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【投資戦略ウィークリー 2025年4月28日・5月7日合併号(2025年4月25日作成)】”戻りを試す日本株とドル円相場~いつまで続くのか?”

 

戻りを試す日本株とドル円相場~いつまで続くのか?

  • 日本株は、ドル円相場とともに戻り上昇を試す局面にある。日経平均株価は4/7に一時3万0792円と、昨年8月に付けた2024年安値の3万1156円を下回ったが、その後反転し、4/7から数えて15営業日目の4/25には3万5800円台まで上昇。トランプ米政権が相互関税を一時的に発動して大幅に下落した直前4/2終値(3万5725円)を回復した。また、ドル円相場は23年12月下旬、24年9月中旬に続き、25年の4/22に1ドル140円水準までドル安円高が進行したものの、その後、反転して4/25には1ドル143円台までドル高円安が進んだ。トランプ米大統領がパウエルFRB議長を解任する意図がないと言明したこと、米中貿易摩擦が緩和の方向に向かい始めたこと、および、日米財務相会談で通貨目標が一切ないとされたことなどが日本株とドル円相場の戻り上昇を後押ししている。
  • この動きはいつまで続くのだろうか? 先ず、企業決算の発表における会社業績予想の動向が鍵を握るだろう。トランプ関税の影響を合理的に見積もれないとして通期予想の開示を控える企業が出始めている。高コストで損益分岐点が高ければ、利益の変動幅が大きくなり過ぎて開示が難しくなる面がある。また、予想PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が相対的に高い企業は、将来期待で買われる面が強いことから、「期待で買って、開示できないという現実で売る」ということになりやすいと考えられる。
  • 次に、2024年の金融環境が2007年と類似していたことから、2025年前半の景気・株価サイクルも2008年前半が参考になる。日経平均株価は、2007年6月下旬に1万8297円まで上昇後、反転して売り基調となり、2008年3月中旬に1万1691円まで下落。その後、6/6の1万4601円まで上昇期間が継続した。2025年も米国による相互関税の一時停止が90日間あることから、5~6月までは交渉による関税撤廃・緩和への期待が継続しやすいだろう。ただ、その後は、実体経済悪化に伴う企業業績への不安や参議院選挙に向けた不透明感などが株価の上値を重くする展開が考えられる。
  •    東京証券取引所が4/24、上場会社に対し、個人が求める投資単位の水準を10万円程度と指摘するアクションプランを公表。この水準は個人投資家へのアンケート調査に基づく参考値として位置づけられる。投資単位を下げるには株式の10分割以上が必要になる企業も少なくないと見られる。大幅株式分割により若年層の投資資金の流入が増加すれば株価にも好影響が期待できるだろう。
  • 2025年3月期決算発表または業績予想修正では、内需関連の中でも建設に好調なものが多い。材料費高騰や人手不足によるコスト増加を契約見直しや設計変更、工事の追加などにより大型工事の利益率が高まる傾向が見られる。(笹木)

本日号は、鉄建建設(1815)、杏林製薬(4569)、日本信号(6741)、松田産業(7456)、キャピタランド・インベストメント(CLI) を取り上げた。

■主な企業決算の予定   

  • 428日(月): 北陸電力、豊田通商、日立製作所、日本電気、日本取引所グループ、日本碍子、日鉄ソリューションズ、東亞合成、東京地下鉄、東京瓦斯、中部電力、大和証券グループ本社、積水化学工業、小松製作所、住友重機械工業、三菱電機、九電工、関電工、レーザーテック、マブチモーター、マキタ、トクヤマ、ソシオネクスト、キッコーマン、オリエンタルランド、エス・エム・エス、TOTO、TDK、(米)NXPセミコンダクターズ、ケイデンス・デザイン・システムズ、ローパー・テクノロジーズ
  • 429日(火): (米)コスター・グループ、スターバックス、ビザ、モンデリーズ・インターナショナル、ブッキング・ホールディングス、ペイパルHD、リジェネロン・ファーマシューティカルズ、ファイザー、コカ・コーラ、クラフト・ハインツ、ハネウェル・インターナショナル、パッカー、アメリカン・タワー、アルトリア・グループ、ゼネラル・モーターズ、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)、アストラゼネカ
  • 430日(水): 北海道電力、日本特殊陶業、日本電気硝子、日本M&AセンターHD、南海電気鉄道、東北電力、東邦瓦斯、東武鉄道、東日本旅客鉄道、東京エレクトロン、東海旅客鉄道、中国電力、大和工業、大塚商会、大塚HD、村田製作所、商船三井、住友林業、四国電力、三菱倉庫、九州電力、関西電力、ナブテスコ、テクノプロHD、コーエーテクモHD、カゴメ、アルプスアルパイン、ZOZO、SCSK、LIXIL、BIPROGY、ANAHD、(米)メットライフ、KLA、メタ・プラットフォームズ、コグニザント・テクノロジー・ソリューションズ、クアルコム、マイクロソフト、アンシス、オートマチック・データ・プロセシング(ADP)、GEヘルスケア・テクノロジーズ、キャタピラー
  • 51日(木): 日本瓦斯、双日、住友商事、三井物産、協和キリン、ヤマトHD、セイコーエプソン、コカ・コーラボトラーズジャパン、アイカ工業、MonotaRO、JVCケンウッド、HOYA、(米)アメリカン・インターナショナル・グループ、デクスコム、アップル、アトラシアン、アムジェン、マイクロストラテジー、アマゾン・ドット・コム、エアビーアンドビー、サザン、CVSヘルス、バイオジェン、マクドナルド、アイデックスラボラトリーズ、エクセロン、マスターカード、イーライリリー、リンデ
  • 52日(金): 日本航空、大東建託、西日本旅客鉄道、三菱商事、丸紅、伊藤忠商事、エムスリー、(米)シェブロン、エクソンモービル
  • 55日(月):(米)バーテックス・ファーマシューティカルズ、パランティア・テクノロジーズ、オン・セミコンダクター
  • 56日(火):(米)エレクトロニック・アーツ、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ、グローバルファウンドリーズ、デューク・エナジー、マリオット・インターナショナル、データドッグ、コンステレーション・エナジー
  • 57日(水):日本たばこ産業、川崎汽船、横河電機、メルカリ、マクニカHD、LINEヤフー、JMDC、DMG森精機、(米)アップラビン、フォーティネット、メルカドリブレ、ドアダッシュ、アームHD、ウォルト・ディズニー・カンパニー、エマソン・エレクトリック、ベリスク・アナリティクス、CDW
  • 58日(木):名古屋鉄道、味の素、武田薬品工業、富士フイルムHD、任天堂、日本郵船、日本新薬、日本テレビHD、日清食品HD、長瀬産業、大同特殊鋼、大阪ガス、全国保証、千葉銀行、小野薬品工業、三菱自動車工業、江崎グリコ、兼松、群馬銀行、栗田工業、花王、リログループ、ライオン、ヤマハ、ヤマダHD、メイテックグループHD、バンダイナムコHD、ハウス食品グループ本社、ニコン、トレンドマイクロ、トヨタ自動車、ダイキン工業、ソフトバンク、コナミグループ、ケーズHD、カドカワ、カカクコム、オムロン、イビデン、TIS、SUMCO、NTTデータグループ、NSD、JFEHD、IHI、(米)ザ・トレードデスク、ワーナーブラザーズ・ディスカバリー、コノコフィリップス
  • 59日(金):FOOD & LIFE COMPANIES、明治HD、芙蓉総合リース、浜松ホトニクス、八十二銀行、日油、日本電信電話、日本製鉄、日本空港ビルデング、日本ハム、東京精密、東京建物、東急不動産HD、電源開発、太陽誘電、川崎重工業、西日本鉄道、森永製菓、小林製薬、住友金属鉱山、七十七銀行、山口フィナンシャルグループ、三菱重工業、五洋建設、九州旅客鉄道、京成電鉄、京阪HD、丸一鋼管、旭化成、レンゴー、リンナイ、リクルートHD、ユニ・チャーム、ミネベアミツミ、マツキヨココカラ&カンパニー、ブラザー工業、ヒロセ電機、パナソニックHD、パイロットコーポレーション、ニッコンHD、ディー・エヌ・エー、タダノ 、セブン銀行、ショーボンドHD、しずおかフィナンシャルグループ、コロワイド、コムシスHD、コーセー、クボタ、エクシオグループ、いよぎんHD、THK、SGHD、SCREENHD、SBIHD

主要イベントの予定

  • 428日(月):15:30日本取引所グループ山道CEO定例会見、17:00日銀国債買入日程発表(5月)、カナダ総選挙
  • 429日(火):ECBによるユーロ圏CPI予想(3月)、米卸売在庫(3月)、米主要20都市住宅価格指数(2月)、米FHFA住宅価格指数(2月)、米求人件数(3月)、米消費者信頼感指数(4月)、ユーロ圏マネーサプライ(3月)、ユーロ圏消費者信頼感指数(4月)、ユーロ圏景況感指数(4月)
  • 430日(水):日銀金融政策決定会合、08:50小売売上高・百貨店・スーパー売上高(3月)、08:50鉱工業生産(3月)、14:00景気一致指数・先行CI指数(2月)、14:00住宅着工件数(3月)、米ADP雇用統計(4月)、 米GDP速報値(1Q)、米中古住宅販売成約指数(3月)、米個人所得・支出(3月)、米個人消費支出(PCE)価格指数(3月)、独失業率(4月)、独GDP(1Q)、ユーロ圏GDP速報値(1Q)、独CPI(4月)、中国製造業・非製造業PMI(4月)、中国財新製造業PMI(4月)、豪CPI(1Q)、メキシコGDP(1Q)
  • 51日(木):日銀金融政策決定会合・終了後に結果と展望リポートを公表(15:30植田総裁会見)、14:00消費者態度指数(4月)、メーデーの祝日で欧州や香港など休場、労働節の祝日で中国休場(5日まで)、英地方選、米自動車販売(4月)、米新規失業保険申請件数(4月26日終了週)、米S&Pグローバル製造業PMI(4月)、米ISM製造業景況指数(4月)、米建設支出(3月)
  • 52日(金):08:30失業率・有効求人倍率(3月)、 08:50マネタリーベース(4月)、08:50対外・対内証券投資(4月20-26日)、ECB経済報告、米雇用統計(4月)、米製造業受注(3月)、ユーロ圏製造業PMI(4月)、ユーロ圏失業率(3月)、ユーロ圏CPI(4月)
  • 53日(土)・4日(日): オーストラリア総選挙、シンガポール総選挙、ADB年次総会(ミラノ、7日まで)、ルーマニア大統領選(第1回投票)
  • 55日(月):仏誕節の祝日で香港市場休場、 米S&Pグローバルサービス業・総合PMI(4月)、米ISM非製造業総合景況指数(4月)
  • 56日(火):FOMC(7日まで)、米貿易収支(3月)、ユーロ圏サービス業・総合PMI(4月)、ユーロ圏PPI(3月)、中国財新サービス業・総合PMI(4月)
  • 57日(水):米FOMC最終日・声明発表とパウエルFRB議長記者会見、ブラジル中銀が政策金利発表、EU非公式外相会合(ワルシャワ、8日まで)、米消費者信用残高(3月)、独製造業受注(3月)、ユーロ圏小売売上高(3月)、中国外貨準備高(4月)
  • 58日(木):財務省10年利付国債入札、08:50日銀金融政策決定会合議事要旨(3月18・19日分)、11:00東京オフィス空室率(4月)、政策金利発表(英中銀、スウェーデン中銀、ノルウェー中銀、ペルー中銀)、米新規失業保険申請件数 (5月3日終了週)、米卸売在庫(3月)、米ニューヨーク連銀1年先期待インフレ率(4月)、独鉱工業生産(3月)
  • 59日(金):08:30毎月勤労統計-現金給与・実質賃金・家計支出(3月)、14:00景気一致指数・先行CI指数(3月)、米ニューヨーク連銀総裁・クーグラーFRB理事・バーFRB理事が基調講演(レイキャビク)、米ウォラーFRB理事とボウマンFRB理事・ニューヨーク連銀総裁・セントルイス連銀総裁・クリーブランド連銀総裁がパネル討論会に参加、中国貿易統計(4月)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

2025年の米国株、2008年の呪縛

2024年と2007年は、米FRB(連邦準備制度理事会)が政策金利を1年以上の据え置きから9/18に0.5ポイント利下げに転換し、その後も年末まで2回連続で利下げを行うなど、景気サイクルの類似性が際立った。2025年の米国株の推移も2008年と類似する可能性がある中、実際に、S&P500株価指数において前年末を基準(=100)とする相対指数は、2008年と2025年の4月中旬に同水準となった。

2008年はサブプライム・ローンの不良債権問題を背景に、FRBが利下げに積極的だった点で、2025年は事情が異なる。2008年は消費者物価指数(CPI)が春から夏にかけて上昇が加速し、夏以降の景気悪化に繋がった。それを織り込んで株価が5月中旬以降から下落トレンド転換。CPIの動向と景気への影響は重要だろう。

2025年の米国株、2008年の呪縛~CPI上昇と景気悪化の有無が焦点か】

■アジア消費関連株が資金逃避先

世界的貿易戦争が激しくなる中、アジア消費関連株が恩恵を受けている。ゴールドマン・サックス・グループのストラテジストは、4/2の米追加関税発表後に公表したレポートでアジアの生活必需品株への投資を推奨。その中でも香港上場の食品(康師傳や統一企業中国控股)、菓子(中国旺旺集団)、ビール(華潤ビール)などのメーカーのほか、ミネラルウォーター(農夫山泉)、火鍋レストラン(海底撈国際控股)など香港上場銘柄の株価が年初から堅調に推移。

即席麺では、日本の日清食品ホールディングス2897)も中国で康師傳(カンシーフー)と同様に人気だが、香港ドル換算で見た昨年末以降の株価騰落率では、日清食品が出遅れている。同じアジア消費関連銘柄でも、香港株と比べて日本株が出遅れている面もあるだろう。

【アジア消費関連株が資金逃避先~主力は香港株、日本株の出遅れは魅力】

■円相場は過度な円安の歪みあり

トランプ米大統領がパウエル米FRB議長の解任を検討しているとの報道を受けて、ドル指数(複数の主要通貨に対する米ドル相場を指数化したもの)が4/21に2022年3月以来の安値を付けた。2022年2月末を100とした場合、4/23終値は、ドル指数が103.23、ユーロが対米ドルで100.86、スイスフランが同110.39であるのに対し、円は80.15と低水準にとどまる。

日本の長期金利が2023年初から緩やかな上昇基調を継続していた中、2023年10月頃までは、米国や欧州の長期金利上昇が急だったことから為替が円安に振れたことは自然な動きだった。その後、米国や欧州の長期金利の上昇が一服した後も円安が進んだことは、円相場の出遅れを際立たせた面があるだろう。

【円相場は過度な円安の歪みあり~他の主力通貨と比較して大幅な出遅れ】

■銘柄ピックアップ

鉄建建設(1815)          

2733  円(4/25終値)   

・1944年に国内産業の根幹である陸運輸送力の確保・増強の国策の一環で鉄道建設興業として設立。土木工事・建築工事が主な事業。鉄道工事で首位級。JR東日本9020の持分法適用会社。

・2/13発表の2025/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比5.1%増の1394億円、営業利益が同173%増の26億円。期首手持工事の増加、大型工事の順調な進捗、追加変更や新規追加の契約締結が増収に寄与。大型工事における価格移転交渉が奏功し、利益率改善につながった。

・4/22に通期会社計画を上方修正。売上高を前期比1.4%増の1861億円(従来計画1840億円)、営業利益を同265%増の35億円(同29億円)、年間配当を同22円増配の122円(同110円)とした。4/24終値で予想PER11.1倍、PBR0.55倍。投資家の注目が内需株の代表格である鉄道株に向かう中、駅前再開発など、電鉄会社の非交通事業における不動産事業の成長性に注目が集まっている。

杏林製薬(4569            

1477 4/25終値) 

 

・荻原廣が関東大震災を機に独立し、1923年に現・東京都大田区に東洋新薬社を創立。1931年に杏林科学研究所を設立。医薬品の製造、販売・仕入を行う。ぜんそく薬や去痰剤等を主力とする。

・2/5発表の2025/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比2.3%増の892億円、営業利益が同35.1%減の31億円。新薬の伸長が薬価改定や後発医薬品の減収を吸収。一方で、導入品(他社で開発した医薬品候補の権利を取得するもの)獲得に伴う研究開発費の増加が利益面で響いた。

・4/23に通期会社計画を上方修正。売上高を前期比8.8%増の1300億円(従来計画1234億円)、営業利益を同100.5%増の125億円(同65億円)とした。年間配当は同横ばいの52円で据え置き。自社創製化合物についてスイスのノバルティスとのライセンス契約に基づく契約一時金収入5500万USDを計上。今後の売上高次第で最大7億7750万USDに加え、段階的ロイヤリティを受け取る権利が発生。

日本信号6741)              

969 円(4/25終値) 

         

・1928年設立の信号機器国内最大手。鉄道・道路信号に強い。交通運輸インフラ事業(鉄道信号とスマートモビリティ)、ICTソリューション事業(AFC:自動料金収受システム、スマート・シティ他)を営む。

・2/4発表の2025/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比11.7%増の637億円、営業利益が同66.9%増の23億円。受注高は5.1%減の738億円。売上高は2事業ともに増加。セグメント損益はICTソリューション事業(売上比率53%)が78%増の一方、交通運輸インフラ事業(同47%)は69%減。

・4/23に通期会社計画を上方修正。売上高を前期比8.4%増の1068億円(従来計画1000億円)、営業利益を同45.1%増の99億円(同80億円)、年間配当を同12円増配の43円(同31円)とした。新紙幣対応に加え、鉄道事業者が業績改善に伴い安全設備投資を増やした恩恵を受けた。国土交通省が交差点設置センサーで車や人の動きを把握する仕組みの技術標準作りに取り組む点も追い風だ。

松田産業(7456           

3660   4/25終値) 

  

・1956年に卵白の販売を目的として松田商店を設立。貴金属関連事業(貴金属回収製錬、貴金属地金・電子材料の販売、産業廃棄物の収集・運搬・処理)および食品関連事業を主に営む。

・2/13発表の2025/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比28.5%増の3486億円、営業利益が同51.2%増の108億円。売上比率76%の貴金属関連事業は、28%増収、営業利益が65%増の87億円。貴金属リサイクル取扱量が増えた。食品関連事業は、3%減収、営業利益が13%増の21億円。

・通期会社計画は、売上高が前期比22.0%増の4400億円、営業利益が同25.1%増の117億円。年間配当は同15円増配の75円(従来計画70円)へ増額修正。金市況の堅調な推移に加え、電子デバイス分野の生産が停滞し、スクラップからの回収が伸び悩む中でも宝飾分野からのリサイクル取扱量を増やしており、景気に左右されにくい点が注目される。金価格上昇の恩恵が引き続き期待される。

キャピタランド・インベストメント(CLI)  

市場:シンガポール  2.65 SGD 4/24終値)

・アジア最大規模の不動産会社だったキャピタランドから2021年に分離独立して上場。政府系投資会社テマセクHDが約57%の株式を保有。手数料関連事業と不動産投資事業の2事業を営む。

・2/27発表の2024/12通期は、営業収益が前期比1.1%増の28.15億SGD、不動産ポートフォリオ売却に伴う一時的要因の影響を除く営業ベース当期利益が同10.2%減の5.10億SGD。12月末時点の管理ファンド額が同18%増の1170億SGDへ拡大の一方、子会社・関連会社等の売却が響き減益。

・同社は管理ファンド金額を拡大させる一方、2024年の年間売却金額が前期比2.6倍の55億SGDと、積極的に不動産ポートフォリオ入れ替えを図るほか、24年末時点のバランスシート総額を同50%減の43億SGDへ縮減するアセットライト(少ない資産で効率的に利益を上げる)戦略を推進。同戦略の一環として中国商業施設系REIT(不動産投資信託)について上海取引所に上場申請を行っている。

■アセアン株式ウィークリーストラテジー

4/28-5/7号「シンガポールの選挙制度について」)

シンガポールのローレンス・ウォン首相は4/15、国会(一院制、任期5年)を解散すると発表。5/3に投開票される。前回2020年の総選挙(議席数93)では、与党の人民行動党(PAP)が約9割の83議席を確保して勝利したものの、得票率は2015年の69.9%から61.2%へ低下し、野党の労働者党(WP)が議席数を6から10に増やした。今回は定数が97に増え、各政党が複数人のチームで出馬する18の「グループ選挙区」と、個人が立つ15の「単独選挙区」で議席を争う。グループ選挙区は多数を得た党が議席を総取りする仕組みであり、少数民族の代表性確保を目的としている。前回はWP以外の野党のうち、シンガポール民主党(SDP)や新党「シンガポール前進党(PSP)」は議席獲得に至らなかったものの、一部選挙区ではPSPがPAPに肉薄する得票率を獲得するなど、変化の兆しが見られた。

 

留意事項
  1. 上場有価証券等のお取引の手数料は、国内株式の場合は約定代金に対して上限1.265%(消費税込)(ただし、最低手数料2,200円(消費税込)、外国取引の場合は円換算後の現地約定代金(円換算後の現地約定代金とは、現地における約定代金を当社が定める適用為替レートにより円に換算した金額をいいます。)の最大1.10%(消費税込)(ただし、対面販売の場合、3,300円に満たない場合は3,300円、コールセンターの場合、1,980円に満たない場合は1,980円)となります。
  2. 上場有価証券等は、株式相場、金利水準等の変動による市場リスク、発行者等の業務や財産の状況等に変化が生じた場合の信用リスク、外国証券である場合には為替変動リスク等により損失が生じるおそれがあります。また新株予約権等が付された金融商品については、これらの権利を行使できる期間の制限等があります。
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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