【投資戦略ウィークリー 2019年10月21日号(2019年10月18日作成)】“見え始めつつある相場の大きな流れ”
■見え始めつつある相場の大きな流れ
- 大晦日の紅白歌合戦の司会も決まり、年末年始が気になり始める時期となってきた。今月から消費税増税が実施され、「2020年東京五輪終了後に日本経済が上向く要因はあるのか?」という世間の声も徐々に大きくなり始めているところだが、気候変動リスク対応関連と半導体関連銘柄の動向が来年に向けての相場の大きな流れとなりそうな気配が感じられる。
- 10/15週の日本株相場は、台風19号の豪雨による堤防の決壊などの被害が拡がりを見せる中、安倍首相が「異次元の災害が相次ぎ、もはやこれまでの経験や備えだけでは通用しない。オールジャパンで国土強靱化を強力に進め、国家百年の大計として災害に屈しない国土をつくり上げる」と国会で答弁するなど補正予算への期待を高めたこともあり、建設・土木関連を中心に買われる展開となった。日経平均株価も10/15に22,000円を超えて寄り付いた後、10/16には22,500円を一気に超えて年初来高値を更新する急騰相場となった。この背景には、10/11現在で「先物買い・現物売り」のポジションを組んだまま裁定取引を解消しない「裁定売り残」が1兆5,980億円と、「裁定買い残」(「先物売り・現物買い」のポジションを組んだまま裁定取引を解消しない現物買い残高)の4,782億円と比べて金額が大きいことから、裁定解消のための現物株の買戻しで相場が上昇する需給要因も大きく作用していると考えられる。
- 暑さ対応として東京五輪マラソンが札幌で開催されると決まったこと、および南米原産の強い毒を持つヒアリが青海埠頭で定着した可能性がある旨が報道された。また、秋の味覚を代表するサンマの不漁が続くなど異常気象に係るニュースが増えてきた。折しも9/30に、気候変動が世界の都市に与える影響に係るゴールドマン・サックスのレポートが公表され、洪水リスクから東京も一部が海に沈む危険性もあるとの警告が発せられた。気候変動リスクの認識が今後一層強くなることが予想され、人命や生活の安全に貢献する企業の価値が見直される契機となる可能性があろう。また、海外企業の2019/12期3Q(7-9月)決算では、半導体製造装置メーカーなどで5GやIoT対応、スマートフォンの高性能化に係る半導体の微細化やロジック半導体の需要増などが確認され業績の底打ち感が強まっている。半導体関連も相場を牽引するものと期待される。(笹木)
- 10/21号では、ドトール・日レスホールディングス(3087)、大日本住友製薬(4506)、塩野義製薬(4507)、東光高岳(6617)、ネットワンシステムズ(7518)、東宝(9602)を取り上げた。
■主な企業決算の予定
- 10月21日(月):Genky DrugStor、エンプラス、ナガワ、ハリバートン、ケイデンス・デザイン・システムズ
- 10月22日(火):センティーン、トラベラーズ、バイオジェン、セラニーズ、パッカー、クエスト・ダイアグノスティクス、ネクステラ・エナジー、キンバリー・クラーク、インターパブリック・グループ、ハズブロ、ハーレーダビッドソン、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、パルトグループ、シャーウィン・ウィリアムズ、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)、ロッキード・マーチン、マクドナルド、ニューコア、チポトレ・メキシカン・グリル、ワールプール、ユナイテッド・テクノロジーズ、テキサス・インスツルメンツ
- 10月23日(水):ジャフコ、小野測器、ピエトロ、日本高純度化学、日本電産、キャタピラー、インベスコ、サーモフィッシャーサイエンティフィック、フリーポート・マクモラン、ナスダック、ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングス、ウエイスト・マネジメント、ボーイング、ローリンズ、アンフェノール、ボストン・サイエンティフィック、アレクシオン・ファーマシューティカルズ、ゼネラル・ダイナミクス、イーライリリー、ノーフォーク・サザン、アライン・テクノロジー、フォード・モーター、ロバート・ハーフ・インターナショナル、オライリー・オートモーティブ、F5ネットワークス、バリアンメディカルシステムズ、フォーチュン・ブランズ・ホーム&セキュリティ、イーベイ、ラムリサーチ、エドワーズライフサイエンス、ザイリンクス、マイクロソフト、ペイパル・ホールディングス、レイモンド・ジェームズ・ファイナンシャル、ラスベガス・サンズ
- 10月24日(木):キムラユニティー、石塚硝子、MonotaRO、三菱鉛筆、東京製鐵、信越ポリマー、エイトレッド、ネットワンシステムズ、総合メディカルホールディング、システナ、レッグス、トランコム、ディスコ、中外製薬、ダナハー、シトリックス・システムズ、バクスターインターナショナル、コムキャスト、バレロ・エナジー、スタンレー・ブラック・アンド・デッカー、Dow Inc、トラクター・サプライ、ノースロップ・グラマン、ハーシー、レイセオン、3M、アメリカン航空グループ、T.ロウ・プライス・グループ、ツイッター、サウスウエスト航空、ベリサイン、キャピタル・ワン・ファイナンシャル、イーストマン・ケミカル、ジュニパーネットワークス、レスメド、ビザ、ギリアド・サイエンシズ、アマゾン・ドット・コム、SVBファイナンシャル・グループ、ユニバーサル・ヘルス・サービシズ、インテル、イルミナ、アラスカ・エア・グループ、フォーティブ、アフラック
- 10月25日(金):杉本商事、京阪神ビルディング、エスリード、サカイ引越センター、積水樹脂、アツギ、キヤノンマーケティングジャパン、幸楽苑ホールディングス、日本車輌製造、野村総合研究所、栄研化学、エノモト、信越化学工業、三谷産業、イントラスト、コーエーテクモホールディングス、SPK、だいこう証券ビジネス、カワチ薬品、未来工業、ビーピー・カストロール、リコーリース、東洋機械金属、キヤノン電子、エムスリー、富士通ゼネラル、ホクシン、プレステージ・インターナショナル、中広、千趣会、岩井コスモホールディングス、蝶理、VF、チャーター・コミュニケーションズ、ベライゾン・コミュニケーションズ、フィリップス66、ウェアーハウザー、イリノイ・ツール・ワークス、フランクリン・リソーシズ
■主要イベントの予定
- 10月21日(月)
・第18回市場公募地方債発行団体合同IR
・貿易収支(9月)、全産業活動指数(8月)、コンビニエンスストア売上高(9月)
・カナダ総選挙
・中国新築住宅価格(9月)
- 10月22日(火)
・即位礼正殿の儀
・米中古住宅販売件数(9月)
- 10月23日(水)
・S&Pセミナー「信用力サイクルの転換期をむかえた日本の事業会社」
・営業毎旬報告(20日現在)、全国百貨店売上高(9月)、東京地区百貨店(9月)
・フェイスブックのザッカーバーグCEO、仮想通貨「リブラ」について米下院金融委員会で証言
・米FHFA住宅価格指数(8月)、ユーロ圏消費者信頼感指数(10月)
- 10月24日(木)
・インティメート・マージャー、東証マザーズに新規上場
・日銀、金融システムレポート(10月号)
・じぶん銀行日本PMI製造業・サービス業・コンポジット(10月)、景気動向指数(8月)、スーパーマーケット売上高(9月)
・欧州中央銀行(ECB)政策金利が発表・ドラギ総裁記者会見、トルコ中銀・インドネシア中銀が政策金利発表
・米耐久財受注(9月)、米新規失業保険申請件数(10月19日終了週)、米新築住宅販売件数(9月)、ユーロ圏総合・製造業・サービス業PMI(10月)、韓国GDP(7-9月)
- 10月25日(金)
・BASE、東証マザーズに新規上場
・対外・対内証券投資(10月13-19日)、工作機械受注(9月)
・ECB専門家予測調査、ロシア中銀が政策金利発表
・米ミシガン大学消費者マインド指数(10月)、独IFO企業景況感指数(10月)
- 10月26日(土)
・豪ウルル(エアーズロック)、観光客の登山を禁止
- 10月27日(日)
・欧州夏時間終了、旧東ドイツのテューリンゲンで州議会選挙、アルゼンチンで大統領選挙第1回投票(決選投票の場合11月24日)、ウルグアイで大統領選挙第1回投票(決選投票の場合11月24日)
・中国工業利益(9月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。
■第3次産業活動指数は過去最高
経済産業省が10/15に発表した8月の第3次産業活動指数(季調後)は、前月比0.4%上昇の107.3。上昇は2ヵ月連続となり、比較可能な2008/1以降で過去最高を更新。同指数は広義のサービス業の生産活動を表す。経産省は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に上方修正。業種別では、小売業や電気・ガス・熱供給・水道業が牽引。増税前の駆け込みの影響はあるものの、低迷が続く製造業とは対照的な内容だ。
日銀が10/15に公表したさくらレポートでは、全ての地域で景気の総括判断が「拡大」または「回復」となった。海外経済の減速の影響が見られるものの、企業・家計両部門において国内需要の増加基調が続いていると指摘。内需主導の成長が当面は続きそうだ。(増渕)
【サービス産業の生産活動が活発化~内需主導の経済成長が続くか】
■半導体は微細化とロジック化需要
オランダの世界的半導体製造装置メーカーASML(ASML)が10/16に発表した2019/12期3Q(7-9月)を見ると、リソグラフィー技術は、2Q(4-6月)以降にEUV(極端紫外線)露光装置が立ち上がり、ArF液浸とともに半導体微細化の需要が強まっていることが分かる。更に、半導体の用途は信号を蓄えるメモリから信号を制御・演算処理するロジックへと高付加価値化が進んでいる。
また、10/17発表の台湾積体電路製造(TSM)の2019/12期3Qを見ると、従来よりも微細な7nm(ナノメートル、ナノは10億分の1)の半導体が前年同期より増加傾向にある。スマートフォンの高機能化や5G向けの受注が好調であることを反映しており、今後の半導体関連銘柄への波及が期待される。(笹木)
【半導体は微細化とロジック化需要~ASMLとTSMCの3Q決算に見る】
■米大手金融機関の決算まとめ
米金融大手の7-9月期決算が出揃った。債券トレーディングや引受業務の伸びを背景にJPモルガン・チェース& Co(JPM)などは増益を確保したが、最終利益はまちまちだった。保有株式の評価額引き下げが利益を押し下げたゴールドマン・サックス・グループ(GS)やファースト・データとの決済合弁会社の解散に関する費用が重荷となったバンク・オブ・アメリカ(BAC)は減益だった。
金融株については、利下げによる貸出利鞘の縮小や大型IPO銘柄の株価低迷によるIPOの手控えなどの懸念があり、パフォーマンスもアンダーパフォーム気味だ。ただ、市況改善により各社のトレーディングに改善が見られたほか、商業銀行では貸出残高の積み増しも確認された。株価上昇となるか。(増渕)
【米大手金融機関の7-9月期が出揃った~トレーディング収益の改善目立つ】
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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部
笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。