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【投資戦略ウィークリー 2020年4月6日号(2020年4月3日作成)】”中堅企業の設備投資、小売販売額は堅調”

 

■中堅企業の設備投資、小売販売額は堅調

  •  日銀が4/1に発表した3月の日銀短観は、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)が前回から8ポイント悪化の▲8となる一方、全規模ベースの2020年度設備投資計画は前年度比4%減(製造業が同2.4%増、非製造業が同2.0%減)と底堅い内容だった。また、ソフトウェア・研究開発を含む設備投資額(除く土地投資額)は、全規模で同1.2%増、中堅企業に限れば同5.9%増だった。同調査の回答の7割が3/11までに集まったことから東京五輪の1年延期や東京都による週末の外出自粛の影響を十分に織り込んでいない面はあるものの、意外に堅調だったと言えよう。
  •  新型コロナウイルス感染拡大の影響により、企業が在宅勤務や一日おき交代出勤などの対応を迫られるなか、業務グループウェアのシステム構築が必要不可欠となっている。また、自宅で業務を行うためには通信ネットワーク回線の拡充や業務用パソコンの用意が必要になる場合もあろう。更に、飲食店では不特定多数の人々の間を転々流通する現金に手を触れずに支払い決済を済ませられるためのキャッシュレス決済対応、および予めスマートフォンアプリで注文した上で来店して時間をかけずに受け取って帰ることができるようなオペレーションも一層求められよう。資金繰りを考えれば設備投資を減少させたくても、事業を継続する上でやむを得ず設備投資を増やさざるを得ない中堅企業の悩ましさの一端が垣間見える内容だったと言えるだろうか。グループウェアやビデオ会議といったクラウドサービスなどのソフトウェア、パソコン販売やシステムセキュリティ関連企業、および通信ネットワーク回線工事に関連する企業などの事業機会拡大が見込まれよう。
  •  また、3/31発表の2月の商業販売動態統計によれば、商業販売額は百貨店が前年同月比8%減だった一方、小売業が同1.7%増、スーパーが同6.0%増、コンビニが同4.5%増と堅調に推移した。2020/2末にイベント自粛、学校休校要請が政府より打ち出されたことで、各種商品の買いだめに伴いマスクや除菌剤、トイレットペーパーの販売が急増したことが示された。特にドラッグストアは同18.9%増と好調だった。4/6以降に相次ぐ小売り関連企業の決算発表および2021/2期見通しが注目されよう。
  •  4/1以降も日銀のETF買入れが継続している。銘柄ごとの過去の平均売買代金に対してTOPIX型ETF買入れに伴う売買インパクトが大きいと考えられる銘柄は、3月後半のリバウンド率が高い場合が多かった。今後も同様の傾向が続く可能性があり、注目されよう。
  • 4/6号では、はごろもフーズ(2831)、テルモ(4543)、日本電気(6701)、C&Fロジホールディングス(9099)、ユナイテッド・トラクターズ(UNTR)を取り上げた。

 

■主な企業決算の予定

  • 4月6日(月):クリエイトSDHDS、薬王堂HDS、壱番屋、ウェザーニューズ、東海ソフト、薬王堂HDS、ニトリHDS、トーセイ
  • 4月7日(火):ディップ、スギHDS、三光合成、インテリックス、マニー
  • 4月8日(水):エービーシー・マート、サーラコーポレーション、ウエルシアHDS、フェリシモ、ベルシステム24HDS、GameWith、MS&Consulting、小津産業、サイゼリヤ、コジマ、タカキュー、日本BS放送
  • 4月9日(木):ファーストリテイリング、SHIFT、ライク、ローソンセブン&アイHDS、東京個別指導学院、日本毛織、ユナイテッドスーパーマーケットHDS、イオンモール、オオバ、ワッツ、大黒天物産、クリーク・アンド・リバー社、エスクロー・エージェント・ジャパン、島忠、トーセ、竹内製作所、MrMaxHD
  • 4月10日(金):明光ネットワークジャパン、パイプドHDS、ファーストコーポレーション、パソナグループ、黒谷、久光製薬、ジンズHDS、安川電機イオンフィナンシャルサービス、システムインテグレータ、わらべや日洋HDS、ジーフット、コシダカHDS、シー・ヴイ・エス・ベイエリア、Jフロントリテイリング

 

主要イベントの予定

  • 4月6日(月)

・松屋アールアンドディが東証マザーズに新規上場

・米FRBのストレステスト(健全性審査)、資本配分計画の提出期限

・独製造業受注 (2月)

 

  • 4月7日(火)

・毎月勤労統計-現金給与総額・実質賃金総額・家計支出 (2月)、外貨準備高 (3月)、景気先行CI指数・景気一致指数 (2)

・ユーロ圏財務相(ユーログループ)のビデオ会議、独鉱工業生産 (2月)

・米求人件数 (2月)、米消費者信用残高 (2月)

・中国外貨準備高 (3月)、豪中銀政策金利発表

 

  • 4月8日(水)

・国際収支:経常収支・貿易収支(2月)、コア機械受注(2月)、倒産件数(3)、景気ウォッチャー調査 現状判断・行き判断 (3)

・米FOMC議事要旨

 

  • 4月9日(木)

・日銀支店長会議(テレビ会議方式)、地域経済報告(さくらリポート、 4月)

・対外・対内証券投資 (3月29日-4月4 日)、東京オフィス空室率 (3)消費者態度指数 (3)、工作機械受注(3月)

・韓国中銀、政策金利発表

・米債券市場、午後2時までの短縮取引

米新規失業保険申請件数 (4日終了週)PPI (3)、米卸売在庫 (2月)、米ミシガン大学消費者マインド指数 (4月)

・独貿易収支 (2月)、英鉱工業生産 (2月)

 

  • 4月10日(金)

・貸出動向銀行計(3月)、国内企業物価指数(3月)

・グッドフライデー(聖金曜日)の祝日で欧米・香港市場休場

・北朝鮮の最高人民会議(平壌)

・米CPI (3)

・中国PPICPI (3)

 

  • 4月12日(日)

復活祭 (イースター)             

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

原油価格とドル円相場

NYMEXのWTI原油先物価格は1/8の高値1バレル65.65ドルから3/30の安値1バレル19.27ドルまで約70%下落。1バレル20ドルを下回るのは2002/2以来のことである。過去の原油先物価格の推移を見ると、2004/4頃まで1バレル10-40ドルのレンジ内で推移していた。2000年代前半以降の中国経済の成長が原油の需要および価格を強く押し上げたと見られる。

現在は新型コロナウイルスの影響で人や物の自由な移動が止まり、グローバル経済が機能しておらず、外需よりも消費などの内需の重要性が高まっている。原油安と円高が輸入コスト低下を通じて購買力を高め、内需に寄与することが日本経済にとって重要であろう。1980年代は原油安と円高が日本株相場を押し上げる要因だったことが思い起こされよう。

【原油価格とドル円相場~80年代は原油安と円高が日本株を押し上げへ】

 

■米国の原油関連統計

4/1に米シェール企業のホワイティング・ペトロリアムが米連邦破産法11条の適用を申請して経営破綻。原油相場下落に伴う経営悪化が原因と報じられた。生産コストの高い米シェール企業の経営改善には原油相場の回復が必要と考えられるなか、4/1に発表された週間在庫統計で米原油在庫が前週比1,380万バレル増と10週連続の増加となった。新型コロナウイルスの影響による外出禁止に伴う需要減からガソリン在庫も増加した。

供給面では、米国の掘削装置のリグ数は2018年末頃から既に減少傾向にある一方、原油生産量(日量)は、2016/8の844万バレルから一貫して増加傾向にあり、2020/3には1,310万バレルに達した。米国における原油生産量の減少が需給改善の鍵になると見込まれよう。

【米国の原油関連統計~稼働リグ数は減少、足元の在庫と生産量は増加】

 

■2番底への道筋に関する考察

日経平均株価は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて日足終値で3/19の16,552円まで下落後、3/25終値の19,546円まで上昇。その後、3月決算期末の3/31までは19,000円近辺の揉み合いで推移したが、4/1以降、18,000円近辺まで下落した。この動きが、リーマンショック時の急落局面から自律反発によるリバウンド上昇を経て2番底に向けた調整局面を連想させるとの声もある。

日経平均終値でリーマンショック後の2008/10における最安値(10/27の7,162円)、および2020/3における最安値(3/19の16,552円)を100として両日以降の終値を相対指数化して値動きを比較すると、3/19以降の上昇率は2008/10の最安値からの上昇率を下回って推移しており、力強さに欠ける面があろう。

2番底への道筋に関する考察~リーマンショック時よりも初動の戻りは鈍い】

 

■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー(4/6号「アセアンでの巣ごもり消費」)

新型コロナウイルスの封じ込めでアセアン各国が外出規制に踏み切るなか、タイのチャロン・ポカパン(CP)グループ傘下のCPオール(CPALL)はコンビニのセブンイレブンでスマホアプリから食品や日用品などを注文するサービスを伴う宅配を全国展開中。タイでは3/22からバンコク首都圏で食品スーパーとコンビニを除く商業施設、および外食店での営業休止が命じられ、宅配ニーズが高まっている。

タイ小売り大手セントラル・グループは百貨店を休業したが、テナントの外食店が宅配用商品を渡す専用スペースを開設し、バイク運転手が受け取って注文した顧客に届ける仕組みを構築している。また、シンガポールの配車大手グラブは配車サービスの運転手の飲食宅配へのシフトを進めている。料理宅配などの電子商取引向け事業の拡大が今後も一層進むと期待されよう。

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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