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【投資戦略ウィークリー 2020年10月26日号(2020年10月23日作成)】”再生可能エネルギーは菅政権の規制改革の柱へ”

 

■”再生可能エネルギーは菅政権の規制改革の柱へ”

  •  米大統領選挙が迫り、日本株式市場が様子見姿勢を強めつつある。東証1部の売買代金も10/12から10/22まで9営業日連続で2兆円を下回った。模様眺めが続く株式市場とは対照的に、規制改革を旗印とする菅政権はその特徴を明らかにしつつあるように見える。規制緩和を原動力としたアベノミクス第3の矢としての「成長戦略」よりも、小泉政権が「聖域なき構造改革」を掲げて推し進めた規制緩和策に類似している面があるかも知れない。10/20の日本経済新聞でのインタビューで、河野規制改革大臣は再生可能エネルギー活用促進に向けて既存制度を総点検すると表明したほか、特区限定のドローンや自動運転車の全国展開、放送とネットの同時配信に係る著作権ルール統一、領収書の電子保管、介護現場でのAI活用に伴う産業医らの常駐義務撤廃に言及した。
  •  その中でも、再生可能エネルギーの活用促進は規制改革の大きな柱となりそうな気配だ。菅首相は、10/26に予定されている就任後初の所信表明演説で、温暖化ガスの排出量を2050年に実質ゼロにする目標を掲げると伝えられた。50年にCO2などの温暖化ガス排出量と、森林などで吸収される量を差し引いてゼロにする目標である。これは、第1に、30年の再生可能エネルギー構成比目標を22-24%としている現行のエネルギー基本計画の見直しによる同構成比の引上げが必要となることを意味する。第2に、将来的に排出権取引制度が本格的に導入されれば、山林事業で日本国土の約900分の1を占める森林を保有する住友林業1911のように温暖化ガス排出量の減少に貢献できる企業がクレジットを保有できる可能性が高くなることも意味すると考えられよう。
  •  国の指針により容量の制約がある送電網が石炭火力や原子力に優先的に割り当てられるなか、全国に電話局網を有するNTT9432三菱商事8058との協業により、自前の発送電網を整備して再生可能エネルギー事業へ本格参入する方針と今年6月末に伝えられている。この点では、再生可能エネルギー事業への新規参入企業を含むどの企業も送配電設備を公平に利用できるようにするため、今年4月より電気通信事業者に送配電部門の法的分離が義務付けられている。今後、NTTと電力会社が競争することにより再生可能エネルギーの活用促進が図られる面があろう。
  •  また、放送とネットの同時配信に係る著作権ルール統一に関し、良質な番組コンテンツ資産のネット展開が地上波テレビ局企業株価の低PBR(株価純資産倍率)見直しの契機になると期待される。
  • 10/26号では、リゾートトラスト(4681)、UACJ(5741)、近鉄エクスプレス (9375)、日本テレビホールディングス(9404)、DBSグループ・ホールディングス(DBS)を取り上げた。

■主な企業決算の予定

  • 1026日(月):コクヨ、日東電工、日本電産、キヤノン、オービック
  • 1027日(火)ANAHD、HOYA、JSR、MonotaRO、シマノ、ネットワンシステムズ、ヒューリック、小林製薬、松井証券、信越化学工業、日清製粉グループ本社、日立金属、日立建機、富士通、野村不動産HD、山崎製パン、(米)デクスコム、ファイサーブ、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)マイクロソフト、マキシム・インテグレーテッド・プロダクツ、イーライリリー、メルク、ファイザー、レイセオン・テクノロジーズ、3M、キャタピラー
  • 1028日(水)LINE、SBIHD、SCREENHD、アマノ、イビデン、サイバーエージェント、ソニー、トクヤマ、ニフコ、花王、小松製作所、大日本住友製薬、東海理化電機製作所、東海旅客鉄道、東京電力HD、東日本旅客鉄道、東北電力、日本取引所グループ、日本電気硝子、日立製作所、北海道電力、野村HD、野村総合研究所、(米)コグニザント・テクノロジー・ソリューションズ、オライリー・オートモーティブ、ビザ、KLA、イーベイ、サーナー、ギリアド・サイエンシズ、フォード・モーター、ゼネラル・エレクトリック(GE)、オートマチック・データ・プロセシング(ADP)、アムジェン、マスターカード、ゼネラル・ダイナミクス、ボーイング、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)
  • 1029日(木):AGC、NTTドコモ、PALTAC、SCSK、ZOZO、アイカ工業、アドバンテスト、アンリツ、エス・エム・エス、オムロンオリエンタルランド、カプコン、きんでん、コニカミノルタ、ジェイテクト、スタンレー電気、セイコーエプソン、デンソー、トヨタ紡織、パナソニック、ファナック、ミスミグループ本社、メイテック、ルネサスエレクトロニクス、ローム、沖電気工業、関西電力、京セラ三菱電機、四国電力、小野薬品工業、積水化学工業、川崎重工業、相鉄HD、大阪ガス、大正製薬HD、大東建託、大和証券グループ本社、東京エレクトロン、東邦瓦斯、日本電気、日野自動車、富士電機、武田薬品工業、豊田合成、豊田自動織機、豊田通商、北陸電力、(米)イルミナ、アクティビジョン・ブリザード、シージェン、フェイスブックスターバックス、アマゾン・ドット・コム、アップル、バーテックス・ファーマシューティカルズアルファベット、サザン、コノコフィリップス、クラフト・ハインツ、アイデックスラボラトリーズ、エクセルエナジー、デュポン・ド・ヌムール、アメリカン・タワー、コムキャスト、モデルナ、キューリグ・ドクターペッパー、アレクシオン・ファーマシューティカルズ
  • 1030日(金)KDDI、LIXILグループ、NTN、SGHD、TDK、TOTO、ZHD、アステラス製薬、アルプスアルパイン、インフォマート、ウシオ電機、エイチ・ツー・オーリテイリング、エフピコ、エムスリー、オークマ、オートバックスセブン、カゴメ、キーエンス、コーセー、サンリオ、セントラル硝子、タダノ、テイ・エステック、テクノプロ・HD、トプコン、ナブテスコ、ハウス食品グループ本社、ポーラ・オルビスHD、マキタ、マブチモーター、メディパルHD、ヤマトHD、レーザーテックレンゴー、ワコールHD、宇部興産、塩野義製薬、京成電鉄、協和キリン、九州電力、九電工、三井物産、三菱重工業、三菱倉庫、三和HD、山九、住友重機械工業、小田急電鉄、西日本旅客鉄道、双日、綜合警備保障、村田製作所、大同特殊鋼、第一三共、中国電力、中部電力、電源開発、東ソー、東武鉄道、東洋水産、東洋製罐グループHD、東亞合成、南海電気鉄道、日本M&Aセンター、日本ゼオン、日本たばこ産業、日本碍子、日本軽金属HD、日本航空、日本酸素HD株式、日本通運、八十二銀行、(米)チャーター・コミュニケーションズ、コルゲート・パルモリーブ、エクソンモービル、シェブロン、アッヴィ、ハネウェルインターナショナル、アルトリア・グループ

 

主要イベントの予定

  • 1026日(月)

・臨時国会召集、企業向けサービス価格指数(9月)、景気先行CI・一致指数 (8月)

中国の第19期中央委員会第5回総会(5中総会、29日まで)、香港休場(重陽節)

米上院本会議でエイミー・コニー・バレット氏の連邦最高裁判事指名承認採決の予定

・米新築住宅販売件数(9月)、独IFO企業景況感指数(10月)

 

  • 1027日(火)

・カラダノー トが東証マザーズに新規上場

・米耐久財受注 (9月)、米主要20都市住宅価格指数(8月)、米FHFA住宅価格指数(8月)、米消費者信頼感指数 (10月)、ユーロ圏マネーサプライ(9月)、中国工業利益(9月)、韓国GDP(3Q)

  • 1028日(水)

・さくらさくプラスとプレミアアンチエイジングが東証マザーズに新規上場、AI人工知能EXPO30日まで)

・米ダラス 連銀総裁が討論会に参加、米アルファベット・フェイスブック・ツイッターのCEOが上院委員会で証言、ブラジル中銀が政策金利発表

・米卸売在庫 (9月)

 

  • 1029日(木)

日銀金融政策決定会合、終了後に結果と展望リポートを発表、 黒田総裁が会見

・小売売上高(9月)、百貨店・スーパー売上高(9月)、対外・対内証券投資 (10月18-24日)、消費者態 度指数 (10月)

ECBが政策金利発表と総裁記者会見ユーロ圏景況感指数(10)、消費者信頼感指数 (10月)、独失業率 (10月)、独CPI (10月)

米新規失業保険申請件数(24日終了週)、米GDP(3Q)、米中古住宅販売成約指数(9月)

 

  • 1030日(金)

・Rettyが東証マザーズに新規上場、有効求人倍率(9月)、完全失業率(9月)、東京CPI(10月)、鉱工業生産(9月)、自動車生産台数(8月)、住宅着工件数(9月)、建設工事受注(9月)

米個人所得・支出 (9月)、米雇用コスト指数(3Q)、米ミシガン大学消費者マインド指数(10)

ユーロ圏GDP(3Q)・CPI(10月)・失業率(9月)、独GDP(3Q)、香港GDP(3Q)、台湾GDP(3Q)

 

  • 1031日(土)

中国製造業・非製造業・総合PMI(10)

 

  • 111日(日)

米国の夏時間終了大阪都構想で住民投票

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

 

米大統領選激戦州とコロナ禍

米世論調査データ収集サイト「リアル・クリア・ポリティックス」によれば、米大統領選における10/21現在の州ごとの獲得見込み票(確実、優勢、やや優勢)の合計は、トランプ大統領が125票であるのに対し、バイデン候補は232票と過半数まであと38票に迫っている。全部で538票に対し、五分五分の接戦と見られるのが13州による残りの181票である。

上記の接戦州のうち10票以上を占める9州について、百万人当りの新型コロナウイルス累計感染者数はフロリダ州が最多だ。重症化しやすいと見られる高齢者の移住が多いこともあり、現政権への批判票が集まる可能性もあろう。また、直近1ヵ月での増加加速が目立つウイスコンシン州もコロナ禍の観点では現政権への批判票が集まりやすいかも知れない。

【米大統領選激戦州とコロナ禍~感染者増加状況が明暗を分ける可能性も】

 

■穀物相場と大統領選の農業州

シカゴ商品取引所の大豆・トウモロコシ先物価格が上昇基調で推移している。米中貿易摩擦を巡る1月の「第1弾の合意」に伴う中国による米国産穀物の輸入増という一面があるほか、アフリカ豚熱や今夏の洪水で養豚数が急減したことに対し飼育数を増やすため配合飼料の大豆・トウモロコシの確保が重要になった中国側の事情も大きな要因だろう。

米大統領選でトランプ大統領が劣勢を跳ね返すには農業州の票の確保が必要と見られ、相場の堅調な推移はその援軍となろう。特に、大豆・トウモロコシともに生産量で上位4位内にランクされるアイオワ州とミネソタ州、および、トウモロコシの生産量で上位14位内のオハイオ、ウィスコンシン、テキサス州はいずれも大統領選の接戦州と位置付けられている。

【穀物相場と大統領選の農業州~ミネソタ・オハイオ・ウィスコンシンは接戦】

■バルチック海運指数下落の影響

鉄鉱石や石炭、穀物などを運ぶばら積み船市況の総合的な値動きを表すバルチック海運指数は9/11から10/6まで上昇していたが、10/7以降は下落傾向に転じた。影響を受けやすいと見られるTOPIX海運業指数や大手海運株は、10/21現在、これに逆行して10月も上昇を継続している。欧米での新型コロナウイルスの感染拡大に対する警戒感は根強いものの、特に空売り残高の多い大手海運株は目先は買い戻しが株価を浮揚させる動きが出ている面もあるようだ。

また、バルチック海運指数のほか、中国の景気回復に伴い対中国貿易が拡大している点も海運市況の動向に大きな影響を与えている。中国の貿易額は輸出・輸入ともに今年9月まで拡大傾向が続いており、10月以降の動向が注目される。

【バルチック海運指数下落の影響~日本株の海運業への影響は未だ無い】

 

■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー10/26号「王室系のタイ企業には要注意」

タイで学生を主体とする反体制デモが拡大している。政府は15日に主要リーダーを次々と逮捕し、非常事態宣言に基づく集会禁止令を出したが、収束の気配はない。デモ隊は首相の退陣と非民主的な憲法の改正、そして王室改革の大きく3点を要求している。タイ憲法で国王は不可侵の存在とされ、王室批判はこれまでタブーだった。学生たちはワチラロンコン国王が主に国外に滞在する現状に疑問を呈し、政治への不介入や王室予算の縮小、不敬罪の廃止などを求めている。

タイ王室が大株主となっている主要企業としては、セメント・素材大手のサイアムセメント(SCC)、銀行大手のサイアム商業銀行(SCB)が挙げられる。「サイアム(Siam)」は日本では「シャム」とも言われ、タイの旧国名を意味する。タイ王室系企業への投資には注意が必要だろう。

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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