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【投資戦略ウィークリー 2020年10月5日号(2020年10月2日作成)】”スガノミクス三本の矢と10/5週の注目点”

 

■”スガノミクス三本の矢と10/5週の注目点”

  •  菅政権は年内にも追加経済対策を策定する調整に入り、衆院解散・総選挙が年明け以降との見方が広がってきた。10/1に発表された9月の日銀短観で、大企業製造業の業況判断指数(DI)は6月調査比7ポイント上昇のマイナス27と2年9か月ぶりに改善、サービス業に係る大企業非製造業でも同5ポイント上昇のマイナス12と1年3ヵ月ぶりの改善となったものの、欧州では新型コロナウイルス感染者数の再拡大により都市封鎖などの規制再強化が検討され、日本でも感染再拡大の不安が拭えない状況であることから、感染防止と経済立て直しを優先する方針と見られる。
  •  「解散総選挙は買い」というスタンスから日本株を買ってきた市場参加者が短期的に売りに転じる場合も考えられるが、来年に向けて菅首相が高支持率を背景とした政策実現を期待する相場展開となるのではないだろうか。菅首相の政策は「スガノミクス三本の矢」として、①携帯電話料金の引き下げ、②地銀再編、③デジタル庁創設(デジタル化)の3点を挙げることができよう。
  •  携帯電話料金の引き下げに関し、菅首相が官房長官時代から「携帯料金を4割下げる余地がある」と通信業界に圧力をかけてきたなか、NTT9432が政府の意向を無視できないとして、値下げに消極的だったNTTドコモ9437の完全子会社化に踏み切った面も大きく、既に実績を上げつつある。地銀再編に関しても、11/27より地域のバス会社と金融機関を対象にした独禁法の特例法が施行される。2021年中の創設を目指すデジタル庁に関し、9/30にデジタル改革関連法案準備室が設置され、河野行革相から「脱はんこ」が唱えられるなど、「三本の矢」は既に放たれた感がある。地銀再編やデジタル化のためにはシステム・ベンダーの力が必要であり、株式市場においても物色の柱として注目されよう。
  •  10/5からはノーベル賞の各省受賞者が発表される。有害な中性子を排出しない熱核融合技術、全固体電池、および空間伝送型ワイヤレス給電などエネルギーや電力に係る最先端技術が注目される契機となるかも知れない。医薬品関連も目が離せないだろう。
  •  NTTドコモの完全子会社は、子会社利益を企業グループ内に留める目的や中長期的な経営改革の観点から親子上場解消が一層加速することを市場参加者に示唆した面もある。10/7-8には、親子上場企業の数が多いイオン(8267のグループ会社各社の決算発表が控えている。また、10/9に安川電機6506の中間決算発表が予定されている。次世代インフラ建設を柱に回復の中国経済の恩恵がどの程度及んでいるのかを見極めたいところだ。
  • 10/5号では、ソルクシーズ(4284)、ラウンドワン(4680)、フューチャー (4722)、丸文(7537)、CPオール(CPALL)を取り上げた。

 

■主な企業決算の予定

  • 105日(月): トーセイ、マルカキカイ、毎日コムネット、ウェザーニューズ、クリエイトSDHD、フジ、薬王堂HD
  • 106日(火): 東海ソフト、サンエー、日本BS放送、三陽商会、アルテック、三協立山、ペイチェックス
  • 107日(水)イオンディライト、イオンファンタジー、イオンフィナンシャルサービス、ウエルシアHD、サーラコーポレーション、トーセ、ファーストブラザーズ、ファミリーマート、壱番屋、ラム・ウェストン・HD
  • 108日(木):SHIFT、イオン、エコートレーディング、キャリアリンク、セブン&アイ・HD、ダイコー通産、ベルク、ポプラ、マルマエ、リソー教育、ローソン、久光製薬、乃村工藝社、北興化学工業、良品計画、ドミノ・ピザ
  • 109日(金): イワキ、エストラスト、オーエスジー、オンワードHD、キリン堂HD、サカタのタネ、ジンズHD、セントラル警備保障、タキヒヨー、ナルミヤ・インターナショナル、ファーストコーポレーション、プレナス、マニー、ヤマザワ、ヤマトインターナショナル、ライフコーポレーション、リテールパートナーズ、ローツェ、ワキタ、安川電機、柿安本店、技研製作所、吉野家HD、黒谷、小津産業、竹内製作所、島忠、東京個別指導学院、日本フイルコン、日本毛織

 

主要イベントの予定

  • 105日(月)

・ダイレクトマーケティングミックスが東証1部に新規 上場

・全国証券大会(麻生財務相、黒田日銀総裁らがあいさつ)

  • 貸出先別貸出金法人 (8月)、じ ぶん銀行 日本PMIサービス・コンポジット業 (9月)

・米シカゴ連銀総裁の講演、アトランタ連銀総裁の講演

中国休場 (国慶節、8日まで)ノーベル医学生理学賞受賞者発表

ISM非製造業総合景況指数 (9月)

・ユーロ圏総合・サービス業PMI (9月)、ユーロ圏小売売上高 (8月)

 

  • 106日(火)

・日米豪印の4カ国外相会合

パウエルFRB議長の講演、フィラデルフィア連銀総裁・米ダラス連銀総裁が講演・討論

・ラガルドECB総裁がパネル討論会に参加、豪中銀が政策金利発表

ノーベル物理学賞受賞者発表

 

  • 107日(水)

・外貨準備高 (9月)、景気先行CI指数 ・景気一致指数 (8月)

FOMC議事要旨(9月1516日開催分)

・米ニューヨーク・シカゴ・アトランタ・ミネアポリ ス・ボストン各連銀総裁も講演

米副大統領候補討論会(ユタ州ソルトレークシティー)

・ラガルドECB総裁の講演

ノーベル化学賞受賞者発表

IOC(国際オリンピック委員会)理事会(ロ ーザンヌ)

・米消費者信用残高 (8月)、独鉱工業生産 (8月)、中国外貨準備高 (9月)

 

  • 108日(木)

・日銀支店長会議で黒田総裁あいさつ、地域経済報告(さくらリポ ート、10月)を公表

・対外・対内証券投資 (9月27日 -10月3日)、 経常収支・貿易収支 (8月)、東京オフィス空室率 (9月)、 景気ウォッチャー調査 現状判断・先行き判断 (9月)

・ECB議事要旨、英中銀総裁がパネル討論会に参加

・ノーベル文学賞受賞者発表

・OPECの世界石油見通し(WOO)

・米新規失業保険申請件数 (3日終了週)

・独貿易収支 (8 月)、中国財新サービス業・コンポジットPMI (9月)

 

  • 109日(金)

毎月勤労統計 (8月)

・ノー ベル平和賞受賞者発表

  • 米卸売在庫 (8月)

 

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

 

米株式市場と債券市場の変動率

米国を代表する株価指数であるS&P500を対象とするオプション取引の値動きの変動率を元に算出・公表されるVIX指数は投資家心理を示す数値として「恐怖指数」と呼ばれている。コロナ禍前の今年2月までは20%を下回って推移していたが、感染拡大に伴う不安心理の増幅とともに3月中旬に80%を超えた後に低下傾向を辿ったものの、8月中旬に約21%まで低下後に上昇に転じた。

米国債にも、先行き変動リスクを示す債券版恐怖指数として、バンク・オ・アメリカ・メリルリンチが算出・公表する「MOVE指数」がある。MOVE指数もVIX指数と同様に3月に急騰した後に低下傾向を辿ったが、VIX指数と異なり、今夏以降も引き続き低下。市場では米国債のボラティリティ縮小が続くと見られている模様だ。

【米株式市場と債券市場の変動率~株価指数と比べて債券は低下傾向】

 

■原油の需給動向

米エネルギー情報局(EIA)が9/30に発表した週間石油統計では、ガソリン在庫が68万バレル増だったものの、原油在庫が198万バレル減、留出油在庫が318万バレル減と需給面で好転の兆しが見受けられた。原油在庫は3週連続の減少となり、ガソリン在庫も4月以降は減少傾向だ。その一方、掘削装置の稼働リグ数や原油生産量はここ数ヵ月では横ばい傾向で推移している。

需給面では、9/17に「OPECプラス」が開催した共同閣僚監視委員会が一部の国に対し5-7月の過剰生産を相殺するための減産強化を要求したのはプラスだが、EUが温暖化ガスの排出量削減目標を引き上げたり、米カリフォルニア州で2035年までにガソリン車販売を禁止する規制を発表したのはマイナスと言えよう。

【原油の需給動向~原油在庫減少も稼働リグ数削減・生産量減少に一服感】

 

■日米主要住宅メーカーの相対株価

米住宅市場は、住宅ローン金利の歴史的低さに加え、コロナ禍で在宅勤務が増えたことから都市部から離れた郊外の戸建て住宅への需要が高まっている。新築住宅一戸建て販売件数の伸びに伴い、レナーLENDRホートンDHIトールブラザースTOLKBホームKBHといった米主要住宅会社の株価も堅調に推移している。。

日本の住宅市場は、昨年10月の消費税引上げ前の駆け込み需要の反動減により新設住宅着工件数の前年同月比がマイナスで推移しているが、米国と同様のテレワーク需要、および都心のマンションと比べて割安であることから戸建て住宅の受注が伸びている。株価の値上がり率が米住宅会社に劣らない日本の住宅会社も出始めた。今後が注目されよう。

【日米主要住宅会社の相対株価~一部の日本企業は米国企業を上回る】

 

 

■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー

10/2号「アセアンは親子上場が進む」

タイ素材大手のサイアム・セメント・グループ(SCG)の子会社で段ボールなどの包装資材を製造するSCGパッケージングが今月10月上場の予定。同社はタイ・インドネシア・ベトナム・フィリピン4ヵ国で段ボールの合計販売シェアが3割に達する。ネット通販の普及により食品・日用品向けに使い捨てのできる包装資材の需要が高まるなか、外部から資金を調達して海外を中心にM&Aや既存工場の拡張に充てることが主な目的だ。また、シンガポールの食品・アグリビジネス大手のオラム・インターナショナル(OLAM)は、多くの事業セグメントを香辛料などの「原材料部門」と、穀物や資料などの「農業部門」に分割する社内再編を実施した。同社CEOは、この2部門を3年以内に上場する計画を示した上で、分社化によって隠れた価値を顕在化させることが狙いだと説明した。

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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