【投資戦略ウィークリー 2020年6月22日号(2020年6月19日作成)】”7月末の移行期間終了に向けて上昇気運か?”
■7月末の移行期間終了に向けて上昇気運か?”
- 6/19から、政府が新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために自粛を求めてきた都道府県境を跨ぐ移動が全面解除され、イベント開催制限も最大入場者数が100人から1,000人規模に拡大される。無観客ではあるが同日にプロ野球も開幕を迎える。政府が5/25に改定した基本的対処方針では、7/31までを移行期間として設定し、状況が落ち着いていれば7/10にも社会経済の活動水準を更に次の段階に引き上げるなど段階を踏んで「新しい生活様式」の定着を図りながら移動の自粛を緩和していくとされている。
- 順調に移動自粛の緩和へと歩みを進める実体経済とは対照的に、日本株式市場では、米国で早い段階で経済再開に踏み切った一部の州を中心に新型コロナウイルス感染者数が増えて第2波への警戒が強まった流れを受け、週明け6/15の日経平均株価終値が前日比774円安の21,530円と波乱の展開となった。その後、米FRBや日銀の追加金融緩和が好感されて6/16終値が同1,051円高の22,582円となったが、変動性が高い荒れた相場展開という印象が強く残った週だったと言えよう。
- それでも、7月末の移行期間終了予定に向け、日本の経済・社会は着実に前進していくと考えられる。株式市場では、6/12基準で日経平均の現物と先物の裁定取引に係る売り残合計が1兆9,358億円、買い残合計が2,853億円と差引きでの大幅な売り残超過であり、移行期間が順当に進展すれば売りポジションの買戻しによる相場上昇の期待が高まりやすい展開が予想されよう。
- 6/19以降には国内の出張を許可する企業が増えることが予想され、日本航空(9201)は国内線需要について7月前半は前年同期比約40%、後半は同約50%まで回復すると見込み、全日本空輸(9202)は7月の運航数を当初計画の約49%の水準に引き上げる予定だ。また、海外との出入国制限についても、7月にベトナムやタイを対象に、出入国時のPCR検査を条件に、ビジネス目的に限り出入国の制限を緩めることを政府が決定した。経済活動の本格的再開に向けて感染の懸念を持たずに活動できるようにするため、国内外の出張が多いビジネスパーソンを中心にPCR検査や抗体検査の需要が高まることが予想される。また、7月下旬からコロナ禍で経済的に打撃を受けた観光業や飲食業、イベント・娯楽事業などを支援し、需要を喚起するための「Go To キャンペーン事業」による支援が開始される予定。夏場に向けて株式市場でも上記の業種の業績改善を期待する展開が見られるのかも知れない。
- 6/22号では、星野リゾート・リート投資法人(3287)、みらかホールディングス(4544)、文化シャッター(5930)、日立製作所(6501)、バンコク・エクスプレスウエイ・アンド・メトロ(BEM)を取り上げた。
■主な企業決算の予定
- 6月22日(月): ツルハホールディングス、岩崎通信機、パイオラックス
- 6月23日(火): チムニー、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、IHSマークイット
- 6月24日(水): ナイガイ、やまや、新田ゼラチン、エイチ・アイ・エス
- 6月25日(木): スバル興業、スカパーJSATホールディングス、ナイキ、アクセンチュア、マコーミック、ダーデン・レストランツ
- 6月26日(金): ヴィア・ホールディングス
■主要イベントの予定
- 6月22日(月)
・財務省による国の債務管理の在り方に関する懇談会、コンビニエンスストア売上高 (5月)
・米ロが核軍縮で高官協議(ウィーン)
・米アップルの世界開発者会議(WWDC、26日まで)
・ASEAN首脳会議・関連会合 (ダナン、30日まで)
・米中古住宅販売件数 (5月)
・ユー ロ圏消費者信頼感指数 (6月)
- 6月23日(火)
・じぶん銀行日本PMI製造業・サービス業・コンポジット(6月)、スーパーマーケット売上高(5月)、全国百貨店売上高(5月)、東京地区百貨店売上高(5月)、工作機械受注 (5月)
・米ボルトン前大統領補佐 官(国家安全保障担当)のホワイトハウス回顧録が発売予定
・米新築住宅販売件数 (5月)、マークイット製造業・サービス業・ コンポジットPMI (6月)
・ユーロ圏製造業・サービス業・総合PMI (6月)
- 6月24日(水)
・日銀金融政策決定会合における主な意見(15・16日分)
・フィーチャ、ロコガイド、コパ・コーポレーション、東 証マザーズに新規上場
・企業向 けサービス価格指数 (5月)、景気先行CI指数 ・一致指数 (4月)
・米シカゴ連銀総裁と米セントルイス連銀総裁がオンライン討論会に参加
・NZ中銀が政策金利発表、タイ中銀が政策金利発表
・国際通貨基金 (IMF)の経済見通し
・米FHFA住宅価格指数 (4 月)
・独IFO企業景況感指数 (6月)
- 6月25日(木)
・資金循環統計(1-3月期)、対外・対内証券投資 (6月14-20日)、全産業活動指数(4月)
・米FRBが大手金融機関のストレステスト結果発表
・フィリピン中銀が政策金利発表
・朝鮮戦争勃発から70年、中国休場 (端午節、26日まで)、香港休場 (端午節)
・米新規失業保険申請件数 (20日終了週)、耐久財受注 (5 月)、GDP (1Q 確定値)
- 6月26日(金)
・コマースOneホールディングスが東証マザーズに新規上場
・東京CPI(6月)
・中国休場(端午節)
・米個人所得・支出 (5月)、ミシガン大学消費者マインド指数 (6月 確定値)
・ユーロ圏マネーサプライ (5月)
- 6月28日(日)
・中国工業利益 (5月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■米国のCOVID-19「第2波」
株式市場では米国における新型コロナウイルス感染に係る「第2波」のリスクが意識され、株価の変動性が高まっている。特に米国の中でも人口上位3州の新規感染者数が6月以降に増加に転じている。カリフォルニア州は5/8に外出規制の緩和を実施し、テキサス州やフロリダ州はトランプ政権が経済活動再開を段階的に認める新指針を発表した4/16の翌日に店舗の営業再開を表明した。早い時期に規制緩和に踏み切った州の感染拡大が6月以降に目立ってきている。
その一方、4月まで新規感染者数が全米最大だったニューヨーク州は経済再開を慎重に進めてきたことが奏功し、5月に続き6月以降も感染拡大ペースが減速している。カリフォルニア州、テキサス州、フロリダ州の動向が重要だろう。
【米国のCOVID-19「第2波」~人口上位3州で感染者拡大、ニューヨーク州は減少】
■世界のCOVID-19「第2波」
新型コロナウイルス感染拡大「第2波」に係る世界的な状況は、アジアでは北京で6/16の新規感染者が31名に上り北京市政府が「戦時状態」を宣言したが、中国全体では44名であり、日本や韓国と同水準である。インドネシアで6月以降に感染拡大ペースが加速しているのを除けば、アジアは落ち着きつつある。欧州についてもイギリスやイタリアは新規感染者の拡大ペースが減速傾向にある。
その一方、イランが6/10から新規感染者数が増加に転じ、米国は5月中旬以降のピーク水準である25,000人近辺に再び近づいた。ブラジルは6/16に新規感染者数で過去最多を更新。景気刺激のため6/17に政策金利を0.75%引き下げて年2.25%としたが、利下げによる通貨レアル下落の加速リスクが懸念されよう。
【世界のCOVID-19「第2波」~落ち着くアジア、懸念が残る米国・南米・中東】
■ソニーと任天堂の株価上昇率格差
ソニー(6758)と任天堂(7974)は長年ゲーム市場で覇権を争い、株価の騰落においても2007年まで上昇後に2012年まで下落し、その後で上昇傾向に転じるなど類似した動きを示してきた。ところが、2012年以降の株価上昇局面ではソニーが任天堂に対し先行している。これはソニーが事業の選択と集中を徹底したほか、ゲーム事業でネットワーク利用の定額の継続課金システムを導入し、ゲーム機の人気に影響されにくい収益源を確立した点も大きな要因と考えられる。
任天堂も2018/9に任天堂スイッチ・オンラインの定額課金を導入。低年齢の顧客層を意識してソニーより低価格での料金設定だが、その分、より多くのユーザーへの普及が見込まれる。ソニーとの株価上昇率格差の縮小も期待されよう。
【ソニーと任天堂の株価上昇率格差~ゲームネットワークの定額課金がポイント】
■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー
(6/22号「経済活動再開に向けた動き」)
・マレーシアでは、3/18に発動の活動制限令が5/4に条件付き活動制限令(CMCO)に移行された後、6/9に8月末までの適用期間で学校を含むほとんど全ての経済・社会活動を正常化する「回復期(回復活動制限令)」に移行した。ただ、国民の海外渡航と外国人の入国は原則禁止が続き、娯楽施設などの営業も禁止措置を継続するとされた。ゲンティン・マレーシア(GENM)のような統合リゾート(IR)運営企業にとっては、9月以降の施設運営の正常化が期待されよう。
・タイでは、6月末まで非常事態宣言が延長されるなか、7月以降に外国人の入国が認められる可能性が出てきている。バンコク・ドゥシット・メディカル・サービス(BDMS)が牽引する「医療ツーリズム」の回復には中東や中国などの外国人富裕層の入国が認められることが必要不可欠だろう。
- 上場有価証券等のお取引の手数料は、国内株式の場合は約定代金に対して上限1.265%(消費税込)(ただし、最低手数料2,200円(消費税込)、外国取引の場合は円換算後の現地約定代金(円換算後の現地約定代金とは、現地における約定代金を当社が定める適用為替レートにより円に換算した金額をいいます。)の最大1.10%(消費税込)(ただし、対面販売の場合、3,300円に満たない場合は3,300円、コールセンターの場合、1,980円に満たない場合は1,980円)となります。
- 上場有価証券等は、株式相場、金利水準等の変動による市場リスク、発行者等の業務や財産の状況等に変化が生じた場合の信用リスク、外国証券である場合には為替変動リスク等により損失が生じるおそれがあります。また新株予約権等が付された金融商品については、これらの権利を行使できる期間の制限等があります。
- 国内金融商品取引所もしくは店頭市場への上場が行われず、また国内において公募、売出しが行われていない外国株式等については、我が国の金融商品取引法に基づいた発行者による企業内容の開示は行われていません。
- 金融商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、お取引に際しては、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書又はお客様向け資料をよくお読みください。
免責事項
- この資料は、フィリップ証券株式会社(以下、「フィリップ証券」といいます。)が作成したものです。
- 実際の投資にあたっては、お客様ご自身の責任と判断においてお願いいたします。
- この資料に記載する情報は、フィリップ証券の内部で作成したか、フィリップ証券が正確且つ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性又は完全性を保証したものではありません。当該情報は作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況によって予告なく変更することがあります。この資料に記載する内容は将来の運用成果等を保証もしくは示唆するものではありません。
- この資料を入手された方は、フィリップ証券の事前の同意なく、全体または一部を複製したり、他に配布したりしないようお願いいたします。
アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。