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投資戦略ウィークリー 2022年5月9日号(2022年5月6日作成)】”金融引締めと金融緩和の対照、岸田首相のシティー講演”

 

■金融引締めと金融緩和の対照、岸田首相のシティー講演

  •  4月27-28日の政策決定会合で日銀が長期金利の上限を25%とする長短金利操作を堅持する姿勢を明確に示したのに対し、5月3-4日の連邦公開市場委員会(FOMC)で米FRBは0.50%の利上げ、および6月からのバランスシート縮小を決定しインフレ抑制の方針を明確化した。遡れば、2000年代の小泉政権時以降、「グローバル化」の旗印の下、日本株市場は成長力の差から主要株価指数のパフォーマンスで米国を下回っていたものの、概ね米国株市場と同じ方向を向いてきた。主力となる日本のハイテク企業がアップルといった米巨大スマホメーカーの部品を供給していることなどから、米国株市場の成長の恩恵を受けていた面もあるだろう。
  •  そのような大きな潮流に変化の兆しが見え始めた。日米中央銀行の金融政策が正反対となっている状況は、少なくとも21世紀になって以降はあまり見られなかった。日本株市場にとって、米国株市場へ金融引き締めの逆風が吹いているのとは対照的に金融緩和のフォローの風が継続する今の状況は千載一遇の機会と言えるかもしれない。日経平均株価は3/9に2万4681円の年初来安値を付けた後に反転上昇後、4/27に押し目となる価格2万6051円を付けた。これは1/27に付けた2万6044円を上回るなど良好な需給で底固めを行いつつあるように見受けられる。一方で、米国のダウ平均株価は、5/2の安値3万2449ドルが2/24に付けた年初来安値3万2272ドルを辛うじて上回ったものの底固めとは見做し難い。ナスダック総合指数に至っては5/5の安値1万2183ポイントが年初来安値となっている。
  •  岸田首相は5/5、英国の金融街シティーで経済政策を巡り講演を行った。その中で、コロナ禍対応の入国制限について「6月には他の先進7ヵ国並みに緩和する」と述べた。外国人観光客によるインバウンド消費への期待が一層高まろう。更に、今後10年間で官民協調による150兆円の脱炭素への新規投資を掲げたのと同時に、エネルギーのロシア依存度を低減するための原子力の活用に言及。原発再稼働、アンモニアを使った火力発電、液化天然ガス(LNG)プラント増設、水素エネルギー、再生可能エネルギー普及のための蓄電池など、今まで日本株の物色材料として取上げられたテーマの本格的な立ち上がり局面の到来を予感させよう。
  •  ウクライナ情勢は長期化の様相を呈してきている。ロシアがポーランドとブルガリアへの天然ガス供給を停止したほか、EUがロシア産原油輸入を6ヵ月以内に禁止する案を5/4に発表。エネルギー需給逼迫が加速することは、株式市場にとってリスク要因よりも、エネルギー・資源関連企業への追い風となるだろう。(笹木)

5/9号では、エレマテック(2715)味の素(2802)大江戸温泉リート投資法人(3472)鈴茂器工(6405)マラヤン・バンキング(MAY)を取り上げた。

■主な企業決算の予定

  • 59日(月):ケーズHD、アウトソーシング、ユニチャーム、江崎グリコ、マルハニチロ、全国保証、アイカ工業、リンテック、日本郵船、川崎汽船、(米)マイクロチップ・テクノロジー、エクセロン、デューク・エナジー
  • 510日(火):ユー・エス・エス、ローム、IHI、ヤマトHD、ベネフィット・ワン、三菱自動車工業、カルビー、長瀬産業、パイロットコーポレーション、任天堂、ディー・エヌ・エー、日本製鉄、出光興産、ファンケル、リコー、静岡銀行、パン・パシフィック・インター、オートバックスセブン、九州旅客鉄道、ニチレイ、シップヘルスケアHD、三菱商事、参天製薬、AGC、ショーボンドHD、不二製油G本社、ツムラ、ダイキン工業、日本精工、協和キリン、ライオン、住友重機械工業、太陽誘電、住友金属鉱山、島津製作所、ヤオコー、横河電機、ソニーG伊藤忠商事、住友商事、日本ハム、山九、川崎重工業、リンナイ、(米)エレクトロニック・アーツ
  • 511日(水):サワイGHD、トヨタ自動車、京阪HD、電源開発、テレビ朝日HD、カプコン、ブリヂストン、TDK、SCREENHD、味の素、住友電気工業、INPEX、ヤマハ、東海カーボン、富士フイルムHD、ミネベアミツミ、東京応化工業、花王、ソフトバンク、武田薬品工業、ハウス食品G本社、昭和電工、TIS、日本新薬、日本酸素HD、関西ペイント、神戸製鋼所、日本製鋼所、オリンパス、ブラザー工業、PALTAC、三井金属鉱業、アシックス、京浜急行電鉄、ウシオ電機、凸版印刷、オリックス、スズキ、スズケン、群馬銀行、名古屋鉄道、エヌティティデータ、バンダイナムコHD、東急不動産HD、シャープ、パナソニックHD、ほくほくFG、西松建設、日油、ニプロ、ホシザキ、科研製薬、塩野義製薬、ダイセル、小野薬品工業、カカクコム、デンカ、(米)ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー
  • 512日(木):三井住友トラスト・HD、アマダ、住友大阪セメント、長谷工コーポレーション、グローリー、博報堂DYHD、コカ・コーラ ボトラーズジャパ、りそなHD、日本空港ビルデング、コムシスHD、ジーエス・ユアサ コーポレーション、日本化薬、宝HD、JCRファーマ、カネカ、コスモエネルギーHD、西日本鉄道、日揮HD、GMOインターネット、GMOペイメントゲートウェイ、フジ・メディア・HD、アルバック、SUMCO、シスメックス、東京エレクトロン、千葉銀行、コンコルディアFG、NOK、住友不動産、ベネッセHD、エア・ウォーター、テルモ、丸一鋼管、ネクソン、UBE、カドカワ、カシオ計算機、浜松ホトニクス、資生堂、クボタ、日本テレビHD、ロート製薬、サントリー食品インターナショ、丸井G、H.U.GHD、SANKYO、ピジョン、三菱地所、ソフトバンクG、古河電気工業、サッポロHD、キリンHD、ダイワボウHD、日本触媒、荏原製作所、オークマ、ペプチドリーム、TOYO TIRE、コニカミノルタ、コーセー、太平洋セメント、第一興商、コロワイド、THK、リロG、NIPPON EXPRESSホールディング、トプコン、セコム、ニコン、東京センチュリー、東京建物、西武HD、日産自動車、第一生命HD、トレンドマイクロ、コナミHD、明治HD、メニコン、三菱瓦斯化学、東ソー、クラレ、清水建設、東洋紡、日本水産、九州FG、三菱重工業、SUBARU、日本電信電話、DMG森精機、大林組、帝人、メイテック、日清紡HD、アリアケジャパン
  • 513日(金):エーザイ、東芝、NTN、ひろぎんHD、スクウェア・エニックス・HD、オープンハウスG、三和HD、雪印メグミルク、インフロニア・ホールディング、ジャストシステム、日本ペイントHD、上組、本田技研工業、大正製薬HD、三井住友FG、本田技研工業、TBSHD、ダイフク、サンリオ、DOWAHD、東洋製罐GHD、アズワン、住友ゴム工業、エクシオG、ミライトHD、飯田GHD、新生銀行、KDDI、ヤマハ発動機、三越伊勢丹HD、日産化学、ふくおかFG、みずほFG、アコム、セイノーHD、近鉄GHD、ゼンショーHD、リゾートトラスト、FUJI、日本発条、三浦工業、メディパルHD、ゆうちょ銀行、T&DHD、京都銀行、三井不動産、山口FG、サンドラッグ、住友化学、SMC、かんぽ生命保険、めぶきFG、朝日インテック、三菱マテリアル、テイ・エス テック、中国銀行、アズビル、日本電子、日本光電工業、堀場製作所、フジテック、日本郵政、クレディセゾン、ラクス、日清製粉G本社、パーソルHD、森永製菓、五洋建設、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、すかいらーくHD、ダスキン、ワコールHD、日本製紙、ミルボン、大日本印刷、楽天G、いすゞ自動車、マツキヨココカラ&カンパニー、東急、岩谷産業、大和ハウス工業、阪急阪神HD、ニッコンHD、大成建設、森永乳業、ヤクルト本社、持田製薬、日清食品HD、三菱ケミカルHD、住 友 ファーマ、ニフコ、レンゴー、横浜ゴム、東レ、伊予銀行、東邦HD、王子HD、綜合警備保障、ENEOSHD、大塚HD、三井化学、ADEKA、大王製紙、マツダ、エーザイ、インターネットイニシアティブ、鹿島建設、東洋水産、旭化成、セガサミーHD、戸田建設、ゴールドウイン

 

主要イベントの予定

  • 59日(月)

日銀金融政策決定会合議事要旨(31718日分)、毎月勤労統計 現金給与総額・実質賃金総額(3月)、auじぶん銀行日本複合・日本サービス業PMI (4月)

・香港休場、フィリピン大統領選挙、米卸売在庫 (3月)、中国貿易収支 (4月)、中国経済全体のファイナンス規模・新規融資・マネーサプライ(4月、15日までに発表)、インドネシアGDP(1Q)

  • 510日(火)

・家計支出 (3月)

・米アトランタ連銀総裁 講演、欧州復興開発銀行(EBRD)年次総会(モロッコ・マラケシュ、12日まで)、韓国大統領に尹錫悦氏が就任、独ZEW期待指数(5月)

  • 511日(水)

・景気先行CI指数 (3月)、景気一致指数 (3月)

・米アトランタ連銀総裁 講演、マレーシア中銀 政策金利発表、CPI(4)、米財政収支 (4)、独CPI (4月)、中国PPI CPI (4)

  • 512日(木)

金融政策決定会合における主な意見(42728日分)、国際収支:経常収支 (3月)、BOP経常収支調整 (3月)、貿易収支(国際収支ベース) (3月)、貸出動向 (4月)、対外・対内証券投資 (4月24日-5月7日)、東京オフィス空室率 (4)、倒産件数 (4)、景気ウォッチャー調査(4月)

・米大統領 東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳とサミット(13日まで)、G7外相会合(14日まで)、OPEC月報、メキシコ中銀 政策金利発表、ペルー中銀 政策金利発表、米PPI (4月)、米新規失業保険申請件数 (7日終了週)、英鉱工業生産 (3月)、英GDP (1Q)、フィリピンGDP(1Q)

  • 513日(金)

・マネーストックM2・M3 (4月)

・米輸入物価指数 (4月)、米ミシガン大学消費者マインド指数・速報値(5月)、ユーロ圏鉱工業生産 (3月)、露GDP (1Q)、露CPI(4月)、マレーシアGDP(1Q)、香港GDP(1Q、改定値)

  • 514日(土)・15日(日)

・独ノルトライン・ウェストファーレン州選挙

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

 

 

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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