【投資戦略ウィークリー 2020年10月12日号(2020年10月9日作成)】”海外企業との提携・取引を成長エンジンとする企業”
■”海外企業との提携・取引を成長エンジンとする企業”
- 当ウィークリー2020年8月24日号(予想PER20倍の壁、米国企業との提携)にて、「短期的には、成長中の米国企業が現状の株価水準を維持できるのかが懸念されるなか、それらの企業と密接な関係を築いている日本企業は業績拡大のチャンスを得ている」と述べ、アマゾン・ドット・コム(AMZN)と提携したライフコーポレーション(8194)、セールスフォース・ドットコム(CRM)のコンサルティング・パートナーのテラスカイ(3915)、およびテスラ(TSLA)のEV向け電池の増産投資に係るパナソニック(6752)を挙げた。また、「銘柄ピックアップ」で台湾から中国大陸に進出した食品メーカー旺旺集団に出資・技術支援を行う岩塚製菓(2221)を取り上げた。
- その他にも、海外の有力企業との提携・取引を通じ、その技術や成長力を取り込もうとする日本企業が存在感を増しつつある。超純水製造装置を手掛ける野村マイクロ・サイエンス(6254)は韓国サムスン電子およびサムスン・エンジニアリング向けの売上比率を高めている。農機メーカーのクボタ(6326)は農機の自動運転に関し画像処理半導体や人工知能の技術に優れるエヌビディア(NVDA)と戦略的提携を発表。半導体製造装置のうちウエハ洗浄装置を手掛けるSCREENホールディングス(7735)は半導体ファウンドリー世界最大手の台湾電路積体製造/TSMC(TSM)から「Excellent performance賞」を受賞するほどの優良取引先と認められている。また、イビデン(4062)がインテル(INTC)向けのIC(集積回路)パッケージを主力とするほか、エレクトロニクス商社の菱洋エレクトロ(8068)もインテルほか外国製半導体の取扱いが多い。
- 半導体やIT関連の他にも海外企業との提携に活路を見出す日本企業が増えて来ている。段ボールを手掛けるレンゴー(3941)は、タイ素材大手のサイアム・セメント(SCC)との合弁会社を通じてベトナムの包装資材会社ビエン・ホア包装を買収する動きを見せている。また、楽天(4755)は、電子商取引サイト構築支援を手掛けるカナダのショッピファイ(SHOP)と楽天市場の販売チャネルほか幅広く提携している。
- 米国大統領選挙で民主党バイデン候補が現職のトランプ大統領をリードしていると伝えられている。当ウィークリー2020年8月31日号(コロナ禍の焦点は介護へ、政局相場も開始へ)で述べた通り、バイデン候補は育児・介護に10年間で83兆円相当の投資支出を行う経済対策を公約としており、CYBERDYNE(7779)をはじめとして高齢者介護の負担軽減に関連する銘柄が注目されよう。
- 10/12号では、ドーン(2303)、野村マイクロ・サイエンス(6254)、クボタ (6326)、都築電気(8157)、タイ・ベジタブル・オイル(TVO)を取り上げた。
■主な企業決算の予定
- 10月12日(月):AVANTIA、E・JHD、アレンザHD、インターアクション、エーアイテイー、コーナン商事、コスモス薬品、スタジオアリス、タマホーム、ホギメディカル、ヨンドシーHD、井筒屋、三光合成、進和、前澤工業、中本パックス、津田駒工業、東洋電機製造
- 10月13日(火): J.フロントリテイリング、MORESCO、PR Times、アークス、イズミ、ヴィッツ、オンリー、コシダカHD、ダイト、デザインワン・ジャパン、トレジャー・ファクトリー、パルグループHD、フィル・カンパニー、メディアドゥ、モリト、ライトオン、ラクト・ジャパン、ワッツ、古野電気、三機サービス、住江織物、東宝、東名、髙島屋、(米)シティグループ、ファスナル、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、ファースト・リパブリック・バンク、ブラックロック、デルタ航空、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー
- 10月14日(水): IDOM、JNSHD、SFOODS、SFPHD、いちご、エコス、エスケイジャパン、キャンドゥ、クリエイト・レストランツHD、コメダHD、サイゼリヤ、シュッピン、トランザクション、ハイアス・アンド・カンパニー、ハブ、リンガーハット、大庄、東天紅、(米)ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックス・グループ、ユナイテッドヘルス・グループ、プログレッシブ・コープ、USバンコープ、バンク・オブ・アメリカ、PNCファイナンシャル・サービシズ・グループ、ASMLホールディングス
- 10月15日(木): and factory、DDHD、Gunosy、MrMaxHD、RPAHD、システムインテグレータ、セラク、テラスカイ、ドトール・日レスHD、バロックジャパンリミテッド、ファーストリテイリング、ファーマライズHD、ブロンコビリー、ベイカレント・コンサルティング、ベクトル、ヨシムラ・フードHD、串カツ田中HD、佐鳥電機、三栄建築設計、松屋、松竹、日置電機、日本国土開発、北の達人コーポレーション、明光ネットワークジャパン、(米)インテュイティブサージカル、モルガン・スタンレー、トゥルイスト・ファイナンシャル、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス
- 10月16日(金): 理研ビタミン、(米)ステート・ストリート、JBハント・トランスポート・サービシズ、カンザスシティー・サザン、シュルンベルジェ、シチズンズ・フィナンシャル・グループ、VF、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン
■主要イベントの予定
- 10月12日(月)
・黒田日銀総裁が国際金融協会(IIF)の年次会合(オンライン形式)で講演
・銀行貸出動向(9月)、 国内企業物価指数(9月)、コア機械受注(8月)、工作機械受注(9月)
・米債券市場がコロンブスデーの祝日のため休場、米上院司法委員会がバレット最高裁判事候補の承認公聴会開始、IMF・世銀の年次総会(18日まで、バー チャル形式)、
・ノーベル経済学賞受賞者発表、英中銀総裁の講演
・中国経済全体のファイナンス規模、新規融資、マネーサプライ(9月、15日までに発表)
- 10月13日(火)
・カーボンリサイクル産学官国際会議(オンライン開催)、マネーストック(9月)
・IMF世界経済見通し (WEO)、インドネシア中銀が政策金利発表
・米アップルの製品発表イベ ント(オンライン)
・米CPI (9月)
・独CPI(9月)、独ZEW期待指数 (10月)、英ILO失業率(6-8月)
・中国貿易収支(9 月)
- 10月14日(水)
・鉱工業生産・設備稼働率(8月)
・G20財務相・中央銀行総裁会議(バーチャル形式)
・クラリダ米FRB副議長講演、ダラス連銀総裁とクオールズFRB副議長(銀行監督担当)講演
・韓国中銀が政策金利発表、シンガポール通貨庁が金融政策に関する声明、香港行政長官が施政方針演説、シンガポールGDP(3Q)
・米PPI(9月)
・ユーロ圏鉱工業生産(8月)
- 10月15日(木)
・対外・対内証券投資(10月4-10日)、 第3次産業活動指数 (8月)
・クオールズ米FRB副議長(銀行監督担当)の講演、ミネアポリス連銀総裁の講演、第2回大統領候補討論会(予定)、EU首脳会議(16日 まで)
・米新規失業保険申請件数 (10日終了週)、輸入物価指数 (9月)
・中国CPI・PPI(9月)
- 10月16日(金)
・アースインフィニティが 東証ジャスダックに新規上場
・米小売売上高 (9月)、企業在庫 (8月)、ミシガン大学消費者マインド指数(10月)
・欧州新車販売台数 (9月)、ユーロ圏CPI(9月)
- 10月18日(日)
・黒田日銀総裁がG30主催のセミナー(オンライン形式)に参加
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■米国の雇用回復傾向は続くのか?
9月の米国雇用統計は、失業率が前月比0.5ポイント低下の7.9%となり、市場予想(8.2%)を下回る改善となった。失業保険継続受給者数も9/18時点で5月上旬の水準から半分以下に減少するなど、雇用の回復が順調に進んでいるように見える。その一方、新規失業保険請求件数は8/28から5週間、80万人台で足踏みが続き減少ペースの鈍化が見られるほか、労働参加率も9月が前月比0.3ポイント低下するなど伸び悩みが見られる。
7月末で連邦政府による失業保険上乗せ給付が失効したことを受け、8月の個人所得は前月比2.7%低下。7月までは雇用が増えなくても消費が落ち込まずに景気が維持される面もあったが、8月以降の雇用伸び悩みは消費の低迷を通じて米国経済への下押し要因となろう。
【米国の雇用回復傾向は続くのか?~追加経済対策の協議は先送りの模様】
■アセアン市場の主な増益予想銘柄
アセアン4市場(シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア)における当社取扱い銘柄に関し、今年6月期決算の純利益または調整後利益が前年同期比プラス、かつ、9月末時点の当期利益市場予想が増益となったのは6企業だった。巣篭もり消費の追い風を受けた加工食品、バイオディーゼル促進政策の恩恵を受けてパーム油の国際相場が堅調に推移した農産物、コロナ禍からの経済改善が順調に進む中国の需要拡大が高級車販売に寄与した自動車卸売、テレワーク普及に伴うデータ通信量増加の恩恵を受けた通信事業者が名を連ねた。
増益基調であっても年初来株価騰落率がマイナスとなっている銘柄がある。これはアセアン市場全体の株価出遅れの影響を受けている面も大きいだろう。
【アセアン市場の主な増益予想銘柄~食品・農業関連の業績が堅調に推移】
■日経平均株価のダイバージェンス
日経平均株価に関し、過去14日間における終値の上げ幅(前日比)の合計と下げ幅(同)の合計を足した値に対する上げ幅(同)の合計の比率(%)であるRSI(相対力指数)は、6/8に80まで上昇後、低下または横ばい傾向にある。その一方、日経平均株価終値は6/8の23,178円を超え、10/8に23,700円を超えるまで上昇。テクニカル分析上はこれをダイバージェンス(逆行現象)と言い、相場転換を示唆する場合が多く見られる。昨年11月から今年1月頃の期間も同様のダイバージェンスが発生していたことが分かる。
6月上旬の価格を超えて推移する日経平均株価と比べると、東証1部の騰落レシオや空売り比率といった指標は6月上旬ほど過熱感を示していない。この点も逆行現象の表れとして要注意だろう。
【日経平均株価のダイバージェンス~RSI、騰落レシオ、空売り比率に要注意】
■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー
(10/12号「エアアジア・グループの動向」)
10/5、格安航空会社(LCC)で愛知県常滑市に拠点があるエアアジア・ジャパンが12/5で前4路線を廃止すると発表。同社は中部国際空港を本拠地にする唯一の航空会社で、2011年にマレーシア本社のエアアジア・グループ(AAGB)が全日空と合弁して発足後、13年の提携解消で一度日本から撤退。その後で14年に楽天(4755)などから共同出資を受けて再参入していた。
エア・アジア・グループの2020/12通期会社計画では総費用を前年同期比50%減と見込んでいる。同社はデジタルと物流に注力しており、デジタル部門(エアアジア・デジタル)の2020/12期1H(1-6月)収入は「airasia.com」プラットフォームが前年同期比2.4倍、フィンテックのBigPayが同11%増と堅調に推移。また、物流を手掛けるTeleportは医療支援や重要援助物資の運搬が伸びた。
- 上場有価証券等のお取引の手数料は、国内株式の場合は約定代金に対して上限1.265%(消費税込)(ただし、最低手数料2,200円(消費税込)、外国取引の場合は円換算後の現地約定代金(円換算後の現地約定代金とは、現地における約定代金を当社が定める適用為替レートにより円に換算した金額をいいます。)の最大1.10%(消費税込)(ただし、対面販売の場合、3,300円に満たない場合は3,300円、コールセンターの場合、1,980円に満たない場合は1,980円)となります。
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。