が中国に起因する半導体部品供給不足により生産・販売減となったことが響いた。

・通期会社計画を上方修正。売上収益を前期比2.8%減の3600億円(従来計画3580億円)、事業利益を同17.0%減の210億円(同200億円)とした。年間配当は同3円増配の18円と従来計画を据え置いた。米トランプ関税の影響の軽減や半導体部品供給不足の解消が見込まれる。クマによる被害が急増の中、AI(人工知能)カメラでクマを監視し、先手必勝で罠を配置・捕獲する管理が必要だろう。

NOK7240                                

2580   11/21終値) 

 

・1951年に東京オイルシール工業と日本油止工業が合併し、日本オイルシール工業を設立。主に、オイルシール等を扱う「シール事業」およびフレクシブルサーキット等を扱う「電子部品事業」を展開。

・11/10発表の2026/3期1H(4-9月)は、売上高が前年同期比8.7%減の3593億円、営業利益が同17.7%減の157億円。主な事業別の営業利益は、シール事業(売上比率50%)が15%増の128億円、電子部品事業(同45%)が自動車向けやスマートフォン向けの減少が響いて67%減の21億円。

・通期会社計画は、売上高を前期比5.2%減の7269億円(従来計画7071億円)へ上方修正の一方、営業利益を同11.7%減の329億円(同379億円)へ下方修正。年間配当は同25円増配の130円(同110円)へ増額修正とした。同社は持分法適用会社であるイーグル工業6486との経営統合を発表。統合時期は来年10/1予定。イーグル工業はシール製品の中でメカニカルシールに強み。

バンク・マンディリ(BMRI)     

市場:インドネシア    4940  IDR 11/20終値)

・1997年以降のアジア通貨危機時に政府により実施された銀行再編計画の一環として1998年に設立された国営銀行。イスラム金融やマイクロバンキング、およびマルチファイナンス事業に特色。

・10/27発表の2025/12期9M(1-9月)は、総営業収益が前年同期比4.8%増の106.6兆IDR、純利益が同10.4%減の37.7兆IDR。預貸利鞘縮小も、貸出残高と預金・融資関連手数料やデジタル取引の非金利収益の拡大により増収。経費率の悪化と不良債権処理費用の増加が響き最終減益となった。

・通期会社計画は、期末貸出残高伸び率が前期比8-10%(9M実績5.6%増)、純金利マージン(NIM)が4.8-5.0%(同4.89%)、総信用コストが0.8-1.0%(同0.73%)と従来計画を据え置いた。9月末時点で、低所得者向けマイクロクレジットの融資残高が前年同期比7%増。傘下のイスラム金融(バンクシャリア)の9Mは純利益が同9%増の5.5兆IDRと、収益の柱として成長しつつある。

■アセアン株式ウィークリーストラテジー

11/25号:インドネシアのマイクロファイナンス)

「マイクロファイナンス」とは、お金がなく銀行口座を持てない人や普通の銀行が貸してくれない小さな事業者に対し、少額の融資などの金融サービスを提供する仕組みであり、貧困層・低所得層、自営農家、小さな商店や屋台などを営む人を対象としている。世界全体では女性が7~8割を占めるとみられている。インドネシアでマイクロファイナンスが盛んになった理由としては、①国土が広すぎて普通の銀行がカバーできない、②銀行が相手にしない規模の中小零細事業が国内GDPの約6割を占める、③1980年代に国有銀行のバンク・ラヤット・インドネシア(BRI)が「Unit Desa(村落単位)」システムを全国展開し、商業ベースで利益を上げるモデルを確立、④2007年に政府がKUR(国民事業融資)プログラムを開始し本腰を入れた、といったことが挙げられる。

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

アセアン・米国株、個別銘柄のリサーチレポート承ります
世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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