【投資戦略ウィークリー 2019年5月27日号(2019年5月24日作成)】“ファーウェイの嵐の中、進路を見定めよう!”
■ファーウェイの嵐の中、進路を見定めよう!
- 米国による中国ファーウェイへの事実上の輸出禁止規制の影響が世界の企業に広がり始めた。トランプ政権は監視カメラ大手ハイクビジョンやダーファ・テクノロジーなども禁輸措置対象リストに加えることを検討中と報じられている。米国による中国への追加制裁関税と併せて業績への悪影響が懸念される業種も拡がっており、日経平均株価は5/20、5/22に21,400円を超えたものの、5/24には21,000円を割り込んだ。
- 消費税増税に係る政局も絡み、日本経済の動向が注目されている。5/20発表の1-3月期実質GDP(速報値)が前期比5%。外需は輸入急減の特殊要因を含むため、内需を見ると同0.1%増。個人消費と設備投資がマイナスだったが、住宅投資が同1.1%増、公共投資が同1.5%増だった。5/22発表の3月機械受注(除く船舶・電力)も前月比3.8%増と良好だが、輸出依存度の高い製造業が同11.4%減に対して非製造業が13.4%増であり、建設業、リース、運輸業の上昇が目立った。輸出禁止規制の影響を受けやすい分野や輸出依存度の高い製造業は難しい時期に差し掛かる懸念が残るが、内需関連では12/14閣議決定の「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」、および「今年5月下旬~6月上旬目途」とされる「国土強靭化年次計画2019(仮称)の決定」の恩恵を受けやすい公共投資関連が要注目である。ただ、公共投資は予算の安定執行のために政治の安定が欠かせない点は注意が必要だ。
- 株主総会シーズンを控えて低ROE銘柄に対して投資ファンドなどから株主提案が行われることも意識される時期である。2015/6に「株主との対話」を含む5つの基本原則によって構成される「日本版コーポレートガバナンス・コード」が公表され、2018/6には、「経営戦略・計画の策定・公表に当たり、自社の資本コストを的確に把握すること」や「政策保有株式(上場株式)の縮減に関する方針・考え方などを開示すること」を含む改訂が行われた。4/1-5/21に発表された自社株買い取得枠集計額は前年同期比93%増(77兆円)となっている。株主総会前に限ったことではないが、「対話」を通じてROE向上を図りたい投資家の期待に応えるため、上場企業は自社株買いを中心とする株主還元の強化を一層求められよう。(笹木)
- 5/27号では、中外製薬(4519)、エンバイオ・ホールディングス(6092)、技研製作所(6289)、タムロン(7740)、MS&ADインシュアランスグループホールディングス(8725)、ニトリホールディングス(9843)を取り上げた。
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■主な企業決算 の予定
- 5月27日(月):ダイドーグループホールディングス
- 5月28日(火):タカショー
- 5月29日(水):PVH、キーサイト・テクノロジーズ
- 5月30日(木):菱洋エレクトロン、パーク24、ダラー・ゼネラル、ダラー・ツリー、コストコホールセール、クーパー、ギャップ、アルタ・ビューティ
■主要イベントの予定
- 5月27日(月)
・黒田日銀総裁、T20サミット(Think 20)で講演(都内)
・日米首脳会談、共同記者会見
・米休場(メモリアルデー)
・中国工業利益 (4月)
- 5月28日(火)
・企業向けサービス価格指数(4月)
・EU首脳会議 (ブリュッセル)、ユーロ圏マネーサプライ (4月)
・米FHFA住宅価格指数 (3月)、米主要20都市住宅価格指数 (3月)
・米消費者信頼感指数 (5月)
- 5月29日(水)
・黒田日銀総裁、日銀金融研究所主催の「2019年国際コンファランス」であいさつ
・独雇用統計 (5月)
- 5月30日(木)
・バルテスが東証マザーズに新規上場
・桜井日銀審議員、静岡県金融経済懇談会であいさつ
・クラリダ米FRB副議長、講演
・米GDP (1Q、改定値)、米卸売在庫 (4月)、新規失業保険申請件数 (25日終了週)、米中古住宅販売成約指数 (4月)
- 5月31日(金)
・完全失業率(4月)、有効求人倍率(4月)
・消費者物価指数(東京都区部、5月)
・鉱工業生産指数(4月)、商業動態統計(4月)
・自動車生産台数(3月)、住宅着工件数(4月)
・米個人所得・支出 (4月)、米 ミシガン大学消費者マインド指数 (5月)
・独CPI (5月)
・中国製造業・非 製造業・コンポジットPMI (5月)
- 6月1日(土)
・中国が米国からの輸入品600億ドル相当への関税率引き上げ
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
■社会インフラ老朽化と国土強靭化
来年はオリンピック・イヤーだが、前回の東京オリンピック時に建設された社会資本インフラの老朽化が大きな社会問題となっている。政府は2019年度国土強靭化関係予算として前年比40.3%増の5.30兆円を計上しているが、その内25.3%の1.34兆円は昨年12/14閣議決定された「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」が占めている。
この緊急対策は2018-2020年度の3年間でソフト・ハード対策の合計約7兆円を集中投入予定であり、今後も公共投資として日本経済の景気下支えの役割も期待される。人命にも関わる分野であることから、計上した予算の着実な執行が政府や地方自治体に要請され、関連企業においては今期と来期の業績への寄与が見込まれよう。(笹木)
【社会資本の老朽化~国土強靭化に加え、3か年緊急対策も】
■中国企業がブラックリスト入り
米商務省は5/16、安全保障上の懸念のある外国企業を挙げたエンティティー・リストにファーウェイを追加。ブラックリストとも呼ばれる。米国から製品を輸出する場合は商務省の許可が必要となるが、申請は原則却下すると通知した。金融規制への警戒もあり、同社ドル建て社債は過去最大の下げを記録。価格は2ヵ月ぶりの水準まで切り下がった。
Bloombergは5/23、トランプ政権が中国の監視機器メーカー5社のエンティティー・リストへの追加を検討していると報道。中国政府によるウイグル族抑圧やスパイ活動で、これらの企業の製品が使用されていることが背景にある。中国は6/4に天安門事件30周年となるのを控え、政治問題に敏感な時期に入る。米中間の緊張が高まりそうだ。(増渕)
【華為(ファーウェイ)社債がブラックリスト入りで大幅下落~監視関連企業もリスト入りか】
■大手損保グループの決算まとめ
損保大手の2019/3通期決算が出揃った。MS&ADインシュアランスGHD(8725)とSOMPO HD(8630)が2期ぶり増益。国内で自然災害が多発したものの、再保険回収や異常危険準備金の取崩しなどでカバー。前期の北米のハリケーンによる大規模損害の反動も出た。米法人減税の効果が剥落した東京海上HD(8766)は減益となったが、2020/3通期は18.4%増益と最も高い増益率を見込む。全般的に良好と見る。
過去1年の株価パフォーマンスでは、東京海上HDが突出する。株主還元が評価されたほか、海外事業のウェイトが大きく国内の災害の影響を打ち消すとの見方が働いたようだ。英子会社MS Amlinの収益回復に取り組むMS&ADなども評価される可能性もあろう。(増渕)
【大手損保グループの決算まとめ~株価パフォーマンスは海外事業が肝】
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。