【投資戦略ウィークリー 2020年2月3日号(2020年1月31日作成)】“新型肺炎の悲観 VS 米企業決算・5Gの楽観”
■新型肺炎の悲観 VS米企業決算・5Gの楽観
- 1/27週の日本株相場は新型肺炎の感染者数がSARSを超えたと報じられ、1/30の「緊急事態」宣言に係るWHOの討議を控えて先行懸念が強まったことを受け、日経平均株価が下落基調で推移した。その一方、日米共に2019/10-12月決算の発表が進む中、米国ではFAANG銘柄を中心に好調な業績が相次ぎ、アップル(AAPL)、マイクロソフト(MFST)、アルファベット(GOOG)に続き、アマゾン・ドット・コム(AMZN)が時価総額1兆ドルを突破。アップルは昨秋に発売したより広い範囲を撮影できる広角レンズを搭載したiPhone11がヒットし、CMOSセンサーを供給するソニー(6758)などの日本企業が恩恵を受けた。アマゾン・ドット・コムは、Amazonプライム会員が2018/4の1億人から増加し、1億5,000万人を超えたと発表された。日本でも食品スーパーのライフコーポレーション(8194)がAmazonプライム会員向けサービス「Prime NOW」に生鮮食品や総菜を注文から最短2時間で届けるサービスを始めるなど米国でアマゾン傘下となったホールフーズ・マーケットを連想させる動きも見られる。更に、Amazonプライムビデオは動画配信のネットフリックス(NFLX)と同様、高額な予算でオリジナル番組制作に注力し視聴者をテレビから奪いつつある。FAANG企業の影響力は着実に日本企業および消費者に浸透しつつあると言えよう。
- 市場が注目する5G関連需要は、1/28発表のザイリンクス(XLNX)の2020/1-3月が5G関連需要の減速により減収となる見通しとされたことから、5G需要期待で買われていた銘柄が1/29以降に売られる展開が見られた。5G需要見通しは今後も市場の中心テーマになると考えられる中、中国ファーウェイが2019年に全世界で690万台以上の5Gスマートフォンを出荷したと報じられ、既に韓国が世界に先駆けて2019/4に5Gの商用サービスを始めていることに伴い韓国のサムスン電子が5G対応スマホの販売に注力している。ザイリンクスの5G需要減速見通しはファーウェイへの米政府輸出規制が響いたものと推察される。
- 現時点では米国主要企業の決算は概ね良好に推移している。決算による個別企業の材料が一巡した後、米国株の上昇材料は乏しくなると予想されよう。日経平均株価は2019/11-12まで上値抵抗線だった23,600円を中心とした上下600円近辺のレンジ内にとどまっているように見られるが、11/21に付けた安値22,726円を維持できるかどうかが当面の焦点となろう。
- 2/3号では、大日本住友製薬(4506)、UACJ(5741)、日機装(6376)、三菱地所(8802)、ケッペル(KEP)を取り上げた。
■主な企業決算の予定
- 2月3日(月):MonotaRO、NOK、オリックス、コニカミノルタ、サンゲツ、セントラル硝子、ニフコ、パナソニック、ほくほくフィナンシャルG、マルハニチロ、レーザーテック、塩野義製薬、科研製薬、京王電鉄、三浦工業、三菱電機、村田製作所、大塚商会、大和工業、東ソー、日本光電工業、アルファベット
- 2月4日(火):HOYA、エヌ・ティ・ティ・データ、カカクコム、カゴメ、カプコン、キッコーマン、シャープ、ソニー、ニチレイ、ブラザー工業、ローム、伊藤忠テクノソリューションズ、宇部興産、横河電機、花王、群馬銀行、広島銀行、阪急阪神HDS、三井物産、三菱UFJフィナンシャルG、参天製薬、相鉄HDS、大正製薬HDS、東武鉄道、日本ユニシス、日本触媒、不二製油G本社、武田薬品工業、フォード・モーター、オールステート、ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー、コノコフィリップス、エマソン・エレクトリック、サイモン・プロパティー・グループ、ギリアド・サイエンシズ
- 2月5日(水):AGC、SUBARU、ZHDS、アズビル、イビデン、カルビー、コンコルディア・フィナンシャルG、シスメックス、スクウェア・エニックスHDS、スズケン、セガサミーHDS、ダイセル、ディー・エヌ・エー、パン・パシフィック・インター、ヒロセ電機、ふくおかフィナンシャルG、フジ・メディアHDS、フジクラ、マツダ、ミネベアミツミ、レンゴー、伊藤忠商事、丸紅、岩谷産業、京阪HDS、協和キリン、古河電気工業、三井化学、三菱瓦斯化学、三菱商事、住友電気工業、全国保証、双日、大陽日酸、長瀬産業、帝人、東京建物、日本空港ビルデング、日本新薬、日本水産、日本電気硝子、日本発条、日油、日立キャピタル、メットライフ、クアルコム、ゼネラル・モーターズ(GM)、メルク
- 2月6日(木):IHI、TIS、オリンパス、グローリー、ケーズHDS、ジーエス・ユアサコーポレーション、セコム、ゼンショーHDS、テルモ、テレビ朝日HDS、トヨタ自動車、ニコン、ニプロ、バンダイナムコHDS、ヤマダ電機、ヤマハ、丸井G、三菱ケミカルHDS、三菱重工業、資生堂、森永乳業、神戸製鋼所、西松建設、西日本鉄道、西武HDS、川崎重工業、第四北越フィナンシャルG、島津製作所、東京センチュリー、東京放送HDS、東洋製罐GHDS、日本たばこ産業、日本テレビHDS、日本電信電話、富士フイルムHDS、明治HDS、フィリップ・モリス・インターナショナル、ブリストル・マイヤーズスクイブ
- 2月7日(金):SANKYO、アマダHDS、アリアケジャパン、アルフレッサHDS、いすゞ自動車、クレディセゾン、ゴールドウイン、コムシスHDS、コロワイド、シップヘルスケアHDS、スズキ、セブン銀行、ソフトバンク、ダイフク、ダスキン、ツムラ、デンカ、ナブテスコ、ニッコンHDS、ベネッセHDS、めぶきフィナンシャルG、リコー、リゾートトラスト、リロG、旭化成、伊予銀行、奥村組、王子HDS、沖電気工業、関西ペイント、五洋建設、三井不動産、山口フィナンシャルG、持田製薬、住友金属鉱山、住友商事、住友大阪セメント、小田急電鉄、西日本フィナンシャルHDS、雪印メグミルク、千葉銀行、前田建設工業、前田道路、太平洋セメント、太陽誘電、大成建設、第一興商、長谷工コーポレーション、東洋紡、日産化学、日本パーカライジング、日本製紙、日本製鉄、本田技研工業、名古屋鉄道、アッヴィ
■主要イベントの予定
- 2月3日(月)
・じぶん銀行日本PMI製造業 (1月)、自動車販売台数(1月)
・米アトランタ連銀総裁講演、米大統領選アイオワ州党員集会(民主、共和)
・中国本土市場、取引再開
・米自動車販売 (1月)、米ISM製造業景況指数 (1月)、米建設支出 (12月)
・ユーロ圏製造業PMI (1月)、中国工業利益 (12月)、中国 財新製造業PMI (1月)、香港GDP(10-12月)
- 2月4日(火)
・米大統領、一般教書演説
・豪中銀、政策金利発表
・米製造業受注(12 月)
・ユーロ圏PPI (12月)
- 2月5日(水)
・若田部日銀副総裁が講演(松山市)、じぶん銀行日本PMIサービス業・コンポジット (1月)
・ブラジル中銀政策金利発表、タイ中銀政策金利発表
・米ADP雇用統計(1月)、米貿易収支 (12月)、米ISM非製造業総合景況指数 (1月)
・ユーロ圏総合PMI (1月)、ユーロ圏サービス業PMI (1月)、ユーロ圏小売売上高 (12月)
・中国財新サービス業PMI(1月)、中国財新コンポジットPMI (1月)
- 2月6日(木)
・政井日銀審議委員が講演(奈良市)、対外・対内証券投資 (1月26日-2月1日)、東京オフィス空室率 (1月)
・ラガルドECB総裁講演(ブリュッセル)、ECB経済報告、独製造業受注 (12月)
・インド中銀政策金利発表、フィリピン中銀政策金利発表、インドネシアGDP(10-12月)
・米ダラス連銀総裁講演、米新規失業保険申請件数 (2月1日終了週)、米労働生産性(10-12 月)
- 2月7日(金)
・ジモティー東証マザーズに新規上場、コーユーレンティア東証ジャスダックに新規上場
・毎月勤労統計–現金給与総額(12月)、実質賃金総額(12月)、家計支出(12月)、景気先行CI指数 (12月)、景気一致指数 (12月)
・米大統領選挙、民主党指名争う候補者による討論会(ニューハンプシャー州)
・米雇用統計(1月)、米卸売在庫(12月)、米消費者信用残高 (12月)
・独貿易収支 (12月)、独鉱工業生産 (12月)、ロシア中銀政策金利発表
・中国貿易収支(1月)
- 2月8日(土)
・シカゴオートショー(17日まで)、アイルランド総選挙、北朝鮮の人民軍創建日
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■荒れる2020年1月の金融市場
2020年の金融市場は、年初にイラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官が米軍の無人機による空爆で殺害され、中東の地政学リスク懸念から原油価格を初めとして、金価格、ビットコイン価格が上昇。その後、短期間で軍事対立が回避されたことから原油価格が下落に転じた。1/20以降は中国の武漢で発生した新型コロナウイルスに伴う感染症拡大が懸念され、原油価格のほか株式相場も下落に転じた。
ビットコイン価格と金価格はリスク回避目的の買いから堅調に推移。米国債もリスク回避から買い基調となり、長短金利が低下。ビットコインについてはマイニングの報酬に係る半減期が2020/5に予定されており、供給減が見込まれることを材料とした買いも見られる。
【荒れる2020年1月の金融市場~ビットコインと金が堅調、長短金利は低下】
■FOMC後のパウエル議長発言
1/30の米FOMC(連邦公開市場委員会)声明後のパウエルFRB議長の会見では、インフレ率の2%割れの長期化が望ましくないこと、および賃金の伸びが驚くほど低いという認識を示したことから当面の利上げが考えにくいことが示唆されたように見られる。レポ市場への資金供給やバランスシート拡大継続が示されたものの長期間に渡るものではない慎重なスタンスが示されたことで、FRBによる流動性の供給を拠り所とした資産価格上昇への行き過ぎた楽観論には歯止めがかかる可能性もあろう。
新型コロナウイルスに関し、パウエル議長が「深刻な問題」と捉えたことが示された。今後のレポ市場への資金供給やバランスシート拡大ペースに影響を与えることも考えられよう。
【FOMC後のパウエル議長発言~雇用・インフレ、資金供給、バランスシート】
■インバウンド訪日外国人旅客数
毎年、中国の春節休暇は中国からの旅行者で国内観光地が賑わっていたが、今年は新型コロナウイルスの影響で観光客が激減。中国政府もコロナウイルスを封じ込めるために同国からの海外団体旅行を禁止する措置を取り、特に中国人観光客が多く宿泊するホテルではキャンセルが続出。観光地では客数が減少する動きが出始めている。
訪日中国人旅客数は2019年の訪日外国人旅行客数の30%を占め、前年比14.5%増だった。2019年は日韓関係の悪化によって訪日韓国人旅客数が前年比25.9%減となり、未だ回復の兆しが見えていない。インバウンド上位2ヵ国の訪日旅行客数が揃って減少となれば、政府目標である「2020年のインバウンド4000万人」達成が危ぶまれよう。
【インバウンド訪日外国人旅客数~大黒柱の中国人旅行客数はどうなるか?】
■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー
シンガポールに続きマレーシアでもデジタル銀行(無店舗のインターネット上の仮想銀行)の免許を発行する方針が示された。市場では候補企業としてアシアタ・グループ(AXIATA)傘下のブースト、エアアジア(AIRA)傘下のビッグペイ、「マレーシア版Suica」と言われるTouch’n Goカードを手掛けるタッチ・アンド・ゴー、および配車サービス大手のグラブの名前が上がっている。
マレーシア中銀は1/22の金融政策委員会で政策金利を3%から2.75%へ引き下げた。マレーシアは2019/7-9月のGDP成長率が4-6月から0.5%ポイント低下の4.4%となったため経済成長率の上昇を確保するための予防的措置と説明されている。2019年の物価上昇率が0.7%と低位にとどまることから市場では2020年中の再利下げの見方も出てきており、為替見通しでは要注意だろう。
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。