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【投資戦略ウィークリー 2020年2月10日号(2020年2月7日作成)】“米中の中央銀行資金供給揃い踏みの強気相場”

 

■米中の中央銀行資金供給揃い踏みの強気相場

  •  中国春節明けの2/3に中国上海市場の取引が再開された。前週末の米国株式市場が急落していたことから大きく値を下げることが予想されたが、中国人民銀行が2/3に公開市場操作で短期金融市場に1兆2,000億元の大規模な流動性供給を行ったほか、リバースレポ金利を1%ポイント引き下げる対応を行った。同日の上海総合指数は1/23終値比で8%近く下落したが、日経平均株価は11/21の安値22,726円を割らずに22,775円で下げ止まり、22,971円まで戻して引けるなど底堅く推移した。翌2/4に中国人民銀行はリバースレポで銀行システムに4,000億元を供給し、人民元の中心レートを1ドル=7元より元高に設定し市場を支える姿勢を鮮明にしたことから中国株が反転上昇して株式市場の心理が好転。日経平均株価も上昇に転じ、新型肺炎の治療薬やワクチン開発に係る報道を受けて2/6に23,995円まで急上昇した。
  •  昨年末よりレポ市場への資金供給を継続中である米国FRB、および中国の中央銀行が資金供給で足並みを揃えたことが株式市場の強気心理を支えている。市場参加者の中には「Buy the Dip(押し目買い)」の押し目まで待っても買い場を失う、少しでも下げれば飛びつこうと言う意味で「Buy the Rip(裂け目買い)」という言葉が聞かれ始めた。新型肺炎の経済的影響、および治療薬が市販されるまでかかる時間などの分析は意味を持たず、感染拡大が前日比で減少するだけで買い材料と見なされる強気・楽観心理が相場を支配しているかのようである。米国主要株価指数は揃って過去最高値を更新中だが、テクニカル指標のRSI(相対力指数)は2020/1中旬以降は株価に逆行して低下する傾向にあり、相場の転換が近いことを示唆する見方も根強い。また、米国株のバフェット指数(株式市場の時価総額を名目GDPで割った値)がITバブルのピーク時の149%を超えて157%に達していることも懸念される。
  •  観光業を中心に日本経済への悪影響が長く続かないと見れば、新型肺炎に係る悪材料による株価下落は訪日外国人インバウンドの拡大傾向を見込んだ投資機会の狙い目になろう。また、スーパーアプリ(日常生活のあらゆる場面で活用できる統合的なアプリ)の覇権を巡る動きでは、ヤフーとLINEの統合に続き、NTTドコモ9437メルカリ4385のdポイント連携が発表された。KDDI9433楽天4755も追随する可能性もあろう。最終的には海外展開が可能なアプリが生き残るのではないだろうか。
  • 2/10号では、星野リゾート・リート投資法人(3287)、メルカリ(4385)、マネックスグループ(8698)、松屋フーズホールディングス(9887)、IHHヘルスケア(IHH)を取り上げた。

 

■主な企業決算の予定

  • 2月10日(月):サンドラッグ、ホシザキ、みらかHDS、リンテック、九州旅客鉄道栗田工業、三菱地所、森永製菓、東レ、東急不動産HDS、日本製鋼所、博報堂DYHDS、飯田グループHDS、浜松ホトニクス、アラガン
  • 2月11日(火):エクセロン
  • 2月12日(水):DOWA_HDS、GMOペイメントゲートウェイ、SMC、カネカ、サンリオ、ジェイエフイーHDS、シチズン時計、シマノ、ソフトバンクグループ、ダイキン工業、パイロットコーポレーション、ヤマハ発動機、ユー・エス・エス、リンナイ、ルネサスエレクトロニクス、ロート製薬、荏原製作所、丸一鋼管、近鉄グループHDS、国際石油開発帝石、阪和興業、三井金属鉱業、三井住友建設、三菱マテリアル、鹿島建設大林組、大日本印刷、東海カーボン、東急、凸版印刷、シスコシステムズ、CVSヘルス
  • 2月13日(木):JXTG_HDS、SUMCO、THK、アサヒグループHDS、アルバック、エア・ウォーター、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、クラレ、コカ・コーラ ボトラーズジャパン、コスモエネルギーHDS、サッポロHDS、サントリー食品インターナショナル、すかいらーくHDS、セイノーHDS、ソニーフィナンシャルHDS、ネクソン、ネットワンシステムズ、ピジョン、ペプチドリーム、マツモトキヨシHDS、マブチモーター、ユニ・チャーム、ライオン、楽天、京浜急行電鉄、協和エクシオ、九州フィナンシャルグループ、戸田建設、三菱UFJリース、住友不動産、昭和電工、大和ハウス工業、電通グループ、東京応化工業、東邦HDS、東亞合成、日揮HDS、日産自動車、日清紡HDS、日本ペイントHDS、宝HDS、エヌビディア、デューク・エナジー、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)、ペプシコ、クラフト・ハインツ
  • 2月14日(金):ADEKA、DIC、DMG森精機、MS&ADインシュアランスグループHDS、SOMPO_HDS、T&D_HDS、TOYOTIRE、アシックス、イオンフィナンシャルサービス、インフォマート、オープンハウス、かんぽ生命保険キリンHDS、クボタ、コクヨ、スルガ銀行、パーソルHDS、ポーラ・オルビスHDS、ゆうちょ銀行リクルートHDS、横浜ゴム、光通信、江崎グリコ、山崎製パン、住友ベークライト、出光興産、上組、大正製薬HDS、大塚HDS、第一生命HDS、沢井製薬、朝日インテック、東京海上HDS、日本郵政、堀場製作所

 

主要イベントの予定

  • 2月10日(月)

・国際収支:経常収支・貿易収支(12月)、銀行貸出動向(1月)、倒産件数(1月)、景気ウォッチャー調査現状判断・先行き判断(1)

米予算教書公表の予定、米フィラデルフィア連銀総裁講演、米サンフランシスコ連銀総裁講演

中国PPICPI (1)、中国経済全体のファイナンス規模、新規融資、マネーサプライ (1月、15日までに発表)

 

  • 2月11日(火)

パウエル米FRB議長が下院金融委で半年に一度の議会証言、米セントルイス連銀総裁講演、米ミネアポリス連銀総裁講演、米サンフランシスコ連銀総裁講演

米大統領選ニューハンプシャー州予備選(共、民)

・米求人件数 (12月)

・シンガポール航空ショー(16日まで)、サムスン電子が新製品を発表 (サンフランシスコでイベント)

・英鉱工業生産 (12月)、英GDP (4Q)

 

  • 2月12日(水)

・ホンダ新型「フィット」発表会(都内)

・マネーストックM2・M3(1 月)、工作機械受注(1)

パウエル米FRB議長の上院銀行委で半期に1度の議会証言、米フィラデルフィア連銀総裁講演

・ロシア投資フォーラム(ソチ、14日まで)、NZ中銀政策金利発表、マレーシアGDP(4Q)、台湾GDP(4Q)

・米財政収支 (1月)

・ユーロ圏鉱工業生産 (12月)

 

  • 2月13日(木)

・全国銀行協会の高島会長(三井住友銀行頭取)会見

国内企業物価指数(1)

・米上院でシェルトン、ウォラー両氏のFRB理事指名承認の公聴会

・国際エネルギー機関(IEA)月報

・米新規失業保険申請件数(8日終了週)、米CPI (1月)

・独CPI (1月)

 

  • 2月14日(金)

雨宮日銀副総裁が東証主催セミナーで講演

・第3次産業活動指数(12月)

米中が相互に関税引き下げ、米クリーブランド連銀総裁講演

・ミュンヘン安全保障会議(16日まで)

米小売売上高(1)、米輸入物価指数(1月)、米鉱工業生産 (1)、米企業在庫(12月)、米ミシガン大学消費者マインド指数(2)

・ユーロ圏GDP(4Q)、独GDP(4Q)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

 

ナスダック指数のダイバージェンス

2/5の米国株式市場は、中国の浙江大学で新型肺炎に効果的な治療薬を発見したと伝えられて大幅に上昇し、ナスダック総合株価指数が2/4に続き過去最高値を更新した。ただし、過去14日間の上げ幅(前日比)の合計と、同じ期間の上げ幅の合計と下げ幅の合計を足した数字の比率(%)であるRSI(相対力指数)が指数の上昇の動きとは逆に低下する現象が発生している。テクニカル分析上はこれをダイバージェンス(逆行)と言い、相場転換を示唆する有力なシグナルと見られる場合が多い。

特にナスダック上場のテスラTSLAの株価が2/4に前日終値比24.2%高まで上昇後、2/5に前日高値から27.3%安まで下落するなど乱高下した。相場の高値波乱に要注意だろう。

【ナスダック指数のダイバージェンス~テスラ株価の乱高下が意味するもの】  

 

■不動産上場投資信託(J-REIT

J-REITへ投資した場合、分配金と投資口価格の値上り・値下りが投資のリターンとなる。J-REITは賃貸収益から運営経費を差し引いた税引き前利益に対して法人税がほぼ掛からない仕組みであるため、分配金利回りが株式の配当利回りより高めになる傾向がある。

2013/12末を100とした東証REIT指数と日経平均株価の相対指数は約6年後に同水準となっているが、分配金と配当を含めたベースでは、東証REIT指数ベースのパフォーマンスが日経平均を上回っているという見方ができよう。

訪日外国人の受け入れ拡大に向け、外国人富裕層向けの高級ホテルを日本各地に50ヵ所程度新設する方針が2019/12に政府より示されており、ホテル主体型のJ-REITは注目に値しよう。

【不動産上場投資信託(J-REIT)~ホテル主体型の高分配金利回り銘柄に注目

■高配当利回り銘柄への投資視点

配当利回りに着目して中長期的観点で株式投資を行う場合、特別配当や記念配当といった一時的要因を含む会社予想配当に基づいた利回りではなく、普通配当ベースの配当利回りに着目すべきであろう。また、利益を上回る配当を長期的に維持することは困難であることが考えられ、利益に対する配当の割合である配当性向に注意したい。

配当利回りの高さについては、日経平均株価の配当利回りが標準的な尺度として参考になろう。2/5終値での日経平均の配当利回り(指数ベース)は1.90%である。短期的には株価と配当利回りには逆相関の関係が見られるが、中長期的には企業利益の株主還元強化の社会的要請もあり、配当利回りが上昇する傾向にあると言えよう。

【高配当利回り銘柄への投資視点~配当性向と普通配当ベースの利回り】

 

■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー

アセアン株式市場では、中国で発生した新型肺炎の感染拡大が続く中、タイSEI指数が2/3まで3営業日続落し、3年2ヶ月ぶりの安値を付けた。タイでは観光業への悪影響が検される中、タイ中央銀行が2/5の金融政策決定委員会で政策金利を0.25%引き下げた。バンコク銀行BBLサイアム・セメントSCCなどのタイ企業は、国内人件費上昇で輸出競争力が落ちる中、通貨バーツ高もあり消費の増加が見込まれるインドネシア企業の買収といった海外直接投資を加速させている。

タイでは年初より使い捨てのプラスチック製レジ袋が姿を消し、有料ゴミ袋や買い物代行などレジ袋廃止に伴う新たな需要が出てきた。日本でも2020/7にレジ袋の有料化が始まる。リサイクルが容易で冷たい飲み物を美味しく飲む観点からは、アルミ製ストローが流行することも考えられよう。

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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