投資戦略ウィークリー 2022年9月26日号・シルバーウィーク短縮版(2022年9月22日作成)】”日銀とFRB、日米における景気・株価のサイクルの違い”
■日銀とFRB、日米における景気と株価のサイクルの違い
- 日本時間22日午前3時より米FOMC(連邦公開市場委員会)の声明が公表され、政策金利(FFレート誘導目標上限)を75ポイント引き上げて3.25%とするとともに、年末までの4%超えシナリオが提示された。これは、11月(1-2日)会合で0.75ポイント、12月(13-14日)で0.50ポイントの利上げといった「タカ派」方針を示唆するものであり、景気を冷やすことで企業業績が悪化するのではないかとの見方から米主要株価指数の終値が前日比大幅安となった。
- 金融緩和・引締めと景気・株価の相関では、以下の4つのサイクルが重要だ。①不景気で企業業績が悪化すると政府が景気対策等を講じ、中央銀行が政策金利を下げる金融緩和を行うことで金余りを背景に株価が上昇する「金融相場」。②金融緩和効果で企業業績が回復しはじめ景気や企業業績上昇で買われる「業績相場」。③景気が拡大し過ぎてインフレになることを抑制し、物価安定のために金融引締めによって金利を高めに設定する「逆金融相場」。④金融引締めにより景気が下降し、企業業績悪化サイクルの後半となる「逆業績相場」。そして、①から④の後で再び①の「金融相場」に戻っていくとされる。米国市場は現在、「逆金融相場」真っただ中で、「逆業績相場」入りが懸念される状況だろう。
- ロシアのプーチン大統領が21日、ウクライナ軍事侵攻を巡り、予備役のうち30万人を招集対象とする部分的な軍動員を発令したほか、核兵器使用の可能性も排除しない考えを示した。更に、ウクライナ東南部4州の親ロシア派支配地域がロシア編入に向けた住民投票を実施することに対し、事実上の併合に踏み切る考えを示すなどウクライナ情勢緊迫化に拍車をかけた。天然ガスをはじめとするエネルギー問題、小麦や植物油などの食糧不足問題、農作物の収穫に不可欠な肥料不足問題などが続くと見込まれるほか、ウクライナを支援するための最新鋭兵器の需要も更に高まろう。
- 米国の景気・株価サイクルが「逆金融相場」から「逆業績相場」への移行が懸念される一方、日本は22日の日銀政策決定会合で大規模金融緩和策の維持方針が決定されるなど、恒常的に「金融相場」に相当する状況が続いている。円安による外国人旅行客1人当たり購買力が高まる中で、日本へ入国・帰国する際の新型コロナの水際対策が緩和・撤廃されればインバウンド消費の拡大に繋がるだろう。21日発表の8月の国内消費者物価指数は前年同月比8%上昇と30年11か月ぶりの高水準となった。来年春の日銀総裁・副総裁任期満了に向け、大規模金融緩和の終了とともに「金融相場」から「業績相場」へ移行が期待されよう。(笹木)
■主な企業決算の予定
- 9月26日(月): 大光、あさひ
- 9月27日(火): ヒマラヤ、スギHD
- 9月28日(水):ハローズ、西松屋チェーン、(米)ペイチェックス、シンタス
- 9月29日(木):ケーヨー、ハニーズHD、平和堂、(米)マイクロン・テクノロジー、ナイキ
- 9月30日(金):ミタチ産業、TAKARA & COMPAN、クラウディアHD、三益半導体工業、ERIHD、ニトリHD、ヤマシタヘルスケアHD、パイプドHD
■主要イベントの予定
- 9月26日(月)
・黒田日銀総裁が大阪経済4団体共催懇談会であいさつ・ 記者会見、全国証券大会に鈴木財務相・雨宮日銀副総裁が出席、じぶん銀行日本複合PMI・製造業PMI・サービス業PMI (9月)
・米ボストン連銀総裁・アトランタ連銀総裁(オンライン)・クリーブランド連銀総裁が講演、ECB総裁が欧州議会経済金融委員会の公聴会でスピーチ、経済協力開発機構(OECD)経済見通し、アジア開発銀行(ADB)年次総会(マニラ、ハイブリッド方式、30日まで)
・独IFO企業景況感指数(9月)
- 9月27日(火)
・故安倍元首相の国葬(日本武道館)、企業向けサービス価格指数(8月)、工作機械受注(8月)
・米シカゴ連銀総裁が講演(ロンドンのイベントで)、米FRB議長がデジタル通貨に関するパネル討論会に参加、米サンフランシスコ連銀総裁が質疑応答に参加(オンライン)、ハンガリー中銀が政策金利発表
・米耐久財受注(8月)、米FHFA住宅価格指数(7月)、米主要20都市住宅価格指数(7月)、米消費者信頼感指数(9月)、米新築住宅販売件数(8月)、ユーロ圏マネーサプライ(8月)、中国工業利益(8月)
- 9月28日(水)
・ファインズとグラッドキューブが東証グロースに新規上場、日銀政策委員会・金融政策決定会合議事要旨(7月20・21日分)、ルネサスエレクトロニクスがアナリスト説明会を開催、楽天Gのオンラインビジネスカンファレンスで三木谷浩史社長が講演、景気先行CI指数・一致指数 (7月)
・米アトランタ連銀総裁が質疑応答に参加、米シカゴ連銀総裁が講演、米・太平洋島しょ国サミット(ワシントン、29日まで)、ECB総裁が講演(フランクフルト)、タイ中銀が政策金利発表
・米卸売在庫(8月)、 米中古住宅販売成約指数(8月)
- 9月29日(木)
・ポーターズとプログリットが東証グロースに新規上場、日本取引所グループの清田CEO定例会見、対外・対内証券投資(9月11-17日、18-24日)
・米クリーブランド連銀総裁らパネル討論会に参加、米サンフランシスコ連銀総裁が基調講、メキシコ中銀とチェコ中銀が政策金利発表、日中国交回復50年
・米新規失業保険申請件数(24日終了週)、米GDP(2Q、確定値)、ユーロ圏景況感指数 (9月)、ユーロ圏消費者信頼感指数(9月)、独CPI(9月)、豪CPI(7、8月)
- 9月30日(金)
・グッピーズが東証グロースに新規上場、完全失業率・有効求人倍率 (8月)、小売売上高(8月)、百貨店・スーパー売上高(8月)、鉱工業生産(8月)、住宅着工件数・戸数(8月)、消費者態度指数(9月)、月例経済報告(9月)
・米ブレイナードFRB副議長会議冒頭の挨拶・米ニューヨーク連銀総裁会議閉会の挨拶、米の会計年度末、米テスラ第2回「AIデー」、EUエネルギー担当相が臨時会合、コロンビア中銀とインド中銀が政策金利発表
・米個人所得・支出(8月)、 米ミシガン大学消費者マインド指数・改定値(9月)、ユーロ圏失業率(8月)、ユーロ圏CPI(9月)、独失業率(9月)、英GDP(2Q)、中国製造業・非製造業PMI(9月)、中国財新製造業PMI(9月)
- 10月1-2日(土・日)
・ブラジル大統領選(決選投票の場合30日)、英保守党大会(バーミンガム、5日まで)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。