【投資戦略ウィークリー 2020年11月2日号(2020年10月30日作成)】”「国策に売りなし」の格言~所信表明演説に注目”
■”「国策に売りなし」の格言~所信表明演説に注目”
- 11/2からの1週間は、3日にグローバルマネーの大きな流れの枠組みを方向づける米大統領選挙が行われるほか、日本では8日に立皇嗣の礼が予定されている。新型コロナウイルス感染拡大問題は、欧米で深刻化する一方、日本は落ち着きを示している。2020年4-9月期決算も中国経済回復の恩恵から会社予想の通期上方修正が相次ぐなど、日本株に追い風が吹いているようにも見受けられる。そのようななか、秋篠宮さまが皇位継承順位1位の皇嗣(こうし)になられたことを内外に示す立皇嗣の礼に合わせ、衆参両院の本会議で祝意を表す賀詞が議決された。関係者の中で直前に株式市場の暴落で国民のお祝いムードに水を差すことは避けたいという心理が働いても不思議ではなく、公的資金の買いなどを期待する市場の空気が醸し出されやすい面もあろう。
- 菅政権下での日本経済・社会を見据えて日本株投資の方向性を決めて行く上で、10/26に発表された菅首相の所信表明演説の内容を押さえておくことは参考となろう。内容は、①新型コロナウイルス対策と経済の両立、②デジタル社会の実現・サプライチェーン、③グリーン社会の実現、④活力ある地方を創る、⑤新たな人の流れをつくる、⑥安心の社会保障、⑦東日本大震災からの復興・災害対策、⑧外交・安全保障の8項目から構成されている。
- その中で注目される点を挙げると以下の通り。①では、持続化給付金や無利子・無担保融資などの対策を続けるとし、②では、マイナンバーカードやデジタル庁関連、行政への申請における押印廃止のほか、全ての小中学生に対して1人1台のIT端末導入を進めるとしている。③では、温暖化への対応で鍵となるのが次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした革新的なイノベーションとしており、④では、日本の農産品の輸出額(19年9,000億円)を25年に2兆円、30年に5兆円を目標とするほか、地方の観光需要回復を回復するための政策プランを年内に策定することや最低賃金の全国的引き上げに取り組むことに言及している。⑤では、大企業で経験を積んだ人を政府ファンドを通じて地域の中堅・中小企業の経営人材として紹介する取り組みを開始するに当たって銀行を対象に年内に開始するとし、⑥では、待機児童の解消を目指し年末までにポスト「子育てプラン」を取りまとめるほか、不妊治療への保険適用を早期に実現するとしている。⑦では、被災者生活再建支援法の改正のほか、国土強靭化が引き続き大きな課題としている。「国策に売りなし」の相場格言が想起されよう。
- 11/2号では、戸田建設(1860)、グローバルキッズCOMPANY(6184)、パラマウントベッドホールディングス (7817)、ベネッセホールディングス(9783)、シンガポール・テレコム(ST)を取り上げた。
■主な企業決算の予定
- 11月2日(月):エヌ・ティ・ティ・データ、オリックス、カルビー、サンゲツ、ヒロセ電機、マルハニチロ、ヤマハ、伊藤忠テクノソリューションズ、京王電鉄、三菱瓦斯化学、持田製薬、大和工業、帝人、日本ハム、日本精工、(米)ペイパル・ホールディングス、スカイワークス・ソリューションズ、モンデリーズ・インターナショナル、CDW
- 11月3日(火):(米)フォックス、エマソン・エレクトリック、エクセロン
- 11月4日(水):SUBARU、ケーズHD、サントリー食品インターナショナル、ソフトバンク、ニチレイ、ファンケル、リコー、伊藤忠商事、横河電機、丸紅、九州旅客鉄道、三菱ケミカルHD、三菱自動車工業、長瀬産業、東海カーボン、味の素、(米)リバティ・グローバル、クアルコム、ベリスク・アナリティクス、メットライフ、オールステート、アンシス、メルカドリブレ、エクスペディア・グループ
- 11月5日(木):SUMCO、TBSHD、アコム、アサヒグループHD、アズビル、アルフレッサHD、エーザイ、カカクコム、キッコーマン、キッセイ薬品工業、クボタ、コナミHD、シスメックス、スズキ、スズケン、ダイキン工業、ツムラ、テルモ、ニコン、パイロットコーポレーション、ピジョン、フジ・メディア・HD、ベネフィット・ワン、ライオン、王子HD、科研製薬、ヤマダHD、京阪HD、栗田工業、群馬銀行、古河電気工業、江崎グリコ、三井不動産、三浦工業、三菱商事、住友ゴム工業、昭和電工、神戸製鋼所、西松建設、全国保証、東京建物、日本テレビHD、日本空港ビルデング、日本新薬、日本水産、日本製紙、日本発条、日本郵船、日油、日立キャピタル、任天堂、(米)テイクツー・インタラクティブ・ソフトウエア、マイクロチップ・テクノロジー、エレクトロニック・アーツ、AIG、バイオマリン・ファーマシューティカル、モンスタービバレッジ、TモバイルUS、ブッキング・ホールディングス、ゼネラル・モーターズ(GM)、デューク・エナジー、インサイト、ブリストル マイヤーズ スクイブ、リジェネロン・ファーマシューティカルズ
- 11月6日(金):DMG森精機、FUJI、アシックス、いすゞ自動車、キリンHD、グローリー、ゴールドウイン、コムシスHD、サッポロHD、ジーエス・ユアサ コーポレーション、シャープ、スクウェア・エニックス・HD、スシローグローバルHD、セガサミーHD、セブン銀行、ダイセル、ダイフク、トヨタ自動車、ニッコンHD、バンダイナムコHD、フジテック、ベネッセHD、ミネベアミツミ、ユニ・チャーム、リンナイ、旭化成、伊予銀行、国際石油開発帝石、阪急阪神HD、三菱マテリアル、参天製薬、住友商事、住友電気工業、西日本フィナンシャルHD、東レ、東邦HD、日清食品HD、日本パーカライジング、日本ユニシス、日本光電工業、日本触媒、日本製鉄、日本電信電話、不二製油グループ本社、本田技研工業、(米)マリオット・インターナショナル、CVSヘルス、(7日)バークシャー・ハサウェイ
■主要イベントの予定
- 11月2日(月)
・自動車販売台数 (10月)
・米ISM製造業景況指数(10月)、米建設支出(9月)
・ユーロ圏製造業PMI(10月)、中国財新製造業PMI(10月)
- 11月3日(火)
・米大統領選挙・議会選挙
・ユーロ圏財務相会合、豪中銀が政策金利発表、マレーシア中銀が政策金利発表
・米自動車販売(10月)、米製造業受注(9月)
- 11月4日(水)
・日銀金融政策決定会合議事要旨(9月16・17日分)、楽天モバイルがサービスに関して発表、マネタリーベース(10月)
・米FOMC(5日まで)、米が「パリ協定」正式離脱、EU財務相理事会
・米ADP雇用統計(10月)、米貿易収支(9月)、米ISM非製造業総合景況指数(10月)
・ユーロ圏総合・サービス業PMI(10月)、ユーロ圏PPI(9月)
・中国財新サービス業・コンポジットPMI(10月)
- 11月5日(木)
・じぶん銀行日本Iサービス業・コンポジットPM(10月)
・米FOMC声明発表および議長記者会見、英中銀が政策金利発表および総裁記者会見
・米新規失業保険申請件数(10月31日終了週)
・ユーロ圏小売売上高(9月)、独製造業受注(9月)、欧州委員会経済見通し
・インドネシアGDP (3Q)
- 11月6日(金)
・毎月勤労統計-現金給与総額・実質賃金総額・家計支出(9月)、対外・対内証券投資(25-31日)
・米雇用統計(10月)、米卸売在庫(9月)、米消費者信用残高(9月)
・独鉱工業生産 (9月)
- 11月7日(土)
・中国外貨準備高(10月)、中国貿易収支(10月)
- 11月8日(日)
・立皇嗣の礼
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■主な米企業の2020年7-9月期決算
米主要企業の2020年7-9月期決算について10/28までに発表された内容を見ると、4-6月期に引き続き新型コロナウイルスの影響に左右される展開となっているようだ。航空業界や油田サービス・設備の業界は未だ業績改善の見通しが立たない一方、金融関連業界では、債券や株式のトレーディングおよび引受、資産運用を主たる業務とする金融機関が金融緩和の恩恵を受けているほか、消費者の衛生意識の高まりによりパーソナル用品などは引き続き好調である。
その一方、テレワークの普及に伴い概ね好調と見られていたITや半導体関連では、政府や企業のデータセンターへの投資抑制のあおりを受ける企業が出始めているほか、動画サービスで会員数純増の伸びが鈍化する動きも見られる。
【主な米企業の2020年7-9月期決算(10/28まで)~コロナ禍の影響で明暗】
■人民元建て中国国債への熱視線
現在、中国の国債市場はおよそ15兆ドルと世界第2位の規模となっている。しかも、中国の10年国債利回りは、世界的低金利の中、他の主要先進国を大きく上回る3%超の高利回りだ。日本の機関投資家からも注目度が高まりつつあり、シンガポール取引所でも中国国債に連動したETFを上場する動きが相次いでいる。
また、人民元相場についても、日々公表する人民元の基準値(中間値)の設定に参加している銀行が、設定に組み込まれている調整措置である「逆周期因子」(前日より元安の場合は元高方向へ、元高の場合は元安方向へ誘導する措置)の利用を停止する動きが出始めており、通貨の柔軟性が今後高まると期待される。これらの動きにより、人民元建て中国国債投資への注目度が高まろう。
【人民元建て中国国債への熱視線~他の先進国国債と比較して高利回り】
■コロナ禍を追い風とする銀行業界
10/9に全国銀行協会が発表した全国銀行預金・貸出金等速報によれば、2020年9月末の実質預金(未決済の手形・小切手を引いた預金額)が前年同期比9.4%増、貸出も同6.1%増となった。このうち、貸出の増加については公的機関である信用保証協会が保証する「制度融資」が増加の中で大きな割合を占めており、銀行は企業の倒産リスクを負わずに金利収入を得ることができる。
更に、日銀は政府の緊急経済対策等の資金繰り支援制度を踏まえた金融機関への新たな資金供給手段として、銀行からの日銀預け金に対し0.1%の付利を行っている。そのため、実質預金の増加は日銀預け金の増加を通じた銀行の増収要因となる。市場がこれらの増収要因を株価に織り込む展開が見込まれよう。
【コロナ禍を追い風とする銀行業界~リスクを抑えて金利収入増の可能性】
■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー(11/2号「パーム油相場は引き続き上昇」)
揚げ油やマーガリンなどに使うパーム油の国際価格が上昇基調を続けている。指標となるマレーシア市場のパーム油先物は10/27、5月の年内最安値から6割高く、3年8ヵ月ぶりの高値となった。パーム油は食用のほかバイオ燃料にも使い、インドネシアとマレーシアで世界の約9割を供給する。2大消費国であるインドと中国ではコロナ禍の影響で外食向けに落ち込んでいた需要が回復しつつあることを受け、マレーシアのパーム油輸出が堅調なことが主な要因だ。
マレーシアのアイ・オー・アイ(IOI)、シンガポールのウイルマー・インターナショナル(WIL)やゴールデン・アグリリソーシズ(GGR)、および大豆油を手掛けるタイのタイ・ベジタブル・オイル(TVO)など植物油の相場に業績が影響されるアセアンの農業関連銘柄には引き続き追い風となろう。
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。