投資戦略ウィークリー 2022年2月21日号(2022年2月18日作成)】”GWを見据えた「Go To」の可能性、金とプラチナ”
■GWを見据えた「Go To」の可能性、金とプラチナ
- 岸田首相が2/17、新型コロナ・オミクロン変異株の流入を防ぐために水際対策を3月から緩和すると発表。観光目的以外の外国人の新規入国を認め、1日あたりの帰国・入国者数の上限を現行の3,500人程度から5,000人程度に引き上げることとした。指定施設や自宅などでの原則7日間の待機期間も短縮される。政府の方針が伝えられた15日の翌日には日本航空(9201)など空運や旅行関連銘柄が買われた。海外では米カリフォルニア州で、これまで5,000人以上が集まる屋外のイベントでマスクの着用が義務付けられていたなか、新型コロナによる入院数が減ったことから感染状況が改善したとしてマスク着用義務が解除された。日本では「まん延防止等重点措置」を延長する都道府県が相次ぐものの、海外での規制解除の動きを受けて株式市場はコロナ禍前の水準に戻っていない旅行やレジャー関連銘柄を物色する動きが期待される。7月の参院選挙を前にして次のゴールデンウィーク辺りでの「Go To トラベル」復活の可能性も念頭に置いておきたい。
- 現在、金融市場における様々なアセットの中で特に注目されるのは金価格の動向だろう。CMX金先物価格は、2020年3月の1オンス1450ドルと同年8月の同2,074ドルからの大きな三角保ち合いの形成から、直近のウクライナ情勢に係る地政学リスク、および2/10発表の米国消費者物価指数の発表に伴うインフレ進行への懸念を背景として、その中心近辺の同1,800ドル近辺を均衡水準とした三角保ち合いを上方にブレークする動きを示している。特に金価格と米長期金利は、21世紀以降において総じて逆方向に動く傾向がみられたが、最近は日々の方向性が異なることはあっても一定期間を辿れば共に上昇傾向にある。米FRBがインフレ抑制を景気に優先してまで積極的な利上げ・引締めスタンスに転じない限り、米長期金利の上昇がドル高を伴いにくくなることが考えられよう。金価格上昇の恩恵を受けやすい銘柄も狙い目だろう。
- 併せて、プラチナ(白金)についても従来はディーゼル車の排ガス規制のための触媒としての利用が中心であり、半導体供給不足に伴う自動車生産の伸び鈍化を受けて昨年12月半ば頃まで相場が低迷していたが、最近は温暖化ガス排出昨削減のために水素の生成や燃料電池に使用する需要が注目されている。米バイデン政権が2/15、水素関連のインフラ需要を進め、生産や貯蔵などの支援に計95億ドルを投じると発表。プラチナ価格も上昇基調を強めている。金と同様に「貴金属」としての輝きを取り戻す余地があるのかもしれない。(笹木)
2/21号では、石光商事(2750)、任天堂(7974)、ユニ・チャーム(8113)、テレビ東京ホールディングス(9413)、アドバンスト・インフォ・サービス(ADVANC)を取り上げた。
■主な企業決算の予定
2月22日(火):(米)ケイデンス・デザイン・システムズ、パロアルトネットワークス、ベリスク・アナリティクス、メドトロニック、ホーム・デポ
2月23日(水):(米)アンシス、イーベイ、ブッキング・ホールディングス、ロウズ
2月24日(木):(米)アメリカン・エレクトリック・パワー、インテュイット、オートデスク、ゼットスケーラー、モンスタービバレッジ、アメリカン・タワー、キューリグ・ドクターペッパー、モデルナ、網易
2月25日(金):サンデン
2月26日(土):(米)バークシャー・ハサウェイ
■主要イベントの予定
- 2月21日(月)
・工作機械受注(1月)、じぶん銀行 日本PMIコンポジット・製造業・サービス業(2月)
・EU外相理事会、米ニクソン大統領訪中から50年、米プレジデンツデーのため株式・債券市場休場
・マークイット・ユーロ圏製造業・サービス業・総合PMI・速報値(2月)、中国新築住宅価格(1月)、タイGDP(4Q)
- 2月22日(火)
・日本取引所グループの清田CEO定例会見、CaSy 東証マザーズに新規上場、企業向けサービス価格指数(1月)
・米アトランタ連銀総裁オンライン討論会に参加、ハンガリー中銀 政策金利発表
・米FHFA住宅価格指数 (12月)、米主要20都市住宅価格指数(12月)、マークイット米製造業・サービス業・コンポジットPMI 速報値(2月)、米消費者信頼感指数 (2月)、独IFO企業景況感指数 (2月)
- 2月23日(水)
・英中銀総裁 議会委証言、NZ中銀 政策金利発表
・ユーロ圏CPI (1月)
- 2月24日(木)
・BeeX 東証マザーズに新規上場、全国百貨店売上高(1月)、東京地区百貨店売上高(1月)
・米アトランタ連銀総裁オンライン討論会に参加、米クリーブランド連銀総裁講演(オンライン)英中銀総裁 会議で開会の挨拶、韓国中銀 政策金利発表
・米新規失業保険申請件数(19日終了週)、米GDP (4Q改定値)、米新築住宅販売件数 (1月)、台湾GDP(4Q)
- 2月25日(金)
・マーキュリーリアルテックイノベーター 東証マザーズに新規上場、東京CPI(2月)、対外・対内証券投資(2月13-19日)、景気一致・景気先行CI指数 (12月)
・ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)、EU財務相理事会(非公式、26日まで)
・米耐久財受注 (1月)、米個人所得・支出 (1月)、米中古住宅販売成約指数 (1月)、米ミシガン大学消費者マインド指数 ・確報値(2月)、ユーロ圏マネーサプライ (1月)、ユーロ圏景況感指数 (2月)、ユーロ圏消費者信頼感指数 (2月)、独GDP (4Q)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
パブリック・クラウド高成長の先
米大手IT企業の10-12月期のクラウド・コンピューティング事業は、アマゾン・ドット・コム(AMZN)が前年同期比40%増収で前四半期比7%増収、マイクロソフト(MSFT)が前年同期比26%増収で前四半期比8%増収、グーグルのアルファベット(GOOGL)が前年同期比45%増で前四半期比11%増と高成長。これらの「パブリック・クラウド」を複数併用して最適化する「マルチクラウド」、および「プライベート・クラウド」や自社ハードウェアによるオンプレミス環境を相互接続する「ハイブリッド・クラウド」の需要も高まっている。
独自マルチクラスタ共有データ設計で複数ワークロードを大規模並列処理するスノーフレーク(SNOW)、およびシスコシステムズ(CSCO)など接続切替えに係るネットワーク機器企業へ追い風だろう。
【パブリック・クラウド高成長の先~マルチクラウドとハイブリッド・クラウド需要】
■金価格と米10年国債金利の相関
1971年8月の「ニクソンショック」により金と米ドルの交換が停止され、第2次世界大戦後のブレトンウッズ体制(金・ドル本位制)が終了。その後、変動相場制の下で1978年頃から当時のボルガーFRB議長がインフレ対策として高金利政策を採用。金価格と米長期金利は連動して上昇した。その後も、「ITバブル」と言われた1999年にグリーンスパンFRB議長が政策金利を引き上げるまでは金価格と米長期金利は概ね連動して上昇・下落。
グリーンスパン議長が2001年頃から金利を歴史的低水準に置く政策をとったこともあり、金は中国やインドほか金を宝飾品として重視する文化習慣を有する新興市場の台頭に伴って原油ほかコモディティとともに買われた。その後も米長期金利と逆相関で推移する傾向がみられた。
【金価格と米10年国債金利の相関~過去47年間では正相関の期間が長い】
■森林投資ファンドで森林保護管理
住友林業(1911)は国内外の森林運営に投資するファンドを設立すると発表。ファンドを通じて取得した自然林や人工林を保護・運用して出資分に応じてCO2排出量を相殺する排出枠(カーボンクレジット)を配分する仕組みだ。欧州上場の温暖化ガス排出量取引の先物価格は2020年末比で3倍超と、カーボンクレジットを通じて、森林はCO2を吸収削減する資産として価値高騰が期待される。
住友林業は国内で4.8万ha(ヘクタール)の社有林を保有するほか、海外では合計23.1万haの森林を管理・保有する。王子ホールディングス(3861)は国内で19万haと首位、海外でも39万haの社有林を保有。国内で第2位の9万haを保有する日本製紙(3863)は、ブラジルの植林地で「早く育つ木」の探求に取り組む。
【森林投資ファンドで森林保護管理~脱炭素に貢献する森林は有望資産】
■銘柄ピックアップ
石光商事(2750)
515 円(2/18終値)
・1906年に石光季男が単身渡米しロサンゼルスで創業。コーヒー輸入・販売を主力とする飲料・食品輸入商社であり、老舗のコーヒー生豆商社として業務用では国内市場シェア首位を誇る。
・2/10発表の2022/3期9M(4‐12月)は、売上高が前年同期比16.1%増の348.88億円、営業利益が同32.5%増の8.37億円。NY市場のコーヒー豆先物価格は12月末が対期初比86%上昇の226.10セントと堅調に推移し、コーヒー生豆の増収に貢献。業務用コーヒー飲料も販売価格見直しが奏功。
・通期会社計画は、売上高が前期比12.8%増の456.92億円、営業利益が同1.5%増の11.07億円。年間配当金を同4円増配の14円(従来計画12円)と上方修正。コロナ禍による海上物流の混乱長期化に伴いブラジルなどの産地から欧米消費地の倉庫への入荷が滞る一方、欧米での需要も堅調に推移。また、タイでアセアン向け業務用日本食品を開発中。第三国輸出への展開を目指す。
任天堂(7974)
59,480 円(2/18終値)
・1889年に花札製造で創業後、1947年にかるた・トランプ類の製造・販売で発足。コンピューター利用の「ゲーム専用機」を主な製品とする。株式会社ポケモンは持株比率32%の持分法適用会社。
・2/3発表の2022/3期9M(4‐12月)は、売上高が前年同期比6.0%減の1兆3,202億円、営業利益が同9.3%減の4,725.51億円。減収減益は前年同期の「あつまれどうぶつの森」の大ヒットの反動減による。12月末のNintendo Switch累計台数は前年同期末比29.6%増の1億354万台とWiiを超えた。
・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比6.2%減の1兆6,500億円(従来計画1兆6,000億円)、営業利益を同12.6%減の5,600億円(同5,200億円)とした。半導体不足のハード生産への影響を懸念もソフトのダウンロード販売の堅調な推移を見込む。体感型スポーツゲーム「Nintendo Swich Sports」が4/29に発売予定。累計販売本数8千万本超の「Wiiスポーツ」を超える期待も高まろう。
ユニ・チャーム(8113)
4,287 円(2/18終値)
・1961年設立。乳幼児・大人向け紙おむつ、生理関連用品、掃除用品、ウェットティッシュや立体型マスクなど「パーソナルケア事業」、および「ペットケア事業」が主力。中国軸にアジア展開に注力。
・2/15発表の2021/12通期は、売上高が前期比7.6%増の7,827.23億円、粗利益から販管費を控除したコア営業利益が同6.7%増の1,224.82億円。日本以上の速度で高齢化が進む中国ほか、アジアで大人用排泄ケア用品およびベビーケア関連商品、中東で生理用ナプキンの販売が伸長した。
・2022/12通期会社計画は、売上高が前期比8.6%増の8,500億円、営業利益が同3.7%増の1,270億円。パーソナルケア事業は中国・インド・アセアンを中心に活性化を見込む。ペットケア事業は北米向けに日本の技術を搭載した犬用シート、および猫用ウェットタイプ「おやつ」の伸びが見込まれる。売上比率が6割を超える海外での堅調な需要の高まりで業績の安定的な伸びが期待されよう。
テレビ東京ホールディングス(9413)
2,149 円(2/18終値)
・2010年にテレビ東京他の経営統合により設立。地上波放送(地上波放送・番組販売・ライツ)、放送周辺(番組制作・通信販売・CS放送・音楽出版)、BS放送、コミュニケーションの4事業を営む。
・2/8発表の2022/3期9M(4‐12月)は、売上高が前年同期比15.6%増の1,098.83億円、営業利益が同66.4%増の76.52億円。広告出稿に積極的な姿勢を示す企業が増え始めたことから広告収入が増加。海外展開のアニメやドラマの権利などの成長分野への先行投資費用を吸収して営業増益。
・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比13.7%増の1,481億円(従来計画1,445億円)、営業利益を同53.0%増の80億円(同70億円)、年間配当金を同20円増配の60円(同40円)とした。同社が注力するライツ事業の主力であるアニメ部門では、中国企業への配信許諾や北米での「NARUTO」の商品化権など海外展開が好調。同業他社と比べてアニメに強い点が評価されよう。
アドバンスト・インフォ・サービス(ADVANC)
市場:タイ 235.76 THB (2/17終値)
・1986年創業のタイ最大規模の通信会社。同社の持株比率第2位のテマセクHDS(シンガポール政府所有の投資会社)は、同社の筆頭株主であるインタッチHDSの筆頭株主でもあり、経営に関与。
・2/7発表の2021/12通期は、総収益が前期比4.9%増の1,813.33億THB、EBITDAが同2.2%増の914.08億THB、当期利益が同1.9%減の269.22億THB。主力のモバイル通信は減収も固定ブロードバンド通信、企業向けデータサービスやクラウド、およびiPhone13の販売量増が増収に貢献した。
・昨年8月に同社筆頭株主(インタッチHD)の23%をタイ電力大手ガルフ・エナジーがTOBを通じて取得。同社、ガルフ・エナジー、およびシンガポール政府系のテマセクHDSを通じた実質的な第2株主のシングテルの3社でデータセンターの共同開発を発表。通信データ量急増に対し、同社の顧客基盤、ガルフの省電力技術、シングテルのデータセンター開発技術の相乗効果が期待される。
■アセアン株式ウィークリーストラテジー
(2/21号「中国とアセアンを繋ぐ鉄道・高速道路」)
昨年12/3に高速鉄道の中国ラオス鉄道が開通。中国雲南省の昆明とラオスの首都ビエンチャン間約1,000kmを10時間で結ぶ。総工費約60億ドルの7割を中国が拠出し、ラオスの負担分は3割。ラオス負担分の大半を中国が融資した。中国は昆明を起点にインドシナ半島を下り、シンガポールへ至る「汎アジア鉄道」を睨んでいる。中国の広域経済圏構想である「一帯一路」の目玉事業とされたが、タイやマレーシアでは事業の遅れが目立っている。
高速道路は、2005年に中国広西チワン族自治区南寧・ベトナム間、2008年に昆明・バンコク間が開通。欧州との間の貨物列車「中欧班列」で中国の起点となっている重慶から広西チワン族自治区欽州港や昆明に高速道路が繋がり、中国・アセアン間の越境Eコマースを支えている。
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。