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【投資戦略ウィークリー 2020年8月31日号(2020年8月28日)】”コロナ禍の焦点は介護へ、政局相場も開始へ”

 

■”コロナ禍の焦点は介護へ、政局相場も開始へ”

  •  28日午後2時過ぎ、安倍首相が健康問題を理由に辞任の意向を固めたとの速報が流れ、日経平均株価が取引時間中に前日終値比614円安の22,594円まで瞬間的に下落。当ウィークリー2020年8月17号「動き出す政局、求められる経済対策」で述べた通り、政局相場の幕が切って下ろされたと言えよう。
  •  まず、今の党役員の任期が来月9月末に切れることを見据え、安倍首相・自民党総裁が来月9月に内閣改造・党役員人事に踏み切る可能性が高いと見られていたなか、首相辞任により先行きが読みにくくなっている。日本株投資との観点では、米中摩擦が激化する国際情勢に対応するため、次の内閣主要ポストや党幹事長人事などを通じて日本政府が米国との関係を強化することで反中国の立場をより鮮明にするのかどうかが注目される。5G通信に関し米国主導で中国ファーウエイ外しが世界的に強まる情勢下、NTT9432と資本業務提携したNEC6701、および富士通6702といった旧電電ファミリーが次世代5G通信ネットワーク関連において海外でのプレゼンスを強める契機となる可能性もあろう。
  •  次に、本日28日の午後5時より安倍首相が新型コロナウイルス感染症対策パッケージを発表する予定であり、パッケージの内容に、感染拡大地域の医療機関や高齢者施設の全職員に対し定期的な一斉検査を実施することが含まれていると伝えられた。重症化リスクが高いと見られる高齢者を抱える施設では介護職員への負担が増すものと考えられるなか、3年ごとに改定される介護報酬の2021年改定に向けて今夏以降に大詰めの議論が始まった。その中で、介護ロボットが現場の人手不足を補い、職員の負担を軽くする存在として注目されており、厚生労働省は「パワーアシストスーツ」などの介護ロボットを公的保険制度の適用対象にする検討を始めた。米国でもバイデン民主党大統領候補が育児・介護に10年間で83兆円相当の投資支出を行う経済対策を発表。高齢者介護の負担軽減が世界的に重要な課題として意識されよう。
  •  9/11は日経平均株価の先物取引・オプション取引に係るSQ(エスキュー:特別清算指数のこと)日であり、最終売買日までに決済されなかった建玉はその翌営業日(SQ日)にSQ値で決済される。3の倍数の月のSQ日はMSQ(メジャーSQ)日と呼ばれる。今年3月のMSQ日直前2週間はコロナ禍による株価急落局面、6月のMSQ日直前2週間は緊急事態宣言解消に伴う上昇局面だった。9月のMSQ日直前2週間の株価のボラティリティ上昇に要注意だろう。
  • 8/31号では、日鉄ソリューションズ(2327)、はごろもフーズ(2831)、東光高岳(6617)、CYBERDYNE(7779)、サイアム・セメント(SCC)を取り上げた。

■主な企業決算の予定

  • 831日(月): イトーキ、サンリツ、パイオラックス、マクロミル、日本工営、菱洋エレクトロZoom Video Communications Inc
  • 91日(火):H&Rブロック
  • 92日(水): スカパーJSATホールディングス、PVH、コパート、ブラウン・フォーマン
  • 93日(木): 泉州電業、クーパー、ドキュサイン、ブロードコム、キャンベルスープ
  • 94日(金): モロゾフ、カナモト

 

主要イベントの予定

  • 831日(月)

小売売上高(7)、鉱工業生産(7)、百貨店・スーパー売上高(7)、貸出先別貸出金法人(7月)、自動車生産台数(6月)、住宅着工戸数(7)、建設工事受注(7月)、消費者態度指数 (8月)

・クラリダ米FRB副議長がバーチャル討論会に参加、米アトランタ連銀総裁が講演(バーチャル 形式)、アゼベドWTO事務局長が退任、英休場(バンクホリデー)

・独 CPI (8月)

中国製造業・非製造業PMI (8)、インドGDP (2Q)

 

  • 91日(火)

・完全失業率 (7月)、有効求人倍率 (7月)、設備投資(2Q)、じぶん銀行日本PMI製造業 (8月)、自動車販売台数(8月)

・豪中銀が政策金利発表、ブラジ ルGDP (2Q)

・ブレイナ ード米FRB理事がバーチャル討論会に参加

・米自動車販売 (8月)、ISM製造業景況指数 (8)、米建設支出 (7月)

ユーロ圏製造業PMI (8)、CPI (8月)、失業率 (7月)、独失業率 (8月)

中国財新製造業PMI (8)、韓国GDP (2Q)

 

  • 92日(水)

・日銀の若田部副総裁が佐賀県金融経済懇談会であいさつ ・ 記者会見(オンライン形式)、マネタリーベース (8月)

・米クリーブランド連銀総裁が講演(バーチャル形式)、米地区連銀経済報告 (ベージュブック)

・米ADP雇用統計 (8)、米製造業受注 (7月)

・ユーロ圏PPI (7月)、豪GDP (2Q)

 

  • 93日(木)

・日銀の片岡審議委員が沖縄県金融経済懇談会であいさつ・記者会見(オンライン形式)、対外・ 対内証券投資(8月23-29日)、じぶん銀行日本PMIサービス業・コンポジット (8月)

・米シカゴ連銀総裁が講演(オンライン)、独家電見本市「IFA」(ベ ルリン、5日まで)

米新規失業保険申請件数 (29日終 了週)、米貿易収支 (7月)、ISM非製造業総合景況指数 (8)

ユーロ 圏総合・サービス業PMI (8)、ユーロ圏小売売上高 (7月)

中国財新 サービス業・コンポジットPMI (8)

 

  • 94日(金)

米雇用統計 (8)

・独製造業受注 (7月)

 

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

 

ダウ平均株価の銘柄入替えの影響

ダウ平均株価は30銘柄の株価を合計して除数で割る方法で平均の株価を算出するため、1対4の株式分割により8/31に権利落ちとなるアップルAAPLのダウ平均への寄与度の低下が見込まれるなか、構成銘柄の入替えが発表された。

石油のエクソンモービルXOMや資本財のレイセオン・テクノロジーズRTXが外され、情報技術のセールスフォース・ドットコムCRMやバイオテクノロジーのアムジェンAMGNが追加されたことにより、景気動向に左右されずに成長を見込める業種の割合が高まったため、ナスダックの動きと類似してくるかもしれない。また、「分割考慮後のアップルと新規3銘柄の株価合計」と「分割前のアップルと除外3銘柄の株価合計」との比率が1.0倍に近づきつつある点も興味深い。

【ダウ平均株価の銘柄入替えの影響~アップルの株式分割と併せて考慮】

 

■欧州の温暖化ガス排出権取引

7月上旬のEUの委員会で温暖化ガス排出削減目標を90年比40%減から50-55%に引き上げる方向が示され、温暖化ガス排出権の発行枠縮小の観測からロンドン市場の先物価格が14年ぶりの高値を付けた。EUでは排出量取引制度について航空や海運に対象を拡げ、9月からスイスの制度と連携する予定である。

米電気自動車のテスラTSLAが2020年4-6月期の純利益が1.04億USDと4四半期連続の黒字を達成。その中で温暖化ガス排出権(クレジット)の売却益が純利益を上回る4.28億USDに上った。同排出権取引については、排出権の発行枠縮小による供給減が価格上昇をもたらす可能性、および排出権取引制度の対象拡大による市場参加者の拡大が見込まれ、資産価値の高まりが見込まれよう。

【欧州の温暖化ガス排出権取引~温暖化対策強化により排出権が高値圏へ】

■中国の5G関連「新基建」投資

中国の経済対策で①5Gネットワーク、②超高圧(UHV)送電、③都市間高速鉄道・鉄道交通、④新エネルギー自動車・充電ホール、⑤ビッグデータセンター、⑥人工知能、⑦製造業インターネットの7つの新分野へのインフラ整備を「新基建」と称し、官民で2025年まで6年間で総額10兆元に上る投資が見込まれている。

5G関連の新設基地局数は2022年に向けて増加する見通しを中国の調査研究機関が示すなど中国経済は「新基建」を原動力に中期的に拡大基調を辿る可能性もある。既に公共工事が本格化し、1-7月累計の固定資産投資は前年同期比▲1.6%減まで回復。7月の中国の日本からの鉄鋼輸入量が前年同月比3倍となり、鉄鋼大手の東京製鐵(5423)は10年ぶりに中国に鋼材の輸出を再開した。

【中国の5G関連「新基建」投資~中国の景気回復を支える原動力へ】

■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー

8/31号「インドネシアとマレーシア」

インドネシアでは、政府が金融サービスの強化を政策目標に掲げているなか、資産形成の一環として中間層を中心に証券取引の需要が高まっており、2014年に36万だった証券口座数が直近に300万を超えた。その一方、信用取引ができる銘柄数が2020年6月に155銘柄に過ぎず、個人投資家の裾野を広げて市場をもっと厚くするために、インドネシア政府は日本証券金融8511によるインドネシア証券取引所グループの金融子会社への1割出資を受け入れることとした。

シンガポールやタイと比較してマレーシアの株価指数は堅調に推移している。その大きな牽引役がトップ・グルーブやハルタレガといったゴム手袋メーカーである。マレーシアが2019年のゴム手袋生産の世界シェアで67%を占めるなか、医療現場で使うゴム手袋への需要が急増している。

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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