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投資戦略ウィークリー 2024年4月30日・5月7日合併号(2024年4月26日作成)】”円安で買われない日本株~実質賃金上昇催促相場へ”

 

■円安で買われない日本株~実質賃金上昇催促相場へ

  •   日銀は26日、金融政策決定会合の結果を発表。短期金利誘導目標を「0~1%程度」に据え置いた。前回(3月)会合で「これまでとおおむね同程度(月間6兆円程度)」とした国債買い入れ額について公表文から記述を削除するなど薄っすらタカ派色が見え隠れしたものの、為替相場は事前の想定ほどタカ派ではないとして1990年5月以来となる1ドル156円台まで円安ドル高が進行。
  •   円安ドル高は、輸出企業の業績改善に繋がること、および海外投資家による日本株買いに付随する為替ヘッジ(円売り)ポジションであることを理由に日本株にとってポジティブにみられていた。ところが最近は、1ドル152円台に突入した今月10日から156円台に突入した26日までの推移を見ても、日経平均株価は3万9700円台から19日の安値3万6700円台まで大幅安となっている。
  •   第1に、日本株の仮需に係る信用取引を中心とした需給悪化である。東証が23日に発表した19日申し込み時点の信用買い残(2市場の制度信用と一般信用の合計)は4兆8645億円と、2006年7月以来の高水準となった前週より更に2691億円増加。更に、買い残を売り残で割った信用倍率が29倍と、記録が残る1994年12月以降で最高となった。これは将来の売り要因をかつてない規模で抱えていることを意味することから、24日のように終値で前日比900円超高い日があっても翌日に一転して大きな戻り売り圧力に見舞われやすい面も出てくる。それでも、需給悪化は一般的には短期的な下落に伴う価格調整、および時間経過を伴う日柄調整によりいずれ信用倍率低下とともに需給は改善するものである。
  •   第2に、今までと次元が異なる側面として、円安が日本株にとって好材料から一転して悪材料となることへの懸念である。日銀の植田総裁は18日、米ワシントンで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議が閉幕した後の記者会見で、円安進行で基調的な物価が上がって「無視できない大きさの影響になれば、金融政策の変更もありえる」と述べた。折しも24日、インドネシア中央銀行が政策金利を25ポイント引き上げ、6.25%とした。通貨防衛の波は新興国を中心に世界に広がっている。アフリカ南部のジンバブエのように実物資産の金と外準準備に裏付けされた新たな法定通貨を発行した国もある。ドル高が金価格高騰と連動するなど、常識的には奇異に映る価格相関性の大きな要因の1つになっている。
  •   日本経済にとっても「賃金上昇と物価上昇の好循環」への構造変化していく上は、円安傾向の反転を通じて物価上昇率が落ち着くことが望ましい。実質賃金上昇による消費・小売り・飲食などの内需拡大へと目線をシフトする必要もあるかもしれない。(笹木)

4/30号は、不二家(2211) 、日本オラクル(4716)、ダイキン工業(6367) 、ソフトバンク・グループ(9984)、ケッペル(KEP) を取り上げた。

■主な企業決算の予定   

※日本株はTOPIX500構成銘柄

  • 429日(月): (米)NXPセミコンダクターズ
  • 430日(火):北陸電力、日本特殊陶業、日本電気硝子、日本取引所グループ、日本瓦斯日本M&AセンターHD、、南海電気鉄道、東北電力、東武鉄道、東日本旅客鉄道、東京電力HD、東海旅客鉄道、中国電力、大和工業、大塚商会、大塚HD、西日本旅客鉄道、商船三井、住友林業、三菱倉庫、九州電力、関西電力、レーザーテック、ナブテスコ、コーエーテクモHD、エフピコ、アイカ工業、ZOZO、SGHD、LIXIL、JSR、BIPROGY、(米)ペイパル・HD、アマゾン・ドット・コム、スターバックス、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ、3M、コカ・コーラ、マクドナルド、イーライリリー
  • 51日(水):゙三井物産、イビデン、双日、(米)クアルコム、ファイザー、クラフト・ハインツ、マスターカード
  • 52日(木):日本航空、丸紅、住友商事、三菱商事、大東建託、(米)アムジェン、アップル、ブッキング・HD、モデルナ
  • 54日(土): (米)バークシャー・ハサウェイ
  • 57日(火):任天堂、川崎汽船、協和キリン、横河電機、リコー、ユニ・チャーム、ヤマダHD、マルハニチロ、マクニカHD、ヒロセ電機、JMDC、JFEHD、DMG森精機、(米)ウォルト・ディズニー
  • 58日(水):芙蓉総合リース、日本郵船、長瀬産業、大阪ガス、太陽誘電、三菱重工業、三菱自動車工業、江崎グリコ、伊藤忠商事、ローム、ライオン、ユー・エス・エス、ヤマハ、ヤマトHD、ベネフィット・ワン、ファンケル、ネットワンシステムズ、トレンドマイクロ、トヨタ自動車、ディー・エヌ・エー、コカ・コーラ ボトラーズジャパ、コーセー、オリックス、オムロン、TIS、LINE ヤフー、IHI、AGC
  • 5月9日(木):味の素、武田薬品工業、富士フイルムHD、不二製油グループ本社、浜松ホトニクス、日油、日本製鉄、日本精工、日本テレビHD、日本たばこ産業、日清紡HD、日産自動車、東京建物、東海カーボン、電源開発、全国保証、川崎重工業、西武HD、神戸製鋼所、小野薬品工業、住友不動産、住友金属鉱山、参天製薬、群馬銀行、栗田工業、九州旅客鉄道、花王、科研製薬、旭化成、リンナイ、リログループ、メルカリ、メイテックグループHD、ポーラ・オルビスHD、ブラザー工業、フジ・メディア・HD、パナソニックHD、ハウス食品グループ本社、ニコン、ツムラ、ダイワボウHD、ダイセル、ダイキン工業、ソフトバンク、シスメックス、コナミグループ、コスモエネルギーHD、ケーズHD、キリンHD、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、カルビー、カプコン、カドカワ、カカクコム、エア・ウォーター、アルプスアルパイン、SUMCO、SCREENHD、SANKYO、NTTデータグループ
  • 510日(金):明治HD、名古屋鉄道、本田技研工業、宝HD、八十二銀行、日本電信電話、日本製鋼所、日本新薬、日本空港ビルデング、日本ハム、東洋水産、東邦HD、東京精密、東京エレクトロン、東急不動産HD、島津製作所、長谷工コーポレーション、大和ハウス工業、大同特殊鋼、千葉銀行、西日本鉄道、森永製菓、上組、住友電気工業、資生堂、山口フィナンシャルグループ、三菱地所、三菱瓦斯化学、三井不動産、五洋建設、京浜急行電鉄、京阪HD、京王電鉄、丸一鋼管、関西ペイント、レンゴー、めぶきフィナンシャルグループ、ミネベアミツミ、マツダ、マツキヨココカラ&カンパニー、ホシザキ、ほくほくフィナンシャルグループ、パイロットコーポレーション、ニプロ、ニッコンHD、トプコン、デンカ、ちゅうぎんフィナンシャルグル、ダイフク、セブン銀行、セコム、セガサミーHD、ショーボンドHD、シップヘルスケアHD、しずおかフィナンシャルグルー、ジーエス・ユアサ コーポレーション、サンケン電気、コロワイド、コムシスHD、グローリー、クボタ、オリンパス、オートバックスセブン、オークマ、エクシオグループ、インターネットイニシアティブ、いよぎんHD、アシックス、THK、SBIHD、KDDI、H.U.グループHD、GMOペイメントゲートウェイ、GMO インターネットグループ、FUJI、FOOD & LIFE COMPANIES、DOWAHD

主要イベントの予定

  • 429日(月):スペイン首相が自らの去就について発表、ユーロ圏景況感指数 (4月)、ユーロ圏消費者信頼感指数 (4月)、独CPI (4月)
  • 430日(火):15:30 日本取引所グループの山道CEO定例会見、17:00 日銀国債買い入れ日程(5月)、08:30 完全失業率 (3月)、 08:50 鉱工業生産(3月)、08:50 小売売上高(3月)、08:50 百貨店・スーパー売上高(3月)、14:00 住宅着工戸数件数 (3月)

・米FOMC(5月1日まで)、米雇用コスト指数 (1Q)、米FHFA住宅価格指数 (2月)、米主要20都市住宅価格指数(2月)、米消費者信頼感指数(4月)、ユーロ圏GDP (1Q)、ユーロ圏CPI(4月)、独失業率 (4月)、独GDP(1Q)、中国製造業・非製造業PMI(4月)、中国財新製造業PMI(4月)、台湾GDP(1Q)

 

  • 51日(水):09:30 auじぶん銀行日本製造業PMI (4月)

・米FOMC最終日・声明公表とパウエルFRB議長記者会見、米四半期定例入札に関する発表、米自動車販売(4月)、米ADP雇用統計(4月)、米求人件数(3月)、米建設支出(3月)、米ISM製造業景況指数 (4月)

 

  • 52日(木):08:50 日銀金融政策決定会合議事要旨(3月18・19日分)、08:50 マネタリーベース(4月)、14:00 消費者態度指数( 4月)

・アジア開発銀行年次総会(5日まで、ジョージア・トビリシ)、OECD経済見通し、OECD閣僚理事会(3日まで)、英地方選挙、米新規失業保険申請件数 (4月27日終了週)、米貿易収支(3月)、米製造業受注 (3月)、ユーロ圏製造業PMI(4月)、香港GDP(1Q)

 

  • 536日(金~月):(3日)米シカゴ連銀総裁パネル討論会に参加、ノルウェー 預金金利、米雇用統計(4月)、米ISM非製造業総合景況指数(4月)、ユーロ圏失業率 (3月)、パナマ大統領選挙

・(6日)米ニューヨーク連銀総裁討論会に参加、米FRB上級融資担当者調査、ユーロ圏総合PMI(4月)、ユーロ圏サービス業PMI(4月)、ユーロ圏PPI(3月)、中国財新サービス業・総合PMI(4月)、インドネシアGDP(1Q)

 

  • 57日(火):09:30 auじぶん銀行日本サービス・複合PMI (4月)

・米アップル特別イベント開催、米ミネアポリス連銀総裁討論会に参加、米3年債入札、豪中銀政策金利発表、ロシア大統領、就任式、米消費者信用残高 (3月)、ユーロ圏小売売上高(3月)、独製造業受注 (3月)、中国外貨準備高 (4月)

 

  • 58日(水):米クックFRB理事講演、米10年債入札、スウェーデン中銀とブラジル中銀が政策金利発表、 米卸売在庫(3月)、独鉱工業生産(3月)

 

  • 59日(木):08:50 日銀金融政策決定会合における主な意見(4月25・26日分)、08:30 毎月勤労統計-現金給与総額・実質賃金総額(3月)、11:00 東京オフィス空室率(4月)、14:00 景気先行CI指数・景気一致指数(3月)

・米30年債入札、英中銀とメキシコ中銀とペルー中銀とマレーシア中銀が政策金利発表、米新規失業保険申請件数(5月4日終了週)、中国貿易統計(4月)、中国経済全体のファイナンス規模、新規融資、マネーサプライ(4月、15日までに発表)、フィリピンGDP(1Q)

 

  • 510日(金):家計支出(3月)、08:50 国際収支:経常収支・貿易収支(3月)、08:50 銀行貸出動向(4月)、08:50 対外・対内証券投資 (4月21-27日、4月28日-5月4日)、14:00 景気ウォッチャー調査 先行き判断・現状判断(4月)

・米シカゴ連銀総裁質疑応答に参加、ECB議事要旨(4月開催分)、米ミシガン大学消費者マインド指数・速報値 (5月)、米財政収支(4月)、英GDP(1Q)

・英鉱工業生産(3月)

  • 511-12日(土・日):中国CPI・PPI (4月)、リトアニア大統領選挙

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

テスラのビジネスモデルに変化も

電気自動車(EV)のテスラが4/23発表の1-3月決算は、前年同期比で約4年ぶりの減収減益かつ世界販売台数減少となった。収益確保に苦しむ中で全世界の従業員10%削減、現行モデルと同じ製造ラインでの低価格新モデル開発に加え、イーロン・マスクCEOは8/8に「ロボタクシー」を発表すると述べるなど、構造改革およびビジネスモデル革新を模索中だ。

決算内容で注目すべき点として、エネルギー生成・貯蔵のエネルギー関連事業、およびサービス関連事業の構成比が上昇していることが挙げられる。2024年1-3月期では、エネルギー関連は売上高が前年同期比7%増で売上比率が7.7%(同1.1ポイント拡大)、サービスその他は売上高が同25%増で売上比率が10.7%(同2.8ポイント拡大)を占めている。

【テスラのビジネスモデルに変化も~エネルギー関連とサービスの比率上昇】

■金銀比価動向、銅価格の変質

足元で銀の先物価格が高騰。大阪取引所の銀先物は国際相場と異なり為替の円安の恩恵をも受けて上げ足を速めている。金価格高騰を受け金より割安な銀へのマネー流入が加速。金価格を銀価格で割った相対的価値の「金銀比価」は1月下旬に90倍超に広がり、金に対する銀の割安さが注目されるようになった面も大きい。更なる倍率低下に向けて最大消費国の中国の景気動向や太陽光パネル向け需要拡大などが鍵となろう。

銅の国際相場も中国の3月の鉱工業生産の伸び減速に関わらず高騰。中国の大手銅精錬会社が3/13、原材料不足対応のため共同減産で合意のほか、米英が制裁により取引所(米CMEと英LME)でのロシア産アルミ、銅、ニッケルの新規受け入れを禁止したことも背景にある。

【金銀比価動向、銅価格の変質~90倍は銀買い目処、中国減速で銅買い】

■日銀短観の企業物価見通し

4/1に公表された日銀短観(企業短期経済観測調査)で、企業(全規模・全産業)の物価上昇率見通しおよび販売価格と物価全般の上昇率のスプレッド(格差)が昨年3月以降、1年後・3年後・5年後ともに伸びが鈍化傾向にあった。

そのようななか、今年3月は全ての年限で物価上昇見通しおよび同スプレッドが大きく改善した。その主な要因となったのが2024年「春闘」における労使交渉で大幅な賃上げが達成される見通しとなったことにある。連合が4/18に発表した2024年春闘の4次集計はベア(基本給を底上げ)と定期昇給を合わせた賃上げ率が平均5.20%と、前年同時期比で1.51ポイント上昇。植田日銀総裁は3月の政策変更について、春闘以外でも素地ができていたとしている。

【日銀短観の企業物価見通し~1・3・5年後ともに販売マージン拡大加速へ】

■銘柄ピックアップ

不二家(2211

 2470  円(4/26終値) 

  

・1938年設立の菓子大手。山崎製パン2212の子会社。製菓事業(「ミルキー」等キャンディ、チョコレート等)が利益の柱。洋菓子事業(ケーキ、アイスクリーム他)は製造ほか直営・FCで喫茶・飲食店経営も行う。

・4/24発表の2024/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比5.4%増の271.02億円、営業利益が同16.0%増の11.06億円。セグメント別売上高は、製菓事業(菓子と飲料)が同8.7%増の186.75億円に対し、洋菓子事業(洋菓子とレストラン)が同1.4%減の76.07億円。洋菓子除く3部門が堅調に推移。

・通期会社計画は、売上高が前期比3.3%増の1090億円、営業利益が同2.6倍の36億円、年間配当が同横ばいの30円。会社予想に基づく配当性向は約30%に留まること、かつ、親子上場における子会社少数株主利益への配慮から親子上場解消または株主還元強化などが焦点となろう。ネクター、ミルキー、カントリーマアム、ホームパイなど製菓製品の高いブランド力を背景に値上げの業績牽引が期待される。

日本オラクル(4716      

11785  4/26終値) 

  

・RDB(リレーショナル・データベース)管理ソフト世界首位の米オラクル日本法人として1985年設立。オラクル開発製品の日本における販売・付随サービス提供を主業務とし、独自の研究開発活動は行わない。

・3/19発表の2024/5期9M(6-2月)は、売上高が前年同期比8.4%増の1768億円、営業利益が同9.7%増の577億円。クラウドサービスとライセンスサポートを含む「クラウドサービス&ライセンスサポート」の売上高が同11.7%増の1173億円。特にクラウドサービスが同36%増(355億円)と成長顕著。

・通期会社計画は売上高が前期比2.0-6.0%増(前期実績2269億円)、EPS(1株当たり当期純利益)が406~408円(同:405.98円)、年間配当未定(同:162円)。生成AI(人工知能)など新テクノロジーに対する企業のIT投資の追い風に加え、最近大きな社会問題となっているSNS上のネット広告詐欺(アドフラウド)対策ツールへの需要の高まりは同社のデータクラウド「Moat」にとって追い風となろう。

ダイキン工業(6367) 

21160 円(4/26終値)

    

・1924年に大阪金属工業所として航空機用部品等で設立。空調・冷凍機事業(住宅・業務・舶用)、化学事業(冷媒・フッ素)、その他事業(油機・特機製品含む)を営む。エアコンは世界首位級。

・2/6発表の2024/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比9.3%増の3兆2636億円、営業利益が同0.9%増の3064億円。金利上昇による支払利息増が響き経常利益が同5.7%減の2821億円。営業利益では、売上比率92%の空調・冷凍機事業が同1.4%減も、化学とその他が吸収して増益を確保。

・通期会社計画は、売上高が前期比6.5%増の4兆2400億円、営業利益が同6.1%増の4000億円、年間配当が同横ばいの240円。空気中の熱活用でCO2排出量削減に繋がる高い省エネ性能の暖房設備「ヒートポンプ」は欧州(14ヵ国)で販売が2013年以降右肩上がり伸長も、2023年はガス価格低下が響き前年比5%減。欧州天然ガス相場(オランダTTF)は供給懸念から2月下旬以降上昇基調。

ソフトバンク・グループ(9984  

7782   4/26終値) 

  

・1981年設立。持株会社投資、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)、ソフトバンク(ソフトバンク9434LINEヤフー4689含む)、アーム、その他(オルタナティブ投資、福岡ソフトバンクホークス)の事業を営む。

・2/8発表の2024/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比2.6%増の5兆19億円、純利益が前年同期の▲9125億円から▲4587億円へ赤字幅縮小。持株会社投資事業からの投資損益が▲5834億円(前年同期3兆6996億円)へ悪化も、SVFからの投資損益が▲519億円(同:5兆67億円)へ改善した。

・昨年末時点の時価純資産(NAV)が19.2兆円と時価総額(25日終値)11.4兆円から乖離、純資産の対負債比率(LTV)は同社が25%以下を適正とする中で11.5%(昨年9月末比0.9ポイント上昇)と、過去4年平均値14.7%も下回る。ポートフォリオ比率はアーム32%、ソフトバンク13%、Tモバイル9%、SVF(1および2)が38%とアームが主力。世界スマホ市場回復と車載半導体市場拡大がアームへ追い風。

ケッペルKEP) 

市場:シンガポール       6.86  SGD4/25終値)

・20ヵ国以上で事業展開するコングロマリットで、政府所有投資会社テマセクHDSが筆頭株主。エネルギー・海洋、都市開発、コネクティビティ(接続)、アセット・マネジメントの4事業セグメントを運営。

・2/1発表の2023/12通期(海洋事業売却の影響を除く継続事業ベース)は、売上高が前期比5.2%増の69.67億SGD、調整後純利益が同5.5%増の8.85億SGD。都市開発事業が減収減益だったものの、エネルギー&環境事業、コネクティビティ(接続)事業、アセットマネジメント事業が堅調に推移。

・業績変動性の高い海洋事業を売却して脱炭素エネルギー関連インフラ事業を中心に事業買収を積極化。アジアや欧州など世界10ヵ国で32の脱炭素化データセンター(DC)を運営。節電・節水機能に優れた同社のDCは高評価を受けており、日本でも三井不動産(8801)と提携し投資積極化。また、英不動産投資会社エアモント・キャピタル買収を通じたファンド運用の世界展開も注目される。

■アセアン株式ウィークリーストラテジー

4/30号「インドネシアが通貨安を受け利上げ実施」)

インドネシア中央銀行が24日、政策金利(7日物リバースレポ金利)を0.25ポイント引き上げ、6.25%とした。通貨ルピアが4年ぶり安値圏にあり、輸入品を中心としたインフレ懸念に対応する。ルピアは対ドルでおよそ4年ぶりの安値圏にある。3月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、異常気象の影響を受けた食料品価格高騰を背景に、前年同月比3.05%と7ヵ月ぶりの高水準。インドネシアは家計消費がGDPの5割程度を占めており、インフレによる消費冷え込みは経済に与える影響が大きいだろう。

米FRB(連保準備制度理事会)による利上げ先送り観測が高まることで、他の新興国の通貨への下落圧力が高まっている。年初来の対ドルでは、インドネシア・ルピアよりも大きい下落率に見舞われているのがタイ・バーツであり、同様にタイ中央銀行も利上げに追いこまれる可能性もあろう。

 

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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