English

【投資戦略ウィークリー 2020年12月7日号(2020年12月4日作成)】”「極端な強気」で迎えるメジャーSQ、ワクチンは売り?”

 

■”「極端な強気」で迎えるメジャーSQ、ワクチンは売り?”

  •  12/11は、3、6、9、12月の第2金曜日で株価指数先物とオプション取引の最終決済に係るSQ値(特別清算指数)算出日が重なる「メジャーSQ日」である。元々、次の限月に引き継ぐロールオーバーの動向次第で相場が大きく変動しやすい特徴があるなか、今回は米大統領選における各州の選挙結果の認定期限日(8日)、および各州の選挙人団が大統領候補に投票する日(14日)を控え、相場が上下どちらにも大きく変動しやすい面があるとみられることから、注意が必要だろう。
  •  世界的に株価が上昇基調を強めているなか、11/17、バンク・オブ・アメリカのストラテジストは、投資家調査に基づいて株式への資産配分が2018年1月以来の高水準であること、現金保有の割合が2015年4月以来の低さとなったことなどから株式に対する投資家のセンチメントが「極端な強気」に近づいているとして、「今後、数週間から数ヵ月、ワクチンの材料は売りだ」としてリスク資産を売り始める時期だとの見解を示した。
  •  米ファイザーPFEと独ビオンテックが共同開発した新型コロナワクチンは12/7にも英国で接種が開始される予定。米国でも米食品医薬品局(FDA)が12/10の使用許可判断次第では、早ければ12/11に同ワクチンの接種が始まる見通しだ。その一方、調査会社ギャラップの世論調査によれば、新型コロナワクチンを無料で接種できるとしても、接種を希望すると答えた米国人の割合が58%にとどまった。ワクチン普及が市場で楽観するほど一筋縄では行かない現実が浮き彫りになる可能性もあろう。
  •  株式への強気見通しは新興国へのマネー流入の急増に繋がっている。米政権移行の不透明感が和らいで先進国の膨張したマネーが活気づいたこともあり、今年11月には新興国の株式と債券を合わせ過去最大の765億ドルが買われたと伝えられた。商品相場の上昇が資源輸出に依存する新興国の経済の安定に貢献しているほか、バイデン前副大統領が財務長官候補として指名したイエレンFRB前議長に対する強力な財政出動への期待もあり、対新興国通貨での米ドル下落基調が続いていることも新興国にとってはドル建て債務の負担が軽減されるメリットがある。米資産運用会社ブラックロックBLKは、11/23付週次コメンタリーで次期政権の下で米通商政策がより予見可能なものとなることの恩恵を受けやすいとして日本を除くアジアと新興国市場全体をオーバーウエイトとする一方、日本株をアンダーウエイトで据え置いた。(笹木)
  • 12/7号では、ディジタルメディアプロフェッショナル(3652)、新日本電工(5563)、東芝テック(6588)、ゼンリン(9474)、ユニリーバ・インドネシア(UNVR)を取り上げた。

 

■主な企業決算の予定

  • 127日(月): 積水ハウス、萩原工業、学情
  • 128日(火):Casa、アルトナー、コーセーアールイー、スバル興業、ミライアル、(米)ブラウン・フォーマン、オートゾーン
  • 129日(水): ACCESS、アセンテック、ビューティガレージ、泉州電業、丹青社、東京楽天地、(米)キャンベルスープ
  • 1210日(木): アイモバイル、サムコ、トップカルチャー、トビラシステムズ、ベステラ、ラクスル、鎌倉新書、三井ハイテック、東京ドーム、トーホー、(米)ブロードコム、ルルレモン・アスレティカ、オラクルコストコホールセールアドヒ
  • 1211日(金):HEROZ、JMホールディングス、エイチ・アイ・エス、グッドコムアセット、シーアールイー、シーイーシー、フリービット、ミサワ、ヤーマン、稲葉製作所、丸善CHIホールディングス、日東製網、日本ハウスホールディングス

 

主要イベントの予定

  • 127日(月)

景気先行CI指数・景気一致指数 (10)

・IOC理事会(11日まで、リ モート形式)、EUの予算・景気対策巡る合意期限

・米消費者信用残高 (10月)

・独鉱工業生産 (10月)、中国外貨準備高 (11)中国貿易収支(11)

 

  • 128日(火)

・毎月勤労統計(10)GDP改定値 (3Q)、経常収支・貿易収支(10月)、銀行貸出動向(11月)、マンパワー雇用調査(1Q)、倒産件数(11) 気ウォッチャー調査現状判断・先行き 判断(11)

・米大統領選挙で各州の 選挙結果の認定期限、米大統領が新型コロナウイルスワクチンに関する会合開催

・米非農業部門労働生産性(3Q)

・ユーロ圏GDP(3Q)、独ZEW期待指数(12月)、南アGDP (3Q)

 

  • 129日(水)

・菅首相がGZEROサミットであいさつ、マネーストック(11月)、コア機械受注(10月)、工作機械受注(11月)

・ブラジル中銀が政策金利発表

・米求人件数(10月)、米卸売在庫 (10月)

・独貿易収支 (10 月)、中国CPI・PPI (11)

 

  • 1210日(木)

・景況判断BSI(4Q)、 国内企業物価指数(11月)、対外・対内証券投資(11月29日-12月5 日)、東京オフィス空室率(11)

ECBが政策金利発表・総裁記者会見、EU首脳会議(11日まで、ブリュッセル)、米FDA諮問委員会がファイザーとビオンテックの新型コロナワクチン巡り会合

米新規失業保険申請件数 (5日終了週)米CPI(11)、米財政収支(11)

・英鉱工業生産(10月)、中国経済全体のファイナ ンス規模、新規融資、マネーサプライ (11月、15日までに発表)

 

  • 1211日(金)

半導体やIoT供給網の国際展示会「セミコンジャパンバーチャル」が開催(オンライン、18日まで)、DCMHDによ る島忠のTOB期限

・米暫定予算期限、ユーロ圏首脳会議(ブリュッセル)、英中銀が金融安定報告書公表

・米PPI (11月)、米ミシガン大学消費者マイン ド指数 (12月)

・ロシアGDP (3Q)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

米半導体企業の注目銘柄

フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は、米ナスダックPHLX(旧・フィラデルフィア証券取引所)が算出し、半導体の製造・流通・販売を手掛ける30企業の株式で構成される単純平均株価指数である。

今まではスマホやデーターセンター向けの半導体需要が伸びていたなか、地球温暖化ガス削減の観点から主要国が脱ガソリン車政策を発表。自動車のEVシフトに伴い、電力制御(パワー)半導体や自動運転向けの画像センサー半導体などの需要の高まりが想定される。エヌビディアNVDAクリーCREEモノリシック・パワーシステムズMPWRMKSインスツルメンツMKSIマイクロチップ・テクノロジーMCHPエヌエックスピー・セミコンダクターズNXPIオン・セミコンダクターズONには追い風だろう。

【米半導体企業の注目銘柄~電力制御半導体・電子部品、自動運転など】

 

■貴金属・非鉄金属の国際相場

コロナ禍からの中国経済の回復が続くことや主要国が相次ぎ発表したEV(電気自動車)推進策が追い風となり、インフラや自動車向けに銅やアルミなどの非鉄金属の国際価格が上昇している。EVはガソリン車に比べモーターなどに2倍超の銅を使い、蓄電池にはニッケルなどを使う。車体を軽くして燃費効率を高めるためアルミの使用も増加するとみられる。

今年8月にかけて銀価格が急騰した要因として、米大統領選でバイデン氏がクリーンエネルギー政策を公約に掲げたことに伴い太陽光発電の電池パネルやセルに使う銀の需要増への期待が強まったことが挙げられる。また、自動車排ガス浄化装置で使用されるプラチナ相場上昇も、環境規制強化に加え、自動車生産回復の恩恵を受けている面があろう。

【貴金属・非鉄金属の国際相場~太陽光発電、EVシフトに伴う需要増も】

 

■10月鉱工業生産指数で業種に明暗

11/30発表の10月の鉱工業生産指数(速報値)は前月比3.8%上昇の95.0ポイントとなり、5ヵ月連続で前の月を上回った。国内外の経済活動再開に伴う需要回復によりコンベヤやタービンなどの業務用機械や自動車などを中心に多くの業種で生産が増加。経済産業省は企業の生産活動の基調判断について引き続き「持ち直している」とした一方、「来月には上昇傾向が一服して低下に転ずる可能性が高い」としている。

今まで日本経済の牽引役を担ってきた電子部品・デバイス工業が前月比5.2%低下した点は懸念されるが、内訳は集積回路(IC)が同9.6%低下、電子デバイスが同13.9%低下である。電子デバイスは9月も同17.4%低下だったこともあり、関連業種の銘柄は要注意だろう。

10月鉱工業生産指数で業種に明暗~電子部品・デバイスの低下は要注意】

 

 

■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー

12/7号「インドネシアの決済スーパーアプリ」

11/10、東南アジア配車最大手のグラブは、インドネシア通信最大手のテレコムニカシ・インドネシア(TLKM)と国営銀行4行、および石油最大手のプルタミナなど大手国営企業が2019年にスマホ決済事業を統合して発足したスマホ決済「リンクアジャ」に出資することを発表した。様々なビジネスや生活の起点となるプラットフォーム化された決済アプリである「スーパーアプリ」を巡って、インドネシアではグラブ傘下の「オボ」や同国配車最大手のゴジェックが手掛ける「ゴーペイ」が先行し、リンクアジャのサービスは浸透していなかった。更に、11/17、テレコムニカシ・インドネシアの携帯子会社テルコムセルがグラブの競合相手であるゴジェックに日本円換算で約150億円出資すると発表。将来的にはリンクアジャ、オボ、ゴーペイの統合による巨大スーパーアプリ誕生の可能性もあろう。

 

PDF版

 

 

留意事項
  1. 上場有価証券等のお取引の手数料は、国内株式の場合は約定代金に対して上限1.265%(消費税込)(ただし、最低手数料2,200円(消費税込)、外国取引の場合は円換算後の現地約定代金(円換算後の現地約定代金とは、現地における約定代金を当社が定める適用為替レートにより円に換算した金額をいいます。)の最大1.10%(消費税込)(ただし、対面販売の場合、3,300円に満たない場合は3,300円、コールセンターの場合、1,980円に満たない場合は1,980円)となります。
  2. 上場有価証券等は、株式相場、金利水準等の変動による市場リスク、発行者等の業務や財産の状況等に変化が生じた場合の信用リスク、外国証券である場合には為替変動リスク等により損失が生じるおそれがあります。また新株予約権等が付された金融商品については、これらの権利を行使できる期間の制限等があります。
  3. 国内金融商品取引所もしくは店頭市場への上場が行われず、また国内において公募、売出しが行われていない外国株式等については、我が国の金融商品取引法に基づいた発行者による企業内容の開示は行われていません。
  4. 金融商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、お取引に際しては、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書又はお客様向け資料をよくお読みください。

 

免責事項
  1. この資料は、フィリップ証券株式会社(以下、「フィリップ証券」といいます。)が作成したものです。
  2. 実際の投資にあたっては、お客様ご自身の責任と判断においてお願いいたします。
  3. この資料に記載する情報は、フィリップ証券の内部で作成したか、フィリップ証券が正確且つ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性又は完全性を保証したものではありません。当該情報は作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況によって予告なく変更することがあります。この資料に記載する内容は将来の運用成果等を保証もしくは示唆するものではありません。
  4. この資料を入手された方は、フィリップ証券の事前の同意なく、全体または一部を複製したり、他に配布したりしないようお願いいたします。

 

アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

アセアン・米国株、個別銘柄のリサーチレポート承ります
世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

レポート・コメント提供の他、メディア出演依頼等はこちらから。お気軽にご連絡下さい。