【投資戦略ウィークリー 2020年1月27日号(2020年1月24日作成)】“オリンピックに向けて動き出す日本経済”
■オリンピックに向けて動き出す日本経済
- 1/20週の日本株相場は、前週末に発表された中国の10-12月GDP、12月の工業生産高や小売売上高から中国経済の底堅さが意識され、米国の12月の住宅着工件数も堅調に増加したことから、1/20の日経平均株価は24,000円を上回って推移した。しかし、中国の春節(旧正月)を前にして武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が感染拡大傾向となっていることが嫌気され、1/21以降の日経平均は24,000円近辺を戻り高値として意識した上値が重い展開となった。
- 日経平均株価に係る裁定買い残(「先物売り・現物買い」のポジション未解消の現物買い残高)および裁定売り残(「先物買い・現物売り」のポジション未解消の現物売り残高)についても12/20から12/30までは裁定買い残が裁定売り残を上回り、需給面で買い優勢が定着することが期待されたが、1/10と1/17は再び裁定売り残が裁定買い残を上回るなど日経平均株価の24,000円水準における売り圧力の強さが感じられた。その一方、1/20にIMFが2020年の日本経済の実質GDP成長率見通しを2019/10の5%から0.7%へ引き上げ、1/21には日銀が金融政策決定会合後に公表した「展望レポート」で2020年の日本経済の実質GDP成長率見通しの中央値を2019/10の0.6%から0.8%へ引き上げた。消費税増税対策や堅調な設備投資、および2019/12に政府が決定した経済対策が寄与する見通しであり、特にIMF見通しでは主要先進国・地域で日本だけが上方修正されるなど、日本経済の先行きは明るい面も見られる。
- 更に、オリンピック競技大会期間中の東京圏の終電時刻が最大で約2時間延長される予定であることが発表された。2025年に大阪・関西万博を控える大阪でも、御堂筋線で終電延長に係る実証実験が実施される予定である。オリンピック関連銘柄といえば、テロ警戒のための手荷物検査や警備の強化、サイバーテロを警戒したサイバーセキュリティ、感染症を水際で食い止めるための空港での検疫強化といった観点から見られがちだが、訪日外国人旅行客の多くは日本の娯楽施設などの閉店時間が早いこと、およびキャッシュレス決済が普及していないことに不満を持っていると言われる。ナイトタイムエコノミーの拡大とキャッシュレス決済の普及は訪日外国人旅行客の消費拡大に直結しやすいものとして今後も注目されよう。
- 1/27号では、東レ(3402)、ラウンドワン(4680)、AOKIホールディングス(8214)、日本取引所グループ(8697)、シンガポール取引所(SGX)を取り上げた。
■主な企業決算の予定
- 1月27日(月): 日東電工、JSR、ワールプール、パーキンエルマー、アーコニック、DRホートン
- 1月28日(火):富士通ゼネラル、オービック、エムスリー、信越化学工業、日立化成、キヤノンマーケティングジャパン、ストライカー、ザイリンクス、スターバックス、WRバークレー、マキシム・インテグレーテッド・プロダクツ、CHロビンソン・ワールドワイド、アップル、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ、イーベイ、Xerox Holdings Corp、ニューコア、パッカー、ペンテア、ユナイテッド・テクノロジーズ、ファイザー、ハーレーダビッドソン、3M、HCAヘルスケア、マコーミック、ロッキード・マーチン
- 1月29日(水):四国電力、積水化学工業、日本ゼオン、日本取引所グループ、大東建託、東邦瓦斯、メイテック、ヒューリック、アイカ工業、SCREENHDS、ミスミグループ本社、LINE、サイバーエージェント、日本電気、オムロン、アドバンテスト、東北電力、エイチ・ツー・オーリテイリング、ファナック、日立ハイテクノロジーズ、PALTAC、日立建機、キヤノン、日野自動車、ラムリサーチ、サービスナウ、アライン・テクノロジー、フェイスブック、イルミナ、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド、マイクロソフト、ユナイテッド・レンタルズ、ラスベガス・サンズ、ナスダック、インベスコ、エイブリィ・デニソン、Dow Inc、プログレッシブ・コープ、マーケットアクセス・HDS、ゼネラル・エレクトリック(GE)、コーニング、マスターカード、マクドナルド、AT&T、ローリンズ、スタンレー・ブラック・アンド・デッカー、ゼネラル・ダイナミクス、ロックウェル・オートメーション、アンセム、オートマチック・データ・プロセシング、ボーイング、テキストロン、マラソン・ペトロリアム、ティー・ロウ・プライス・グループ
- 1月30日(木):清水建設、日本ハム、第一三共、日本通運、住友林業、LIXILグループ、ジェイテクト、三菱倉庫、東洋水産、小野薬品工業、アステラス製薬、商船三井、エーザイ、日本郵船、三和HDS、豊田自動織機、デンソー、川崎汽船、トクヤマ、NTN、三井住友トラスト・HDS、中外製薬、日本特殊陶業、東海旅客鉄道、小糸製作所、三井住友フィナンシャルグループ、あおぞら銀行、東京瓦斯、東京電力HDS、任天堂、オリエンタルランド、コナミHDS、東京エレクトロン、野村HDS、マキタ、日立金属、きんでん、ハウス食品グループ本社、ファンケル、スタンレー電気、東日本旅客鉄道、日本板硝子、中国銀行、京セラ、富士電機、アルプスアルパイン、日本精工、中国電力、ヤマトHDS、テイ・エス テック、アコム、ANAHDS、大日本住友製薬、日本M&Aセンター、日清製粉グループ本社、アンリツ、野村総合研究所、野村不動産HDS、大阪瓦斯、七十七銀行、NTTドコモ、新生銀行、カシオ計算機、滋賀銀行、富士通、ネットワンシステムズ、日本軽金属HDS、東海理化電機製作所、レスメド、エレクトロニック・アーツ、アムジェン、ビザ、ウエスタンデジタル、ベライゾン・コミュニケーションズ、ユナイテッド・パーセル・サービス、レイセオン、ノースロップ・グラマン、インターナショナル・ペーパー、トラクター・サプライ、ダナハー、エクセル・エナジー、サーモフィッシャーサイエンティフィック、アライアンス・データ・システムズ、パーカー・ハネフィン、ウエストロック、MSCI、コカ・コーラ、アプティブ、アマゾン・ドット・コム、アイデックス、バイオジェン、アルトリア・グループ、イーライリリー
- 1月31日(金):ZOZO、SBIHDS、三菱自動車工業、豊田通商、ワコールHDS、日本化薬、キーエンス、りそなHDS、みずほフィナンシャルグループ、電源開発、大和証券グループ本社、九電工、エス・エム・エス、TOTO、アマノ、住友重機械工業、小林製薬、コーセー、テクノプロ・HDS、オークマ、大同特殊鋼、京成電鉄、エフピコ、八十二銀行、KDDI、中部電力、静岡銀行、北陸電力、メディパルHDS、九州電力、関西電力、味の素、三越伊勢丹HDS、キッセイ薬品工業、日本碍子、住友化学、トプコン、日立製作所、ウシオ電機、タダノ、セイコーエプソン、西日本旅客鉄道、日本航空、SGHDS、京都銀行、SCSK、オートバックスセブン、北海道電力、小松製作所、TDK、豊田合成、トヨタ紡織、山九、ヤクルト本社、綜合警備保障、南海電気鉄道、イリノイ・ツール・ワークス、チャーター・コミュニケーションズ、キャタピラー、エクソンモービル、ウェアーハウザー、エーオン、シェブロン、ジョンソンコントロールズインターナショナル、アイデックスラボラトリーズ、ハネウェルインターナショナル、コルゲート・パルモリーブ
■主要イベントの予定
- 1月27日(月)
・中国市場・春節で休場(30日まで)、香港市場・春節で休場(28日まで)
・米新築住宅販売件数(12月)
・独IFO企業景況感指数 (1月)
- 1月28日(火)
・企業向けサービス価格指数(12月)
・米FOMC(29日まで)、米議会予算局(CBO)経済・財政 見通し
・米耐久財受注(12月)、米主要20都市住宅価格指数(11月)、米消費者信頼感指数(1月)
- 1月29日(水)
・日銀金融政策決定会合における主な意見(1月20・21日分)、消費者態度指数(1月)
・米FOMC声明発表・パウエルFRB議長記者会見
・ゴールドマン・サックス・G、初の投資家デー開催(ニューヨーク)
・米卸売在庫(12月)、米中古住宅販売成約指数(12月)
・ユーロ圏マネーサプライ (12月)
- 1月30日(木)
・日銀の雨宮副総裁が講演(都内)、対外・対内証券投資 (1月19-25日)
・米GDP (4Q)、米新規失業保険申請件数 (1月25日終了週)
・ユーロ圏景況感指数 (1月)、ユーロ圏消費者信頼感指数 (1月)、ユーロ圏失業率 (12月)、独失業率 (1月)、独 CPI (1月)、英中銀が政策金利発表・金融政策報告・カーニー総裁記者会見
- 1月31日(金)
・有効求人倍率 (12月)、失業率 (12月)、東京CPI(1月)、小売売上高 (12月)、鉱工業生産 (12月)、百貨店・スーパー売上高(12月)、自動車生産台数 (11月)、建設工事受注 (12月)、住宅着工件数(12月)
・米個人所得・支出 (12月)、米雇用コスト指数 (4Q)、米ミシガン大学消費者マインド指数 (1月)
・英EU離脱期限、ユーロ圏GDP(4Q)、ユーロ圏CPI (1月)
・中国製造業PMI (1月)、中国非製造業PMI (1月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■米国S&P500業種別4Q利益見通し
米国株は主要株価指数が1/17に過去最高値を更新するなど堅調に推移しているが、1/17基準のファクトセット「Earning Insight」によれば、S&P500株価指数の11業種の内、公益事業、金融、素材の3業種を除く8業種における4Qの純利益率見通しが前年同期比で悪化しており、S&P500の平均でも同0.5%ポイント低下の10.7%である。
また、S&P500構成企業の2019/4Q(10-12月)の純利益に係る実績および予想の総計が前年同期比2.1%減となっており、12/31時点の同1.5%減から悪化している。1/17時点の純利益増益率見通しが12/31時点のものを上回ったのは、ヘルスケアと消費(生活必需品)の2業種のみである。企業業績面では楽観できる状況とは言えないだろう。
【米国S&P500業種別4Q利益見通し~利益率および増益率は改善するか?】
■TSMCとASMLの売上内訳推移
1/16発表の台湾積体電路製造(TSMC)の2019/12通期および4Q(10-12月)決算では、微細な7nm(ナノメートル、ナノは10億分の1)の半導体の増加、高機能化するスマートフォン向けの需要増、および中国向けの比率の上昇などが見られる。中国が5G向け開発を急いでいたことが推察される。
また、1/22発表のオランダの半導体製造装置メーカーASMLの2019/12通期および4Q決算からも、微細化需要に伴いリソグラフィー技術におけるEUV(極端紫外線)露光装置の拡大、および信号を蓄えるメモリから信号を制御・演算処理するロジックへと高付加価値化が進んでいることが分かる。4Qの中国向け比率が前四半期比で上昇している点はTSMCと同様のことが言えよう。
【TSMCとASMLの売上内訳推移~半導体の微細化、ロジック化、中国シフト】
■消費増税後の日本経済の行方
日銀は1/21の金融政策決定会合終了と同時に新たな「経済・物価情勢の展望」を公表し、2020年度の消費者物価(除く生鮮食品)上昇率見通しを0.1%pt引き下げて前年比1.0%とした。11月の全国消費者物価指数は総合で前年同月比0.5%上昇、生鮮食品およびエネルギーを除くコアコア指数で同0.8%上昇。総合が同0.2%上昇、コアコア指数が同0.7%上昇だった10月からプラス幅が拡大。幼児教育・保育無償化やキャッシュレス決済へのポイント還元が寄与した面もあり、特に若年層はメリットを受けやすかったと考えられよう。
消費者態度指数からは今のところ消費センチメントの悪化は見られないが、高齢者層が主力のサービスでは悪影響が出る可能性があるかも知れない。
【消費増税後の日本経済の行方~物価と賃金の伸び、消費者態度指数】
■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー
シンガポールのデジタル銀行(店舗を持たないインターネット上の仮想銀行)の免許申請が昨年末で締め切られ、申請者が出揃った。金融サービス全般を認めるフルバンク免許が最大2つ、ホールセールバンク免許が最大3つ交付され、認可企業は2020/6に発表される予定である。フルバンク免許には、ソフトバンクG(9984)が出資する配車サービスのグラブとシンガポール・テレコム(ST)の企業連合、有力実業家ロン・シム氏が率いる投資会社V3G主導でMS&ADインシュランスGHDS(8725)の三井住友海上火災保険も参画する企業連合などが申請し、ホールセールバンク免許には、アリババ傘下のアント・フィナンシャルほかが申請した。認可されれば先行者利益を得て優位に事業を拡大できるものと期待されよう。
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。