【投資戦略ウィークリー 2019年5月20日号(2019年5月17日作成)】“米中摩擦の一方で、日本企業にチャンスも?”
■米中摩擦の一方で、日本企業にチャンスも?
- 5/13にトランプ政権が発表した中国への追加制裁関税「第4弾」(約3,000億ドル分の同国製品に最大25%の関税)が日本株市場に動揺を与えている。昨年発動した1~3弾とは異なり、中国から輸入依存度が高い消費財が全体の4割に達することから、高い関税が輸入コスト上昇に直結して米国物価上昇につながることや、中国の成長率押し下げに伴う世界経済の失速が懸念されている。5/13-17の日本株市場は、日経平均で5/10終値21,344円から値下がり後、5/14に20,750円を付け、21,000円を挟んだレンジ保ち合いとなった。日経平均の21,000円水準に関しては「投資戦略ウィークリー2019年4月1日号」に記載の通り、中長期的にも相場の重要な節目と言えよう。
- 「第4弾」は、2018年の中国からの輸入金額では携帯電話とノートパソコンが特に大きいが、対中依存度では「テレビゲーム機」、「傘・杖」、「パソコン用モニター」、「玩具」が各々80%以上である。米国企業が代替輸入先の確保を急ぐことが予想されるが、日本企業の中にも「漁夫の利」としてビジネス機会を見出す余地があるのではないだろうか。その際、単に中国製品を卸売するのではなく、中国から素材や材料を輸入して日本で加工・組立後、日本製品として輸出できることが必要であろう。
- 5/14にウォルト・ディズニーが動画配信サービス「Hulu」の経営権を完全に握ったとを発表したが、同社は今年12月に動画配信の新サービス「ディズニー・プラス」開始を予定している。「ディズニー」、「マーベル」、「スターウォーズ」などの優良コンテンツを独占配信されることに対して、動画配信最大手のネットフリックスや、動画配信サービスを有するアマゾン、アップルなども警戒を強めて優良コンテンツ権利を押さえる動きに出るだろう。その際に、日本のアニメは候補に上がりやすいと想定される。現在、マーベルの映画「アベンジャーズ」が大ヒットしているが、Huluの持株をウォルト・ディズニーに譲渡したコムキャストの子会社「NBCユニバーサル」では、傘下の「レジェンダリー・ピクチャーズ」製作の「名探偵ピカチュウ」がヒット中である。
- 米中貿易摩擦の激化で世界経済・金融市場への懸念が高まる一方で、米国企業から日本企業に対して熱い視線が注がれる面もあることも忘れるべきではないだろう。(笹木)
- 5/20号では、東映アニメーション(4816)、横河ブリッジホールディングス(5911)、ムーンバット(8115)、丸井グループ(8252)、ソニーフィナンシャルホールディングス(8729)、住友不動産(8830)を取り上げた。
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■主な企業決算 の予定
- 5月20日(月): SOMPOホールディングス、東洋埠頭、東京海上ホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディングス
- 5月21日(火):ホーム・デポ、コールズ、TJX、オートゾーン、ノードストローム
- 5月22日(水):ロウズ、VF、ターゲット、アドバンス・オート・パーツ、アナログ・デバイセズ、Lブランズ、シノプシス、ネットアップ
- 5月23日(木): メドトロニック、ホーメルフーズ、DXCテクノロジー、インテュイット、ロス・ストアーズ、HP
- 5月24日(金):フットロッカー
■主要イベントの予定
- 5月20日(月)
・国内総生産(GDP、1-3月速報)、設備稼働率(3月)
・コンビニエンスストア売上高(4月)
・米パウエルFRB議長講演、米フィラデルフィア連銀総裁講演
- 5月21日(火)
・首都圏マンション発売(4月)、訪日外客数(4月)
・米シカゴ連銀総裁、米ボストン連銀総裁講演
・OECD世界経済見通し
・米中古住宅販売件数(4月)
・ユーロ圏消費者信頼感指数(5月)
- 5月22日(水)
・日銀・原田審議委員が長崎県の金融経済懇談会であいさつ
貿易収支(4月)、機械受注(3月)
米ニューヨーク連銀総裁、セントルイス連銀総裁講演、アトランタ連銀総裁会議で挨拶
米FOMC議事要旨 (4月30日-5月1日開催分)
ドラギ ECB総裁、講演(フランクフルト)
OECD閣僚理事会(パリ、23日 まで)
- 5月23日(木)
・米ダラス連銀総裁、サンフランシスコ連銀総裁、アトランタ連銀総裁、リッチモンド連銀総裁がパネル討論
・欧州議会選挙(26日まで)
・米新規失業保険申請件数(5月18日終了週)、米新築住宅販売件数 (4月)
・ユー ロ圏総合PMI (5月)、ユーロ圏製造業PMI(5月)、ユーロ圏サービス業PMI (5月)
・独GDP (1Q)、独IFO企業景況感指数 (5月)
- 5月24日(金)
・消費者物価指数(全国、4月)、全産業活動指数(3月)
・米耐久財受注 (4月)
- 5月25日(土)
・トランプ大統領夫妻、国賓として来日(28日まで)-新天皇陛 下に会見
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
■米中貿易摩擦が再燃
米通商代表部(USTR)は5/10、対中制裁関税第3段の輸入品目に対する関税率を10%から25%に引き上げた。3月に通商協議で進展があったため引き上げを延期していたが、3月以降は進展が見られず引き上げを決定。報道によると、中国は知的財産や企業秘密の窃取、強制的な技術移転、金融サービスへのアクセスなどに関する法改正への約束を協定草案から削除したもよう。
中国は一部米製品に追加関税を課す報復措置を発表。米国は制裁関税第4弾の検討に入った。関税による実態経済への影響が懸念されるものの米企業の代替輸入先となる銘柄は漁夫の利を得る可能性もある。海外に強い玩具メーカーのバンダイナムコHD(7832)などには追い風となるか。(増渕)
【米中関税合戦が再開~経済への影響が懸念されるが「漁夫の利」銘柄も】
■日経平均型ETF投資の着眼点
2018年の東証1日平均売買代金1位はNEXT FUNDS日経平均レバレッジ・インデックス(日々の騰落率を日経平均の騰落率の2倍として計算された指数)連動型ETF(1570)だった。同ファンドの取引所価格の前日比を見ると、日経平均株価の2倍から乖離する場合も見られ、基準価額(およびインディカティブNAV)とも連動しない場合も多い。
次に、日経平均株価の値動きも日経225オプション権利行使価格の存在に留意したい。特に、オプションの売りは「アウト・オブ・ザ・マネー」から「イン・ザ・マネー」になることで「デルタ・ヘッジ」と呼ばれる先物ポジション調整売買が増えることから日足四本値などで相場の節目価格となりやすい面もある。以上、注意しておきたい点である。(笹木)
【日経平均連動ETF投資の着眼点~三つの価格とオプション権利行使価格】
■不動産大手の決算まとめ
不動産大手5社の2019/3通期決算が出揃った。空室率低下と賃料上昇が続くオフィスビルが牽引し、野村不動産HD(3231)を除く4社が増益。2020/3通期は好調なオフィスビル市況を背景に全社が増収増益を見込む。ただ、マンション販売に頭打ち感があることなどを背景に増益率は鈍化する見通しだ。
売上高に占めるビル・商業施設の比率が高い三菱地所(8802)や住友不動産(8830)などの株価パフォーマンスは市場平均を超過。住宅事業の比率の高い野村不動産HD(3231)などをオーバーパフォームしている。働き方改革に伴うオフィス拡張・移転需要や東京五輪などで当面はオフィス・商業施設の市況は堅調を保つ見込みであり、商用ビルに強い銘柄を物色したい。(増渕)
【不動産大手の2020/3通期は増収増益見通し~好調なオフィスビル市況】
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。