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【投資戦略ウィークリー 2020年10月19日号(2020年10月16日作成)】”東証マザーズ銘柄に見る、今伸びているビジネス”

 

■”東証マザーズ銘柄に見る、今伸びているビジネス”

  •  東証マザーズ指数の堅調な値動きに注目が集まっている。米国株では9月以降、米大統領選や議会選で増税と財政支出の大型パッケージを公約に掲げる民主党が優勢であることを受け、GAFAなどの成長期待の強い大型IT関連銘柄から景気敏感銘柄への物色にシフトする動きが見られる。その一方、日本株では米国株とは逆に、成長期待の強いIT関連銘柄への物色が強まっている。ただし、この物色傾向は東証1部の主要銘柄ではなく、値動きの軽い東証マザーズ市場で個人投資家を中心に見られる点が特徴だ。
  •  東証マザーズ銘柄は期待先行で業績と比較して株価が割高になりやすいことから手を出しにくい面があるなか、どのような事業内容の銘柄が物色されているかの傾向を把握し、東証1部を中心とした銘柄への投資に活かしていくことは有益であると思われる。また、新興企業が開拓した市場に、後発で主要企業が進出して主役を奪い取ってしまう可能性も将来的には考えられよう。
  •  同指数の終値で今年最安値の付けた3/19から10/14までの騰落率上位10銘柄の事業内容は以下の通り。①BASE4477は、個人・小規模事業者向けEコマースプラットフォームを運営。②すららネット3998は、オンライン学習教材を塾や学校、個人に提供。③ログリー6579は、ネイティブ広告プラットフォームを運営。④ケアネット2150は、医療向け情報サイトを通じた製薬の営業支援。⑤プロパティデータバンク4389は、不動産管理クラウドサービスを提供。⑥ベガコーポレーション3542は、家具・雑貨のEコマースを運営。⑦ライトアップ6580は、企業の生産性向上のためのITツール導入を支援。⑧ビープラッツ4381は、定額課金のサブスクリプション・サービスに必要な各種機能を基盤として提供。⑨ホープ6195は、電力・ガス販売を中心に地方自治体に特化してサービスを提供。⑩Jストリーム4308は、ネットによる動画ライブ中継やオンデマンド放送の配信インフラを提供している。
  •  コロナ禍に伴い、巣ごもりの在宅時間とともにインターネットへアクセスする時間も増加するなか、Eコマースの利用増への対応とそれに伴うEコマースサイトの営業支援、オンラインの遠隔教育ニーズへの対応、クラウドサービスへのシフトなど、ビジネスの変化の傾向が見られる。菅首相が行政手続きをはじめとした様々なサービスのデジタル化を主要政策として掲げるなか、東証マザーズで割高に買われた可能性がある銘柄から東証1部のIT関連銘柄へ物色の主役が交代する時機も近いかも知れない。
  • 10/19号では、トライステージ(2178)、ハウスドゥ(3457)、古河電池 (6937)、パスコ(9232)、チャルーン・ポーカパン・フーズ(CPF)を取り上げた。

 

■主な企業決算の予定

  • 1019日(月):光世証券、(米)ケイデンス・デザイン・システムズ、IBM
  • 1020日(火):KOA、Genky DrugStore、アルインコ、(米)テキサス・インスツルメンツ、ネットフリックス、ロッキード・マーチン、フィリップ・モリス・インターナショナル、パッカー、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)
  • 1021日(水):ジャフコグループ株式会社、日本高純度化学、(米)ラムリサーチ、CSX、アライン・テクノロジー、テスラ、キンダー・モルガン、ベライゾン・コミュニケーションズ、アボットラボラトリーズザイリンクスバイオジェンネクステラ・エナジー、サーモフィッシャーサイエンティフィック
  • 1022日(木):ディスコ、エイトレッド、中外製薬、石塚硝子、ビオフェルミン製薬、三谷産業、(米)インテル、ベリサイン、キャピタル・ワン・ファイナンシャル、ユニオン・パシフィック、シトリックス・システムズ、AT&TDow Inc、チェックポイント・ソフトウエア・テクノロジーズ、コカ・コーラ、シリウスXMホールディングス、ダナハー
  • 1023日(金)富士通、アジュバンコスメジャパン、小野測器、カワチ薬品、キヤノンマーケティングジャパン、モバイルファクトリー、京阪神ビルディング、東京製鐵、三菱鉛筆、富士通ゼネラル、岩井コスモホールディングス、(米)アメリカン・エキスプレス

 

主要イベントの予定

  • 1019日(月)

・貿易収支 (9月)

米FRB議長がIMFのパネル討論会に出席、アトランタ連銀総裁の講演、フィラデルフィア連銀総裁の講演

ECB総裁の講演

・米 NAHB住宅市場指数 (10月)

中国GDP(3Q)、中国工業生産・小売売上高・都市部固定資産投資(9月)

 

  • 1020日(火)

・「CEATEC」開幕

・米ニューヨーク連銀総裁の講演、シカゴ連銀総裁の講演

・米住宅着工件数(9月)

・中国新築住宅価格(9月)

 

  • 1021日(水)

・桜井日銀審議委員が福井県金融経済懇談会であいさつ・記者会見(オンライン形式)

・訪日外国人客数(9月)、スーパーマーケット売上高(9月)

米地区連銀経済報告(ベージュブック)、米クリーブランド連銀総裁の講演

・英CPI(9月)

 

  • 1022日(木)

・日銀の金融システムリポート(10月)、対外・対内証券投資(10月11-17日)、全国百貨店売上(9月)、東京地区百貨店売上高 (9月)

米大統領候補:最後の討論会(テネシー州ナッシュビル)

・英中銀総裁の講演、トルコ中銀が政策金利発表

米新規失業保険申請件数 (17日終了週)、中古住宅販売件数(9月)、景気先行指標総合指数 (9月)

・ユーロ圏消費者信頼感指数 (10月)

 

  • 1023日(金)

・全国CPI(9月)

・ロシア中銀が政策金利発表

・ユーロ圏製造業・サービス業・総合PMI(10月)

 

  • 1025日(日)

・欧州の夏時間終了

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

 

米上院選挙と大統領選挙

11/3は、米大統領選と共に上院改選と下院選が実施される。バイデン候補が世論調査を通じリードを広げていると伝えられるほか、民主党が上院で過半数を握る可能性が強まっている。米世論調査サイトのリアル・クリア・ポリティックスによれば、10/14現在、上院の議席獲得見通しは、共和党46議席、民主党47議席であり、五分五分の接戦予想が7議席となっている。世論調査通りであれば、7議席中で民主党が4議席を獲得する計算だ。

大統領選については、五分五分の接戦とされる14州のうち5州(ミシガン、ペンシルベニア、ウイスコンシン、ネバダ、ミネソタ)で世論調査の平均値におけるバイデン候補のリードが5ポイント超となっており、この5州の獲得票数は62票に上る。バイデン候補の優位は動かないようだ。

【米上院選挙と大統領選挙~五分五分州争奪戦は世論調査で民主党リード】

 

■トルコとロシアの金保有

世界の中央銀行は、外貨準備における通貨分散のためドルやユーロなどの主要通貨に代わり金の保有を増やしてきた。特にロシアはここ数年、金の保有を大幅に増やしてきたが、輸出で外貨を稼ぐ原油の価格下落もあり、今年4月より金の購入を停止するスタンスへ転換した。

そのロシアに代わり、トルコの金買いが目立ってきた。今年8月は、保有量が前年同月比67%増の606トン、外貨準備に占める割合が同30ポイント上昇の49%に上った。トルコも外貨を稼ぐ主力産業の観光収入が激減している点ではロシアと同様の事情があると考えられるが、ここ数年の米国との関係悪化を踏まえ、米国が制裁を強化した場合に決済で米ドルを使えなくなるリスクが意識され、金買いに繋がっている可能性があろう。

【トルコとロシアの金保有~トルコは金の購入拡大、ロシアは購入停止へ】

 

■東証マザーズ指数の騰落率上位

10/14に東証マザーズ指数が14年ぶりの高値を付けた。今年最安値だった3/19終値を100とした相対指数は、10/14に東証マザーズ指数が244となり、日経平均株価の約1.7倍、米ナスダック総合指数の約1.5倍に達した。株価先行で業績が追い付かないことを懸念する向きがあるものの、コロナ禍に伴うテレワークやオンライン販売、遠隔教育、およびバイオテクノロジーへの注目の高まりなど米国株の上昇と重なる要因も多い。

3/19から10/14までの騰落率上位30銘柄のうち2社以上を含む業種は、6社のインターネットメディア・サービス、4社のアプリケーションソフトウェア、3社の広告・マーケティング、それぞれ2社のオンライン専門小売、ITサービス、専門職サービスがある。

【東証マザーズ指数の騰落率上位~インターネットメディア関連などが並ぶ】

 

■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー

10/19号「金融政策は軒並み据え置き」

アセアン市場の景気は、新型コロナの拡大が一服している国が多いことから、アセアン各国中央銀行の金融政策もこれまでの金融緩和から据え置きにシフトし始めた。10/13にインドネシア中銀が4.0%に据え置いたのに続き、10/14にシンガポール通貨庁が通貨政策の据え置きを決定した。先月も9/10にマレーシア中銀が1.75%に、9/23にタイ中銀が0.5%に据え置きを決定した。IMFが10/13に発表した世界経済見通しによると、アセアン4市場にフィリピンを加えた「アセアン5」の2020年の経済成長率は前年比3.4%減だが、21年は同6.2%増に回復する見込みである。

金融機関は、政策金利引き下げにより純金利収益および純金利マージンが悪化の一途を辿っていたが、中銀による金融緩和の据え置きスタンスが継続すれば業績の回復が意識されよう。

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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