STI指数ETFの記録的な純資金流入を観測 ―スポットライトはテクノロジー株とREITへ
原文:シンガポール証券取引所
公開日:12月11日
翻訳作成日:12月28日
*このレポートはシンガポール取引所が発行した、経済見通しと市場、発行体に関するレポートを日本のフィリップ証券が翻訳して作成しています
■レポートサマリー
- STI指数は11月に2%上昇し、配当によりトータルリターンは0.7%に押し上げられた。STI指数に連動する2つの上場投信は、2021年9月以来の高水準となる2,600万SGDの純資金流入を記録した。
- テクノロジー株とREITは、11月のグローバル市場においてトップクラスのパフォーマンスを見せており、それぞれ平均11%と9%のトータル・リターンを記録していた。シンガポール市場でも同様のパフォーマンス傾向が見られ、機関投資家の純資金流入が最も多かったのはテクノロジー株であり、その額は5,190万SGDだった。
- 米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ終了の可能性を示唆したことを受け、iEdge S-REIT 指数は過去3年間で最高の月次パフォーマンスを上げ、そのトータル・リターンは4%の上昇であった。STI内の6つのS-REITはすべて、より広範なSTI指数をアウトパフォームし、平均トータル・リターンは7.5%であった。
- 中国株式を原資産とするETFは1,000万SGDの新規設定額を記録し、2023年2月以来の純流入額となった。4,700万SGDの売買代金を記録して2番目に活発な資産クラスとなった。
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STI指数は前月比0.2%上昇の3,073 ポイントで2023年11月を終え、配当金によりトータルリターンは0.7%に押し上げられた。KOPSI指数、TAIEX指数、日経225指数が平均10.5%上昇し、FTSE APAC指数が5.3%上昇したのと比べると、STI指数の11月のパフフォーマンスは出遅れたものとなった。アジア太平洋地域のアンダーパフォーマーは、トータル・リターンで平均2.2%下落したHSI指数とCSI300指数である。STI指数は11月に同地域の他市場の指数に遅れをとったものの、STI指数に連動する2つの上場投信(ETF)は2,600万SGDの記録的な純資金流入を記録し、これは2021年9月以来の高水準となった。
ファンド投資に向かった資金フローの純流入(+)および純流出(▲)を観ると、シンガポール市場全体での機関投資家資金フローでは、金融セクターが▲6億4,910万SGD、工業セクターが▲1億1,990万SGD、電気通信セクターが▲1億100万SGDとなったのを筆頭に、全体で▲9億SGDとなった。個人投資家の純資金フローは全体で+4億9,100万SGDとなり、引き続き市場に買いが入っていた。特に、金融サービスセクター(+3億7,150万SGD)、電気通信セクター(+1億2,300万SGD)、工業セクター(+7,930万SGD)などが純流入額の増加を牽引した。
テクノロジーセクターと REIT は先月のグローバル市場におけるトップ・パフォーマンス・セクターで、それぞれ平均 11%、9%近いトータル・リターンを記録した。シンガポールでも同様のパフォーマンス傾向が見られた。STI 指数におけるテクノロジー代表銘柄であるベンチャー・コーポレーションは月間で 7.1%上昇した。市場全体では、機関投資家の資金流入が最も多かったのはテクノロジー株で+5,190万SGDだった。
以下は、11月に機関投資家の資金流入が最も多かった10銘柄の詳細である。
SGX 証券コード |
時価総額 (百万SGD) |
日次平均 売買代金 (百万SGD) |
11月 月次 トータル リターン |
機関投資家 資金 純流入額 (百万SGD) |
セクター | |
CapitaLand Ascendas REIT | A17U | 12,469 | 33.4 | 9.20% | 39.6 | REITs |
SATS | S58 | 3,950 | 13.5 | 7.70% | 39.2 | 資本財セクター |
Venture Corporation | V03 | 3,640 | 18.4 | 7.10% | 33.1 | テクノロジーセクター (ハードウェア/ソフトウェア) |
iFast Corporation | AIY | 2,483 | 2.4 | 27.50% | 25.8 | テクノロジーセクター (ハードウェア/ソフトウェア) |
Frasers Logistics & Commercial Trust | BUOU | 4,156 | 11.2 | 10.30% | 20.1 | REITs |
Keppel Corporation | BN4 | 11,754 | 26.9 | 7.40% | 17.4 | 資本財セクター |
Sembcorp Industries | U96 | 9,145 | 25.7 | 12.00% | 8 | 公共財セクター |
Mapletree Industrial Trust | ME8U | 6,462 | 10.3 | 7.70% | 7.7 | REITs |
ComfortDelGro | C52 | 2,794 | 8.4 | -2.30% | 7.4 | 資本財セクター |
Keppel DC REIT | AJBU | 3,167 | 10.7 | 8.90% | 7.3 | REITs |
引用:シンガポール証券取引所(SGX)、ブルームバーグ(2023年11月30日の市場データによる)
*参考レート:1SGD = 107 JPY
米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げが終了する可能性が示唆されるシグナルが観測されたことを受け、iEdge S-REIT インデックスは過去3年間で最高の月となった。11月の月次トータル・リターンは7.4%増加であり、この反発により、iEdge S-REIT Indexの年初来リターンは10月末時点の9.0%のマイナスから、11月末時点では2.2%のプラスとなった。STI 内の 6 つの S-REIT はすべて、 STI 指数をアウトパフォームし、トータル・リターンの平均値は 7.5%であった。シンガポールに上場する5つのREIT ETFの2023年11月の取引高も2,940万Sドルと増加し、2022年11月に記録した1,490万SGDの2倍に迫った。
金利先行き見通しと地政学的な緊張に牽引され、金は11月に力強い上昇を見せ、12月初旬には1オンス2,100米ドルを超え、史上最高値を記録した。その結果、SGXに上場する金ETFであるSPDR®ゴールド・シェアETFは5400万SGDの売買代金を記録し、11月も売買代金トップのETFとなった。次いで、ライオン-OCBC証券のハンセンTECH ETFが4,327万SGDの売買代金で続いた。
中国株式を原資産とするETFも、1,000万SGDの純流入で2023年2月以来の純流入額を記録し、4,700万SGDの売買代金で、SGXで2番目に取引が活発な資産クラスとなった。
SGXに上場しているCSOP Huatai-PineBridge SSE Dividend ETFは、SSE配当指数に連動し、SSE(上海証券取引所)の大型・高配当企業50銘柄への投資機会を提供している。
同時に、Huatai-PineBridge CSOP iEdge Southeast Asia+ TECH Index ETFもSSEに上場しており、中国の投資家は東南アジアとインドのハイテクセクターの成長ポテンシャルに投資することが可能となった。オンショア投資家の関心を背景に、今年6月にSGXに上場したマスターETFであるCSOP iEdge東南アジア+ TECHインデックスETFは、11月に4,600万SGDの純資金流入を記録し、運用資産総額は6,500万SGDに達した。
下表は、11月に最も取引されたSGX上場ETF5銘柄の詳細である。
ETF名称 | 連動指数 | SGX証券コード | 11月の月次売買代金 (百万SGD) |
SPDR® Gold Shares | LBMA Gold Price PM |
SGD建て: GSD |
53.7 |
USドル建て: |
|||
Lion-OCBC Securities Hang Seng TECH ETF | Hang Seng TECH Index |
SGD建て: HST |
43.3 |
USドル建て: HSS |
|||
iShares USドル建て Asia High Yield Bond ETF | Bloomberg Asia USD High Yield Diversified Credit Index |
SGD建て: |
31.3 |
USドル建て: O9P |
|||
SPDR® Straits Times Index ETF | Straits Times Index |
SGD建て: |
24.3 |
Lion-Phillip S-REIT ETF | Morningstar® Singapore REIT Yield Focus Index SM |
SGD建て: CLR |
14.5 |
引用:シンガポール証券取引所(SGX)、ブルームバーグ(2023年11月30日の市場データによる)
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。