【投資戦略ウィークリー 2019年10月28日号(2019年10月25日作成)】“割安銘柄に潜む真の価値”
■割安銘柄に潜む真の価値
- 10/21週の日本株相場は、10/18基準で「先物買い・現物売り」のポジションに係る「裁定売り残」が1兆5,388億円(前週比▲591億円)と9/6基準に記録した過去最大の2兆666億円からの解消売り圧力がかかりやすい中、底堅い展開となった。米国株の半導体関連銘柄や中国売上比率の高い銘柄の決算発表によるマイナス材料があったものの、日経平均株価で10/23に一時的に22,500円を割り込んだ後は反転上昇に転じ、10/25には22,800円台まで上昇した。ただし、7-9月期の企業決算発表本格化を前にした警戒感から薄商い傾向となり、先行して上昇していた半導体関連の主力株に係る利益確定売り、および業種別空売り比率が高水準だった海運株や非鉄株などの買戻しが中心となる相場展開だった。
- 大きな被害をもたらした台風19号に関し、東京都の荒川・江戸川流域の5区(墨田、江東、足立、葛飾、江戸川)が都外など広域的な避難を一時検討していたことが報道された。首都圏の在来線全ての運休が決まったため住民への勧告は見送られたが、対象住民は最大250万人に上り、避難先の確保などが課題となるなど日本人にとって人命や生活安全が身近で差し迫った問題として捉られ始めているように思われる。
- 日本株相場は海外動向とりわけ米国株相場の動向に左右され、半導体、IT関連などが物色の中心となる一方、建設・土木その他社会インフラに係る銘柄はPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)から見て割安に放置されてきた。日本人の意識の変化を通じて人命や生活安全への貢献度の高い事業を手掛ける銘柄の真の価値が見直され、単なる割安感を超えたバリュー銘柄への投資へと繋がっていく相場の方向性も見出し得るだろう。更に、世界共通の課題と捉えられている「気候変動リスク」を意識したESG(環境・社会・企業統治)投資や政府の補正予算編成の動きによって資金面でも手当てされ得よう。
- 「割安銘柄に潜む真の価値」に気づくことは容易なことではないが、投資家としてチャレンジのしがいがあることでもあろう。株式市場には多種多様なテーマや材料が並び、エントリーのタイミング次第で収益機会は無数にあると言えなくもない。その中で何に気づき何を選んでどれだけの資金を投じるのかは、その人の生き方そのものと言えるのではないだろうか。(笹木)
- 10/28号では、はごろもフーズ(2831)、サイバネットシステム(4312)、中外製薬(4519)、東京製鐵(5423)、トプコン(7732)、松屋フーズホールディングス(9887)を取り上げた。
■主な企業決算の予定
- 10月28日(月):松井証券、JSR、関西電力、東日本旅客鉄道、日立化成、オービック、アマノ、ファナック、野村不動産HD、西日本旅客鉄道、スタンレー電気、オリックス、キヤノン、日立建機、日本特殊陶業、大日本住友製薬、日東電工、ミスミG本社、小糸製作所、コクヨ、東海旅客鉄道、東京電力HD、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、AT&T、ロウズ、TモバイルUS、アルファベット
- 10月29日(火):東邦瓦斯、HOYA、日本電気、日立金属、カルビー、シマノ、大阪瓦斯、野村HD、日立ハイテクノロジーズ、NTTドコモ、ANAHD、日清製粉G本社、オムロン、山崎製パン、日本電気硝子、富士通、カプコン、協和キリン、カミンズ、ファイザー、コーニング、メルク、マスターカード、GM、マーチン・マリエッタ・マテリアルズ、HCAヘルスケア、AMD、エレクトロニック・アーツ、アムジェン
- 10月30日(水):東海東京フィナンシャルHD、ヒューリック、大東建託、大正製薬HD、日本取引所G、エーザイ、積水化学工業、塩野義製薬、ニフコ、田辺三菱製薬、東京瓦斯、東海理化電機製作所、三井物産、大和証券G本社、ポーラ・オルビスHD、タダノ、オークマ、北海道電力、オートバックスセブン、アンリツ、日本精工、セイコーエプソン、住友化学、AGC、小林製薬、日本M&Aセンター、きんでん、アドバンテスト、SCSK、ファンケル、花王、ソニー、アルプスアルパイン、日立製作所、サイバーエージェント、小松製作所、日野自動車、マキタ、SCREENHD、オリエンタルランド、SBIHD、LINE、ADP、ヤム・ブランズ、L3ハリス・テクノロジーズ、GE、ロイヤル・カリビアン・クルーズ、ウエスタンデジタル、MGMリゾーツ・インターナショナル、フェイスブック、アップル、アパッチ、HCP、メットライフ、KLA、スターバックス
- 10月31日(木):トクヤマ、川崎汽船、綜合警備保障、大同特殊鋼、デンソー、三和HD、川崎重工業、豊田自動織機、小野薬品工業、商船三井、アステラス製薬、日本ゼオン、東洋水産、第一三共、三菱重工業、東ソー、ジェイテクト、日本通運、伊藤忠テクノソリューションズ、日本ハム、三菱倉庫、三菱電機、山九、四国電力、小田急電鉄、東武鉄道、南海電気鉄道、京成電鉄、LIXILG、豊田合成、トヨタ紡織、ローム、東亞合成、TDK、東北電力、日本航空、SGHD、カゴメ、セガサミーHD、ワコールHD、エイチ・ツー・オー リテイリング、テクノプロHD、ウシオ電機、日本碍子、TOTO、武田薬品工業、住友重機械工業、九電工、フジクラ、コーセー、京セラ、トプコン、ヤマトHD、村田製作所、メディパルHD、中国電力、富士電機、テイ・エス テック、大陽日酸、大塚商会、九州電力、北陸電力、日本たばこ産業、パナソニック、東京エレクトロン、コナミHD、豊田通商、ナブテスコ、キーエンス、セントラル硝子、任天堂、サンリオ、中部電力、東洋製罐GHD、イビデン、電源開発、マブチモーター、NTN、ZOZO、江崎グリコ、日本郵船、ボルグワーナー、インターコンチネンタル・エクスチェンジ、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ、マラソン・ペトロリアム、アラガン、セルジーン、アルトリアG、コルボ、アリスタネットワークス、フォーティネット
- 11月1日(金):帝人、キッコーマン、双日、伊藤忠商事、サンゲツ、ダイセル、レンゴー、三菱ケミカルHD、住友商事、大和工業、相鉄HD、ZHD、住友電気工業、コニカミノルタ、八十二銀行、ヤマハ、IHI、エヌ・ティ・ティ・データ、アズビル、日本製鉄、ハウス食品G本社、TIS、アイカ工業、宇部興産、リコー、マツダ、KDDI、阪急阪神HD、シャープ、ヒロセ電機、長瀬産業、シェブロン、アッヴィ、エクソンモービル、AIG
- 11月2日(土):バークシャー・ハサウェイ
■主要イベントの予定
- 10月28日(月)
・セルソース、東証マザーズに新規上場
・企業向けサービス価格指数(9月)
・中国共産党の4中総会(31日まで)
・米卸売在庫(9月)、ユーロ圏マネーサプライ(9月)
- 10月29日(火)
・ジェイック、東証マザーズに新規上場
・米FOMC(30日まで)
・サウジアラビアの投資会議「未来投資イニシアチブ」(通称:砂漠のダボス会議)(リヤド、31日まで)
・米主要20都市住宅価格指数(8月)、米中古住宅販売指数(9月)、米消費者信頼感指数(10月)
- 10月30日(水)
・恵和、東証2部に新規上場
・小売売上高(9月)、百貨店・スーパー売上高(9月)
・米FOMC声明発表およびパウエルFRB議長記者会見、ブラジル中銀が政策金利発表
・米ADP雇用統計(10月)、米GDP(3Q、速報値)、ユーロ圏消費者信頼感指数(10月)、独CPI(10月)、独失業率(10月)
- 10月31日(木)
・日銀金融決定会合、終了後に結果と展望リポート発表、黒田総裁会見
・鉱工業生産(9月)、対内証券投資(10月25日)、自動車生産台数(確報、8月)、住宅着工戸数(9月)、建設工事受注(9月)、消費者態度指数(10月)、日銀GDP・CPI直近予想(4Q)
・ドラギECB総裁が任期満了、ユンケル欧州委員長が任期満了、英EU離脱期限、ASEAN首脳会議・関連会合(バンコク、11月4日まで)
・米個人所得・支出(9月)、米新規失業保険申請件数(10月26日終了週)、ユーロ圏GDP(3Q、速報値)、中国製造業・非製造業・コンポジットPMI(10月)、台湾GDP(3Q)、香港GDP(3Q)
- 11月1日(金)
・ダブルエー、東証マザーズに新規上場
・有効求人倍率(9月)、失業率(9月)、じぶん銀行日本PMI製造業(10月)、自動車販売台数(10月)
・クラリダ米FRB副議長が講演、クリスティーヌ・ラガルド氏がECB総裁に就任、ウルズラ・フォンデアライエン氏が欧州委員長に就任
・米雇用統計(10月)、米ISM製造業景況指数(10月)、米建設支出(9月)、米自動車販売(10月)、中国財新製造業PMI(10月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■中国の7-9月期の実質GDP
中国国家統計局が10/18発表した7-9月期の実質GDP速報値は、前年同期比6.0%増。伸び率は4-6月期から0.2%pt鈍化し四半期ベースでは記録のある1992年以降で最も低い水準を更新。併せて10/18に発表された経済指標では、9月の工業生産が同5.8%増と市場予想の同4.9%増を上回った。小売売上高は同7.8%増と予想と一致。一方、1-9月の固定資産投資は同5.4%増。市場予想の同5.5%増に届かなかった。
毛報道官は、「外部要素は不確定、不安定さが増しており、国内経済の下押し圧力はやや大きい」との見方を示した。中国政府の財政出動への期待から、日本株市場は一段高となった。ただ、同国は過剰債務問題を抱えており過度な期待には注意したい。(増渕)
【中国7-9月期実質GDP成長率は鈍化~財政出動への過度な期待には注意】
■米国株3Q純利益マージンに注目
米国企業の2019年7-9月期決算発表が相次いでいるが、既に発表されたものも含めた市場予想ベース(FactSet調べ)では、売上高が前年同期比2.6%増、純利益が同4.7%減と増収減益。特に純利益マージンは同0.7%ポイント低下の11.3%である。この数値どおりになれば、3四半期連続で純利益マージンが前年同期比で低下することになり、2009年以来10年ぶりのこととなる。
業種別で見ると、2019年7-9月期の純利益マージンが前年同期を上回ったのは不動産セクターと素材セクターの2セクターのみであり、前年同期比で低下した中では、エネルギーが同2.7%ポイント低下の5.4%、情報技術が同2.4%ポイント低下の20.6%と大きく低下。業種毎の跛行色が目立ち始めた。(笹木)
【米国株の3Qは純利益マージンが減少予想~不動産と素材のみ上昇】
■ボーイングが生産計画を修正
民間航空機と防衛・宇宙・セキュリティシステムで世界最大のボーイング(BA)は、10/23に2019/12期3Q(7-9月)を発表。墜落事故を起こした主力小型機737MAXの出荷停止が響き、純利益は前年同期比50.6%減の11.67億ドルとなった。一方、737MAXについて今四半期中に運航再開の認可を得られる見込みだと同社が明らかにしたことなどが好感され、株価は一時4.1%上昇した。
ボーイングは併せて、ワイドボディ機787の製造ペースを現在の14機/月から、2020年後半まで12機/月に縮小すると発表。開発中の777Xについても就航時期を2020年後半から2021年前半へ先送りした。これを受け、東レ(3402)などの株価が下落した。航空機は裾野の広い産業だけに注意したい。(増渕)
【ボーイング737MAXが年内運航開始の見込み~787の生産計画引き下げ】
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。