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【投資戦略ウィークリー 2020年3月2日号(2020年2月28日作成)】”新型ウイルス相場のさなか、考えておきたいこと”

 

■新型ウイルス相場のさなか、考えておきたいこと

  •  新型コロナウイルスの感染拡大が米国に及び、今まで堅調に推移していた米国株が急落するとともに日本株市場も暴落に見舞われた。2/27に安倍首相より全国の小中学校と高校などに3/2以降の一斉休校を求める異例の要請が行われた。2/28の日経平均株価は前日終値の21,948円から21,000円を割り込むまで下落。2/28の日経平均ボラティリティ・インデックス(投資家が日経平均株価の将来の変動をどのように想定しているかを表した指数)は、チャイナショックに揺れた2016/1以来の40%台を付ける場面があった。時価総額や自己資本を考慮した日経平均の加重平均BPS(1株当たり純資産)の概算値は2/27終値で20,738円であり、2018年の12/26および2019年の8/16以来の加重平均PBR(株価純資産倍率)0倍に迫ってきた。加重平均PBRが終値で0.99倍を下回ることがあるならば、第2次安倍政権発足前の2012/11/21以来のこととなる。当時の日経平均終値は9,222円(加重平均BPSの概算値が9,507円)であり、約7年3ヵ月かけて日経平均採用銘柄の純資産が2.2倍になったことが分かる。通常、純資産は減益であっても純利益が赤字でなければ増加すると考えられる。新型コロナウイルスの影響が日本を代表する225銘柄の企業利益に対して平均で赤字にしてしまうほど甚大なものなのかどうか、ここは冷静になって考えるべき局面だろう。
  •  2月中旬以降、中国では感染者数および死者数の増加ペースが減速していることが伝えられている。その結果、世界における感染者の増加数は2/25~2/27にかけて1,429人、1,093人、637人となり、死者の増加数も同様に36人、40人、13人となるなどいずれも減速傾向を示している。監視システムについて人権の観点から批判はあるものの、中国は取得したビッグデータの最新技術を活用して感染拡大の封じ込めに一定の効果を上げているように見受けられる。また、抗エボラ出血熱、抗インフルエンザ、抗HIVなどの薬から新型ウイルスへの治療薬を開発する動きも進んでいる。2/27に世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長はパンデミックを回避するため、すべての国が「あらゆる事態を想定して準備をしなければならない」と訴え、医療機器の確保や医療関係者への研修、空港や国境での検査などを挙げた。当面の投資物色対象についても、医療機器の確保や感染の有無に係る検査機器などに関連した銘柄を中心とすべき相場展開が続くことが考えられよう。
  • 3/2号では、帝国繊維(3302)、ヘルスケア&メディカル投資法人(3455)、日水製薬(4550)、アイネス(9742)、ユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)を取り上げた。

■主な企業決算の予定

  • 3月2日(月):ロック・フィールド、伊藤園、エイチ・アイ・エス、JDドットコム
  • 3月3日(火):タカショー、巴工業、ターゲット、ロス・ストアーズ、ノードストローム
  • 3月4日(水):ダイドーグループHDS、内田洋行、泉州電業、アインHDS、オリバー、ダラー・ツリー、スプランク、キャンベルスープ
  • 3月5日(木):ラクーンHDS、日本ハウスHDS、積水ハウス、トップカルチャー、コストコホールセール、クローガー、クーパー
  • 3月6日(金):鳥貴族、フジ・コーポレーション、gumi、カナモト、日本駐車場開発、アイル、クミアイ化学工業、ザッパラス、ファースト住建、HEROZ

 

主要イベントの予定

  • 3月2日(月)

・カーブスHDSが東証1部に新規上場

設備投資(4Q)・企業利益(4Q)・企業売上高(4Q)、じぶん銀行日本PMI製造業(2月)、自動車販売台数(前 年比) (2月)

・EUと離脱した英国との交渉開始、イスラエル総選挙、

ISM製造業景況指数 (2)、米建設支出(1月)、マークイット米製造業PMI (2月)

ユーロ圏製造業PMI(2)

中国財新製造業PMI(2)

 

  • 3月3日(火)

・楽天が携帯電話事業の新料金プランを発表

・貸出先別貸出金法人(1月)、マネタリーベース月末残高 (2月)、消費者態度指数(2月)

米大統領選スーパーチューズデー

・米シカゴ連銀総裁が質疑応答に参加、米ニューヨーク連銀幹部が準備金に関して質疑応答、米クリーブランド連銀総裁が講演(ロンドン)

・豪中銀が政策金利発表、マレーシア中銀が政策金利発表

・WTO一般理事会(4日まで)

・米自動車販売 (2月)

・ユーロ圏CPI (2月)、ユーロ圏PPI (1月)、ユーロ圏失業率(1月)

・韓国GDP (4Q)、南アGDP (4Q)

 

  • 3月4日(水)

・Kids Smile Holdingsが東証マザーズに新規上場

・じぶん銀行日本PMIサービス業・コンポジット(2月)

米地区連銀経済報告 (ベージュブック)、米セントルイス連銀総裁が開会のあいさつ

ADP雇用統計(2)、米ISM非製造業総合景況指数(2)、マークイット米サービス業・コンポジット PMI (2月)

・ユーロ圏総合・サービス業PMI(2 月)、ユーロ圏小売売上高(1月)

・豪GDP (4Q)、ブラジルGDP(4Q)

中国財新サービス業・コンポジットPMI (2)

 

  • 3月5日(木)

・鈴木日銀審議委員が福島県金融経済懇談会であいさつ、対外・対内証券投資(2月23-29日)

・米ダラス連銀総裁が講演、米ニューヨーク連銀総裁が講演

・ジュネーブ・モーター・ショー(15日まで)

・OPEC臨時総会(ウィーン)、OECD経済見通し

・米新規失業保険申請件数(2月29日終了週)、米製造業受注(1月)、米労働生産性(4Q)

 

  • 3月6日(金)

・ウイルテックが東証2部 に新規上場、きずなHDSが東証マザーズに新規上場

毎月勤労統計現金給与総額(1)・実質賃金総額(1)・家計支出(1)、景気先行CI指数・景気一致指数 (1)

・米シカゴ連銀総裁・クリーブランド連銀総裁・米セントルイス連銀総裁・米カンザスシティー連銀総裁・米ニューヨーク連銀総裁・ボストン連銀総裁がニューヨークでのイベントに参加

・OPECプラス会合(ウィーン)

米雇用統計 (2)、米貿易収支 (1月)、米卸売在庫(1月)、米消費者信用残高(1月)

・独製造業受注(1月)

 

  • 3月7日(土)

中国貿易収支(1-2)、中国外貨準備高(2)

 

  • 3月8日(日)

米夏時間開始

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

 

新型ウイルス終息への希望の光

新型コロナウイルス感染は拡大を続け、韓国・イタリア・イランへと感染増加と死者の発生が相次いでいる一方、世界の感染者数は、2月中旬以降、増加ペースの鈍化傾向が見られる。

中国ではビッグデータをはじめとする最新技術や監視システムが感染経路の特定に利用されている。2/24以降、世界的に株式市場が急落する中、上海総合指数が2/27まで相対的に底堅く推移していた要因になっている可能性もあろう。また、2/25に米国のギリアド・サイエンシズGILDがエボラ出血熱の治療薬として開発した「レムデジビル」は世界保健機関(WHO)代表からも「現時点で本当に治療効果があると見られる唯一の薬」と言及された。感染拡大の早期終息への貢献が期待されよう。

 

■アセアン4ヵ国の主な財閥

2/20に対小売り最大手のセントラル・グループの中核企業(セントラル・リテール・コーポレーション)がタイで上場し、同国で過去最大のIPO(調達資金は約2,700億円規模)を実現した。同グループを所有するチラティワット一族はフォーブズ・アジアが2017/11に発表した「アジアの富豪」で第10位に選ばれた富豪としても有名である

アセアンは政府主導インフラ開発プロジェクトや新事業免許の入札に際して富豪である財閥の影響力が大きい。タイ政府インフラ投資の「東部経済回廊(EEC)」プロジェクトで3国際空港を結ぶ高速鉄道計画の事業権を落札したのはCPグループを中心とする共同企業体だった。財閥は日本企業のアセアン進出に際しても無視できないだろう。

 

■東証REIT指数と分配金利回り

東証J-REIT指数は2017/11から上昇基調を辿った後、2019/11頃から高値圏で揉みあう展開となっている。高分配金利回りに加え、J-REITが2020/9以降に世界株の運用指数「FTSEグローバル株式指数シリーズ」に組入れられることが2019/9末に発表されたことが投資家の先回り買いを誘発している面もある。

東証REIT指数の平均分配金年利回りは2020/1末で3.44%であり、日経平均の配当利回り(指数ベース)の1.96%を上回る。J-REITの場合、投資不動産全体に対して決算計算期末に計上する減価償却費の6割を上限として分配金に充てることが可能とされている。この利益超過分配金は資本の払い戻しに相当するため、J-REITの分配金利回りを見る場合は注意が必要だろう。

 

■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー

2/25に三菱UFJ銀行がシンガポールの配車サービス最大手のグラブと資本業務提携を結んだと発表。同日、システム開発のTIS3626もグラブと資本業務提携したと発表した。グラブは暮らしに関わる色々なサービスを1つのアプリで完結する「スーパーアプリ」を持ち、配車や食事宅配、モバイル決済などを東南アジア8ヵ国で展開。スマホアプリのダウンロード数は1億8,500万超に上る。

東南アジアのスーパーアプリでグラブに対抗するのがインドネシアのゴジェックである。グラブは、インドネシアではEコマースのトコペディアおよび大手財閥のリッポー・グループと提携して決済アプリサービスの「OVO」を運営し、ゴジェックのゴーペイと2強の争いを展開している。2/26には両社が経営統合を協議していると報じられた。決済アプリを手掛ける日本企業への影響もあろう。

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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