English

【投資戦略ウィークリー 2019年12月9日号(2019年12月6日作成)】“大型経済対策が2020年の日本経済を救うか?”

 

■大型経済対策が2020年の日本経済を救うか?

  •  12/5に国や地方からの財政支出が2兆円となる経済対策が閣議決定された。民間の支出も加えた事業規模は26兆円になり、財政支出のうち公共投資が6兆円程度を占める。経済の下振れリスクへの備えや、東京五輪後を見据えた経済成長のための施策に重点を置くものだが、消費税増税後の個人消費が懸念される中、日本経済を救うことができるのだろうか?
  •  12/2週の日本株相場は、11/30に中国国家統計局が発表した11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が市場予想に反して50を7ヵ月ぶりに上回り、12/2に発表された民間の同PMIも8と2016/12以来の高水準となったことから、12/2に日経平均株価で23,500円を超えて上昇した。しかし、12/3のトランプ米大統領による「中国との交渉合意は大統領選の後になっても構わない」といった発言や南米産の鉄鋼への追加制裁関税発表などにより先行きへの不透明感が強まったことから、12/4に日経平均株価が23,044円まで下落。その後は米中合意への期待が再び高まり、12/5に23,412円まで反発した。
  •  閣議決定された経済対策の三本柱は以下の通りである。①一連の自然災害を受けた「災害からの復旧・復興と安全・安心の確保」として氾濫発生の危険性が高い河川の堤防強化や、緊急時の輸送に使う市街地の道路での無電柱化。災害がいつ到来するか分からず、しかも年々大規模化する傾向にあることから、需要の早期化・長期化が見込まれよう。②「経済への下振れリスク」への対応として中小企業・小規模事業者を対象にした施策が中心となり、デジタル化など生産性向上を進めるための補助金が盛り込まれた。既に「働き方改革」に対応した中小企業の省力化や業務効率化投資が増加基調にあるが、システムまたはソフトウェア開発会社への恩恵は息の長いものになると見込まれよう。③「東京五輪後も見据えた経済活力の維持・向上」として2023年度までにすべての小中学生がパソコンなどのIT端末を利用できるようにすることが挙げられた。教育ICT化需要の拡大により、同時にセキュリティ対策の重要性も高まることから、関連業種を幅広く捉える余地もあろう。
  •  企業統治の観点から親子上場解消を見込んだ株価の動きも見られ、12/2週は富士通6702グループが注目された。親子上場を擁する企業グループは引き続き要注目だろう。(笹木)
  • 12/9号では、ラクーンホールディングス(3031)、大幸薬品(4574)、村田製作所(6981)、イオン(8267)、東京楽天地(8842)、NTTデータ(9613)を取り上げた。

 

■主な企業決算の予定

  • 12月9日(月):ミライアル、泉州電業、萩原工業、Casa、日東製網、アルトナー、ライクキッズ、学情、ビューティガレージ
  • 12月10日(火):ベステラ、サムコ、グッドコムアセット、シーイーシー、トーホー、オートゾーン
  • 12月11日(水):アセンテック、ジャパンミート、シーアールイー、Hamee
  • 12月12日(木):小林産業、クスリのアオキホールディングス、東京ドーム、ラクスル、三井ハイテック、アイモバイル、鎌倉新書、オハラ、ファーストロジック、トーエル、くら寿司、ミサワ、エイチ・アイ・エスアドビブロードコムオラクルコストコホールセール
  • 12月13日(金):エニグモ、フリービット、マネジメントソリューションズ、ヤーマン、ジェイ・エス・ビー、稲葉製作所、ネオジャパン、日本ハウスホールディングス、アイ・ケイ・ケイ、神戸物産、ファースト住建、西松屋チェーン、丸善CHIホールディングス、クミアイ化学工業、正栄食品工業、ブラス、フジ・コーポレーション、ナイガイ、平和不動産

 

主要イベントの予定

  • 12月9日(月)

・中国の小米が日本のスマホ市場参入についての説明会

GDP3Q国際収支統計(10月)、貸出・預金動向(11月)、倒産件数(11月)、景気ウォッチャー調査(11月)

・独貿易収支(10月)、中国経済全体のファイナンス規模、新規融資、マネーサプライ(11月分、15日までに発表)

 

  • 12月10日(火)

・テクノフレックス、東証2部に新規上場

・ALiNKインターネット、東証マザーズに新規上場

・マネーストック(11月)、マンパワー雇用調査(1Q)、工作機械受注(11月)

FOMC11日まで)

・ノーベル賞授与式、アルゼンチン大統領にアルベルト・フェルナンデス氏が就任、ゲオルギエワIMF専務理事の講演(ワシントン)

・任天堂の家庭用ゲーム機スイッチが中国で発売される

・米労働生産性(3Q)、独ZEW期待指数(12月)、英鉱工業生産(10月)、中国CPIPPI11月)

 

  • 12月11日(水)

・マクアケ、東証マザーズに新規上場

法人企業景気予測調査(4Q国内企業物価指数(11月)

FOMC声明発表米パウエルFRB議長の記者会見・経済予測発表、ブラジル中銀が政策金利発表

・OPEC月報

CPI11月)、米財政収支(11月)

 

  • 12月12日(木)

・日銀の雨宮副総裁、岡山市の金融経済懇談会に出席

・メドレー、東証マザーズに新規上場

・対外・対内証券投資(12月1-7日)、機械受注統計(10月)、営業毎旬報告(12月10日現在)、東京オフィス空室率(11月)

・欧州中央銀行(ECB)金融政策会合・ラガルド総裁の記者会見、フィリピン中銀が政策金利発表

EU首脳会議(13日まで)英総選挙、国際エネルギー機関(IEA)月報

米新規失業保険申請件数(12月7日終了週)、米PPI(11月、ユーロ圏鉱工業生産(10月)、独CPI(11月)、ロシアGDP(3Q)

 

  • 12月13日(金)

日銀短観(4Q、鉱工業生産(10月)、設備稼働率(前月比)(10月)

・米ニューヨーク連銀総裁の講演、ロシア中銀が政策金利発表

米小売売上高(11月)、米輸入物価指数(11月)、米企業在庫(10月)

 

  • 12月15日(日)

・安倍首相がインド訪問(17日まで)

米が対中追加関税発動中国が対米追加関税発

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

 

7-9月期法人企業統計のレビュー

財務省が12/2発表した7-9月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)の売上高は前年同期比2.6%減の349兆4,974億円。3年ぶりにマイナスとなった。経常利益も同5.3%減の17兆3,232億円と2期連続の減益。非製造業は同0.5%の増益を確保したが、製造業が同15.1%減と落ち込んだ。米中貿易戦争による中国経済の減速などにより、輸送用機械や生産用機械などの業種で落ち込みが目立った。

一方、ソフトウェアを含む設備投資(金融・保険業を除く)は同7.1%増の12兆826億円と12期連続のプラス。特に製造業が同6.4%増と前期の同6.9%減からプラスに浮上した。12/9公表予定の7-9月期の実質GDPの2次速報では、成長率が上方修正される可能性も。(増渕)

【国内企業の7-9月期は3年ぶりに減収~製造業の設備投資はプラス浮上】

 

米国では年末商戦がスタート

米年末商戦が好調な滑り出しを見せている。米国では11月第4木曜日の祝日であるサンクスギビングデー(感謝祭)の翌日から12月末までが年末商戦となり、1年で最も売上が伸びる時期として知られる。アドビアナリスティクスによると、2019年のサイバーマンデー(感謝祭明けの月曜日)のネット通販売上高は前年比18.9%増の94億ドルと過去最高を更新。サイバーウィークエンド全体(11/28-12/2)でも290億ドルを突破。

全米小売業協会(NRF)は、ホリデーシーズンを11/1-12/31と定義し、2019年のホリデーシーズンの売上高を7,279-7,307億ドルと予測。一人当たり平均消費額を前年比4%増の1,047.83ドルと見る。関税引き上げの影響が懸念されたが、力強い年末商戦になりそう。(増渕)

【サイバーマンデーのネット通販が過去最高~年末商戦は好調なスタート】

 

JASDAQから東証1部への道

2018/12にJASDAQから東証2部に変更された明豊ファシリティワークス(1717が11/26に東証1部に鞍替えとなった。JASDAQから東証1部への指定変更は時価総額(市場変更時見込み)が250億円以上であることが必要なことからハードルが高い。東証2部から1部への鞍替えは時価総額要件が40億円であるため、東証2部への変更を実現後に1部への鞍替えを目指す例が多い。

現在、上場市場区分の見直しが議論され、現在の東証1部上場維持に係る時価総額の基準が厳しくなる可能性も報じられている。早期の東証1部上場を目指す企業は将来の自社の時価総額拡大に自信を持っているという見方もできよう。JASDAQから東証2部への変更銘柄は一層注目度が高まろう。(笹木)

JASDAQから東証1部への道~東証2部へ変更後に早期の鞍替えを狙う】

PDF版

 

 

留意事項
  1. 上場有価証券等のお取引の手数料は、国内株式の場合は約定代金に対して上限1.265%(消費税込)(ただし、最低手数料2,200円(消費税込)、外国取引の場合は円換算後の現地約定代金(円換算後の現地約定代金とは、現地における約定代金を当社が定める適用為替レートにより円に換算した金額をいいます。)の最大1.10%(消費税込)(ただし、対面販売の場合、3,300円に満たない場合は3,300円、コールセンターの場合、1,980円に満たない場合は1,980円)となります。
  2. 上場有価証券等は、株式相場、金利水準等の変動による市場リスク、発行者等の業務や財産の状況等に変化が生じた場合の信用リスク、外国証券である場合には為替変動リスク等により損失が生じるおそれがあります。また新株予約権等が付された金融商品については、これらの権利を行使できる期間の制限等があります。
  3. 国内金融商品取引所もしくは店頭市場への上場が行われず、また国内において公募、売出しが行われていない外国株式等については、我が国の金融商品取引法に基づいた発行者による企業内容の開示は行われていません。
  4. 金融商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、お取引に際しては、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書又はお客様向け資料をよくお読みください。

 

免責事項
  1. この資料は、フィリップ証券株式会社(以下、「フィリップ証券」といいます。)が作成したものです。
  2. 実際の投資にあたっては、お客様ご自身の責任と判断においてお願いいたします。
  3. この資料に記載する情報は、フィリップ証券の内部で作成したか、フィリップ証券が正確且つ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性又は完全性を保証したものではありません。当該情報は作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況によって予告なく変更することがあります。この資料に記載する内容は将来の運用成果等を保証もしくは示唆するものではありません。
  4. この資料を入手された方は、フィリップ証券の事前の同意なく、全体または一部を複製したり、他に配布したりしないようお願いいたします。

 

アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

アセアン・米国株、個別銘柄のリサーチレポート承ります
世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

レポート・コメント提供の他、メディア出演依頼等はこちらから。お気軽にご連絡下さい。