【投資戦略ウィークリー 2019年5月7日号(2019年4月26日作成)】“政治相場「安倍・トランプ劇場」の可能性も?”
■政治相場「安倍・トランプ劇場」の可能性も?
- 当ウィークリー4/8号でも述べたように、新年度の日本株相場は7月の参院選に向けて動き出していると見ているが、ここに来て消費税増税延期問題が大きな争点として浮上した。
- 米国株の1-3月決算発表が市場予想を上回る傾向が強まり、ナスダック、およびS&P500の終値が過去最高値を更新した。日本株市場は、4/22-23こそ10連休を前にした閑散相場だったが、4/24約定の受渡日が連休明けとなったこともあり、換金・処分売り懸念が一服。4/25の日銀政策決定会合への期待と円安も後押しし、日経平均株価は22,300円台まで上昇した。
- その一方で、4/18に萩生田自民党幹事長代行が10月消費税率10%への引き上げについて「6月の日銀短観の数字次第では、違う展開はある」と増税延期の可能性を指摘した。菅官房長官が「リーマンショック級の出来事が起こらない限り、10月に10%に引き上げる予定」と従来通りの見解を表明したが、唐突に消費税増税延期問題が勃発したかのように見える。
- しかしながら、4/8内閣府発表「3月景気ウォッチャー調査」では、現状判断DIは全詳細項目で基準値0割れ、先行き判断DIも「サービス関連」以外全て50.0割れと数値が悪化。消費税増税実施によるリセッション懸念は根強い。それに加え、トランプ政権は昨年から消費税の輸出戻し税が自動車などへの「輸出補助金」に当るとして批判を強めており、4/15-16の日米物品貿易協定(TAG)交渉においても消費税増税がやり玉に上げられていることは想像に難くない。2020年米大統領再選を目指すトランプ大統領にとっては、キャスティングボードを握るオハイオ州やペンシルベニア州などの「ラストベルト」(錆びた工業地帯)の票を落とせない事情があり、その中心にある米自動車産業の保護は政策の優先順位が極めて高い。
- 消費税増税が日本国債への信認の前提となっており、財政再建を軽視すべきではないが、衆院解散・衆参同時選挙で国民に信を問い、衆参両院で安定多数を確保して今まで誰もできなかった憲法改正の実現に向けて一気に勝負に出たいのも政治家の本能・本望であろう。トランプ大統領の強力な援軍を得て、安倍首相が乾坤一擲(けんこんいってき)の大勝負に出る「安倍・トランプ劇場」の可能性は無視できまい。(笹木)
- 5/7号では、エムスリー(2413)、ティア(2485)、大日本住友製薬(4506)、京セラ(6971)、 ネットワンシステムズ(7518)、平和不動産(8803)を取り上げた。
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■主な企業決算 の予定
- 4月29日(月):アルファベット
- 4月30日(火):イーライリリー、メルク、マクドナルド、マスターカード、ファイザー、ゼネラル・エレクトリック(GE)、チャーター・コミュニケーションズ、コノコフィリップス、サイモン・プロパティー・グループ、ゼネラル・モーターズ(GM)、アムジェン、モンデリーズ・インターナショナル、アップル
- 5月1日(水):サザン、CVSヘルス、オールステート、メットライフ、クアルコム
- 5月2日(木):エクセロン、Dow Inc、ギリアド・サイエンシズ
- 5月3日(金):バークシャー・ハサウェイ
- 5月6日(月):アメリカン・インターナショナルグループ、オキシデンタル・ペトロリアム
- 5月7日(火):ヤマハ発動機、エマソン・エレクトリック、アラガン
- 5月8日(水):双日、トヨタ自動車、東京建物、住友重機械工業、アサヒグループホールディングス、ミネベアミツミ、IHI、富士フイルムホールディングス、SUMCO、三越伊勢丹ホールディングス、横河電機、協和発酵キリン、本田技研工業、SCREENホールディングス、本田技研工業、スカパーJSATホールディングス、ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー
- 5月9日(木):日清紡ホールディングス、帝人、キリンホールディングス、三菱重工業、塩野義製薬、東洋紡、住友商事、丸紅、三菱商事、東ソー、千代田化工建設、リコー、昭和電工、テルモ、日本精工、東海カーボン、パナソニック、、東邦亜鉛、ソフトバンクグループ、三井金属鉱業、コナミホールディングス、エヌ・ティ・ティ・データ、ニコン、サッポロホールディングス、住友金属鉱山、日本製鉄、トレンドマイクロ、沖電気工業、神戸製鋼所、ヤマハ、ダイキン工業、三菱自動車工業、マツダ、デューク・エナジー
- 5月10日(金):清水建設、大日本住友製薬、SUBARU、旭化成、味の素、大成建設、長谷工コーポレーション、住友電気工業、日本板硝子、コムシスホールディングス、クボタ、大平洋金属、三井不動産、スズキ、日立造船、ディー・エヌ・エー、東急不動産ホールディングス、日本電信電話、楽天、オリンパス、日本化薬、三井E&Sホールディングス、静岡銀行、りそなホールディングス
■主要イベントの予定
- 4月29日(月)
・米個人所得 (3月)、米個人支出 (3月)
- 4月30日(火)
・米中貿易協議(北京)、中国製造業PMI、非製造業PMI (4月)
・米消費者信頼感指数 (4月)、米中古住宅販売成約指数 (3月)
- 5月1日(水)
・米FOMC声明発表(パウエルFRB議長会見)、米自動車販売 (4月)、米ADP雇用統計 (4月) 、米建設支出 (3月)、米ISM製造業景況指数(4月)
- 5月2日(木)
・米政権、日本などへのイラン原油禁輸の適用除外を終了
・米非農業部門労働生産性・単位労働コスト(1-3月、速報値)、米製造業受注 (3月)、米新規失業保険申請件数(4月27日終了週)、中国財新製造業PMI (4月)
- 5月3日(金)
・米雇用統計(4月)、米卸売在庫 (3月、速報値)、米ISM非製造業景況指数(4月)
- 5月6日(月)
・中国財新サービス業PMI (4月)、中国財新コンポジットPMI (4月)
- 5月7日(火)
・米求人件数 (3月)、米消費者信用残高(3月)、中国外貨準備高 (4月)
- 5月8日(水)
・日銀金融政策決定会合議事要旨(3月14・15日分)
・米中貿易協議(ワシントン)、中国貿易統計 (4月)
- 5月9日(木)
・米PPI (4月)、米貿易収支(3月)、米失業保険申請件数(5月4日終了週)、米卸売在庫(3月、改定値)
・中国CPI (4月)、PPI (4月)
- 5月10日(金)
・日銀金融政策決定会合における主な意見(4月24・25日分)、家計調査(3月)、毎月勤労統計(3月)
・米CPI (4月)、米財政収支(4月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
■経済の基調判断は据え置きだが
内閣府は4月の月例経済報告で、日本経済の基調判断を据え置いた。消費や設備投資などの内需は堅調とし2013/7以降一貫して使用している「回復」の文言を今回も盛り込んだ。3月は「輸出や生産の一部に弱さもみられる」との文言を追加し、下方修正している。
生活実感としての景況感を計る景気ウォッチャー調査によると、食品の値上げが相次いだ影響などで3月の現状判断DIは前月から大幅に悪化。景気動向指数は機械的に景気の基調判断を下すため、3月期の発表時に下方修正される可能性が高い。足元では10連休による消費需要の盛り上がりが期待されるているが、反動による連休後の冷え込みも懸念される。景気変動の影響を受けにくい銘柄を物色したい。(増渕)
【4月の基調判断は据え置きだが消費が弱含み~10連休後の反動に要注意】
■油井管ビジネスに追い風
WTI原油先物は2018年末の安値から5割上昇した。一方、米国の石油掘削リグの稼働数は減少傾向が続き、4/19時点で1,012基と12/28時点の1,083基より6%少ない水準に留まっている。ただ、増加に転じる兆しも出ている。需要の高まりを背景に、油井管の取引価格が前年比15%程度上昇しているという。特に日本製ステンレス油井管は耐食性が高く、石油業界からの引き合いが高い。
原油価格が11月初旬の水準を取り戻したことに加え、4/22には米政府がイラン産原油の輸入を8ヵ国・地域に認める特例措置を5/2に打ち切ると発表。需給引き締まり観測から、リグの稼働数は増加に転じる可能性が高い。米国で油井管ビジネスを展開する兼松(8020)などには追い風となろう。(増渕)
【原油価格は上昇するもリグ稼働数は低迷~特例措置打ち切りでリグ反発か】
■低信用倍率・低PBR・低PER銘柄
信用倍率が1.0倍を下回る「売り長」銘柄は、信用期日までの買戻し圧力が強まることから需給面では買い要因となり得るが、更に、資産状況や業績面で割安な銘柄でもあれば、買い安心感は高まる。ただし、投資家人気が離散した結果としての低信用倍率・低PBR・低PERという面もあるので、短期で結果を求めたい投資には向かないであろう。
そこで、TOPIX採用銘柄について低信用倍率・低PBR・低PERでスクリーニングした上で、「防災・減災、国土強靭化」として第2次補正予算として1兆723億円、河川や道路の防災・減災対策6,183億円と日本政府の予算による需要の後押しが見込まれる「建設」業種銘柄を掲載した。「人の行く裏道にあり」銘柄と言えそうだが、ご参考まで。(笹木)
【低信用倍率・低PBR・低PER銘柄分布状況、および条件を満たす建設株】
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。