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【投資戦略ウィークリー 2020年11月30日号(2020年11月27日作成)】”温暖化ガス排出削減がもたらすEV・金属関連株相場”

 

■”温暖化ガス排出削減がもたらすEV・金属関連株相場”

  •  11/23週のグローバル金融市場は、米大統領選で勝利を確実にした民主党のバイデン氏が財務長官にイエレン前FRB議長を起用すると報じたことから、追加財政出動へ強力な布陣が整えられ、低金利政策を敷く中央銀行のFRBとの連携を強めることで景気浮揚が期待できるとして、株高、金利上昇、ドル安となった。複数の主要国通貨に対する米ドル相場を指数化したドルインデックスも11/25に92ポイントを下回り、9/1以来の安値となった。ドル安は穀物や非鉄金属、原油など幅広い種類のコモディティ価格を押し上げており、資源などコモディティ相場に影響を受けやすい景気敏感バリュー株を中心とした銘柄の株価を押し上げる要因となった。
  •  その中でも、幅広い産業で使う非鉄金属の国際価格が軒並み上昇。コロナ禍からの中国経済の回復が続くほか、温暖化ガス排出削減のため主要国が相次いで発表した電気自動車(EV)推進策とクリーンエネルギー推進を公約に掲げるバイデン氏当選が追い風となったと見られる。EVがガソリン車に比べモーターなどに2倍以上の銅を使うこと、蓄電池の材料にニッケルや鉛などが使われること、および車体軽量化のためにアルミニウムの利用も増える見通しであることなどがその主な要因となっている模様だ。
  •  その一方、EVや風力発電機のモーターなど温暖化ガス排出削減にとって必要とされる製品には、高性能磁石の原料となるレアアース(希土類)が必要不可欠となるなか、中国が12/1に施行予定の輸出管理法において、同国が高い生産シェアを握るレアアースが戦略物資に含まれるのではないかと懸念されている。そうなれば、温暖化ガス削減に向けたクリーンエネルギー政策推進に暗雲が立ち込めよう。ただし、代表的な高性能磁石であるネオジム磁石は、1984年に住友特殊金属(現、日立金属5486)の佐川眞人氏によって発明され、同社、信越化学工業4063大同特殊鋼5471、およびTDK6762が取り扱うなど、日本企業が国際的に強みを有する分野であることから、中国による輸出管理規制が日本にとって優位に働く余地がある点は注目されよう。
  •  米国では11/17以降、ウォルマートWMTホームデポHDターゲットTGTなど小売りやホームセンター大手企業が2020年8-10月期決算を発表。ネット通販の伸びが業績を牽引するなか、ネットで注文して店舗や駐車場(カーブサイド)で受け取るスタイルが増収に貢献している。郊外型大規模店舗と駐車場を擁する日本の小売企業にも同様に業績を伸ばせる余地があろう。(笹木)
  • 11/30号では、住友金属鉱山(5713)、ムサシ(7521)、フルヤ金属(7826)、ヤマダホールディングス(9831)、サイアム・セメント(SCC)を取り上げた。

■主な企業決算の予定

  • 1130日(月):gumi、トーエル、シルバーライフ、トリケミカル研究所、ラクーンHD、日本駐車場開発、(米)ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ
  • 121日(火): ロック・フィールド、伊藤園、(米)セールスフォースドットコム、ネットアップ、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ、携程旅行網[トリップドットコムグループ]
  • 122日(水): ピジョン、ザッパラス、(米)スプランク、シノプシス、PVH
  • 123日(木): アインホールディングス、内田洋行、オリバー、不二電機工業、(米)アルタ・ビューティドキュサイン、クーパー、ダラー・ゼネラルクローガー
  • 124日(金):ポールトゥウィン・ピットクルーHD、アイル、エイチーム、モロゾフ、ティーライフ、カナモト

 

主要イベントの予定

  • 1130日(月)

・バリオセキュアが東証2部に新規上場

鉱工業生産(10 )、小売売上高(10)、百貨店・スーパー売上高(10)、住宅着工件数(10)

・ECB総裁が講演、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ、オンライン)、OPEC総会(オンライン)

・米中古住宅販売成約指数 (10月)

・独CPI(11月)

中国製造業・非製造業PMI (11)

 

  • 121日(火)

・完全失業率(10月)、設備投資(3Q)、じぶん銀行 日本PMI製造業 (11月)、自動車販売台数 (11月)

・DCMホールディングスによる島忠の TOB期限

米財務長官 とFRB議長が上院銀行委員会で証言、米ブレイナードFRB理事が討論 会に参加、米サンフランシスコ連銀総裁が講演、米シカゴ連銀総裁が講演、EU財務相理事会(オンライン)、ECB総裁が講演、OECD経済見通し、「OPECプラス」会合(オンライン)、豪中銀が政策金利発表

・米自動車販売 (11月)、米ISM製造業景況指数 (11)、米建設支出(10月)

ユーロ圏製造業PMI(11)、ユーロ圏CPI (11月)、独失業率 (11月)

中国財新製造業PMI(11)、韓国GDP(3Q)

 

  • 122日(水)

・雨宮日銀副総裁が秋田県金融経済懇談会で講演・記者会見(オンライン)

・マネタリーベース(11月)、 消費者態度指数 (11月)

米財務長官とFRB議長が下院金融委員会で証言米地区連銀経済報告(ベージュブック)、米ニューヨーク連銀総裁が記者会見

米ADP雇用統計 (11)

・ユーロ圏PPI(10月)、ユーロ圏失業率 (10月)、豪GDP (3Q)

 

  • 123日(木)

・鈴木日銀審議委員が福島県金 融経済懇談会で講演・記者会見(オンライン)

・対外・対内証券投資(11/22-28)、じぶん銀行日本PMIサービス業・コンポジット (11 月)

米新規失業保険申請件数 (11/28終了週)ISM非製造業総合景況指数 (11)

ユーロ圏総合・サービス業PMI (11)、小売売上高 (10月)

中国財新サービ ス業・コンポジットPMI (11)

・ブラジルGDP (3Q)

 

  • 124日(金)

・米ボウマンFRB理事が講演、インド中銀が政策金利発表

米雇用統計 (11)、貿易収支 (10月)、製造業受注 (10月)

・独製造業受注 (10月)

 

  • 125日(土)

・臨時国会の会期末

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

米ホームセンター・チェーン大手2社

11/19発表の10月の米中古住宅販売件数は季節調整済みの年率換算で5か月連続増加の前月比4.3%増、前年同月比で26.6%増。米主要20都市圏における戸建て住宅の再販価格を元に算出されるS&Pケース・シラー住宅価格指数も11/24発表の9月が同6.6%上昇と米住宅市場の堅調さを示している。

住宅市場の影響を受けやすい米ホームセンター大手チェーンの今年8-10月期は、巣ごもりに伴う自宅改装やメンテの動きが広がったことから業績好調。既存店売上高は、ホームデポHDが前年同期比24%増収、ロウズLOWが同30%増収。全体相場の動向に歩調を合わせて両社の直近数ヵ月の株価は伸び悩んでいるが、中古住宅販売件数の増加加速を反映していないと見る余地もあろう。

【米ホームセンター・チェーン大手2社~株価は中古住宅販売に出遅れか?】

■ドルインデックス・ドル円・金価格

複数の主要国通貨に対する米ドル相場を指数化したドルインデックスは、過去4年では2017年や2019年にドル円相場と異なる動きを示すこともあったが、ここ数ヵ月は両者の連動性が強まりつつある。ドルインデックスは名目金利から期待インフレ率を差し引いた米実質金利に連動する傾向があると見られる中、米実質金利を表す物価連動国債10年物TIPS利回りはマイナス1.0%近辺で下げ止まりを示している。これを受けて金先物価格も上昇一服から横ばい傾向に転じている。

イエレン前FRB議長が次期財務長官に指名予定となることが発表され、財政支出増加期待からドルインデックスが11/25に92ポイントを下回ったが、金先物価格と米実質金利の推移からすれば、ドル安は期待が先行している可能性もあろう。

【ドルインデックス・ドル円・金価格~米ドル実質金利の動向が鍵を握る?】

■日本株11月相場の主役銘柄

日経平均株価の11/25終値での月初来騰落率が14.4%に上る高騰を示したなか、TOPIXの構成銘柄の11/25終値の月初来騰落率の上位を主として占めたのは、クリーンエネルギー関連のほか、電気自動車や車載エレクトロニクス、蓄電池などの自動車関連銘柄や暗号資産を手掛ける銘柄のほか、PBR(株価純資産倍率)が1.0倍を下回る銘柄となった。

これは、次期米大統領と見られる民主党バイデン政権の公約、および菅首相の所信表明で示された「2050年に温暖化ガス排出量を実質ゼロ」目標を受け、テスラ(TSLA)など電気自動車(EV)メーカーを物色の柱とする潮流、および世界的にグロースからバリューへの物色シフトが意識されるなかで低PBR銘柄を手掛ける動きなどによるものと考えられよう。

【日本株11月相場の主役銘柄~エネルギー、自動車電動化、低PBRなど】

■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー

11/30号「RCEP締結のアセアンへの影響」

11/15、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシアを含むアセアン10か国のほか、日本と中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの15ヵ国が東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に合意、署名した。世界経済・貿易の3割を占める最大規模の自由貿易圏が誕生することになり、工業製品を中心に全体の関税撤廃率は91%に上る。RCEPは米中貿易摩擦の影響緩和に役立つと期待されるなか、合意された協定は署名国間の国際通信、運輸、物流、国際金融、投資を増やすことを目的とする。アセアン主要国に戦略的地域関連会社の通信キャリアを擁するシンガポール・テレコム(ST)が国際通信分野で注目されるほか、タイのバンコク・ドゥシット・メディカル・サービス(BDMS)やマレーシアのIHHヘルスケア(IHH)の医療ツーリズム関連企業も恩恵が期待される。

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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