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フィリップ2023シンガポール投資戦略②

 

2023年フィリップ・アブソリュート10銘柄

シンガポール | ストラテジーレポート

原文:ポール・チョー(Paul Chew)

フィリップ証券シンガポール・投資調査部長

(原文公開:1月4日)

翻訳作成日:1月24日

2023年の投資行動への示唆 

 フィリップ証券シンガポール(以下「私たち」と言う。)はシンガポールが他の市場をアウトパフォームする1年になるとみている。リターンを支えるセクターはリート法人や銀行部門、消費財部門である。 国内経済指標の推移はとてもよい形状である。とくに小売販売統計はコロナ前の前年同月比1%増に対して同16%増で推移するトレンドにある(図1)。シンガポールの賃金成長率は前年同様に過去15年で最高の水準にあり(図2)、求人も十分にあり(図3)、海外からの直接投資は前年比で1000億US$プラスとなった(図4)

図1: 小売業の売上高水準は、流行前の前年比1%増に対して同16%増の水準となった

引用元: フィリップ・セキュリティーズ・リサーチ(PSR), CEIC, Department of Statistics

図 2: 7.2% の賃金上昇率は過去15年間で最大の上昇である

引用元: フィリップ・セキュリティーズ・リサーチ(PSR), CEIC, CPF

図 3: 7.2% の賃金上昇率は過去15年間で最大の上昇である

引用元: フィリップ・シンガポール・リサーチ(PSR), CEIC, CPF

図4:シンガポールにおける海外直接投資

引用元: フィリップ・シンガポール・リサーチ(PSR), CEIC

 22年末に追い風となったのは、中国国境の再開とCovid-19の規制撤廃であった。シンガポールの観光業はコロナ前の2019 年でGDPの5%を占める。次の3四半期、シンガポール株式指数は中国の回復による追い風を受けるだろう。主要な地場銀行3行は融資・不動産について中国へのエクスポージャーがある。またシンガポールの通信会社のローミングサービスで第2位の収入源は中国である。上場している政府関連企業(GLCs)は中国におけるファンド運用、不動産開発、ショッピングモールやホテル所有により利益を得ている。

 金利水準がピークに達するにしたがい、SGXのUSリートが回復すると見込んでいる。こうしたリート法人は売られすぎ状態にあり、現在NAVの40%ものディスカウントされた評価で取引され、配当利回りは14%にも上る。

 資本コスト上昇に従い、高いROEやキャッシュ創出能力をもつ企業はより高い投資評価で見直されるだろう。HRnet Group ConfortDelgroSGXDelMonte Pacificといった企業がその例である。

モデルポートフォリオ: “フィリップ・アブソリュート・10”

 私たちが注目しているのは、バランスの取れたポートフォリオの中でアルファ(絶対リターン)を生み出せるような個別銘柄株である。組み入れ銘柄数を10銘柄に限定した場合、ポートフォリオの集中度はかなり高いものとなる。モデルポートフォリオのボラティリティが過大になることを回避するため、低ベータの利回り重視銘柄を追加している。私たちが2023年のモデルポートフォリオに選出したカテゴリー別の10銘柄を”フィリップ・アブソリュート・10”と呼び、四半期ごとに見直しを行う。その10銘柄の投資テーマは以下の通りである。

a)配当利回り重視:

Capitaland Ascott Trust (ART) の配当利回りは、国際観光業のリターンにより支えられ、とくに中国の再開の恩恵が大きい。 Prime US REIT(PRIME) は18%の配当利回りがあり、50%評価額が割り引かれている。シンガポール取引所の株式は、ボラティリティの揺り戻しが大きくなった際のヘッジとして機能する。これら銘柄の利益は顧客から回収した140憶シンガポールドルに相当する担保から得られる金利収益の上昇によって支えられるだろう。

b)配当・利益成長銘柄:

DBS銀行(DBS)OCBC銀行(OCBC)は、最高益の更新と剰余金の積み上げによって配当額の上昇が望めるものと私たちはみている。 DelMonte Pacific(DELM)は健全な利益成長により、魅力的な配当利回りを提供している。HRnet Group(HRNET)は3億1300万シンガポールドル相当の純現金資産と毎年7000万シンガポールドルの営業キャッシュフローによって、年45シンガポールドルの配当を支えている。

c)投資評価見直し銘柄:

City Developments (CTI)社は、ホテル業が回復基調にのり、同時にシンガポールにおける開発事業の収益を計上していくだろう。 ConfortDelgro (CD)は、コロナ以前よりも頑強なバランスシートによってパンデミックを脱し、現在、鉄道やタクシーの利用者数の回復と価格の上昇の双方を享受している。 Keppel Corp (KORE) は、非中核資産(特に洋上関連資産)の更なる売却と現金化が私たちの投資評価の見直しをもたらした。

引用元: Bloomberg,  フィリップ・セキュリティーズ・リサーチ(PSR);

* 22年12月30日の価格に基づいて作成。*パフォーマンスの平均値は説明のみを目的としています。

*当ポートフォリオは10銘柄への均等配分にて構成され、 月次リバランスや取引にかかる費用、配当収入等を含めていません

*各個別銘柄における投資評価は以下のPSRレーティングシステムに準じております。

2022年のフィリップ・アブソリュート・10レビュー

22年におけるフィリップ・アブソリュート10はSTI指数をアンダーパフォームした。昨年中の銘柄の組み入れと変更の概要は以下の通りである。

  1Q22 -追加: Del Monte Pacific; 削除:ThaiBeverage

  2Q22 -追加: OCBC; 削除: Q&M Dental

  3Q22  追加:SingTel ; 削除: Frasers Centrepoint Trust

  4Q22 -追加: SGX; 削除:  Asian Pay TV Trust

  1Q23 -追加: Prime US REIT; 削除: SingTel

2022月次パフォーマンス比較

引用元:Bloomberg,フィリップ・セキュリティーズ・リサーチ(PSR), パフォーマンスは説明のみを目的としています。

当ポートフォリオは10銘柄に均等配分されており、月次のリバランス費用や取引費用、配当収入等を含めていません。

ポートフォリオの最大の足かせとなったのは、 Del Monte Pacific (DELM)Asian Pay TV(APTT)Q&M Denta(QNM)などの小型株のパフォーマンスが期待外れに終わったことによるものである。市場のリスクオフ・センチメントにより、スモールキャップへの関心が薄れたと考えられる。また、 Capitaland Ascott(ART)Frasers Centrepoint(FCRT)などの REIT も足を引っ張った。金利が予想以上に上昇したため、債券およびそれに類似する資産はすべて下落した。

一方、大型株では海外事業のコスト増がグループ収益を押し下げた ComfortDelGro(CD)を除き、殆どの銘柄がアウトパフォームした。その中で最も上昇したのはKeppel(KORE)、City Developments(CTI)SingTel (ST)らである。これら企業に共通するのは、売却と業績の改善が行われたことにより、投資評価が見直された点だ。

ケッペルは5億ドルの自社株買いと非中核資産の売却を計画しており、これが株価上昇の大きなきっかけとなった。City Developments(CTI)は中国事業における評価損を計上したが、その後、シンガポールの不動産価格の上昇や、大規模な開発パイプラインや国境の再開などによりホテル観光事業が支えられるとみられており、これらによって同社のパフォーマンスは回復した。SingTel(シンガポールテレコム)は、傘下のBharti社について更なる非中核事業の売却を計画により更なる収益化が期待されていることから、3Q22時点では投資評価が見直されていた。

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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