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【投資戦略ウィークリー 2020年3月16日号(2020年3月13日作成)】”大荒れ相場をどう見るか、どう乗り切るか”

 

■大荒れ相場をどう見るか、どう乗り切るか

  •  3/9週の日本株式市場は、日経平均株価が3/9の寄付き直後に20,347円を付けたものの、欧米の新型コロナウイルスの感染拡大報道とともに下げ足を強め、3/13にはトランプ大統領が大統領選挙に当選した2016/11以来の安値である16,600円台まで下落する大荒れの相場となった。特に3/12以降、トランプ大統領が発表した欧州(英国を除く)からの入国禁止措置および東京五輪の1年延期の提案などは日本株にも大きな影響を与えるものだった。日経平均は1/17の高値24,115円から3/13の安値まで2か月足らずで30%以上の下落率となった。古くは平成バブル崩壊後、1989年末の日経平均終値38,915円から1990/4第1週の安値27,251円まで3ヵ月で約30%下落したことに匹敵する動きと言えようか。当時は、1990/6の第1週まで約2ヶ月で33,344円まで上昇し、下げ幅のほぼ半値戻しを達成した。短期的に急激に相場が下落した後でレンジの範囲内の中心価格帯に回帰する「平均回帰(ミーン・リバージョン)」と言われる現象が起きやすいことは注目されよう。
  •  日経平均の加重平均PBR(株価純資産倍率)は3/12終値18,559円で89倍となっている、同日終値を基準とすれば、リーマンショック後の2009/3に付けた過去最低倍率の0.81倍に相当する日経平均株価は16,890円となる。欧米における新型ウイルスの感染拡大の状況にもよるが、きっかけ次第では下げ局面から反転して平均回帰の動きを示す可能性もあり得よう。トランプ大統領の欧州からの入国禁止措置発表の翌日、米国FRBは3/12レポ市場へ1兆5千億ドルの流動性資金を供給すること発表。それに加え、毎月購入する米国債の種類を短期国債だけでなく、長期国債にも拡大することとした。米国で新型ウイルス感染拡大に鈍化が見られれば、一気に金融市場が反応できるだけの準備は整っていると言えるかも知れない。中国の2020/2における感染者数推移では増加ペース拡大後およそ8日で伸びが鈍化していることが注目される。
  •  相場変動に対してデリバティブ取引を使うことで乗り切ろうとする投資家の動きも見られる。大阪取引所に上場している株価指数先物・オプション取引の商いが活況となっているが、東証に上場する現物取引のETF(上場投資信託)の中には日経平均などの株価指数と逆の価格の動きをするベア(インバース)型のETFもある。商品性を十分に理解したうえで、日経平均株価がある程度まで戻ったところで下げ相場に備えるヘッジ取引の目的でポートフォリオに加えることも検討の余地があろう。
  • 3/16号では、久光製薬(4530)、技研製作所(6289)、東芝テック(6588)、日本取引所グループ(8697)、マラヤン・バンキング(MAY)を取り上げた。

■主な企業決算の予定

  • 3月16日(月): エニグモ、モロゾフ、ツルハホールディングス、ユニデンホールディングス、天馬、稲葉製作所、ミサワ
  • 3月17日(火):クスリのアオキホールディングス 、フェデックス
  • 3月18日(水):ゼネラル・ミルズ
  • 3月19日(木): シンタス、アクセンチュア、ダーデン・レストランツ、レナー

 

主要イベントの予定

  • 3月16日(月)

・ミクリードが東証マザーズに新規上場

・コア機械受注(1月)

・ユーロ圏財務相会合、イングランド銀行総裁にアンドルー・ベイリー氏が就任

米ニューヨーク連銀製造業景況指数(3月)

・中国新築住宅価格(2月)、中国工業生産・小売売上高・都市部固定資産投資 (1-2)

 

  • 3月17日(火)

・ミアヘルサ、リビングプラットフォーム、ドラフトが東証マザーズに新規上場

・東京販売用マンション(2月)、鉱工業生産・設備稼働率(1月確報)

FOMC 18日まで)、米大統領選の予備選集中日(フロリダ、イリノイ州など)

・EU財務相理事会

・米小売売上高 (2)、米鉱工業生産 (2)、米企業在庫 (1月)、米NAHB住宅市場指数 (3月)、米求人件数 (1月)

・独ZEW期待指数 (3月)、英ILO失業率(11-1月)

 

  • 3月18日(水)

・Fast Fitness Japanが東証マザーズに新規上場、楽天が通販サイトでの送料無料化サービスを開始

・貿易収支(2月)、訪日外客数(2)

FOMC声明発表、議長記者会見と経済予測

・ブラジル中銀の政策金利発表

米住宅着工件数 (2)

・欧州新車販売台数 (2月)、ユーロ圏CPI (2月)

 

  • 3月19日(木)

日銀金融政策決定会合、終了後に結果を発表、黒田総裁会見

・日本インシュレーションが東証2部に新規上場、ゼネテックが東証ジャスダックに新規上場、関通が東証マザーズに新規上場

全国CPI(2)、対外・対内証券投資 (3月8-14日)、全産業活動指数(1月)

トルコ中銀、インドネシア中銀、フィリピン中銀、南ア中銀、政策金利発表

・豪雇用統計(2月)、ニュージーランドGDP(4Q)

・米経常収支 (4Q)、米フィラデルフィア連銀製造業景況指数(3月)、米新規失業保険申請件数 (3月14日終了週)、米景気先行指標総合指数 (2)

 

  • 3月20日(金)

・ロシア中銀が政策金利発表

・米中古住宅販売件数 (2月)

 

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

 

米国株2018/12/26終値との比較

米国の主要株価指数であるS&P500は、過去3年以内では2018/12/26の取引時間中に安値2,346ポイントを付け、今年の2/19に過去最高値3,393ポイントまで上昇。その後、3/11の安値2,707ポイントまで急落した。3/11終値は過去3年内の安値を付けた日の終値を11.1%上回っている。その一方、S&P500の業種別株価指数(11業種)では、金融、素材、エネルギーの3業種の3/11終値が2018/12/26の終値を下回っている。

その一方、マイクロソフトMSFTアップルAAPLアルファベットGOOGLを含む情報技術は3/11終値が2018/12/26終値を36.4%上回っており相場の下支えが期待される。ただし、S&P500のPBR(株価純資産倍率)が3.0倍と高水準であることは要注意だろう。

【米国株2018/12/26終値との比較~業種別株価指数の動向に要注意】

 

■新型ウイルス感染拡大の減速時期

世界保健機関(WHO)が3/11、新型コロナウイルス(COVID-19)を「パンデミック」に認定。世界の感染者は約120ヵ国・地域に拡大した。特に欧米や中東での感染拡大の増加ペース加速化の傾向が見られる。3/11現在、イタリアが12,462人、イランが9,000人、フランスが2,281人、ドイツが1,567人、米国が1,222人に達した。これを受けて金融市場全般の価格変動性が高まっている。

2020/2の中国の感染者数の推移を見ると、2/12以降に増加ペースが急拡大後、約8日後に増加ペースが減速したことが分かる。感染者数の水準が異なることから単純な比較が難しい面もあるが、米国の感染者数は3/10以降に増加ペースがやや加速しており、8日後の3/18近辺の動向が注目されよう。

【新型ウイルスの感染拡大減速時期~欧米と中東の感染拡大に焦点】

 

■配当・分配金高利回りランキング

3月決算銘柄の権利付最終日3/27が近づいて来た。最近の日本株相場の急落により日経平均株価の予想配当利回り(指数ベース)が3/11に2.30%となった。ただし、新型コロナウイルスの業績に与える影響がこれから明らかとなると考えられることから、配当利回りに着目する場合は減配リスクに注意が必要であろう。

減配リスクの程度を把握するには配当性向に着目することが必要だろう。配当性向が低ければ、業績下方修正により減益となっても配当性向を引き上げることで配当金の水準を維持できる余地があると考えられる。また、3/10に菱洋エレクトロ(8068)が普通配当の増配だけでなく会社設立60周年記念配当60円の実施を発表。社歴の長い企業で節目の年を迎える好業績企業は注目されよう。

【配当・分配金の高利回りランキング~減配リスクと配当性向に注意】

 

■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー

(3/16号「マレーシアのSPV2030」)

2019/10にマハティール前首相により発表された「Shared Prosperity・Vision2030(SPV2030)」は、公平な経済成長の達成と経済価値を高めることで、外国人投資家にとって魅力あるマレーシアにすることが強調されている。マレーシアは2020年の先進国入りを目指し、「マルチメディア・スーパーコリドー(MSC)計画」に基づき、IT産業を中心とするサービス・知識集約型産業を育成するため首都クアラルンプール郊外に行政都市の「プトラジャヤ」や情報産業都市の「サイバージャヤ」などの人口都市が建設されていた。今後はそれに加え、「イスラム国家」の立場から世界的なイスラム教徒の人口の伸びを取り込み、イスラム金融ハラル(イスラム法上で許されている食材や料理)関連ビジネスに係る世界の中心になることが今後の成長戦略の柱になるものと考えられよう。

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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